■会社概要
1. 会社概要と沿革
フィード・ワンは、肉や魚、卵、牛乳といった畜水産物の生産において欠かせない配合飼料の製造・販売を行う企業であり、畜産飼料の販売数量ではJA全農に次ぐシェア約15%を占めている。協同飼料と日本配合飼料が2014年に共同で設立したフィード・ワンホールディングスを基盤に、2015年に3社が統合して発足した会社である。協同飼料は養豚用飼料と養牛用飼料、日本配合飼料は養鶏用飼料と水産飼料にそれぞれ強みがあったため、統合によって配合飼料の販売構成に偏りがなくなり、バランスの良い事業ポートフォリオとなっていることが特長である。社風の異なる2社が組織変更や統廃合、事業基盤の再構築などを短期間で実行できたのは、TPP協定や人口減少等による国内の畜水産市場の縮小に対する強い危機感を共有できたことが大きかったという。
2017年には北九州工場(現 北九州水産工場)、2020年には北九州畜産工場をそれぞれ開設するなど積極的な投資も行い、生産性や効率性の高いプロセスにより業界での優位性を揺るぎないものにしている。全国に工場・販売拠点がありエリアごとの供給体制を確立している。研究開発にも力を入れており、海外の企業・大学とのネットワークも生かしながら業界の技術開発をリードする存在だ。2022年には、東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所の市場第1部からプライム市場に移行した。2026年3月末時点で連結子会社は16社、従業員は935名(連結)である。三井物産が筆頭株主であり、主に配合飼料原料の調達で密に連携している。
2024年には長期ビジョン及び「中期経営計画2026〜1st STAGE for NEXT 10 YEARS〜」を策定し、2025年3月期からの10年間の方向性を示した。Purposeは「飼料で食の未来を創り、命を支え、笑顔を届ける」としており、日本の動物性たんぱく質供給を支える社会インフラであることを明確に意識した内容だ。また、Visionは「『1(ONE)』にこだわり、選ばれる企業へ」とし、飼料業界のリーディングカンパニーとしての誇りと責任が表われている。なお、本中期経営計画開始からの10年間で総額約800億円の大規模投資を計画している。投資総額約130億円の水産飼料新工場(豊川工場、仮称)建設等が現在進行中である。
2. 事業内容
同社の主力事業は畜産飼料事業である。国内7事業部(北海道、東北、関東、中部、関西、北九州、南九州)で構成され、販売拠点8支店、生産工場13ヶ所を有し、年間約363万トンの飼料を製造・販売する。養鶏用、養豚用、養牛用の配合飼料をバランス良く取り扱っている。畜産飼料の年間流通量は横ばいのなかで、同社は統合後10年間で販売数量を大きく伸ばした。2026年3月期は、全社の売上構成比の77.0%、セグメント利益構成比の86.3%を占めており、同社の中核となる事業である。
水産飼料事業は、北九州水産工場を主軸とした生産体制で年間約10万トンの飼料を製造・販売し、同社シェアは約18%を占めている。低魚粉飼料や無魚粉飼料といったサステナブルな養殖業の実現に向けた製品の開発・販売に注力しており、2023年8月に販売開始した無魚粉飼料「まだいDPサステナZERO」は同社を代表する製品となっている。2026年3月期は、全社の売上構成比の8.6%、セグメント利益構成比の12.0%と、水産飼料と畜産飼料のマーケット規模の違いから相対的に低い。一方で、陸上養殖の台頭や養殖ブリの輸出などによるマーケット拡大の期待もあるため、今後の成長が期待できる事業である。
食品事業は、食肉加工(フィード・ワンフーズ(株)、(株)横浜ミート)、鶏卵加工(ゴールドエッグ(株)、マジックパール(株))の関係会社で製品を製造し、主に小売店・外食産業に販売している。2026年3月期は、全社の売上構成比の14.5%、セグメント利益構成比の1.4%と相対的に低いが、配合飼料メーカーならではの付加価値や川上から川下まで担うことでのトレーサビリティに強みを持つ。
■事業環境
国産畜水産物の需要拡大の可能性が高まるなか、配合飼料メーカーへの期待が拡大
2010年代中ごろには、TPP協定締結による輸入畜水産物の増加や人口減少などによる食料需要減少等の影響により、国内の畜産業や養殖業は縮小すると予想されていた。しかし、実際にはこの10年間、配合飼料の年間流通量は畜産飼料が約2,400万トン、水産飼料が約60万トンと、多少の増減はあるもののほぼ横ばいで推移している。なお、日本の米の年間消費量は約700万トンであることからも、配合飼料市場規模の大きさがうかがえる。また近年、日本における米の消費量が減少傾向にある一方で、国内の畜産物需要は増加傾向にある。これは、日本人の肉食需要の増加に加え、訪日外国人の増加によるインバウンド需要や、和牛の輸出拡大等が背景にあると見られ、日本の畜産業が底堅い産業であることを示している。
養殖業に関しては、日本人の魚離れが進んでいるものの、健康志向の高まりや回転寿司の人気等により、養殖魚の注目度は上昇している。天然魚の漁獲量が減少するなかでも、養殖魚は生産履歴が明確で安定供給が可能であるため、需要が高まっている。また、米国や台湾等を中心に寿司等の日本食人気が加速している。官民連携のプロモーション活動も後押しし、養殖ブリなどは毎年輸出量が増加している。
輸入畜水産物の調達懸念も国産畜水産物の需要拡大の可能性につながっている。畜水産物の自給率は、鶏卵と生乳を除き輸入に大きく依存する。一方で、円安等による輸入品の高騰や環境負荷低減のための諸外国での生産量の制限、家畜疾病対策としての防疫強化による輸入の規制などが懸念されており、国産畜水産物の需要拡大の可能性が高まる。
配合飼料の大きな特長として、食品副産物(例えば小麦粉を製粉する過程で発生するふすま等)を原料として活用している点が挙げられる。これは食品のリサイクルループの中核を担っており、資源循環型社会においても重要な役割を果たしている。
こうした状況のなか、製造業と同様に、畜水産業も高い生産効率を追求して事業の大規模化が進んでいる。たとえば、鶏肉はこの20年間で生産量が30%以上増加しているにもかかわらず、養鶏用飼料の流通量はほぼ横ばいで推移している。これは、育種改良や飼料の品質向上に伴いより少ない飼料で鶏が成長できるようになったことを示しており、配合飼料メーカーには今後も高い生産効率を支える技術力が求められている。このようなことから、同社の畜産飼料事業と水産飼料事業における技術力の優位性が今後ますます発揮されることが期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)