設備・機械の修理用備品やオフィス備品などの間接材購買プラットフォーム「APMRO」を運営するMRO事業と商業施設のメンテナンスなどを行うFM事業を展開しているアルファパーチェスは5月14日、2026年12月期第1四半期決算を発表している。前期は親会社でありかつ取引先となるアスクルの出荷および仕入停止の影響を大きく受けていたが、概ね回復しつつあり、増収増益を目指す今期予想に対して順調なスタートを切った。無限カタログの新機能「アップロード検索」による利益率のさらなる向上も期待される。
アスクルの影響からは回復しつつあり、無限カタログの新機能スタートにも期待感
1. 2026年12月期第1四半期決算の概要
間接材購買のためのシステム提供と物品販売を行うMRO(Maintenance, Repair&Operations)事業の売上が約78%を占め、残りはFM事業やその他が占める。MRO事業の顧客は、製造業・建設業やサービス・小売業が多く、トヨタ自動車、SONY、関西電力、三菱地所など大企業直販が86%を上回ってきている。残りは中小事業所向け再販(アスクル経由の売上高)で構成される。プライム市場に上場している企業を中心とした大企業群が同社の顧客で、大企業直販の顧客解約率はほぼ0%のストック型ビジネスである。第1四半期は、売上高が前年同期比6.2%増の15,313百万円、営業利益が同6.9%増の410百万円となった。事前想定通りの推移となる。MRO事業は、売上高が前年同期比4.8%増の12,068百万円、セグメント利益が同18.8%増の366百万円と大幅増益となっている。アスクルにおけるランサムウェアの影響がやや残るものの概ね回復、一方で固定費の最適化に加え、調達先、調達条件の見直しが寄与し、営業利益率が改善した。商業施設向けにサービスの提供を行うFM(Facility Management)事業は、売上高が前年同期比12.0%増の3,243百万円、セグメント利益が同49.1%減の34百万円となった。インバウンド需要により顧客の業績は好調であり、大型工事案件も好調であるが、製品・サービスミックスの悪化により粗利率が低下しており、売上増加によって取扱件数の増加を想定した人件費を含む固定費増を吸収できず、減益となっている。
2. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の連結業績は、売上高65,300百万円(前期比10.8%増)、営業利益1,650百万円(同12.4%増)を見込んでいる。MRO事業では、既存顧客の継続的な購入増に加えて、2025年12月期第4四半期に発生したアスクルの出荷停止の影響が解消することや、FM事業では、大型工事案件が堅調であることから、全体では2ケタの増収を見込んでいる。利益面においては、利益率はほぼ前期並みを予想しているが、アスクルの出荷停止の影響が解消することや「無限カタログ」がさらに浸透することなどを考慮すれば、利益率横ばいは控え目な予想と言えるだろう。言い換えれば、売上高が目標を達成できれば、利益は上方修正される可能性が高く、また大型案件のずれ込みなどで売上高が未達であっても、現在の利益予想が達成される可能性はあると弊社は見ている。
なお、同社では2024年末に新規導入した「無限カタログ(電子カタログ)」の推奨品への自動置き換え機能による粗利益の増加が想定以上となっていたことが記憶に新しい。無限カタログは、同一商品に複数の価格提示があり、コスト競争力が強いサプライヤーへ売上集中(サプライヤーの意欲向上)、サプライヤーの売上拡大による同社の粗利率改善が可能となる。同社では2026年4月28日、無限カタログに新機能「アップロード検索」をサービスインした。検索対象となる商品情報を入力したExcelファイルを、ドラッグ&ドロップによりアップロードするだけで検索することを可能にする。これにより、従来は一品ずつ行ってきた大量の品目の検索・発注処理を一括して行うことで、作業を大幅に効率化することが可能になる。もちろん、従来からの機能である、対象商品の最安値品への自動置き換え機能はそのまま適用され、コスト削減にも貢献する。利用率向上への寄与が期待される。
2029年12月期の目標は売上高1,000億円、営業利益率3.5%、ROE20%以上
3. 中期経営計画、類似企業との比較、株主還元
大企業向けMRO市場の市場規模は約1兆円だが、既存の電子カタログで取引される領域(同社の既存事業領域)の市場規模は約4,000億円程度となる。対象とするのは売上高1,000億円以上の大企業グループに絞っており、潜在的な企業数は約1,000企業グループあると推定されている。MRO事業において現時点で同社の大口顧客は72企業グループのみであり、ポテンシャルは大きい。同社は引き続き既存領域での成長を軸として市場シェアの拡大を図るようだ。強固な顧客基盤を有して今後も大企業グループへの売上拡大とともに認知度拡大が進むことで、持続的な成長が期待されそうだ。実際、大企業グループへの売上高は、年を追うごとに大きくなる傾向があり、機能の向上がその傾向に拍車をかけることになる。アスクルの影響は決して小さくなく、それをカバーする時間が必要であるものの、アルファパーチェスの成長シナリオを大きく変更するものでなく、混乱が長引いたとしても、目標到達を1~2年先延ばしするイメージであろう。
また、厳密な意味での類似企業はないが、MonotaROの数値は確認しておいても良いだろう。MonotaROはROE28%超、今期予想の営業増益率で前期比14.9%増が予想されており、予想PERで25倍の評価だ。アルファパーチェスのROEは16%強であるが、利益成長は12.4%増、予想PER13倍となる。アズワン、ミスミグループ本社などの平均PER19倍と比較したアルファパーチェスの数値は、足もとの株価下落で割安感が増しており、資本効率の改善はMonotaRO側への評価、つまりさらなるアップサイドポテンシャルと考えておきたい。アルファパーチェスの2029年12月期の目標は、売上高1,000億円、営業利益率3.5%、ROE20%以上である。そこから試算されるEPSは250円程度。アスクルの影響から中計の時期を定めず数値を達成した時のPERを15倍と保守的に置いたとしても、株価は3,750円と試算される(現状1,525円)。
株主還元では、連続増配を続けており、今期は前期の記念配当5円を含む1株あたり配当37円の前期と同等水準、配当利回りで2.43%が予想されている。
(執筆:フィスコアナリスト 山本泰三)