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YUASA、新中計「Reborn 2031」で経常利益200億円以上へ 累進配当と株主還元率35%以上で株主還元を強化

沿革

田村博之氏(以下、田村):株式会社YUASAの田村です。本日は、当社の2026年3月期の決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。私からは、2026年3月期の決算概要および3月末で満了した「ユアサビジョン360」の総括をお話ししたいと思います。

また、4月1日に新たに発表した中期経営計画については、6月25日の株主総会を経て、代表取締役社長CEOに就任予定の村山英明よりご説明します。どうぞよろしくお願いします。

それでは、さっそく進めます。スライドは当社の沿革を示したもので、毎回ご提示しています。一番上に1666年創業と記載がありますが、当社は今年の3月で創業360周年を迎えた、歴史の長い企業です。

この360周年を記念して動画を制作したので、後ほどご覧いただきたいと思います。

社名変更について

また、同時に社名を変更しました。これまではカタカナで「ユアサ」、漢字で「商事」株式会社という社名でしたが、2026年4月1日付でアルファベット表記の「株式会社YUASA」へ変更しました。

変更の理由はスライドに記載のとおりです。また、ご覧のとおり、Yの字は単なるアルファベットではなく、1本の線が加えられています。これは、世の中の情勢に応じて柔軟かつ臨機応変に会社を運営していきたいという思いを込めたものです。

続いて、先ほどご案内した動画をご覧ください。

(動画流れる)

私どもは、これまで360年にわたり事業を継承してきました。今後も時代の変化に順応、あるいは先取りをして、この事業を長く継承できるよう、みなさまのご理解とご支援を賜りながら最大限の努力をしていきます。どうぞよろしくお願いします。

当社のビジネスモデル

スライドは、当社のビジネスモデルを簡単に示しています。左から仕入れ先、そして販売先と記されていますが、このようなビジネスモデルで現在事業を営んでいます。

通期実績

2026年3月期の決算についてご説明します。売上高は5,450億円、営業利益は167億円、経常利益は172億円、純利益は120億円という結果となりました。計画の開示数字も示していますが、純利益以外は未達に終わり、申し訳なく思っています。

ただし、純利益以外は5期連続の増収増益を達成し、4期連続の最高益という結果となっています。当期純利益に関しては、昨年特別損失の影響で減益となりました。今期に関しては、過去最高益となる120億円を確保した状況です。

セグメント別実績

セグメント別の実績です。ここ数年の傾向に変化はなく、「ものづくり」の分野が苦戦し、「すまいづくり・環境づくり」が業績を支え、「まちづくり」が水平展開しています。

連結貸借対照表

B/Sです。自己資本比率は37.8パーセントから39.5パーセントへ、前期末から1.7パーセントの改善を示しています。その他はご高覧いただければと思います。

連結キャッシュ・フロー計算書

キャッシュフローです。最終的な現金および現金同等物の期末残高は前期末から47億円増加しました。また、借入金については35億円の返済を実行しています。

4月1日に長期ビジョンと中期経営計画を発表しました。これについては、村山英明からご説明します。

自己紹介

村山英明氏(以下、村山):ただいま社長の田村より紹介にあずかりました、株式会社YUASAの村山です。私からビジョンと中期経営計画についてご説明します。

まず、私の自己紹介からさせてください。私は1994年に当社の関東ビル建材エンジニアリング業務に配属されました。その後、関係会社への出向、当社の総合企画部、関係会社2社の代表を経験し、経営管理部門副統括を経て、この4月に上席執行役員社長補佐を拝命しました。

私は、建設分野、住環境分野、管理部門、そして関係会社と幅広い経験を積んできました。この経験を成長戦略の推進や企業価値の向上に結び付けていくことが、私の責務と考えています。

短い時間ではありますが、みなさまにご理解いただけるよう、精一杯ご説明しますので、あらためましてよろしくお願いします。

ユアサビジョン360:定量実績

まず、定量計画です。この9年間の計画では、さまざまな課題がありましたが、最終的には右肩上がりで推移させることができました。売上高、経常利益、経常利益率、株主還元率それぞれについて、向上させることができました。

ユアサビジョン360:成長戦略

成長戦略です。9つの成長戦略を推進してきましたが、そのうち、スライド右端に「大きく伸長した戦略」として記載の5つは達成することができました。ただし、成長の余地がまだ残されている分野もあり、海外・デジタル・シェアリング・農業については次の課題と捉えています。

