要旨
三宅孝之氏(以下、三宅):株式会社ドリームインキュベータ代表取締役社長の三宅です。2026年3月期の業績、今期の計画、株主還元について順にお話しします。
2026年3月期 連結P/L
全社の売上高は86.9億円、営業利益は17.9億円、親会社株主に帰属する純利益は15.9億円となりました。
メイン事業であるビジネスプロデュースは、売上高が67.8億円で前年同期比24パーセント増、営業利益は8.1億円となりました。採用した人材の戦力化が進み、売上計画の達成率は109パーセントとなっています。顧客の大型化や、デジタル・ITをテーマとした長期プロジェクトの獲得が進んだことが業績拡大に寄与しました。
インキュベーション(ベンチャー投資)は、売上高が19億円、営業利益が9.7億円となりました。3件のトレードセールスと出資先ファンドの収益計上が実現しています。
2026年3月期 ビジネスプロデュース期初計画と振り返り
前期のビジネスプロデュースの期初計画と振り返りをまとめたスライドです。大前提として、2030年3月期の目標は、売上高を5年で2倍の110億円以上、営業利益率を15パーセント以上にすることを掲げています。
これに対し前期の結果は、期初計画の売上高62億円以上、営業利益3億円以上に対し、売上高は67億円、営業利益は8億円となり、計画を達成しました。
重点施策の1点目は「時代の潮流を捉えた提供価値の進化」です。これは、これまで主戦場であった新規事業だけでなく、既存事業にもビジネスプロデュース領域を拡大していくことを目指すものです。
具体的には、戦略から伴走、実行、実現までを一気通貫で支援すること、テクノロジーも活用した既存事業の変革を推進すること、産業レベルの構想とビジネスエコサイクル創りを引き続き行うことなどを進めてきました。これらの施策は、いずれも順調に進展しています。
2点目は、「人材の育成・仕組みの強化」です。採用した人員の戦力化は進展しましたが、上期に採用を抑制した影響で計画人員数には届きませんでした。この点については、今後の強化ポイントと捉えています。
ビジネスプロデュースの売上推移
ビジネスプロデュースの売上推移についてご説明します。スライド左側のグラフは四半期ごとの売上推移を示しており、例年通り後半になるほど売上が伸びる傾向が見られます。
右側のグラフは契約済売上高の累積状況を示しています。四半期ごとにその時点までの契約がどの程度積み上がったかを確認できます。前期の数字は赤線で示していますが、さらに紫色のドットで今期2027年3月期の滑り出し状況を示しています。
前年度末までに今期分の売上として16.6億円がすでに計上されており、今期も順調な滑り出しとなっています。
新規事業支援:戦略立案に加え、伴走・実行・実現まで一気通貫で推進
実際のプロジェクト事例をご紹介します。このスライドでは、新規事業支援領域での事例を抜粋しています。スライド左上に記載しているインドの案件では、M&A戦略の立案からM&Aの実行、その後のPMIまで一気通貫で支援している事例です。
スライド右上に記載している大手インフラ企業の事例では、ドリームインキュベータ(以下、DI)が従来得意としている新規事業テーマの創出に加え、このテーマの事業化に向けた伴走支援を行うなど、インキュベーションで培ったスキームを活用した支援を行う機会が増加しています。
こうした案件は、プロジェクト期間が長期化しやすいという特徴があり、クライアントとの接点が増えることで、事業の安定収益基盤の強化に寄与しています。
既存事業変革:テクノロジーも活用し戦略策定から具現化まで
既存事業変革領域でのプロジェクト事例です。事業ポートフォリオの組み換えや成長投資への機運の高まりを背景に、既存事業を本気で変革しようとする企業の熱量は、これまで以上に高まっています。
このようなプロジェクトでは、変革の実現に向けてスピード感と当事者意識を持ち、力強く推進していくドライブ力がクライアントから求められています。
これは、DIが従来得意としてきた新規事業の創出で培われたスキルセットが活かされる領域であり、DIの価値を発揮することでクライアントから選ばれる機会が増加しています。最初は新規事業テーマでの支援から始まり、その後、既存事業変革のプロジェクトへとつながる事例も増えています。
産業レベルの構想/ビジネスエコサイクル創りの仕込み
産業レベルの構想やビジネスエコサイクル創りの仕込みも、引き続き進展しています。
スライド左側に記載のとおり、我が国のコンビナートや造船業の再興に向けた取り組みとして、当社は株式会社山口フィナンシャルグループおよびユニバーサル・マテリアルズ・インキュベーター株式会社とともに、GX戦略地域の選定を目指し、山口県の「新事業創出・育成タスクフォース」に参画しました。
今年4月に、山口県が同戦略地域の有望地域に選定されました。今後は、最終的な戦略地域への選定を目指して取り組みを進めていきます。
