HEROZは、着実な成長を続けて収益性も改善している。2026年4月期第3四半期累計業績は、売上高が4,687百万円(前年同期比7.8%増)ながら、EBITDA(営業利益+減価償却費+敷金償却+のれん償却額(特別損失分を除く)+株式報酬費用+棚卸資産評価損により算出)が719百万円(同46.1%増)、営業利益が358百万円(同126.4%増)で着地した。修正後通期業績予想(売上高6,400百万円、営業利益500百万円)に対して、売上高73.2%、営業利益71.7%の進捗率は計画線上で、4Q偏重の構造を踏まえ順調に推移している。AIX事業のBtoC領域では、3四半期連続で前年同期比プラス成長となり、「棋神チャット」リリースにより観戦体験を強化し、新規ユーザー獲得を推進した。また、BtoB領域では、HEROZ ASKが2月末時点でARR約1.5億円を達成しグループARR成長を牽引。今期中の単月黒字化に向け進行するなか、HEROZ BtoBもパイプラインは前年を上回っている。
2Q発表時に業績下方修正を発表していたが、BtoB領域で売上計上を予定していたプロジェクト開始の遅れ、計上時期が後ろ倒しとなっていることや、ビジネスメンバー・エンジニアメンバーを中心に人材採用が先行していること等により、投資・費用発生が先行する状況となっているのが要因となっているためである。AIX 事業・AI Security 事業ともに、前年同期比では売上高・営業利益ともに成長を達成しており、特に BtoB 事業については前年同期比で約 30%の成長を達成していた。今後は、BtoB 事業における AI エージェント機能の強化、HEROZ ASK や AI さくらさんをはじめとするリカーリング型収益の積み上げ、AI Security 事業における高まるセキュリティ需要に対応したサービス強化とソリューション提供の推進等のほか、人材採用・先行投資の成果が順次顕在化していく見通しである。
同社は、AI(人工知能)の技術を活用し、企業の業務効率化・高度化を支援するテクノロジー企業である。特に、AIを用いた業務プロセスの自動化の領域に強みを持ち、幅広い業種に対してAIソリューションやSaaSを提供している。同社の事業セグメントは、AIX事業及びAI Security事業により構成される。AIX事業はBtoCサービスとBtoBサービスに分類され、BtoCサービスでは個人向けに国内最大級のオンライン将棋対戦ゲーム「将棋ウォーズ」を提供している。BtoBサービスでは最先端のAI技術を活用し、金融、建設、エンターテイメントなど様々な業種のエンタープライズを中心に、DX推進及び業務効率化などに資するサービスを提供している。BtoB事業の特徴は、サービスに組み込まれているAIエンジンにある。世界トップレベルの将棋AIの開発により培ってきた高度な機械学習・深層学習の技術をもとに、最新の技術トレンドを取り入れながら独自に開発しており、需要予測、リスク分析、業務自動化などの複雑なニーズに対しても柔軟に対応することができる。また、同事業は法人向け生成AIサービスである「HEROZ ASK」をクラウドサービスとして提供しており、高度な技術をAIエージェントとして、スピーディーかつスケーラブルに展開することができる。
AI Security事業は、子会社のバリオセキュアがインターネットに関するセキュリティサービスを展開している。主に中小企業を対象とし、ファイアウォールなどセキュリティ機器の調達及び導入から、運用・監視・保守に至るまでワンストップでサービス提供している。サブスクリプション型の収益モデルを採用しており、専門的な知識がなくても運用も含めてセキュリティを安心して任せることが出来るサービス設計が特徴である。AIの活用などにより未知の脅威の検知や攻撃予測など高度なセキュリティ対策を実現しており、サイバー攻撃が高度化・複雑化するなかで顧客の安全性確保に貢献している。直近の4月14日には、バリオセキュアとの経営統合を発表、完全子会社化により意思決定の迅速化・円滑化を実現していくフェーズとなった。本格的な効果の発現は2027年4月期以降となるが、非支配株主持分(57.21%)の解消により、今期期首から完全子会社化を実現しと仮定したフルイヤーベースでEPSは約4.6倍に改善する見込み(3.29円→14.98円)。
同社は中長期的には、顧客の生産性向上を支援するAIツールの提供だけにとどまらず、業務そのものをAIが担う主体へと進化させる「AI BPaaS」を加速していきたいとしている。生成AIの進展により自動化可能な業務領域が拡大しており、AIを高品質かつ低コストの労働力として活用することにより、コールセンター、営業代行、採用代行等のアウトソーシング市場を中心に、人手不足という社会課題に対する根本的な解決策の提供を目指している。4月20日には、AKMコンサルティングの子会社を発表した。AKM コンサルティングは、スタートアップ企業向けに経理や人事等のバックオフィス BPO サービスを提供しており、創業3年で急成長を遂げ、業界水準を大きく超える高利益率と深いドメインナレッジを有している。今後のBPO領域は、人による代行から AI エージェントによる業務代行へ急速にシフトすると予想されており、本件株式取得により同社の有するバックオフィス領域の専門知識とHEROZのAI技術を融合させることで、BPO 業務の圧倒的な効率化を実現していくようだ。
最後に、同社は株主還元として株主優待を実施しており、700株以上保有する株主に対して年2回、所有株式数に応じた株主優待ポイントを付与している。同ポイントは株主専用サイト「HEROZプレミアム優待倶楽部」で5,000種類以上の商品と交換可能である。株主は同社が提供する「将棋ウォーズ」で提供している将棋AI利用券への交換が可能となっている。また、「WILLsCoin(ウィルズコイン)」に交換すると、他企業の株主優待ポイントと合算できる特徴がある。優待ポイントは保有株数に応じて段階的に増加し、700株で年間7,000ポイント、2,000株以上では年間50,000ポイントが付与される。