Growing Together 2026:財務KPI

「Growing Together 2026」の財務KPIです。スライド右側に記載のとおり、さまざまな取り組みを行い、市場展開、機能強化、商品展開を推進してきました。

Growing Together 2026:非財務KPI

「Growing Together 2026」の非財務KPIです。スライドに記載のとおり、達成できているものもあれば、依然として途上にあるものもあります。これを踏まえ、次の中期経営計画でも推進していきます。

次期計画への継続課題と方向性

次期計画への継続課題と方向性です。スライド下部にも記載していますが、今後の方向性として、不確実で変化の激しい環境をチャンスと捉え、新たな価値を創出し、さまざまな課題を解決するための基盤を再構築していきます。

また、属人化からの脱却を図り、多様な人材が挑戦できる制度や意識の改革を進めることで、社員の成長と経験を育んでいきます。

グループビジョンの策定

長期ビジョンおよび中期経営計画の策定に先立ち、創業400年を見据えて、YUASAグループの新たなビジョンを策定しました。

実現したい社会として掲げた「つなぐ力で社会の基盤を支え、豊かな、変化に強い未来を実現する」は、一見シンプルな言葉ですが、当社の理念、機能、強みがすべて凝縮されています。

「つなぐ力」は、先ほどもご説明しましたが、「ユアサビジョン360」で培ってきた機能であり、当社の最大の強みです。この「つなぐ力」を、新たな中期経営計画でもさらに拡大し、成長の基軸としていきます。

「社会の基盤」についてです。当社の取引先の多くは地域に根ざし、地域に貢献している企業です。これからご説明する成長戦略も、そのほぼすべてが社会課題の解決につながっています。本業を通じて社会の基盤を支えていく存在になりたいという思いを込めています。

「変化に強い未来を実現する」についてです。当社は360年にわたり、厳しく激しい時代を変化を強みにすることで幾度となく乗り越えてきました。社会を成熟させることは、その一員である当社の使命であると強く考えています。

この実現したい社会を支えるあるべき姿として「社員の想像力と経験を育み、人とソリューションで社会課題を解決する」と設定しました。

企業にとって最大の財産は人に他なりません。社員の心・技・体を充実させ、サービス、機能、製品をソリューションとして組み合わせることで、社会課題を解決していきます。

これから説明するさまざまな取り組みは、すべてこのグループビジョンの達成に向けたものです。私が先頭に立ち、その達成に向けて邁進していきます。

新長期ビジョンと新中期経営計画

新長期ビジョン「YUASA vision 370」と新中期経営計画「Reborn 2031」についてご説明します。スライドは関連図です。

「YUASA vision 370」は創業370周年を迎える2036年3月期までの10年間の計画です。定量目標として、経常利益額300億円以上、ROIC10パーセント以上、海外売上高1,000億円以上を目指します。

そして、この「YUASA vision 370」の10年間を2つのタームに分けています。それぞれ前半の5年間と後半の5年間で構成され、この2つのタームに意味と意義を持たせています。

前半の5年間は「Reborn 2031」と命名しました。当社は今年、創業360周年を迎えました。360度が一周を表すことにちなみ、当社は原点に立ち返り、次の時代や成長に向けて生まれ変わる節目の年とするべきではないかとの思いから「Reborn 2031」と命名しました。

前半の5年間には意味を持たせており、中長期に向けた「攻めるための基盤強化」を実施します。あわせて、定量計画として経常利益額200億円以上、ROIC8パーセント以上、海外売上高400億円以上を目指します。

後半の5年間では、この「Reborn 2031」で実施した「攻めるための基盤強化」と成長投資の成果をもとに、傾斜角の高い成長へ収益拡大を実現していきます。

この10年間を2つのタームに分けた意味を踏まえ「YUASA vision 370」を力強く推進していきます。

新長期ビジョンと新中期経営計画について

スライド左下部の「Reborn 2031」に関してご説明します。「Reborn 2031」は「攻めるための基盤強化」と先ほどご説明しましたが、具体的な中身として、「事業基盤の強化」「人材基盤の強化」「経営基盤の強化」を行います。順にご説明します。

