■決算動向
1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リースの売上高は、全体の80%超を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入等)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入は、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格が含まれている。金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入益を含む)」※等の費用を引いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的である。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また、最近はノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり、「その他」のセグメントの動きにも注目する必要がある。
※ 貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入額(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、「経常利益」は「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心としたビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
費用面を見ると、2023年3月期までの「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、低金利政策の影響により調達利回りが低下してきたことが要因である。ただ、2024年3月期は海外の取り組み伸長による外貨調達の拡大等に伴い調達利回りが上昇すると、2025年3月期以降は国内金利の上昇とともに「資金原価」は3年連続で大きく増加した。また、「人物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位で推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されてきた。その結果、2025年3月期までの経常利益は8期連続で過去最高を更新した。しかしながら、2026年3月期は海外再エネ関連損失に伴う一過性損失を主因に一旦後退した。
有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、2026年3月期の自己資本比率は13%を超える水準を確保している。同社の水準は、流動性の高い「営業資産」を大量に保有するリース業界において他社と比べて見劣りせず、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
資本効率を示すROEも、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期以降は10%程度で推移してきた。2026年3月期は海外再エネ関連損失の影響を受けたものの、当該損失を除けば、実質的な資本収益性の高さに変化はない。
3. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、営業利益が前期比37.4%減の405億円、経常利益が同44.6%減の382億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同52.4%減の216億円と、海外再エネ関連の損失計上※により大きく下振れた。同様に、事業本来の業績を示す差引利益も前期比6.0%減の1,409億円に落ち込んだ。
※ 第2四半期に欧州の再エネ関連損失を計上したほか、第4四半期には第2四半期時点で業績予想に織り込んでいた北米の再エネ関連損失を計上した。特に欧州については同社参画の再生可能エネルギー事業の一部で、資金不足に伴う開発遅延が発生したことに起因する。
ただし、当該損失を除くと、差引利益は前期比11.4%増の1,669億円、経常利益は同3.8%増の716億円と、国内金利上昇による資金原価増を含む、各種コストの増加を差引利益の伸びで打ち返し、経常利益は前期を上回っている。
事業分野別の経常利益で見ると、「エネルギー環境」が海外再エネ関連の損失計上により大きく下振れたものの、「モビリティ/ロジスティクス」や「不動産」が順調に伸びた。一方、「BPO/ICT」「ヘルスケア」「航空機」についてはおおむね前期並みで推移した。
費用面に目を向けると、営業資産の積み上げに伴う調達残高の増加に加え、調達利回りの上昇により資金原価が大きく増加した。また、グループ拡大に伴って人物件費が増加したほか、海外再エネ関連の貸倒関連費用が利益を大きく引き下げる要因となった※。
※ ただし、再エネ関連を除く貸倒関連費用は低水準を維持している。
「契約実行高」については前期比19.4%増の2兆2,011億円に増加した。アクリーティブによる診療・介護報酬ファクタリングが大きく増加したほか、「不動産」も領域拡大等により順調に伸びた。また、「営業資産残高」については、再エネ関連損失計上に伴うマイナス要因があったものの、成長ドライバーに位置付ける「モビリティ/ロジスティクス」(国内・海外)や「不動産」領域を中心に着実に積み上げ、前期末比5.9%増の3兆2,531億円を確保した。
財政状態については、総資産が営業資産の積み上げに伴って前期末比7.4%増の3兆8,437億円となった一方、自己資本は同5.8%増の5,029億円に増加し、自己資本比率は13.1%(前期末は13.3%)と横ばいで推移した。また、有利子負債(リース債務を除く)は営業資産の積み上げに伴い同7.1%増の3兆66億円に増加したが、長期調達比率※は70.1%(前期末は70.6%)を確保し、長短のバランスも安定している。
※ 有利子負債に占める、長期有利子負債(社債+長期借入金+債権流動化に伴う長期支払債務)の比率。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)