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井関農機、構造改革は概ね計画通り進捗 成長戦略フェーズへ移行し更なる収益性向上を図る

本日のご説明

冨安司郎氏(以下、冨安):井関農機株式会社 代表取締役会長執行役員の冨安です。よろしくお願いします。

本日はオンライン形式ですが、当社の事業と成長戦略について個人投資家のみなさまへご説明できる貴重な機会を頂戴し、誠にありがとうございます。本日のご説明を通じて、当社へのご理解を少しでも深めていただけると幸いです。

本日の内容は、スライドに記載のとおりです。特に、成長戦略を中心にご説明したいと思います。

井関農機とは

冨安:井関農機は、創業者である井関邦三郎の「農家を過酷な労働から解放したい」という思いから、1926年に愛媛県で創立しました。おかげさまで、創立100年を迎えることができました。

事業内容は、農業用および景観整備用製品の製造・販売・サービスをメインとし、選果施設やカントリーエレベーターなどの農業用施設や関連商品の販売も行う、農業機械の総合専業メーカーです。

2025年12月期の売上高は1,857億円で、そのうち海外売上高比率は約30パーセント強となり、欧州を中心に海外事業も拡大しています。

機械化による生産性向上

冨安:ここで、少し視点を変えてみましょう。みなさまがふだん召し上がっているお米を作るのに、どのくらいの時間がかかっているかご存じでしょうか?

スライドのグラフは、10アール当たりのお米を作るために要する労働時間の推移を表しています。

1960年頃は田植えや稲刈りなど手作業がほとんどで、労働時間は174時間と、非常に多くの時間を要していました。その後は機械化の進展により、現在では21時間と、約8分の1まで効率化が進んでいます。

これによって農業の生産性が向上するだけでなく、他産業への労働力のシフトが進み、農家のみなさまにとっては兼業収入が増加し、豊かな農村の実現や日本の工業化にも寄与してきました。

井関農機は、100年の歴史の中で農業の生産性向上の一翼を担っていると自負しています。

事業内容

冨安:こちらは、主な商品ラインナップと販売エリアを示しています。

スライド上段の農業機械について、日本では創業時に籾すり機から始まり、現在ではトラクター、コンバイン、田植機など、稲作用から畑作用まで幅広く取りそろえています。

また、手軽にお米を精米できるコイン精米事業も展開しています。アジアでは日本で培った農業機械を展開しています。

一方、スライド下段にあるように、景観整備用機械は欧州や北米を中心に、公園や庭の草刈り、道路清掃、軽土木作業などに利用されています。乗用草刈機に加え、小型トラクタなどニーズに合わせたラインナップの充実を図っています。

商品別売上高の内訳

冨安:2025年12月期の商品別売上高の構成です。売上高の約半分は、主に井関農機で生産しているトラクタや田植機、コンバインといった製品が占めています。

次に、部品や修理などのメンテナンス収入と作業機を合わせた売上が約3割を占めています。これらは収益性が高く、現在まさに注力している分野の1つです。そのほかに、精米事業や施設工事などがあります。

また、右上に示した国内売上高の内訳では、部品・修理収入の比率が大きくなっていることがご確認いただけるかと思います。国内販売会社の安定収益源として、この分野を伸ばす取り組みの成果が表れてきています。

スライド右下の海外売上高においては、欧州や北米での景観整備が中心となっています。スライドでは「整地機」と表記しているトラクタや乗用草刈機などの製品のウエイトが大きくなっています。

成長戦略「プロジェクトZ」の背景 ~課題と対応~

冨安:次に、私が今回最もお話ししたい成長戦略についてご説明いたします。

当社は、聖域なき事業構造改革「プロジェクトZ」を進めています。低収益性と資産効率の改善という課題に向け、当社は2024年に「プロジェクトZ」施策を策定し、発表しました。

具体的には、短期集中で抜本的な構造改革を実行するとともに、新しい100年の礎を築くために成長戦略を推進し、成長セグメントに経営資源を集中させるという内容です。

この施策により、収益性の改善、資産効率化を図り、成長に向けたキャッシュアロケーションを実現します。そして、2027年には営業利益率5パーセント以上、ROE8パーセント以上、DOE2パーセント以上を達成し、PBR1倍以上を目指していきます。