事業基盤強化

「事業基盤の強化」からご説明します。まずは目指すべきビジネスモデルです。当社の最大の強みとして、取引先ネットワークがあります。

この取引先ネットワークを基盤に、機能を補完・強化し価値を創出することで、社会課題や市場課題といった終わりなき課題解決のループを循環させ、取引先さまとともに長期的な成長を実現していきます。

第1ステージとして、市場接点の強化・拡大と多様化を目指します。当社がまず最初に重要視するのは、現場が課題とニーズの宝庫であることです。それを捉え、深掘りするために、スライドの図の右横に黒字で記載した取り組みを徹底していきます。

全国の取引先ネットワークから当社の営業担当が社会課題や市場課題を収集します。そして、展示会、SNS、Webサイトを活用した価値提供を行い、それを支える社員の能力向上のための研修やAI分析の活用を通じ、精度向上を図るさまざまな施策を計画し、提供していきます。

第2ステージとして、そこで得たニーズや課題を価値に変換し、解決する段階へ進みます。具体的には、当社グループのエンジニアリング機能、グループ会社機能、専門人材の知見や経験、取引先ネットワークなどの総合力を発揮し、さまざまなモノや技術を「つなぐ」ことで、新たな価値ソリューションを創出し、課題を解決していきます。

課題解決の方法は、社員個々の能力に頼るのではなく、仕組み化・組織化・デジタル化を進めることで、再現性を高めていきます。

これまでのビジネスモデルは第2ステージで完結していましたが、新たに第3ステージとして、社会の要請にも応える、サーキュラーエコノミー推進という考え方を取り入れます。具体的には、メンテナンス機能、シェアリング、レンタル機能、中古機器・設備の仕入れ・販売を強化し、循環型のビジネスモデルを構築していきます。

この各ステージに磨きをかけるとともに、終わりなき課題解決のループを大きく速く回すことで、成長性、収益性、効率性を実現していきます。

事業基盤強化:ビジネスフィールドと成長戦略

ビジネスフィールドと成長戦略です。従来の内容はスライド上部に記載のとおりですが、「ユアサビジョン360」の経験をもとに、さらにブラッシュアップを図るため、成長戦略とビジネスフィールドの再定義・再整理を行います。

まず第1に「環境づくり」はすべてのビジネスフィールドに包含されるという考え方から、独立したフィールドとしては除外します。

介護・医療、農業、食品、新流通など、生活に直結した市場を「くらしづくり」として新たに設定しました。また、これまで9つの成長戦略をアジャイルに追加してきた結果、市場課題軸、市場軸、ビジネスモデル軸が混在し力が分散していたため、新たに4つに集約しました。

それが、デジタル・ロボット・現場効率化、環境・エネルギー、サーキュラーエコノミー、レジリエンス・セキュリティの4つの成長戦略です。

今後は国内外で4つのビジネスフィールドと4つの成長戦略を展開していきます。

ここで2つのポイントがあります。まず1つ目は、ビジネスフィールドと成長戦略が1対1ではないという点です。各ビジネスフィールドに対して、すべての成長戦略を展開していきます。これが当社の総合力の発揮です。

もう1点は、成長戦略を推進ドライバーとして新しい市場開拓にも挑戦していきます。これが当社の推進力の発揮です。

この総合力・推進力の発揮と成長戦略を軸に、既存市場の深耕・拡大と新しい市場開拓を両輪とすることで、社会課題の解決と収益性の向上を両立していきたいと考えています。

事業基盤強化:海外戦略

海外戦略です。当社の海外事業は、他の事業と比較して成長余地が最も大きく、BCPの観点からも非常に重要です。そのため「Reborn 2031」では目標をあらためて設定し、強化を図っていきます。

当社はこれまで、海外戦略において工業系事業の推進を中心に進めてきた結果、事業領域が狭まった部分がありました。今回からは、改めて日本企業として日本で築き上げた事業について、建設、工業、住環境、フードテックといったすべての分野をいわゆる総合力として海外でも展開していきます。

その総合力を発揮した展開の例として、タイで取り組んでいる事業についてのトピックスをスライドに2つ記載しています。また、新たな切り口として、当社独自の中古オークションプラットフォーム「YUMAC」を活用し、現在の建機や農機にとどまらず、全事業領域の商材拡大を進めていきます。

そして、拠点政策については、タイを中心としたASEAN、インド、北米エリアに注力するとともに、特に成長著しいインドは「Reborn 2031」の間に現在の4拠点から8拠点まで拡大します。

