■事業概要
ZenmuTechの事業は3つの分野に大別できる。1つ目は、情報漏洩対策ソリューションや秘密分散ソフトウェア開発キットを提供する「秘密分散ビジネス」、2つ目は、秘密分散技術を応用した秘密計算ソリューションを提供する「秘密計算ビジネス」、3つ目は、「その他」で、創業時からのシンクライアント関連ビジネスなどである。販売形態は直販も行っているが、主に販売代理店や大手SIer※を経由している。2025年12月期の売上高構成比は「秘密分散ビジネス」が全体の82.2%、「秘密計算ビジネス」が15.6%を占める。
※ SIer:顧客の要望に応じて、ソフトウェアの設計や運用、コンサルティングに至るまで様々な仕事を請け負う企業で、システムインテグレーターの略称。
事業モデルは、サブスクリプション契約や保守契約といったストック型売上と、ライセンス販売や開発受託のフロー型売上の両輪で構成されており、事業の安定性と成長性を両立している。ストック型売上は着実に増加しており、2025年12月期第4四半期の売上は107百万円(前年同期比33.8%増)となった。2024年12月期第2四半期や2025年12月期第4四半期などのように大口フロー契約があった際には、ストック型売上比率が一時的に低下するものの、おおむね50~80%の範囲で推移しており、安定した収益基盤を形成している。
市場環境としては、リモートワークの定着やデータ利活用の拡大を背景に、金融・コンサルティング・製造業など幅広い業種で同社のソリューション採用が進展している。今後は、秘密計算ビジネスの本格展開やZVDの拡販により、ストック型収益比率の一層の向上を目指す。
情報漏洩対策ソリューションのライセンス数は11万人突破後も増加が続く
1. 秘密分散ビジネス
(1) ZVD
ZVDは秘密分散ビジネスの主力となる情報漏洩対策ソリューションで、ZPCやZEEといった商品の総称である。秘密分散技術によるデータ分散片の外部保管先において、高価なストレージやサーバーといった追加投資は不要である。優れた操作性やセキュリティの高さが特徴となっており、セキュリティについては仮にデバイスが紛失・盗難に遭ったとしても、ユーザー自身や管理者が分散片へのアクセスを停止すればデータを復元できないため、PCの社外持ち出しやリモートワークの際に情報漏洩を防ぐ有効な対策となる。
VDIと比較してもセキュリティ堅牢性にそん色はない上に、サーバーへの負荷が小さいことから、導入・運用コストの低減が可能である。オフライン環境でも利用できるため、通信への依存度が低く、快適に利用できる安定性が特徴である。
ZVDの契約形態は、サブスクリプション(ストック型)と、買い切りライセンス(フロー型)がある。買い切りライセンスの場合も、販売時にフロー型売上を計上した後は、保守契約としてストック型売上に移行するビジネスモデルである。サブスクリプション契約と保守契約を合わせたライセンス数は、2024年12月期第3四半期に大手損害保険会社への追加導入の際に大幅に増加し、2025年12月期末時点では115,417件(前期末比16.2%増)となった。解約率は同社が適正範囲としている1%前後で推移している。これまでの解約の多くは、テスト導入案件が本採用に至らなかったケースであり、業績への影響は限定的である。
2025年には、新製品のZLEを投入し、VDIを利用しつつ低価格で導入できる「共存型」の選択肢を提供した。また、大規模災害時の事業継続性向上を目的とした「ディザスタリカバリ オプション」も追加するなど、企業のニーズに応じて商品ラインナップを拡充したこともライセンス数増加に寄与した。
(2) ZENMU Engine
ZENMU Engineは、ZENMU-AONTを顧客の製品やアプリケーションに組み込むための秘密分散ソフトウェア開発キットである。OEM提供を前提とし、顧客企業はこの商品を使って自社ソリューションのセキュリティ機能を強化できる。利用例として、暗号資産などを扱うデジタルウォレットの秘密鍵保護や防犯・監視カメラ映像の分散保管などに用いられており、今後はさらに用途が広がることが期待される。
(株)日立システムズエンジニアリングサービスは、ZENMU-AONTを組み込んだ防犯・監視カメラを販売している。個人の顔が識別できる映像データは個人情報に該当し、漏洩・盗聴・搾取のリスクが高いが、同社の秘密分散技術によって映像データを分散保管することで、セキュリティ強化を実現した。
収益モデルは、顧客の利用目的に応じたライセンス収入(フロー型)や、ライセンス販売後の保守契約収入(ストック型)が中心である。さらに、OEM製品開発の際の技術支援コンサルティング料や、OEM商品の収益に応じたロイヤルティ収入も見込んでいる。
実証実験やパートナー開拓が進捗
2. 秘密計算ビジネス
秘密計算ソリューションのQueryAheadは、データを秘匿化したまま計算・通信・保存を可能にする仕組みである。同社では、秘密計算を適用できる分野やアプリケーションを検証している段階にあるが、主なターゲットは金融、製造・物流などのサプライチェーン、材料開発、ヘルスケア分野などが挙げられ、特に、AI・機械学習分野での活用余地が大きい。
同社は現在、QueryAheadを利用した実証実験やパートナー開拓を進めており、今後はライセンスビジネス及びSaaSを含むクラウドサービスモデルを通じた収益化を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)