井関の成長ストーリー ~プロジェクトZ~

冨安:「プロジェクトZ」は2024年から2027年、そして2030年に向けて構造改革と成長戦略の2つを同時並行で進める計画です。

特に、2024年と2025年は構造改革を最優先とし、短期間で集中的に取り組んできました。生産、開発、営業、人材といった会社の土台となる部分をゼロから見直し、強靭な企業体質への転換を進めています。

当社は現在、構造改革の成果を基盤として、成長戦略に軸足を移行するフェーズに入っています。国内外ともに成長分野へ資源を集中させ、収益性のさらなる向上を図っていきます。

プロジェクトZの進捗(サマリー):施策

冨安:次に、進捗状況についてお話しします。まず、最初の2年間で短期集中的に実施する抜本的構造改革の施策は、おおむね計画どおりに進んでいます。

生産最適化では、コンバインおよび主要部品の生産拠点集約と移管を実施しました。松山でのコンバイン生産は、4月から5月に量産前のテスト生産を行い、6月から量産を開始しています。今後は、機種ごとに順次本格化させる予定です。

生産効率の向上と固定費削減を両立させることで、収益改善効果が2026年から段階的に発現していく見込みです。

開発の最適化のうち製品利益率の改善に関しては、一部で遅延が生じていますが、対象範囲や手法の拡大により改善を図っています。

また、開発の効率化では、機種・型式の集約と共通設計の推進を計画どおり進めており、成長分野への開発リソースの重点的な配分が進んでいます。

国内営業深化においては、「ISEKI Japan」を発足させ、販売体制の統合を進めました。その成果として、在庫や棚卸資産を計画以上に圧縮できており、キャッシュフローの改善に大きく寄与しています。

そして、成長戦略については後ほどあらためてご説明しますが、このような改革を通じて、収益性の改善と資産効率化が着実に進展している状況です。

プロジェクトZの進捗(サマリー):増益効果

冨安:スライドは、施策ごとの増益効果を年度ごとに示しています。抜本的構造改革、および次にご説明する成長戦略により、2027年には2023年比で約75億円以上の増益効果を見込んでいます。

この改善効果は2025年下期から徐々に発現してきていますが、特に生産最適化や開発最適化は、二次曲線的に効果が後から大きく表れるものです。

2026年には、38億円程度の増益効果を見込んでいます。営業利益率を3.3パーセントに改善し、2027年には5パーセント以上の実現を目指しています。

プロジェクトZの進捗(サマリー):成長戦略

冨安:次に、成長戦略についてご説明します。

当社は国内と海外の両輪で成長戦略を展開し、収益拡大を図っていきます。特に国内では、「大型」「先端」「畑作」「環境」の4分野にリソースを集中していく方針です。

また、海外では欧州を中心に地域別戦略を展開し、2030年には海外売上高を800億円、海外売上高比率を40パーセント以上へ拡大することを目指します。

成長戦略による増益効果としては、2027年では国内と海外を合わせてもまだ15億円程度と見込んでいますが、2030年には40億円程度まで収益を積み上げていく計画です。

国内市場の動向

冨安:次に、この成長戦略の具体的な取り組みについてお話しします。まずは、国内市場の動向です。

ご案内のとおり、日本農業は家族経営中心から法人や集落営農といった大規模経営へと構造的に移行しています。

農業経営体の数は減少する一方で、1経営体当たりの耕地面積は着実に拡大しています。この動きの中で、労働力不足の解消や生産性向上は避けて通れない課題です。その解決策として、大型・先端農機の普及拡大は不可欠だと考えています。

成長に向けた方向性

冨安:大規模化や食料安全保障、気候変動などの市場動向を踏まえ、当社は先ほどお話しした「大型」「先端」「畑作」「環境」の成長分野に経営資源をシフトしていきます。

特に、先端技術を実装した大型機を軸に展開し、日本農業が抱える課題の解消に貢献するとともに、収益体質への転換を図ります。

国内事業戦略について

冨安:次に、具体的な展開についてです。本日は4つの成長分野への展開の中から、大型機戦略とNon-Agri戦略についてご紹介します。

大型機は、製品の粗利率が高いだけでなく、販売後のメンテナンス収入を含めたライフサイクル全体で収益を生み出します。スライド下段にある2030年の目標達成に向け、大型商品の拡販やメンテナンス収入の増加に取り組んでいきます。