スライド右側には、JICAとのインドネシアにおける水素・アンモニア社会の推進に向けた取り組みを記載しています。直近では、コンセプトモデルの定義やインパクト評価の結果を踏まえ、日本・インドネシア両国の「水素・アンモニア社会推進の為の日本-インドネシア連携ロードマップ(HASI)」を策定し公表するなど、着実に進捗しています。
ビジネスプロデューサーの人員数は計画を下回る
ビジネスプロデューサーの人員数の推移です。ビジネスプロデューサーの人員数は、当初計画の180名を下回り、159名で着地しました。前々期末までに一定の採用確保ができていたため、前期の上期は戦力化を優先し、採用ペースを抑えたことが計画未達の原因となっています。
ただし、下期から採用を加速し、プロセスが進行した結果、4月末時点ですでに175名に増加しています。
インキュベーションの状況
インキュベーションの状況です。現状の取り組み方針は、適切な収穫を行い、含み益の実現や簿価低減を通じて、将来的な業績のボラティリティを抑制することを目指しています。
これにより、スライド右側のグラフに示しているとおり、2022年3月末時点で79億円あった簿価は、22億円まで縮減しました。今後も含み益の回収を進めながら、適切な縮減を続けていきたいと考えています。
2026年3月 連結B/S
連結バランスシートの状況です。2025年3月末時点で131億円だった純資産は、30億円の期末配当と15億円の純利益の計上により、前期末で117億円となりました。今後もさらなる資本効率の向上に努めます。
2027年3月期 通期計画まとめ
2027年3月期の計画についてご説明します。今期のビジネスプロデュースは、売上高75億円以上、営業利益5億円以上を計画しています。売上面は継続的に拡大してきているため、引き続き4つの領域での着実な推進に取り組みます。
また、高収益を創出する基盤の構築に向けた人材面での投資を継続します。採用・育成の強化に取り組み、ビジネスプロデューサーの数を期末で190名まで増やす計画です。
インキュベーションは、例年どおり非開示です。引き続き、適切な回収を目指して取り組んでいきます。
株主還元については、継続的かつ安定的に実施しつつ、バランスシートのスリム化を推進します。今期の期末配当予想は、前期実績と同額の137円としており、収益基盤の構築状況に応じて追加も検討していきます。
2027年3月期のビジネスプロデュース計画は5か年目標にオントラック
今期のビジネスプロデュース計画と5か年目標の関係をグラフで示しています。4年後の目標である売上高110億円以上、営業利益率15パーセント以上に対して、オントラックの計画となっています。
人材投資のタイミングや営業活動の進捗に応じて、単年度の利益率には一定のばらつきが生じますが、重要なのは中長期で収益性を高めていくことです。今後も投資と収益のバランスを保ちながら、中長期目標の着実な実現を最優先に取り組んでいきます。
引き続き4つのビジネスプロデュース領域を着実に推進し、強固な収益基盤を確立していく
売上面では、引き続き4つの領域を着実に推進し、強固な収益基盤を確立していきます。ビジネスプロデュースの提供価値を4つに分類し、それぞれにフォーカスする取り組みを行っています。
産業プロデュース&ビジネスプロデュース(BP)領域では、事業創造支援の高度化・進化を目指します。
ストラテジー&インストレーション(S&I)領域では、顧客コミットの強化を通じて多様なニーズに対応していきます。
テクノロジー&アンプリファイ(T&A)領域では、デジタル・IT領域への支援を拡張していきます。
グローバル戦略共創(GSC)領域では、グローバル展開の支援やインバウンドビジネス支援にフォーカスして取り組みます。
これらの取り組みを通じ、収益拡大機会の最大化を目指しつつ、高成長領域へのリソース配分を進める戦略です。
環境変化を踏まえて、人材投資を一層強化
成長投資に関しては、環境の変化を踏まえ、人材投資を一層強化していきます。インフレや資本コストの上昇、AIの劇的な進展、地政学的リスクの高まりなど、不確実性が常態化する環境下において、構想力や実行力を有するビジネスプロデューサーは、今後さらに必要とされる存在になると認識しています。
こうした環境を受け、世の中におけるビジネスプロデュースのインパクトを高めるため、長期的に人材育成に取り組むとともに、人数規模の拡大を図っていきたいと考えています。
また、調査・分析業務がAIにより効率化されることで、ビジネスプロデューサーが本来の価値を発揮しやすい環境が整いつつあることは、DIにとって追い風だと考えています。
このような認識の下、今期は採用、育成・リテイン、体制の強化に重点的に取り組む考えです。採用では、重視する人材像のアップデートや、ビジネスプロデューサーの魅力や価値をさらに広げるためのブランディング強化に取り組みます。