この基本方針と戦略を支える事業基盤強化および人材基盤強化については、スライド左側に記載されていますので、後ほどご覧ください。また、目標数値として、2031年3月期までに海外売上高400億円、その5年後である2036年3月期までに海外売上高1,000億円を目指していきます。

また、スライド下部に米印で小さく記載していますが、これまでの海外戦略では海外取扱高、つまり売上高と仕入高の合計をKPI指標としていました。

しかし、今回からは海外マーケットとして捉え、販売に力を入れる方針です。これに伴いKPI指標を海外売上高に変更します。

事業基盤強化:つなぐイノベーション

「つなぐイノベーション」の全体像です。単独の企業・商品では解決できない課題やニーズに対して、スライドに赤丸で記載のとおり、人、データ、モノ、資金、技術、情報といった要素を多面的に組み合わせることで、新たな価値を創造する当社独自の開発モデルです。当社オリジナルの開発については「つなぐソリューション」として展開しています。

事業基盤強化:カーボンニュートラル

カーボンニュートラルについてです。当社の事業全体におけるCO2排出量の98パーセント以上がバリューチェーン(Scope3)から排出されていることを踏まえ、重要性の観点に基づき、2点見直しを行いました。

1点目にカーボンニュートラルの目標年度を2030年から日本政府と同じ2050年に変更します。2点目に、取り組み方針として、事業を通じたCO2排出量の削減にこれまで以上に積極的に取り組んでいきます。

当社グループが展開する具体的な環境貢献型製品・サービスについては、スライド左下に記載のとおりです。この本業を通じて、当社としても成長を目指し、2031年3月期には年間約100万トンのCO2削減に貢献する所存です。

人財基盤強化

人財基盤強化です。当社が考えるあるべき姿は、厳しくも働きがいのある環境の中で、会社の成長と社員の成長がリンクしている状態です。

これを支えるために、継続して風土改革を行っていきます。この風土改革を支える要素として、「エンゲージメント向上」「『働きがい』『働きやすさ』の実現」「自己効力感」「組織効力感」の4つがあります。

また、これら4つの要素を実現するための施策方針として、スライド下段に記載のある戦略的な人財配置と獲得、評価制度の刷新、自律学習の支援、マネジメント改革、柔軟な働き方の支援、モニタリング体制の構築など、いわゆる人事制度改革を推進していきます。

このスパイラルを継続して回すことで、自律的な挑戦が連鎖する風土改革を実現していきます。

経営基盤強化

経営基盤強化です。こちらは4つの側面から進めていきます。まず第1に、ガバナンスの強化です。変化の激しい経営環境において、リスクベースのマネジメント強化に向けたリスクモニタリング体制の整備を進めるとともに、内部監査のスリーラインモデルをあらためて強化します。

第2に、事業戦略を実現するために、各地域や国内外のグループ会社における拠点整備を継続して行い、ハード面からの環境づくりも支援していきます。

第3に経営資源の最適配分において、収益拡大とともに持続的成長のサイクルを確立していきます。限られた経営資源を成長分野に集中的に投下していく方針です。

第4に、次世代の経営基盤の構築(AI・デジタル技術の活用)があります。「守り」のITとしてシステムの安定稼働と経常比率の低下を目指し、「攻め」のDXとして売上高と総利益率の向上を実現します。この2つを両輪として、収益力を高めていきます。

経営基盤強化:投資戦略

投資戦略です。当社には2つのメッセージがあります。「攻めの姿勢」と「堅実性」です。まず「攻めの姿勢」として、営業キャッシュフローへの成長投資400億円の枠にとらわれず、成長機会があれば規律を持って積極的に投資を実行していきます。

あわせて「堅実性」として、安定的に創出される営業キャッシュフローを基盤に、株主還元と基本的な成長投資を行っていきたいと考えています。

また、この成長投資の中で人財基盤強化として30億円を新たに設定しました。先ほどもお話ししたように、人財基盤強化を資金面からも支援していきたいと考えています。

株主のみなさまに対する還元については、成長投資とのバランスを取りながら、適切なかたちで還元を進めていきます。この点については、還元方針のところで詳しくご説明します。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応です。当社は、投資を積極的に行うフェーズに入った今だからこそ、全社の投下資本の効率性を常に意識し、把握する観点からKPIをROEからROICに変更しました。