また、Non-Agri分野では、欧州で実績を上げている景観整備分野の商品を国内にも展開し、新たな収益の柱として長期的に育成していきます。

国内事業の強み

冨安:成長戦略を遂行する上での強みについてお話しします。

国内事業における当社の最大の強みは、直販比率の高さと販売会社統合による実行力です。2025年1月に「ISEKI Japan」を設立し、6つの広域販売会社と三重ヰセキ販売、そして井関農機の営業本部機能を統合しました。

加えて、ISEKI Japan内に新たに設置した大規模企画室を司令塔として、全国規模で統制の取れた成長戦略を実行できる体制が整い、実行力がさらに高まりました。

直販比率は70パーセントを超えており、顧客ニーズをダイレクトに商品や施策へ反映できます。特に、大型機の販売においては、大規模経営が進んでいる北海道でのノウハウを全国展開できるようになっています。

大型商品の拡販:大型機モデルチェンジ

冨安:大型機戦略の1つ目として、大型商品の拡販に努めていきます。

当社が開発・生産を行っている製品の売上高のうち、すでに40パーセントを占めている大型機は、2026年には我々のフラッグシップ機である「JAPANシリーズ」のトラクタ、田植機、コンバインを全面的にモデルチェンジしており、一斉に市場へ投入します。

トラクタでは「BJシリーズ」、田植機では「PJシリーズ」を6月に、コンバインでは「HJシリーズ」を12月に販売開始する予定です。

6月11日の新商品発表会にて、これらを発表しました。3機種同時に発表することは当社にとって初の試みであり、報道関係者のみなさまからも大きな注目をいただきました。

また、営業現場では案内を開始し、すでに多くの受注をいただいており、順調な立ち上がりとなっています。2030年の目標として掲げている大型機比率50パーセント以上については、前倒しでの達成を見込んでいます。

メンテナンス収入

冨安:こちらのグラフは、メンテナンス収入と国内売上高全体に占める比率の推移を示しています。

大型機比率の上昇に伴い、メンテナンス収入は金額・比率の両面で着実に増加しています。2030年には、メンテナンス収入を300億円規模、売上高全体に占める比率を25パーセント以上まで拡大する計画です。

これまで、メンテナンス収入の拡大を安定収益源として位置づけ、人材育成や大規模整備拠点の整備などのサービス力の強化に取り組んできた効果が発現していると考えています。今後も、大型機とメンテナンスによる安定収益構造への転換を進めていきます。

Non‐Agri 戦略 ~さらなる収益性向上に向けて~

冨安:2点目のNon-Agri戦略では、欧州で実績のある景観整備用機械を国内市場へ本格展開します。

自治体、公園、ゴルフ場、建設、土木など、BtoBまたはBtoG分野を中心に、新たな収益源の確立を目指していきます。国内における草刈関連商品の売上高は、2030年には100億円規模を目標としています。

国内2030年の姿

冨安:こちらのスライドは、2030年における国内事業の姿です。

大型機の比率を50パーセント以上、メンテナンス収入の売上高に占める比率を25パーセント以上、草刈関連商品の売上高を100億円以上とし、これらを通じて持続的にキャッシュを創出することで、次の成長への投資につなげる高収益成長の循環を確立していきます。

増井麻里子氏(以下、増井):経済アナリスト/経営コンサルタントの増井です。それでは、質問を交えながら進めていきたいと思います。

まず、国内における大型機の販売比率の上昇について質問です。製品構成の変化、すなわちプロダクトミックスの好転が業績にどのように寄与しているのでしょうか?

冨安:先ほど、国内の成長分野として「大型」「先端」「畑作」「環境」についてお話ししましたが、実は大型機は2番目に挙げた「先端」と確実に関連しています。ご存じのとおり、国内では農業人口の減少に伴い、それぞれの農業や農家の大型化が進んでいます。

このような中で、我々は「大型」「先端」などを成長分野として掲げています。大型機は、製品単体としての粗利率が高い特徴に加えて、ご購入後は大型農家の方がメンテナンスに多くのコストをかける傾向がある点が挙げられます。

