ADP雇用統計の上振れをきっかけに長期金利が上昇し、テクノロジーが下落した。5日の雇用統計、10日のCPI、そして日米の金融政策決定会合とメジャーSQが重なる今週末以降、マーケットは重要イベントが目白押しとなる。インフレ再加速の兆しが利下げ期待を吹き飛ばすなか、日米ともにタカ的な空気が漂い始めている。維持率と誤発注には十分な注意が必要だ。
プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。ブログ:ニューノーマルの理(ことわり)
6月第2週からの「荒波」に要警戒
ADP雇用が市場予想をやや上回り、昨年1月以来で最高値とのこと。これだけで長期金利が上昇し、テクノロジーは下落。
5日(金)には雇用情勢もあるでしょう?結果が良ければ同じ動きになるので、ポジション調整をしている方も多いと思う。
しかし、結局のところ新しいFRB議長の下でのFOMCでは、政策金利を維持したとしても想定外にタカ的なニュアンスが出てくる可能性はある(高金利継続)ので、個人的には雇用統計が市場予想を下回ったとしても、タカ的な空気は変わらない(と想定している)。
日銀も、ホルムズ全面通行再開なのであればナフサ・エネルギーの正常とともに利上げは正当化されるものの、そうでないにも関わらず、相変わらず利上げをしたがっている。ベッセントからの要請もあるのだろうが、為替の視点から観ても、米国は上記の関係でドル買い(つまり、米国が据え置き)という結果、日銀が利上げしても為替に効果はない。
本当にタイミングが悪く、引き続きの利上げを匂わせるかもしれないが、迷走している印象だ(つまり経緯はどうであれ、日米ともにタカ的)。
マーケットはタカ的な空気に包まれる?
で、米国。米4月CPIでは3.8%という結果、コアは2.8%(ともに前年同月比)だった。これだけで、長らくマスコミがひっぱってきた利下げ議論が吹き飛んだ。さらには実際にFRBが金利操作の指標としているのは「PCEデフレーター」。
拙著『FRBとマーケットの関係がよくわかる本』の3章で説明したが、議長がバーナンキの時、2012年1月のリリースで「金利操作の指標として、グリーンスパン時代のコアPCEデフレーターではなくPCEデフレーターが相応しい」と公表された。さらに、その時に応じてこれは変化(交代?)するとなっているので、現在のFRBの説明を確認すれば、PCEデフレーター(が政策指針)となっている。
つまり、これに従うのであれば、新議長はPCEデフレーターを重視した金利操作を実施しなくてはならない(違う新しい指標に色目をつけているようだが、勝手にそんなことをすれば信認はさらに低下するだろう)。
では、連銀のインフレ予想は現時点(6月3日)でどうなっているのかといえば、10日公表の米5月CPIは4.2%に届く勢いで、そのPCEデフレーターもほぼ4%水準。これで金利引き下げの議論は到底不可能、ということになる。
結局のところ、雇用が強かったり弱かったりしても、インフレは高インフレに突入しようとしているので、新議長がなんと言おうともマーケットはタカ的な空気に包まれ、時期も重なり、テクノロジーにとっては逆風になる可能性がある。
重要イベントが目白押し
時期というのは、日米ともに金融政策決定会合があるでしょう?さらに日米のメジャーSQが重なっているんですよね。米国の場合は19日(金)が休場になるので18日(木)がそれ(メジャーSQ)にあたる(以下、主要日程)。これが何を意味するか?
5日(金):米5月雇用統計
8日(月)〜12日(金):メジャーSQ週(日本)
10日(水):米5月CPI
16日(火):日銀政策(結果)
17日(水):FOMC(結果)
18日(木):米メジャーSQ
今回の米国メジャーSQは、1日前倒しで発表される。巨大なポジションがリセットされるため、特に翌日(日本時間19日の早朝=NY市場の取引終了間際)は前倒しということでボラが高くなり、トレンド転換の可能性が残される。それがそのまま日本市場の寄りに大きく波及し、荒い値動きになる可能性も。半導体、ハイテク?他のIPO・決算材料などがあるため、結果としてどうなるか。ハッキリ言ってそれはわからない。
雇用の上振れや日米のタカ的姿勢、それらによって株価が下落するわけではなく、時期も重なり大きなポジション調整自体が株価を押し下げる。
イベントというのは、マーケットに影響するときとそうでない場合があるが、今回は明日以降、影響する重要イベントが目白押しとなっているので、厄介なのは間違いない……ということ。 維持率にご注意。誤発注にもご注意を。
本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
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