■ウイングアーク1stの業績動向
1. 2026年2月期の業績概要
2026年2月期の連結業績は、売上収益で前期比7.8%増の30,945百万円、営業利益で同9.4%増の8,989百万円、EBITDAで同9.1%増の10,526百万円と、3期連続で過去最高を更新した。前期予想(2025年7月公表)に対しては、売上収益は若干下回り、各利益は上回った。売上収益の未達は、2027年2月期に一部の大型案件がずれ込んだことによるものだ。一方、利益面では、EBITDAマージンは34.0%と前期比0.4ポイントの改善となったが、M&Aを除いたオーガニックでは適切なコストマネジメントが功を奏し36.2%と同1.6ポイント改善した。また、帳票・文書管理ソリューションとデータエンパワーメントソリューションがともに堅調に推移した。
帳票・文書管理ソリューションの売上収益は前期比8.0%増の20,255百万円となった。企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類の設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び企業間取引の電子化を実現する「invoiceAgent※」が主な構成要素となっている。「SVF」は、大企業や官公庁を中心とした基幹システムへの大型投資が継続したことにより売上収益は同2.3%増の15,633百万円となった。うち、クラウドサービスは、様々な帳票需要を取り込み、同28.5%増の1,199百万円となった。「invoiceAgent」は、クラウドの成長率が鈍化したものの、保守・サブスクリプションが堅調に推移し、売上収益は同9.5%増の2,488百万円となった。なお、クラウドサービスは同13.4%増の1,541百万円と堅調を維持した。
※ 2026年4月から「invoiceAgent」は帳票のライフサイクルを担うデジタル帳票基盤「SVF」ブランドへ統合され、「invoiceAgent」は、帳票の保管を行う「SVF Archiver」及び帳票の流通を行う「SVF Transact」の2つのSVFのサブブランドとなった。なお、2027年2月期以降の売上収益の開示区分は、「SVF Archiver」「SVF Transact」を旧invoiceAgentとして、開示を継続する方針。
データエンパワーメントソリューションの売上収益は前期比7.5%増の10,690百万円となった。企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化することにより、業務の効率化や生産性の向上を実現する「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっている。「Dr.Sum」は、データ活用の幅広い需要を取り込み同3.5%増の3,517百万円となった。特に「Dr.Sum Cloud」は大企業を中心に販売が好調に推移し、売上収益は同34.4%増の643百万円と大きく伸長した。「MotionBoard」は、クラウドサービスの見直しによる一部サービス終了の影響もあったが、売上収益は同5.3%増の3,959百万円となった。なお、クラウドサービスは、契約社数が1,042社(前期は1,072社)と減少したが、売上収益は同1.7%増の1,775百万円と前期並みを確保した。
キャッシュが積み上がり、財務レバレッジは大幅に低下
2. 財務状況
2026年2月期末における資産は、73,490百万円(前期末比5,053百万円増)となった。流動資産は18,013百万円(同189百万円増)、非流動資産は55,477百万円(同4,864百万円増)となった。非流動資産の増加の主な要因は、ウイングアークNEX取得に伴う増加による。負債は、26,458百万円(同132百万円減)となった。流動負債は15,300百万円(同460百万円増)、非流動負債は11,157百万円(同592百万円減)となった。流動負債の増加の主な要因は、営業債務及びその他の債務と契約負債での148万円の増加による。非流動負債の減少の主な要因は、借入金返済に伴う長期借入金1,420百万円の減少による。資本は、47,032百万円(同5,186百万円増)となった。資本の増加の主な要因は、利益剰余金の増加2,541百万円と有価証券評価差額金2,415百万円の増加による。
財務の健全性については、同社の財務レバレッジ(純有利子負債÷EBITDA)がマイナス0.6倍(前期もマイナス0.6倍)と健全性は変わりがない。キャッシュは順調に積み上がっており、M&Aなどを視野に入れているようだ。
なお、同社が2016年4月に旧 ウイングアーク1stの全株式を取得した際に発生したのれん及びその他の無形資産は、その後の企業買収により発生したものを含め2026年2月期末時点でそれぞれ30,209百万円及び14,199百万円となり、合わせて同社グループの資産の60.4%を占めている。IFRSでは、のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産(商標権)の償却を行わない。毎期または減損の兆候が存在する場合には、その都度減損テストを実施する。同社グループの事業の収益性が低下したと認められる場合には減損損失を計上する必要があるため、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性がある。ただ、同社グループではのれんの減損に係るリスクを低減するため事業の収益力強化に努めており、主に以下の取り組みを実施している。
(1) リカーリングビジネスの拡大
ソフトウェアライセンスの保守、サブスクリプションやクラウドサービスの利用料等のリカーリングレベニューは、契約が継続される限りは毎年継続的に売上が計上され、契約社数が増加すればその分売上も増加する。同社グループは、事業の安定と収益力の強化のため、このリカーリングビジネスの拡大を図っている。
(2) 業務・業務に特化したソリューションの推進
同社グループは、単なるソフトウェアやクラウドサービスの提供ではなく、業種ごとのノウハウを組み合わせた顧客の業務に即したソリューションを提供している。特にデータエンパワーメントソリューションは、製造業向けのIoT可視化ソリューションや金融業向けの営業生産性向上ソリューション等の提供により成長してきた。新ソリューションによるさらなる売上拡大のため、継続的な技術開発と業種ノウハウの蓄積に努めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 井上 康)