特に、大型機の利用時間が長く、安定的な稼働のためにも、保守・点検需要が増加していく傾向があります。

当社の分析によると、規模別の農家を比較した場合、大型農家では一般農家に比べてトラクタおよびコンバインのメンテナンスへの投資が約3倍、田植機では2倍以上となっています。つまり、製品のライフサイクル全体で収益を上げられる構造が確立できていると考えています。

また、当社では、この10年にわたり販売会社の収益構造を強化するため、メンテナンスに力を入れてきました。ご説明にもあったように、大型の整備拠点を整備し、メンテナンスを十分に行える人材の育成といった施策を進めてきました。

これらの施策が効果を発揮しており、プロダクトミックスの観点からも業績に大いに寄与していると考えています。

増井:農業界では法人化が進み、一つひとつの団体も大きくなりつつあることは、御社にとってかなりプラスの事象なのでしょうか?

冨安:両面があるかと思いますが、現在の流れをしっかりと捉えていけば、プラスに転じるのではないかと考えています。

また、先ほど「プロジェクトZ」の話を少ししました。現在、米の価格が回復しており、投資家のみなさまから非常に注目されています。

私たちは「プロジェクトZ」の施策をさまざまに検討する中で、そこまでの回復は織り込んでいませんでした。

先ほど申し上げた成長分野として「大型」「先端」「畑作」「環境」に言及しましたが、日本の農業構造を今後考える上で、食料安全保障や食料自給率の問題をしっかりと課題解決していく必要があります。

そのような中で、米以外の畑作や飼料なども含め、これらにしっかり対応できるようにすることをこの施策に織り込んでいます。米以外の麦、大豆、コーンなども含めてしっかりと対応していくことが重要であり、実はこれも「大型」のポイントです。先ほどのご説明の中で申し上げたとおり、北海道で私どもの戦略を繰り広げ、実績を上げているところです。

成長を続ける海外事業

冨安:続いて、海外の成長戦略についてお話しします。当社は欧州、北米、アジアの3地域を重点市場として、海外事業を展開しています。

その中でも、特に欧州を最重要市場と位置付けています。スライド下部のグラフは、海外売上高と欧州の営業利益率の推移を示しています。

欧州事業は売上拡大に加え、営業利益率も継続的に改善しており、現在では営業利益率10パーセント超を目指せる収益性の高い地域です。

2030年の目標として、海外売上高を800億円、全体の売上に占める海外売上高比率を40パーセント以上、そのうち欧州で470億円以上を計画しています。

本日は、今後の海外事業全体の成長を牽引する内容のうち、欧州事業についてご紹介します。

欧州事業戦略について

冨安:欧州事業は、当社にとって売上拡大と利益率向上を同時に実現できる事業領域です。中長期的には、当社グループ全体の収益力と株主価値を押し上げる成長ドライバーとなります。

今後の成長を支えるポイントは、大きく3つあります。1つ目は、地域別戦略です。現在の既存市場である西欧市場でビジネスをさらに深掘りしつつ、アフリカや中東地域への拡大にも注力します。

2つ目は、商品戦略です。市場が求める電動やロボットなどの成長分野において、自社製品・他社製品にかかわらず、タイムリーに商材を投入し、商品ポートフォリオの充実に努めています。

3つ目は、非オーガニックな成長です。特に電動機械の設計ノウハウにおいて、欧州では一日の長があるケースも少なくありません。新たな販売拠点や出資を含めたパートナーシップの構築も、成長分野への展開スピードを高めるうえで重要であると考えています。

欧州事業の歴史と欧州景観整備市場

冨安:ここで、当社の欧州事業の歴史をご紹介します。当社は、1960年代に耕うん機の販売から欧州事業をスタートしました。

「井関農機」という名前のとおり、農機販売の拡大を目指してきましたが、欧州の平均的な耕地面積は日本とは大きく異なり、農機としての大きな需要を捉えることはできませんでした。

それでも、当社製品は高い耐久性やパフォーマンスが大いに評価され、特に日々の使用が必要とされる都市部での清掃や除雪、公園の草刈りなど、景観整備に適した製品であると認識されるようになりました。

さらにその後も評価が高まり、地方自治体やその業務に関与するプロの請負業者の間で、ISEKIブランドが浸透してきました。

欧州事業の強み

冨安:次に、欧州事業の強みについてお話しします。

当社は、欧州の景観整備市場において高い信頼を得ており、推定20パーセントから30パーセントのトップクラスのシェアを有する、高収益を生み出す強固なコア事業として確立しています。

