■フィード・ワンの事業概要
1. ビジネスモデル
同社のビジネスモデルは、大規模インフラをベースとする装置産業の側面と研究開発主導で製品・サービスを差別化するメーカーの側面がある。同社は全国に製造拠点を配置し、それぞれの拠点を中心に周辺地域へ製品を供給する地産地消型のビジネスである。こうした地域単位で安定供給を担う構造という点において、配合飼料メーカーのビジネスモデルは電力会社やガス会社といったインフラ事業者に近い性格を有している。原料価格に連動した売価設定が可能な点でも、エネルギー系企業に類似した特徴を持つ。研究開発型メーカーとしては、家畜の暑熱対策製品の開発や乳牛のゲノム解析サービス、無魚粉・低魚粉飼料の開発など様々な面で業界をリードする存在である。特に、育成期間の長い乳牛や繁殖用の家畜、生まれて間もない家畜などには配合飼料の質や機能性が求められ、同社の差別化製品の存在感が高い分野となっている。この点では、研究開発に強い食品メーカーや化学・農薬メーカーに類似する側面がある。一方で、成長期の家畜用の飼料は、カロリー供給が主目的となるため、コモディティ化しており価格競争の対象になりやすい。同社では高いシェアによるスケール効果を生かしつつ、最新の製造設備への積極投資により、この分野でもコスト競争力を築いている。
2. 畜産飼料事業
畜産飼料事業では、配合飼料の原料調達から製造・研究開発・販売までのプロセスをほぼ一貫して手掛けており、各プロセスにおいて強みを有する。
(1) 原料調達
【強み1:三井物産グループとしての世界的調達ネットワーク】
同社の売上高に占める原価の比率は約8割に上る。畜産飼料における原料の約半分はとうもろこしが占め、小麦等のその他穀物、大豆油かすが続く。とうもろこしは主産地が米国やブラジルであり、相場の変動はもちろん、為替や海上運賃の影響を大きく受ける。調達においては三井物産グループであることで適切なタイミングや価格で十分な量が確保できるというメリットがある。ちなみに、2026年3月期は、主原料であるとうもろこしのシカゴ相場が作付面積の拡大と豊作の見込みにより値を下げた影響で、同社畜産飼料販売価格も前期比で低下した。
(2) 製造
【強み2:生産基盤の強化による製品の安定供給とスケール】
畜産飼料事業は、北海道から九州まで配置された全国13ヶ所の生産工場で地域の需要を賄っており、地産地消の体制が整っている。年間約363万トンの販売数量は、市場シェア約15%にあたる。畜種別の販売数量構成比では、牛、豚、鶏が各30%超とバランスが良く、ある畜種で伝染病が発生した場合でも、他の畜種である程度カバーできるといったメリットがある。配合飼料の製造は典型的な装置産業であり、大規模な設備によるスケールメリットが効きやすく、生産性の高い施設が有利となる。同社の製造設備には築50年超の工場もあり老朽化対策が課題となっているため、2020年に最新鋭の北九州畜産工場を開設するなどの積極的な投資を進めている。販売数量が相対的に多い同社は、より低コストでの生産ができるという優位性がある。生産性の高い設備への積極的な投資を行えているのは業界でも限られており、同社の優位性はさらに高まる見込みである。
(3) 研究開発
【強み3:特許技術を搭載した製品ラインナップ】
同社は研究所を3拠点有するなど研究開発体制が整っており、差別化された製品をリリースしてきた歴史がある。搾乳のDX化に合わせた搾乳ロボット専用飼料である「ファイブギアドロップ」や育種改良が進んだ豚の課題に対応した「ストマックス」など市場の変化に応じた製品をリリースしており、多くの特許も取得している。10年以上前から暑熱対策飼料にも力を入れており、昨今の酷暑下における顧客のニーズに対応することで販売数量を伸ばしている。
(4) 販売
【強み4:全国に販売拠点を配置し顧客ニーズをきめ細かく把握できる体制を整備】
【強み5:乳牛ゲノム解析や生乳脂肪酸組成分析による最新技術を活用した顧客サービス】
同社製品の顧客は、養鶏や養豚、養牛を営む農家である。営業活動は、特約店のスタッフが行う場合もあるが、基本的には各支店の同社スタッフが行う。同社が得意とするのは提案営業・コンサルティング営業であり、畜種ごとに専門性を持ったスタッフが顧客のニーズに合致した製品を提案できる体制が整っている。研究所との連携も密で、研究所の技術スタッフが同行することも多いという。乳牛ゲノム解析や生乳脂肪酸組成分析による最新技術を活用した配合飼料コンサルティングは手厚い顧客サービスの典型事例である。
販売価格に関しては、畜産飼料業界では四半期ごとに原料価格動向に応じた価格改定が行われ、タイムラグが生じる可能性はあるもののマージンが確保されやすい構造にある。2026年3月期は原価が軟調に推移するなか、平均販売価格が前期を下回ったことに加え、販売数量が微減となり、売上高は減収となった。一方、採算を重視した販売を徹底したことによりセグメント利益は過去最高益を達成した。ROICの観点では、2026年3月期は前期比2.7ポイント増の13.3%となり、採算重視の販売により資本効率が向上したことが証明された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)