■シンシアの今後の見通し
2. 重点施策
2026年12月期の計画を達成するため、「製品品揃えの拡充」「自社製品の売上拡大」「M&Aの推進・事業多角化」の3つの重点施策を掲げている。
(1) 製品品揃えの拡充:新製品投入
2025年3月に譲り受けたカラーコンタクトレンズ販売事業にて展開するECサイト「Mew コンタクト」は、同社がエンドユーザーとつながる玄関口という位置付けとなることはもちろん、同サイトの成長に携わってきたチームが合流したことで、これまで以上に同社はマーケットイン志向の開発が可能となった。レンズデザインからパッケージデザイン、そしてフロント広告、販売戦略はもちろん、カラーコンタクトレンズ全般の商品開発が強化されたと言える。同事業では各専門人材とナレッジが蓄積しており、速いトレンド変化に対応し、市場に受け入れられるブランドづくりを展開する。「Mew コンタクト」では業界初の「カラコンレビューサイト」を立ち上げたほか、忖度なしの「スタッフのカラコンレビュー」など、メーカー側からの情報発信だけでは限界があるコンタクトレンズ業界において、ユーザーを惹きつける施策で多くの声を集める仕組みが構築されており、同社の強みでもある高品質製品とのシナジー発揮につなげる。
新製品リリースについては、2026年12月期の業績底上げにラインナップ拡充は必須と捉え、特に第三世代シリコーンハイドロゲル素材での展開を計画している。「シンシア S」シリーズでは2025年2月に「乱視用」を販売開始し、2026年夏前には「遠近両用タイプ」のリリースを計画している。社会的背景としてコンタクトレンズ使用に慣れた世代が需要層として拡大しているほか、「多焦点レンズ」によりメガネのように架け替える必要がないためユーザーにとって利便性が高い。近視用レンズより3割程度高い価格設定なものの需要は期待できるだろう。また、「pranair」ブランドでは、顧客から2週間交換タイプの要望も出ているようである。計画しているこれらの第三世代シリコーンハイドロゲル素材レンズの拡充が、売上高と利益率の向上につながることを期待したい。
(2) 自社製品の売上拡大:販売力強化
収益をけん引する「シンシア S」ブランドをもう一段成長させるため、集中的にマーケティング投資を行う。コンタクトレンズでは、良くも悪くも顧客のブランドスイッチが少ないという特性もあり、そこを乗り越えるべく、シェア拡大に向けた認知度向上策を講じる。処方施設チャネルの認知度向上に向けて、LP(ランディングページ)やバナー、SNSを中心としたWeb広告はもちろん、販路の特性上個別マーケティングの効果も高いと判断し、施設ごとの販売促進を強化する。なお、同社推定によると、処方施設は全国におよそ7,000弱程度あり、同社は2,800以上の取引先を既に開拓済みであり、40%前後をカバーすると試算している。
「シンシア S」と同じ第三世代シリコーンハイドロゲル素材を採用したEC向けブランドの「pranair 1DAY」については、オンライン上での高品質訴求に当初想定よりもやや苦戦している。販売力のある小売業者と連携し、高品質を前面に効果的なマーケティング策を協議し、品質を裏付ける施策を模索している。シリコーンハイドロゲル素材コンタクトレンズ市場のシェアは、同社推定で5%程度と開拓の余地は大きく、同社は近いうちの市場占有率10%超えをねらっている。早期に同社製品を市場に浸透させることで、顧客満足度向上からロイヤリティ獲得、固定客化を促し、安定した収益基盤を構築する方針だ。また、サークルレンズ「シンシア S Cleche」について、顧客の購買行動には装用感や価格に加え、デザイン要素も強く作用するため、デザインや価格重視の顧客層への販促手法を思案中である。高い品質が実現する、レンズが目と一体化するような快適な装用感を体現するため、先ずは顧客の足を処方施設に向ける方策を考案している。ほかにも、若年顧客層に向けTikTok等を広告媒体に、デザイン性とともに高品質を前面に、認知度を高める戦略も実践中である。
ドラッグストアチャネルでは、引き続きドミナント戦略を進める。日本全土に広がるドラッグストアチェーンでのコンタクトレンズ需要喚起に向け、即効性、収益性が高く資本効率的なドミナント戦略を展開し、ドラッグストアチャネルからの収益を拡大する計画だ。データドリブンでニーズを把握し、エリアと出店チェーンを限定して戦略を展開する。ドラッグストアチェーンでのコンタクトレンズ需要喚起の成功モデルを作った後に、類似する経済地域背景や物理的環境のエリアに進出するという一連のサイクルで「ドラッグストアでコンタクトレンズ購入」という購買行動の定着を促す。既にドラッグストアチェーンと連携し、エリアを限定して施策を進めている段階にあり、進捗と成果に注目したい。
(3) M&Aの推進・事業多角化:事業領域拡大
2023年11月に連結子会社化したタロスシステムズでは、次期POSシステムの開発に着手している。昨今のエンジニア不足と、指数関数的に発展するAI技術へのキャッチアップのため、自社採用と並行して業務委託により技術力の高い外部人材を登用している。これにより、多様な視点でアイディアを結び、システムを進化させる方針である。タロスPOSは実店舗向けのクラウドPOSシステムだが、次期POSシステム開発では、顧客利便性向上に向け、ポータブル端末でも利用できる環境を構築するようだ。計画どおりに進めば2026年内のリリースを予定しており、新規顧客の開拓が進むと同社では予想している。また、事業領域拡大に向け、薬事コンサルティング事業を本格始動することも大きな動きの1つだ。現在、日本国内でのコンタクトレンズの承認に係る案件が進行中のようである。医薬品や医療機器の承認は時間を要することから、2026年12月期以降、徐々に収益を拡大する想定である。また、海外企業の日本進出支援コンサルティングでも、初動としては想定どおりコンタクトレンズ関連中心ながら、医療機器なども徐々に引き合いが発生しているようだ。本業で培った承認申請ノウハウを生かし、コンタクトレンズに限らず、化粧品や医薬部外品等、受託の幅を広げる構想で、それら見込み領域に対しアナウンスを積極化している。
M&Aの方針については、事業推進部を組織し、継続的にM&A案件を積極的に探索している。主力事業であるコンタクトレンズ事業とのシナジーを考慮した案件模索という基本は当初から変わらないが、M&Aで多角化が進んできたこともあり、シナジー自体の構想領域も広がっていることから、魅力的な企業思想やビジネス内容を持つ企業も対象に、間口を広げて検討している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)