欧州事業の強みは、大きく3つあります。1つ目は、連結子会社3社による販売・管理体制です。当社の販売施策を迅速に実施できる点に加え、効率的なオペレーションの推進にも取り組んでいます。

2つ目は、強固な販売網です。ISEKI フランス、ISEKI ドイツ、ISEKI UKの3社は、それぞれ長年にわたり現地ディーラーとの信頼関係を構築しており、高い販売力と広範囲にわたるディーラーネットワークを築き上げています。

3つ目は、カスタマイズ対応力です。ISEKIドイツでは高い技術力を基盤としたカスタマイズ機能を有しており、国や地域ごとのニーズに応じたカスタマイズによって、プロユーザーから高い信頼を得ています。これらが、高い収益性を支える源泉となっています。

自社製品と他社仕入製品の売上比率

冨安:他の要因についてもご説明します。こちらのスライドは、自社製品と他社製品の売上比率を示したものです。また、スライド右側の円グラフは、ISEKI フランス社の売上内訳を表しています。

スライドに記載のとおり、プロ向けの自社製品を核とする一方、他社仕入製品を組み合わせることで、プロユーザーのみならず、セミプロやコンシューマー(一般消費者)層にも「ISEKI」のブランド力を利用して裾野を広げています。

他社仕入商品のラインナップの充実を通じて、安定した収益成長を実現してきました。今後も欧州の3子会社で共同購買を進めるとともに、欧州内においてこの成功事例の並行展開を進めていきます。

欧州景観整備市場の規模

冨安:こちらのスライドは、欧州の景観整備市場全体における自社製品がカバーできているプロ向けの範囲と、仕入商品の範囲を示しています。

現在、自社製品でカバーできているのは、市場全体の20パーセント弱にとどまっています。残りの80パーセント強は、落ち葉を飛ばすために使用するブロワーや歩行型機械など、自社製品ラインナップでは対応できていない領域です。

未開拓な部分も残されており、大きな成長余地があると考えています。この領域を仕入商材や共同開発した製品で補完し、販売力の高いディーラーネットワークを活用して、事業拡大を図っていきます。

欧州2030年の姿

冨安:2030年の欧州事業の目標を示しています。売上高470億円以上、営業利益率10パーセント以上を目指し、欧州事業を景観整備分野のスペシャリストおよび高収益成長の循環を生み出す中核事業へと進化させます。創出したキャッシュを次世代成長分野と人的資本へ再投資し、ISEKIグループ全体の価値向上につなげていきます。

増井:欧州事業は、非常に高い収益性を維持した状態で成長が続いています。その背景にあるポイント、および今後どのように成長を加速していく予定なのかについて、ご説明をお願いします。

冨安:まず、この背景や要因についてです。当社の海外展開は欧州からスタートしており、約60年の歴史があります。その間は、先ほどもお話ししたように、信頼を積み重ねてプロユーザーを中心にブランド力と販売網を強化し、ディーラーネットワークを構築できたことが大きな要因となっています。

この市場ではプロユーザー向けを中心に拡大してきました。当社の製品は性能や耐久性が評価され、付加価値をしっかりと認識していただいており、その結果、市場に定着しています。これは、逆に言えば高い収益性を確保する上で、価格競争に陥りにくいことが大きなポイントになっています。

そのような中で、商品ポートフォリオの拡充も進めています。ご説明の中でも触れたとおり、当社のブランド力を活かしつつ、他社製品を柔軟に取り入れることで顧客ニーズに対応し、海外全体を拡大する核として欧州事業を中心に拡大することができました。

実は、5年ほど前までは、当社の海外売上高比率は25パーセント弱でした。それを30パーセント台まで引き上げたのが、まさに欧州の力です。

スライド下段に示している帯グラフの一番下部分が欧州であり、2010年からの推移を示しています。2桁の売上から、現在では380億円強まで着実に伸ばしてきました。

今後は、欧州内で地域別の展開を進めます。これまでは西欧が中心でしたが、北欧・中東・南欧を拠点として、アフリカや中東にも景観整備用機械を中心に展開していきます。地域別戦略、商品戦略、そして他社製品を組み合わせたポートフォリオです。

