■大豊建設の業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比2.5%減の139,818百万円、営業利益が同24.6%増の6,895百万円、経常利益が同40.9%増の7,332百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同23.5%増の4,557百万円となった。営業利益は、期初計画の5,200百万円及び2026年2月に修正した6,300百万円を上回って着地した。
同社単体では土木事業、建築事業ともに完成工事高が増加するも、子会社の完成工事高が前期を下回ったことが影響し、連結では小幅な減収となった。一方で、利益面では売上総利益率が前期の9.2%から10.8%へ改善した。建設資材費、人件費の上昇、建設従事者の不足など厳しい事業環境が続くなか、採算を意識した工事運営や建築事業の収益性改善が進み、販管費の増加を吸収して営業増益を確保した。
経常利益は営業利益の増加に加え、為替差益の計上などにより大幅増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益についても、法人税等が増加した一方で、固定資産売却益や投資有価証券売却益の計上により増益となった。
受注高は前期比10.9%減の134,560百万円となった。土木工事は公共投資が底堅く、特に同社単体ではケーソン工事や国内土木工事の受注が伸長した。一方で、建築工事は前期に大型案件を獲得していた反動や期ずれ案件の影響もあり前期比では減少した。一方で、施工体制や施工時期を考慮した受注を進めており、計画に沿って受注を獲得したと見られる。
2. 事業セグメント別動向
(1) 土木事業
土木事業は、受注高が前期比19.6%増の71,739百万円、売上高が同0.7%減の70,314百万円、売上総利益が同2.6%減の7,197百万円、営業利益が同13.3%減の3,161百万円であった。受注高は、防災・インフラ整備を中心とする公共投資が底堅く推移するなか、同社単体の国内土木工事が同31.2%増の42,142百万円と拡大した。工種別ではケーソン工事が同130.1%増の5,572百万円、維持修繕工事が同1.4%増の9,979百万円と増加した。ニューマチックケーソン工事を含む単独・スポンサー工事を中心とした新規受注に加え、JVサブ大型工事の設計変更も寄与した。売上高は横ばい圏であったものの、同社単体の完成工事高は同1.9%増の53,077百万円であり、シールド工事は同12.7%増の14,154百万円、ケーソン工事は同13.3%増の6,136百万円、維持修繕工事は同6.1%増の8,840百万円といずれも増加した。利益面では、売上総利益率が10.2%と同0.2ポイント低下し、営業利益も減少した。資材価格や人件費の高騰、建設従事者不足が続く環境下で収益性にはやや弱さが残ったものの、同社が強みとするシールド工法、ニューマチックケーソン工法などの案件進捗により、売上基盤は底堅く推移した。
(2) 建築事業
建築事業は、受注高が前期比31.5%減の61,779百万円、売上高が同4.6%減の64,800百万円、売上総利益が同49.7%増の6,619百万円、営業利益が同154.1%増の3,119百万円であった。受注高は、同社単体の建築工事が同33.7%減の41,618百万円と前期比21,193百万円減少した。民間・住宅は同28.0%減の28,736百万円、民間・非住宅は同60.1%減の10,091百万円となった。受注高は前期比で減少したが、期ずれ案件の影響も含まれる。同社は施工体制や施工時期を考慮したうえで受注を進めており、計画上はおおむね想定に沿った受注運営となった。売上高は減収となった一方で、同社単体の完成工事高は同6.2%増の49,860百万円と拡大した。利益面では、売上総利益率が10.2%と同3.7ポイント改善しており、過年度に受注した工事の受注時売上総利益を維持できたことに加え、施工管理体制の強化により手直し工事が少なかったことが利益率向上につながった。営業利益率も4.8%と同3.0ポイント上昇した。
同社は中期経営計画において、2024年問題への対応や施工体制の適正化を踏まえ、規模偏重ではなく利益重視の受注戦略を進めている。2026年3月期は建築事業で受注高が減少した一方で、利益率の改善が営業増益に寄与した。土木事業では売上総利益と営業利益が減少したものの、橋脚の耐震補強など維持修繕工事の収支好転や大型JVサブ工事の設計変更による収益改善も見られた。人件費上昇や人手不足は続くものの、選別受注、工事管理、DX・研究開発の取り組みを進めることで、安定した利益創出に向けた事業基盤の強化が期待される。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比6,060百万円増加の155,902百万円となった。うち流動資産は同3,652百万円増加の123,718百万円であり、主に立替金が3,840百万円減少した一方で、現金預金が3,141百万円、受取手形・完成工事未収入金等が2,156百万円、未収消費税等が2,565百万円増加した。固定資産は同2,408百万円増加の32,184百万円であり、主には投資有価証券が2,569百万円、長期貸付金が1,187百万円増加した。
負債合計は前期末比1,900百万円増加の78,677百万円となった。うち流動負債は同688百万円増加の64,549百万円であり、未払消費税等が2,222百万円、未成工事受入金が2,768百万円減少した一方で、短期借入金が1,500百万円、未払法人税等が1,825百万円、預り金が2,106百万円増加した。固定負債は同1,212百万円増加の14,128百万円であり、主に繰延税金負債が829百万円、退職給付に係る負債が357百万円増加した。
純資産合計は前期末比4,160百万円増加の77,225百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が1,947百万円増加したほか、株式相場の変動などによりその他有価証券評価差額金が2,170百万円増加した。
主な財務指標を見ると、自己資本比率は48.4%と前期末の47.7%から上昇し、堅調な財務基盤を維持している。流動比率は191.7%であり、短期的な支払能力にも十分な余裕がある。加えて、ネットキャッシュは16,460百万円であり、建設資材費や人件費の高止まり、工事進行に伴う運転資金需要が続くなか、同社の厚いキャッシュポジションは施工体制の強化、技術開発や人材投資などを進めるうえで重要な支えである。財務の安定性を保ちながら、収益性の改善と資本効率の向上をどのように両立するかが今後の注目点となろう。
4. キャッシュ・フロー
2026年3月期のキャッシュ・フローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは3,888百万円の収入となった。税金等調整前当期純利益7,650百万円の計上が資金増加要因となった一方で、売上債権の増加、未成工事受入金の減少、法人税等の支払などが資金減少要因となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入があった一方で、長期貸付けによる支出や無形固定資産の取得による支出などがあり、153百万円の収入となった。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加があったものの、配当金の支払などにより1,160百万円の支出となった。その結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末比3,126百万円増加の24,783百万円となった。営業活動による資金創出は前期から縮小したものの、期末の現金残高は増加しており、事業運営や株主還元を支える資金余力は引き続き確保されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)