そして、そのROICを活用して事業部門に落とし込むことで、経営資源の最適配分、投資判断の明確化、現場サイドの行動変容を促し、企業価値の最大化を目指します。

また、戦略方針として、ROICの向上と株主資本コストを中心とした低減を通じ、エクイティスプレッドがプラスの状態を維持・向上するために、全体的な取り組みを進めていきます。

株主還元方針

株主還元方針です。当社は、中期経営計画「Reborn 2031」の5年間について、累進配当を原則とします。加えて、資本効率と財務健全性のバランスを考慮し、株主還元率35パーセント以上、ならびにDOE 3.5パーセント以上を還元の基準とし、安定的かつ適切な利益還元を行うことで、株主のみなさまに当社の還元方針を明確に示します。

また、この方針を基に財務健全性を保ちながら、成長戦略および株主還元を継続的に強化し、企業価値の持続的な成長を推進していきます。

2027年3月期 定量計画

2027年3月期の定量計画です。スライドに記載のとおり、売上高5,460億円、営業利益170億円、経常利益175億円、当期純利益115億円と計画しました。当社を取り巻く環境としては、中東情勢や日中関係、そして国内の人手不足などさまざまな不安要素が存在し、不透明感が漂っています。

しかしそのような状況下でも、これまでご説明してきた「Reborn 2031」の諸施策を全方位で展開することで最低限前年と同様の水準の業績を確保する必要があると考え、この計画を策定しました。

Reborn 2031 定量計画

「Reborn 2031」の非財務KPIです。後ほどご覧いただければと思います。

質疑応答:中東情勢の影響について

司会者:「中東情勢の影響をどのように認識していますか?」というご質問です。

田村:先ほど村山より2027年3月期の業績見通しをご説明しました。その数字を作る段階で非常に大きなファクターであり不安要素でもあったのが、中東情勢の影響です。いわゆるプラスの面とマイナスの面の両方があると考えています。

マイナスの面が大きいと考えていますが、特にサプライチェーンの問題を非常に懸念しています。当社の仕入先のみなさまが、ナフサやシンナーなどの不足により、当社への供給が不十分な状況が発生する可能性があります。

現状では、市場在庫やメーカーが独自に保有する在庫を活用し、大きな問題には至っていませんが、おそらく後半期、当社で言えば10月以降の売上にかなり大きな影響が出てくるのではないかと危惧しています。

もう1つは販売についてです。私は、日本国内よりもアジア各国での販売が、やがて日本に悪影響を及ぼす可能性があると考えています。日本は、みなさまもご存じのとおり、前もって8ヶ月分のオイルを確保しています。そのため、ある程度の時間的な余裕がありますが、アジア諸国ではほとんど貯蔵がないため、直撃する可能性があります。

現在、日本の製造業の多くがアジアにサプライチェーンを構えている状況です。そのため、アジアで業績が悪化すると、日本国内の販売先が投資意欲を減退させるような不安が大いにあります。

我々のサプライチェーン内でも協力できる部分はあると思われます。メーカーと細かく打ち合わせを行い、お客さまのお困りごとを抽出しながら、課題解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。

一方で、エネルギーコストが上昇する現状においては、省エネ・省力化に向けた投資がこれまで以上に増えると見込んでいます。

当社は、この局面を迎える以前から省エネ・省力化に取り組む事業を展開しており、お客さまや仕入先のみなさまにご提案することで課題解決を支援しつつ、ビジネスにつなげていきたいと考えています。

最後に、期待を1つ申し上げます。このような時だからこそ、新しい技術が生まれるのではないかと期待しています。

日本の製造業のみなさまには、底力や高い技術力をお持ちの方々が多数いらっしゃいます。従来のナフサやシンナーに頼った製造工程ではなく、代替品とその新しい製造プロセスを見つけていただけることを期待しています。我々もその取り組みに貢献していけると考えています。

質疑応答:工作機械市場の国内外の受注環境について

司会者:「工業機械部門の受注動向および見通しについて教えてください」というご質問です。

田村:このご回答は、国内と国外を分けてお話ししたほうが明確かと思います。まずは国外、いわゆる海外についてですが、一般報道も含め、みなさまもご存じのとおり非常に回復しています。