また、3つ目の非オーガニックな成長で当社の販売力を活かしつつ、この市場では電動化・自動化が好まれることもあります。それらに沿った技術開発を含めて、しっかりと成長につなげていきたいと考えています。

足許の業績:財務ハイライト 連結業績の推移

冨安:足元の業績についてお話しします。

昨年の売上高は、過去最高を記録しました。先ほどご説明したとおり、「プロジェクトZ」の効果が計画どおり発現し、収益改善に寄与しています。

2026年12月期は、コンバインの生産を熊本から松山に移管することに伴う一時的な供給制約があるため、減収を予想しています。しかし、構造改革を進めることで、着実な営業増益を見込んでいます。2027年の目標達成に向け、「プロジェクトZ」の取り組みを遂行していきます。

株主還元については、1株当たり配当を2025年に30円予想から40円に増配、2026年にはさらに5円増配し、45円を予定しています。また、2027年にはDOEを2パーセント以上に引き上げる予定です。

足許の業績:財務ハイライト 連結業績の推移

冨安:次に、バランスシートおよびキャッシュフローについてです。

2025年12月期は、棚卸資産と有利子負債をともに大幅に削減しました。「プロジェクトZ」では有利子負債を抑えつつ、設備投資を着実に進めていきます。

2026年には生産最適化を目指し、製造現場への投資が本格化します。このため、有利子負債が一時的に増加する見込みですが、収益性の改善や棚卸資産の圧縮を図りながら、有利子負債を抑制するオペレーションに努めていきます。

成長に向けたキャッシュアロケーション

冨安:キャッシュアロケーションについてです。収益性の向上と棚卸資産の圧縮により、営業キャッシュフローは大幅に改善しています。また、負債削減を含む財務基盤の強化も進んでいます。

先ほどご説明したとおり、成長投資をキャッシュフローの改善で賄い、有利子負債のコントロールや株主還元とのバランスを意識して取り組んでいきます。

本日のまとめ

冨安:最後に、本日のまとめです。井関農機は、1926年創立の農業機械総合専業メーカーであり、今年で創立100年を迎えました。そしてISEKIグループは、夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「食と農と大地」を創造していきます。

「プロジェクトZ」では、抜本的構造改革と成長戦略を遂行し、2027年には営業利益率5パーセント以上、PBR1倍以上を目指していきます。

「プロジェクトZ」の主要施策はおおむね順調に進んでおり、現在は構造改革の成果が顕在化し、収益改善が進んでいます。今後のフェーズとしては、構造改革から成長戦略へと軸足を移していきます。

ISEKIグループの総力を結集し、持続可能な成長と一層の企業価値向上に努めていきます。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いします。

以上で、私からのご説明を終わります。ご清聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:聖域なき事業構造改革と具体的事例について

増井:9ページのスライドについて質問です。「聖域なき事業構造改革」という非常に強い表現がありますが、ここには従来では踏み込むのが難しかった歴史ある事業や、組織の垣根を越えた抜本的な見直しも含まれていると想像しています。実際にそのような決断をくだされた事例や、現在進行中のケースはありますか?

冨安:「プロジェクトZ」の「Z」に込めた意味は、「未知」と「ゼロ」です。まさに設計の仕方、生産の仕方、売り方、サービスの仕方、業務の仕方をゼロから見直す創業的変革を意味しています。

そのような中で、創業から100年を迎え新しい100年を展望しながらさまざまな変革を進めたいと思っています。5年後、10年後、あるいは20年後に、私たちは何を作り、何を売っていくのかを組織としてしっかりと考え、行動を起こすことからスタートしています。

聖域なき事業構造改革の代表例としては、これまで国内工場のあり方や生産の仕方を全面的に見直したことが挙げられます。

松山ではトラクタやコンバイン、新潟では田植機、熊本では収穫用のコンバインをそれぞれ製造していましたが、最終製品の生産をすべて松山に集約することとしました。これは、70年の歴史を持つ熊本での生産を終了させるという、これまでは難しかった決断です。

また、設計の仕方については、「開発最適化」という表現のもと、従来の設計手法を見直す取り組みを進めています。徹底的に部品の共用化を進めるなど、コンセプトを共通設計の中で捉えて考えるといった取り組みです。

