■早稲田アカデミーの業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高で前期比7.4%増の37,658百万円、営業利益で同11.6%増の3,960百万円、経常利益で同10.2%増の3,968百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同6.3%増の2,487百万円となり、売上高は15期連続増収、各段階利益は5期連続で過去最高益を更新した。会社計画比では売上高がほぼ計画どおりに着地し、営業利益及び経常利益は業務効率化と売上原価の抑制効果により、計画をやや上回った。親会社株主に帰属する当期純利益については、減損損失594百万円※を特別損失として計上したため、計画比では若干未達となった。
※ 新たに導入した会計システムにより経営管理高度化を進めており、その一環として組織体制を一部変更し、管理会計上の管理区分を見直したことに伴い、収益性が低下した校舎・教室の一部の固定資産及びリース資産について、減損損失を計上した。
(1) 部門別売上高と塾生数の動向
部門別売上高について見ると、小学部が前期比9.2%増の22,896百万円、中学部が同3.4%増の12,521百万円、高校部が同13.3%増の1,976百万円とすべての部門で増収となったが、とりわけ小学部の好調が全体をけん引する格好となった。期中平均塾生数は同4.0%増の50,837人と5期連続で増加した。内訳を見ると、高い合格実績を背景に小学部が同4.9%増の30,666人、中学部が同1.0%増の17,136人、高校部が同13.0%増の2,879人とすべての学部で塾生数が増加した。中学部については少子化の影響で受験倍率が軟化傾向となるなど逆風が続く中で、各学年ともに若干増となった。主力の小学部ではボリュームゾーンとなる4〜6年生を中心に伸長した。高校部の増加要因の大半は、「東進衛星予備校」の新規開校に伴う塾生数増加によるものだが、難関大学を目指す大学受験部の塾生数も堅調に推移した。各部門の塾生当たり売上単価について見ると、小学部が同4.1%増、中学部が同2.3%増、高校部が同0.3%増といずれも上昇した。2026年3月期は物価や講師人件費の上昇に対応するため、授業料を3〜4%引き上げた効果がでた。高校部の伸びが微増にとどまったのは、平均売上単価の低い「東進衛星予備校」の構成比が上昇したためだ。
ここ数年の塾生数拡大の要因として、難関校への合格者数を多く輩出し続けていることに加えて、コロナ禍でいち早くオンラインによる授業を開始し、その後も対面型とオンライン型の両方のサービスを選択できる「早稲アカDUAL」のサービスを継続したこと、並びに塾生や保護者との接点となる「早稲田アカデミーOnline」の機能を拡充させ、利便性や学習効率の向上に取り組んできたことなどが挙げられる。特に、中学入試における御三家中学※の合格者数では長年、不動のトップであったSAPIXとの差が2020年の2.2倍から2026年は1.2倍まで肉薄しており、近い将来に逆転する可能性も見えてきた。2026年春の合格実績は前年比87名増の697名と過去最高を更新した。業界トップのSAPIXが同48名増の861名と3年ぶりに増加に転じたが、その差は164名とさらに近づいた。高校入試においては早慶附属校で既に圧倒的地位を確立しているが、強化してきた難関公立高校についても合格者数がグループ会社も含めて順調に伸びており、中学部の塾生が増加した要因となっている。大学受験については、従来、難関大学志望の生徒を対象にしてきたが、東進衛星予備校事業を開始したことでMARCHクラスの大学を志望する生徒までターゲットを広げたことが、塾生数の増加につながったものと見られる。なお、東大合格者数は同5名増の93名と過去最高を更新し、合格率も86.6%と好成績を達成した。
※ 男子は開成、麻布、武蔵中学校、女子は桜蔭、女子学院、雙葉(ふたば)中学校を指す。
(2) 校舎展開
校舎展開としては、個別進学館は3校(2025年7月成増校(直営)、同11月綾瀬校(FC)、2026年3月王子校(FC)を新規開校し、FCを含め76校体制となった。また、東進衛星予備校も3校(2025年7月都立大学校、同10月王子校、同11月月島校)を新規開校した。子会社では幼児未来教育が運営する1歳から6歳までの未就学児を対象とした幼児教室「サン・キッズ」で、2025年4月に豊洲校を新規開校した。共働き世帯の多い湾岸エリアに位置しているため、開校当初は生徒募集に苦戦していたが徐々にキャッチアップし、3校合計の期中平均生徒数は前期比横ばいの156名となった。
(3) 営業利益の増減要因
2026年3月期の営業利益は前期比410百万円の増益となった。増減要因を見ると、売上高の増加で2,588百万円増となったのに対して、減少費目として人的投資の増加で1,012百万円(賃上げ・人員増による人件費増、研修費・採用費増)、地代家賃の増加で209百万円(新校開校、移転増床、賃料上昇)、広告宣伝費及び販促費の増加で269百万円、合宿費の増加で104百万円※、ソフトウェア償却費の増加で54百万円、その他費用の増加で568百万円となった。
※ 夏期合宿の募集対象学年を拡大した。
営業利益率は前期比で0.4ポイント上昇の10.5%となった。費用項目の対売上高比率の変動を見ると、売上原価では校舎当たり塾生数の増加に伴い、労務費率が同0.5ポイント低下したほか、地代家賃が同0.5ポイント低下した。一方、販管費は労務費が0.2ポイント上昇したほか、広告宣伝費が0.4ポイント上昇した。Webを中心に広告宣伝費を投下したほか、人気アニメーション「鬼滅の刃」とのコラボレーション施策を実施したことが要因だ。
(4) 子会社の業績動向
野田学園については、既卒生の減少傾向が続いており収益低迷が続いた。水戸アカデミーや集学舎については難関校への高い合格実績を背景に塾生数が増加し、経常利益ベースで増収増益となった。幼児未来教育は新規開校による立ち上げ費用もあって減益となった。そのほか、米子会社では日本人コミュニティとの関係構築費用が増加し減収減益、英子会社は塾生数の減少により若干の減収減益となった。子会社の業績規模(連結業績から単体業績を減算)は売上高で1,798百万円(前期比9百万円減)、営業利益で48百万円(同8百万円減)となっており、連結業績に与える影響は軽微である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)