国ごとに環境は異なりますが、中国では過去最高の受注高を有する工作機械メーカーも出てきています。したがって、海外全体では大きく改善してきています。

その主力はAIや半導体、さらにそれらに関連するデータセンター向け設備が中心となっています。中国では、ヒューマノイドロボット用部品向けの機械加工設備も非常に活況であると認識しています。

当社においても、海外の受注額は前年度比171パーセント増となり、受注残高も159パーセントという状況です。このため、海外は順調に回復していると認識しています。

ただし、先ほど申し上げた中東の問題については、今後どのような影響が出てくるのか、懸念事項として依然として存在しています。

一方で、当社の主力市場である国内においては、年初から受注環境が順調に改善してきているという印象を持っています。実際に数字も上向いており、昨年の不振を受けてトータルの受注残高は102パーセントと微増にとどまっていますが、停滞状態だったデータセンター、半導体、AI関連産業、半導体装置産業などが動き出してきています。

政府の補助金政策も始まっており、これが加わって市場が動き出した矢先に、中東の問題が発生しました。

期をまたいだ4月の状況では、受注面に大きなマイナスの影響は出ていませんが、今後市場環境は改善するというよりも、むしろ悪化するのではないかという懸念を持っています。

工作機械に限ってみると、そのような状況ではありますが、当社では工作機械に加えその周辺機器を含めた、ものづくりに対するソリューション提案を展開することで、数字と業績の確保に努めたいと考えています。

質疑応答:総合力を活かした海外展開戦略とタイでの成功例について

司会者:「海外戦略にあらためて注力するとのことでしたが、どのような事業を成長ドライバーに据えるのでしょうか?」というご質問です。

田村:先ほど村山から総合力についてお話ししました。当社は長年、工業系、特に工作機械を中心に、アジア、北米、さらに東南アジアと東アジアの両方に展開してきました。

昨年から一昨年にかけて当社は従来の展開ではなく、事業領域全体、すなわち総合力を活かして海外市場を開拓する方針に転換しました。

その一環として、タイで当社最大のプロモーションイベントである展示会を開催したり、住宅設備や建材などを総合的に展示するため、1軒の住宅を借りてリフォームを行い、総合展示場を設ける取り組みを行っています。

ゴールデンウィークにはタイで開催された建材の総合展へ、当社も大規模なブースを出展しました。Architect’26という展示会ですが、2年前からの展開が功を奏し、物置などに非常に大きな関心をいただき、数字につながっています。

それ以外の商品も、日本の建材や住宅設備でこれまで当社が難しいのではないかと考えていた商品について新たな引き合いをいただいています。このタイでの成功をさらに確かなものにしながら、近隣のベトナムやインドへ水平展開していきたいと考えています。

もう一度申し上げます。工業系の1本足打法で展開してきた当社の海外戦略を、総合力を活かし、面で展開していきたいと考えています。

質疑応答:人財投資30億円の設定理由と今後の戦略について

司会者:「投資戦略に人財投資を追加した理由を教えてください」というご質問です。

村山:今回、人財投資として30億円を新たに設定しました。これは、先ほど説明した「Reborn 2031」を完遂するための人員体制やスキルがまだ不十分であり、人財基盤を中長期的に強化する必要があると判断したためです。

管理基盤の面でAIやデジタルの活用といったテーマについては、システムの導入だけでなく、それを使いこなす人財が不可欠です。システムの導入だけでは効果が限定的になるため、やはり、人への投資や育成が必要です。

事業基盤については、顧客のニーズを正確に把握して提案につなげる力、さらに誰が担当しても一定の品質で価値を提供できる再現性の高い営業体制や開発組織の構築が、今後の収益を大きく左右すると考えています。

海外戦略については、先ほど田村から話がありましたが、現地のマネジメントやエンジニアリング、総合力、そしてそれを支える専門人材が不足している現状が当社にはあります。この点についても、1つの大きな方向性として、量と質の両面で構築を進めていきたいと考えています。

当社の成長戦略は、最終的には人の質が左右するといっても過言ではないと私は考えています。リスキリングや戦略人財の採用、次世代経営人財の育成などの人事制度について、費用ではなく成長のための投資であるという明確な位置付けを行いました。

人財投資枠を設けることにより、当社がどのように資源を振り分け、企業価値の向上につなげているかを、投資家のみなさまに対してより透明性高く示すことを目指しました。

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