これまでになかった試みとしては、トラクタ、コンバイン、田植機の部品のうち、一本化できる部分はないかという検討を含めて進めています。また、アジアで使用されているトラクタが日本でも活用できるかどうかという検討も、設計の方法を見直す取り組みです。

販売の方法については、「国内営業深化」という表現を用いていますが、先ほどもお話ししたように、大型機へのシフトが進んでいます。5年後、10年後には、お客さま層も変化してくると考えています。

私どもが販売する機械も変わっていく中で、販売会社を一本化するという取り組みを成し遂げました。この判断には抵抗もあるかと思いましたが、しっかりとやり遂げてきました。

このように、これまでなかなか取り組めなかったこと一つひとつに対し、今よりも将来を見据えて挑戦しています。

ここに、成長戦略を加えることで、私どもは引き続き成長を目指していきます。これが、「Z」に込められた私どもの思いです。

増井:開発、生産、販売、すべてにまたがる改革ということですね?

冨安:そのとおりです。

質疑応答:欧州市場での競争優位性と支持拡大の理由について

荒井沙織氏(以下、荒井):「欧州では競合が多い中で、御社の優位性は何でしょうか? また、海外市場で広く支持を得てきた理由について教えてください」というご質問です。

冨安:先ほども触れましたが、欧州が成熟市場であると感じられている方も多いかと思います。

確かに競争環境の厳しい市場ですが、私どもはプロユーザー向けの事業を中心に据え、歴史の中で強固な事業基盤とブランド力を構築してきたことが大きな優位性となっています。プロユーザーの方は、耐久性や性能といった付加価値をしっかりと評価してくださいます。

また、このような市場では価格競争とは異なる観点が重要となる面もあり、それが収益性の高さを維持する要因となっています。

私どもは、「ISEKI」ブランドをしっかり中核に据えて取り組んでいます。最近では、従来のプロユーザーに加えて、セミプロやコンシューマー層に向けた取り組みを強化しています。

冨安:街中で当社の製品をご覧いただき、「ISEKI」ブランドをご認識くださったセミプロやコンシューマーのみなさまの期待にもお応えできるようになっています。

このポイントとしては、当社だけでなく他社製品を含めた機械全体が成長の鍵となっています。この分野には電動製品も多く含まれ、エコ志向のコンシューマーのニーズにも応えることができていると考えています。

荒井:エコというと、やはり欧州との相性も良いですよね。

質疑応答:国内事業の戦略と具体的な取り組みについて

増井:国内事業について、詳しくおうかがいしたいと思います。今後の戦略や具体的な取り組みについて、もう少しご説明いただけますでしょうか?

冨安:農業構造の変化は、避けて通ることができない課題です。農業人口が減少していく一方で、国内の耕作面積は400万ヘクタールから450万ヘクタールといわれています。

この耕作面積をしっかり確保していくことは、食料安全保障や食料自給率を考える上で必須のテーマです。当社として果たすべき役割を認識し、この分野への貢献をしっかり行っていきます。

冨安:そのために、「大型」「先端」「畑作」「環境」の4つの成長分野に注力します。先ほども触れましたが、大型機の販売拡大、収益構造の転換、そしてNon-Agri分野の拡大という3つの軸を中心に、取り組みを進めていきます。

大型機については、先ほどお話ししたとおりです。収益構造の転換については、先ほどもご質問いただいたように、ライフサイクルでしっかりと収益を確保できる大型機やメンテナンス収入に加え、ISEKI Japanに一本化することで、かなりスリム化が進んでいます。スリム化したことで、人的エネルギーを成長分野に投入できる点も大きなポイントです。

冨安:そして3つ目の核として挙げられるのが、Non-Agri戦略です。欧州でしっかりとブランド力を持つ乗用草刈機を中心とした景観整備用機械を国内で展開し、こちらも私どもの大きな事業の軸としていく考えです。

これらを中心に、国内での成長をしっかりと推進していきたいと考えています。

冨安氏からのご挨拶

冨安:井関農機は農業機械を通じて農業の発展を支えてきました。食料自給率や食料安全保障の重要性が高まる中、私どもはエッセンシャルなビジネスを担っていると考えています。

そのような中で、「大型」「先端」「畑作」「環境」といった成長分野でしっかりと日本農業を支えていく所存です。

また、海外を含めて景観整備、美しい街、公園などの維持に取り組む井関農機に、ぜひご期待ください。一層の企業価値向上に努めてまいりますので、引き続きご支援をよろしくお願い申し上げます。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:海外売上比率を上げるにあたって、御社の強みと関税などリスクかと思いますが、他にリスクは何かありますか? またそれに対してどのように対応されていますか?