育成・リテインでは、AI活用を前提とした評価体系へのシフトや研修内容の刷新、長期的に活躍できる環境や待遇の整備に力を入れます。また、それらを支える仕組みや体制の強化にも取り組んでいきます。
これらを進めることで、今期末のビジネスプロデューサー数は、前期末比で31名増の190名にすることを計画しています。
株主還元方針
株主還元方針です。引き続き、継続的かつ安定的な株主還元を進めつつ、バランスシートのスリム化に取り組んでいきます。M&Aなど成長投資機会の模索も並行しながら、還元を実行していきます。また、収益基盤の構築状況に応じて、増配も適宜検討したいと考えています。
この方針に基づき、前期は期初予想の1株当たり106円に対し、実績は137円となりました。今期の期末配当予想は、前期実績と同額の137円です。継続的な利益成長とともにこの施策を推進し、4年後の目標であるROE15パーセント以上の実現に向けて邁進してまいります。
質疑応答:AIによる環境の変化を踏まえた採用方針について
質問者:採用計画についてです。180名前後を中心とした採用計画を打ち出していますが、4年前の株主総会で、「経営環境が悪化した場合にレガシーコストになるのではないか」という質問について、三宅さまから「多くの人数が必要な案件をさばいていくためには、人員数の増加が大事である」というご説明を受け、そのように理解していました。
しかし、この4年の間に、AIを含めて経営環境が大きく変化している状況です。採用人数を確保し、業績を拡大するという方法も考えられると思いますが、これからAIがさらに活用されるようになると、それほど人員を増やすことに意味があるのかと考えてしまいます。
人員数が横ばいもしくは自然減となっても、十分に事業が進むのではないかと思いますが、そのような見通しについてどのようにお考えでしょうか? 採用について、さらに柔軟に対応する考えがあるのかを教えてください。
三宅:人員の拡大についてどのように考えているのかというご質問と承りました。現在の状況としては、案件に対して人手が不足しつつあるため、直近では人員拡大が必要だと考えています。
また、当社の事業は単純なコンサルティングにとどまらず、構想の立案や実現へのコミットメントを行います。そのため、採用した人材がすぐに活躍できるわけではなく、1年、2年、3年と時間をかけて育成し、ビジネスプロデューサーとして成長していきます。このように、徐々に価値を発揮していくのが当社のモデルです。
加えて、将来の幹部候補を育成する観点でも、一定の人員が必要であることを常に意識しています。
ご指摘のとおり、AIの活用もありますので、単純に人数を増やすだけであれば必要ないのではないかという議論もあります。一方で、ビジネスプロデュースの難しさや幹部候補を育成していくことを考慮すると、現時点では計画している人数は採用しておいたほうがよいと考えています。
ただし、AIの進展は非常に早く、今後の状況は予測不可能な部分もあります。そのため、計画の見直しは柔軟に検討していきます。
質疑応答:金銭信託に対する見解について
質問者:具体的な施策と提案があります。現在、バランスシート上に59億円の金銭信託があると認識しています。
資本コストは決算資料で開示されていますが、御社としては9パーセントを想定しています。一般的な金銭信託における期待リターンを考えると、明らかに逆ザヤ状態で放置されていると思います。
これは株主価値の毀損であり、市場からマネジメント・ディスカウントが課されている最大の原因の1つであると考えます。具体的な施策として、この金銭信託59億円を原資とし、なるべく早期に、具体的には今期の中間期に全額を特別配当として株主に100パーセント還元してほしいです。
アイペットホールディングスの売却益で一時的に株価が上がったものの、下落してしまったというのは、余剰資金を再び貯め込んでいることが影響しており、資本政策が合理的ではないと市場が判断していると感じています。
金銭信託に対する社外取締役の小松さんの見解と、全額配当のお願いに対する回答をいただきたいです。
細野恭平氏:取締役副社長の細野です。まず、財務政策の概要についてご説明いたします。過去3年間で合計65億円の配当を実施しています。ベースとなる考え方としては、資本効率を重視し、還元によってバランスシートをできるだけスリム化し、その間に利益を生み出せる体質をさらに強化して、資本効率を高めていくことを1つの大きな方向性として考えています。
加えて、継続的かつ安定的に還元を実施していきます。過去に、あまり安定的な配当政策を実施できなかったという反省もあります。そのため、ある程度一定の金額を毎年継続的に配当することで、安定的な株価形成に努めていきたいというのが基本的な方針です。
この方針を実行するため、前期は1株当たり137円の配当を実施しました。今期も1株当たり137円を計画しており、さらに期中の業績が良ければ積み増しを検討するという配当政策を考えています。
