■アートネイチャーの中期経営計画
4. 重点施策
前中期経営計画の課題を解消するため、顧客基盤の増強、生産基盤の強化、効率性の向上、新領域への挑戦、人的資本の強化という5つの重点課題に取り組む。まずは事業基盤の強化を図るため、顧客基盤の増強、生産基盤の強化と効率性の向上を推進し、そのうえで新領域に挑戦していく。
顧客基盤の増強では、顧客数の増加を図り、さらには顧客満足度を向上して定着率を引き上げる。その重点施策として、デジタル接点を含む多面的なアプローチと広告宣伝の最適化によって新規顧客獲得モデルを再設計するほか、ライフサイクルに沿った提案を強化することでリピート周期の短縮化を図る。また、事業間の相互送客や、生活コンシェルジュサービスの導入によって顧客のLTVを最大化する。生活コンシェルジュサービスでは、毛髪ケアのみならず美容やリラクゼーション、ファッションなど、豊かな生活を送るために必要なモノ(商品)やコト(サービス)をワンストップで提供する。
生産基盤の強化では、新工場を育成したうえで、生産拠点全体で高品質な商品をより早く、より安く、かつ機動的に供給できる体制を構築する。具体的には、次世代の主力拠点であるバングラデシュ工場の生産能力を引き上げるとともに、地政学リスクへの対応と安定確保のため原材料調達の強化、高品質・短納期・低原価の同時実現による顧客満足と収益性の両立、受発注の状況に応じた機動的な生産体制の確立を目指す。
効率性の向上では、店舗資産の有効活用とともに各種経費の効率化を推進する。具体的には、不採算店舗の見直しと投資効率の改善により店舗資産の適正化を図るほか、予約・運営の最適化と空きブースの利活用を通じてブースの稼働率を高める。また、各種経費率の削減や、生成AIの利活用による業務の自動化と意思決定の高度化により様々な面で効率性を改善する。
新領域への挑戦では、前中期経営計画でも本業周辺領域で様々な事業化に取り組んだが、M&A案件の獲得や新規事業の採用には至らなかったため、投資基準・対象領域・実行体制を整理し、改めて本業周辺領域の開拓を重点にM&A・アライアンス・新規事業を推進する。具体的には、国内外で「美と健康」という新領域にあるM&Aや新規事業を獲得し、中期的に売上高を100億円程度押し上げる意向である。海外事業の検討も開始しており、事前準備として、シンガポール、タイ、マレーシアに続くエリアで毛髪事業を展開するための準備を開始する。
人的資本の強化では、中長期ビジョンの実現を念頭に、採用強化とエンゲージメント向上に関わる人財投資を進める。具体的には、LTV最大化を担う現場力(技術力・接客力・商品提案力)の強化に向けて、スタイリストのリスキリングなどを通じて、信頼され、共感される人財を育成する。また、事業の多角化に合わせた管理人財、国内外の買収先へ派遣可能な人財、DX推進を支えるデジタル人財も確保して組織の厚みを増すとともに、主要ポストのサクセッションプランの実践へとつなげる。
男性向け事業で得た利益を女性向け事業や女性向け既製品事業に投資
5. 事業別戦略
事業別戦略の全体像としては、男性向け事業で得た利益を、女性向け事業や女性向け既製品事業の成長に投資して全社の成長を加速する。
シェアNo.1の男性向け事業では、新規顧客の増加と既存顧客の生涯顧客化に向けた戦略を推進し、安定的かつ持続的に成長できる事業基盤を確立、投資余力を創出する。そのため、価格競争に負けない高付加価値商品の開発や、原価率や効率の改善を目的とした商品の開発を進める。また、原材料高に対応した既存モデルの価格改定、サブスクリプション制度の拡大、安心して来店できる環境の整備、人員増強による受入体制の強化を推進する。さらに、アフィリエイト施策を軸としたデジタルマーケティングによる訴求の強化を図り、シニア層の定着率改善に向けた取り組みも強化する。
女性向け事業では、新規顧客を増加させることで顧客基盤の強化と成長加速を進め、女性向けでシェア国内No.1を目指す。そのため、男性向け事業と同様に原材料高には既存モデルの価格改定で対応する一方、新たな収益源となる美容サービスの展開や、サブスクリプション型の定額ウィッグ導入を推し進める。また、催事で集客を図る他社との差別化や人員増強による受入体制の強化を図る。さらに、女性向け事業の間で連携し、コストの最適化や、顧客の属性やライフスタイルに合わせたパーソナライズドアプローチの展開を推進する。
女性向け既製品事業では、不採算店舗のスクラップ&ビルド、未出店エリアへの出店により、安定的な売上拡大と利益成長を目指す。そのため、既存モデルの価格改定で原材料高に対応するとともに、既製品ウィッグユーザーの潜在需要を刺激するオーダーメイド品質の商品を投入するほか、未出店エリアへの出店拡大、人員増強による受入体制の強化も図る。さらに、商業施設と連携した試着誘導に向けた取り組みや、リピート販売に向けた体制強化を推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)