回答:2030年に海外売上高800億円、海外売上高比率40パーセント以上の実現に向け、欧州・北米・アジアを重点3地域として取り組んでいます。中でも主戦場である欧州は、60年にわたる事業実績に基づくブランド力に加え、地域ニーズに応じた製品開発力および各地域における販売・サービス網を強みとしており、売上拡大と利益率向上を同時に期待できる最重要市場と位置付けています。足元でも欧州は堅調に推移しており、上振れ余地も期待しています。

リスクとしては、関税や為替に加え、各地域の需要環境の変化などを認識しています。為替については、外貨と円貨両建てでの輸出取引や原材料等の海外調達、海外生産拠点(インドネシア)の活用などにより、為替レート変動のリスク軽減を図っています。

地域別では、足元で北米市場はやや軟調な環境にありますが、地域特性やニーズに応じた販売戦略の展開を進めています。海外売上高800億円のうち470億円以上を計画する欧州事業を成長の牽引役としており、一部地域で減速リスクが生じた場合でも、堅調に推移する欧州の伸長により全体を補完できるものと考えています。

<質問2>

質問:米価が足元で下落傾向にありますが、2027年の営業利益100億円計画は“大型機需要の継続”が前提になっているように見えます。米価が想定より下振れた場合でも、100億円を達成できる根拠はどのように考えていますか?

回答:「プロジェクトZ」においては、各種施策の検討にあたり、米価の回復は前提として織り込んでいません。その上で、国内では大型・先端・畑作・環境の4分野を成長領域と位置付けており、米以外の畑作・飼料用途への展開を進め、麦・大豆・コーンなどの作物へ対応していくことも重要と考えています。また、2027年に営業利益率5パーセントの達成に向けては、各施策の着実な実行により、75億円以上の増益効果を見込んでいます。構造改革と成長戦略を両輪として収益性の改善を図ってまいります。(詳細は次の質問にて記載)

<質問3>

質問:営業利益率が低水準ですが、プロジェクトZによる2027年の目標5パーセント達成に向けた具体的な道筋を教えてください。

回答:営業利益率5パーセントの達成に向けては、プロジェクトZにおける構造改革と成長戦略の両輪により、構造的に収益性を引き上げていく計画です。

具体的には、構造改革として「①生産・開発最適化」「②国内営業深化」「③経費削減」の取り組みを進めるとともに、「④成長戦略」により、2027年には2023年比で75億円以上の改善を見込んでいます。

内訳としては、生産最適化(生産拠点集約)、開発最適化(設計見直しによる変動費低減等)により約30億円、国内営業深化(販売会社の統合による固定費削減等)により約20億円の効果を見込んでいます。なお、変動費低減については、設計見直し前の在庫消化後に効果が顕在化するため、時間差を伴いながら二次曲線的に利益改善に寄与していく見込みです。

加えて成長戦略では、先ほどご説明のとおり、収益性の高い欧州事業の拡大や、国内における大型機比率の引き上げ等を進めています。

これらの施策を段階的に積み上げることで、トップラインに過度に依存しない収益体質へ転換し、2027年に営業利益率5パーセントの達成を目指していきます。

<質問4>

質問:最重要市場である欧州で、電動・ロボット製品の投入によりどのようにシェアを拡大し利益率を高めますか?

回答:電動・ロボット製品の投入により、従来の主力領域に加えて未参入領域の開拓を進め、シェア拡大を図っています。

欧州では景観整備を中心に電動化・ロボット化のニーズが高まっており、これらに対応した製品ラインアップを拡充することで、販売機会の拡大につなげています。あわせて、自社製品に加え他社製品も組み合わせたポートフォリオ戦略により、幅広い顧客ニーズを取り込んでいます。

収益面では、プロユーザー向け市場において当社ブランドが高く評価され、高付加価値製品として受け入れられていることから、価格競争に依存せず安定的な利益率を確保しています。

さらに、電動・ロボット製品の拡充により高単価製品の比率が上昇し、プロダクトミックスの改善を通じた収益性向上にも寄与していきます。

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