また、ご指摘のとおり、現状で約60億円の金銭信託があり、リスクを抑えつつ運用しています。この資金はM&Aなど成長のための資金としての側面もあるため、現在はいったんホールドしている状態です。
小松百合弥氏:社外取締役(監査等委員)の小松です。まず、資本効率についてです。金銭信託は会社のWACCを下回っているため、「企業価値の毀損につながるのではないか」という点については異論はありません。
ただし、私自身、過去にグロース投資を経験しており、株価を継続的に上昇させるためには、持続的に高成長を維持する体制を整えることが最も重要であると信じています。
現時点で60億円近い資金をまったく使う予定がないのかと言われると、成長投資としてM&A案件など成長投資機会を検討しています。一方で、ご指摘のとおり、いつまでもそのままでよいという話ではありませんので、当然ながら社外取締役をはじめ取締役会において議論しています。
成長投資が必要ない状況で本当に資金を使わないのであれば、全額を配当する可能性がありますし、そもそも上場している意義についても検討するフェーズになると思います。
事業報告にあったように、今後、持続的な成長を実現する施策や、コンサルティングフィーの成功報酬型モデルの導入を模索している段階です。
こうした取り組みの進捗をお待ちいただき、これらがきちんと実現できた段階で配当を増額する、もしくは投資に活用することで、ご理解いただけると考えています。
質疑応答:テクノロジー&アンプリファイのネーミングについて
質問者:IR戦略についてです。コンサルティング事業が成長しており、特にIFSジャパン株式会社との協業により、中長期的にテクノロジー&アンプリファイ領域が成長する見込みがあるのではないかと感じています。
テクノロジー&アンプリファイ領域については、苦労しつつもゼロから増収増益へと導いた三宅社長の手腕や、現場の執行役員および従業員のみなさまの努力については、本当に高く評価しています。また、電通グループや山口フィナンシャルグループとの協業についても、成果が上がっているのではないかと思っています。
現場ではこれほど見事な成果を出していますが、私としてはネーミングで認知の機会損失が発生している可能性があると考えています。
独自の単語を使用することで、AIが学習しにくくなったり、ハルシネーションが生じやすくなる懸念があります。
さらに、直近の世の中のトレンドとしては、個人でアクティブ運用するよりも、パッシブ運用が主流となりつつあり、テーマ型のインデックスファンドへの投資が増えてきています。DX関連やAI関連の投資では、バスケット買いのような買い方が主要な買い勢力となります。
こうした層に正確にアクセスするには、わかりやすい表現やローコンテクストなIRのコミュニケーションを行わなければ、PERが低くなる可能性があります。
現在の名称では、独自の単語を使用しているため、「テクノロジー&アンプリファイ」と検索する人はほとんどいない状況です。したがって、IRのコミュニケーションでは、検索の母数が大きい単語を使用していただきたいというのが希望です。
三宅:テクノロジー&アンプリファイのネーミングの検討についてのご質問でした。当社は、社名であるドリームインキュベータをはじめ、ビジネスプロデュース、産業プロデュース、インキュベーション、テクノロジー&アンプリファイなど、初めて聞くような名前が多いことが特徴の1つであると認識しています。
しかし、ブランディングに時間がかかることや改善の余地がある点についてはご指摘のとおりであり、本日いただいたご意見は、今後検討したいと考えています。
一方で、IRで適正以上に期待値を上げて、一時的に株価が上がってその後下がるというようなことは、株主のみなさまにご迷惑をおかけすることになります。そのため、きちんと実績を持ったかたちでしっかりと基盤を作りながら、バランスを取りつつ、ネーミングやブランディングを検討していきたいと考えています。アドバイスをありがとうございます。
質疑応答:コンサルティングフィーと人件費のバランスについて
質問者:ビジネスプロデューサーのコンサルティングフィーについて、昨今のインフレなどの影響も含め、人件費の上昇もあると思いますが、コンサルティングフィーはクライアントから適切に回収できていますか? 人件費の拡大について、今後どのようなペースで推移していくか見通しを教えてください。
三宅:インフレを踏まえたコンサルティングフィーの今後についてのご質問と承りました。コンサルティング会社にとって、コンサルティングフィーの単価はブランドそのものであり、非常に重要な要素です。この設定次第で業界内のランクが決まります。
実際に人件費は上昇しており、その中で「コンサルティングフィーもちゃんと上げてくださいね」と言ってくださるお客さまもいます。当社としても適切な利益を確保しつつ、価格の見直しを不断に行っています。
今後の見通しについては予測が難しいですが、インフレも進行しているため、人件費とのバランスを日々注視しています。適切な戦略をもって対応していく所存です。