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「TACO相場」の行方【フィスコ・コラム】

中東情勢の不透明感は続くものの、トランプ米大統領の発言に対する反応が弱まってきました。関税政策と同様にイランとの和平協議でも恫喝と譲歩を繰り返すばかり。そうした事態を受け、為替市場は次のテーマを探る局面に入っています。

中東紛争突入から2カ月弱。市場はトランプ氏の停戦期限の設定と撤回に振り回される展開が続いています。これまで48時間の期限の延長を重ねたり、4月に入っても条件設定を打ち出しては先送りしたり、方針が定まりません。直近でも「延長はない」としながらそれを反故にするなど、「トランプ氏は最終決断の直前にいつも撤退する」(Trump Always Chickens Out、TACO)を象徴するような動きです。

4月21日には米下院で対イラン軍事作戦に議会承認を義務付ける民主党の決議案が、共和党の下院議長に阻止されました。今後は記名投票を含めた再提案が見込まれ、争点は中東情勢そのものに加え、「議会が大統領を抑制できるのか」に移ります。民主党の提案が否決され続ければ軍事行動はトランプ氏の裁量に委ねられ、国際金融市場がTACOに振り回される事態は長引きそうです。

この戦時下では、市場は強硬姿勢に反応してドル買いが進む一方、延長発表でリスク後退と受け止められて巻き戻しが入るなど、値動きは一貫性を欠いています。為替は地政学リスクそのものではなく、トランプ政権の場当たり的な交渉スタンスに振らされる状況に。ドル・円はドル買いで下値が堅い反面、160円台の為替介入観測が上値を抑え、4月以降は2円余りの値幅にとどまっています。

トランプ氏がイランを武力攻撃した理由は複数考えられます。支持基盤への配慮、前政権路線の否定、イスラエル重視、対外強硬策で主導権奪還などが挙げられるでしょう。今年11月の中間選挙で議席を減らせば実現が困難になるとの見立てから、この時期に決断したとみられます。しかし、イランの抵抗にはホワイトハウスだけでなく、政府や議会も含め米国内が驚いていると外交筋は指摘しています。

問題はイランの出方以上に、米国の外交・安全保障の意思決定が不透明なことです。市場はすでにトランプ氏の強硬姿勢を額面通りには受け取らず、発言の信認を割り引いて織り込み始めました。市場では「うんざり」(短期筋)との声も聞かれます。TACO相場は次第に材料としての効力を失い、主要中銀の金融政策を受けた為替は金利や景気といった本来のテーマへ軸足を移していく局面に入りつつあります。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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