■要約
矢作建設工業は、1949年に設立された総合建設会社である。建築・土木・不動産の3事業を柱に、設計から施工まで一貫して手掛ける提案力を生かし、高付加価値の事業を展開している。また、名古屋鉄道との資本関係を生かした鉄道関連工事にも強みを持っている。建築事業は、物流施設やマンション、オフィス、商業施設、工場など幅広い分野において、設計施工を一貫して担う。土木事業では、道路やトンネル、鉄道関連のインフラ工事に対応し、官民比率がほぼ半々である点が特徴だ。不動産事業では、産業用地の開発・販売を行う。産業用地開発については、造成(土木事業)・販売(不動産事業)から同地における物流施設や工場の建設(建築事業)へと展開するなど、事業間のシナジーを効果的に発揮できる点も強みである。
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高で前期比20.4%増の169,399百万円、営業利益で同58.8%増の13,742百万円、経常利益で同59.0%増の13,698百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同50.0%増の8,468百万円となり、売上高及び各利益とも過去最高を更新した。また、前中期経営計画の最終年度として、売上高、営業利益ともに計画目標(売上高130,000百万円、営業利益10,000百万円)を大幅に上回って着地した。売上面では、野村不動産(株)発注による東海大府及び千葉県野田市の大型物流施設案件が施工の最盛期を迎えたことに加え、前期に受注した大型案件の工事進捗が増収に寄与した。利益面では、建築事業及び土木事業において、完工時の物価上昇分に関する最終精算交渉が進展し価格転嫁が奏功した。この結果、売上総利益率は15.3%(前期比1.5ポイント上昇)となり、収益性が大きく改善した。
2. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高で前期比11.5%減の150,000百万円、営業利益で同34.5%減の9,000百万円、経常利益で同35.2%減の8,880百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同3.2%減の8,200百万円と、減収減益を見込んでいる。前期に複数の大型工事が完工した反動に加え、分譲マンション事業の譲渡に伴う売上消失が減収要因である。利益面では、前期に完工精算の進展により利益率が押し上げられた反動に加え、新用途案件への展開において、初期段階における設計・施工ノウハウの蓄積や顧客基盤の開拓を優先するため、短期的には利益率の低下を見込んでいる。一方で、事業譲渡益や政策保有株式売却益を見込んでおり、親会社株主に帰属する当期純利益の減益幅は限定的にとどまる見通しだ。なお、前期末の次期繰越高は過去最高水準を確保しており、また足元の中東情勢を踏まえた資材調達への影響も限定的である。一時的な業績調整局面となるものの、業績拡大基調に大きな変化はないと弊社では見ている。
3. 新中期経営計画
同社は、新たに5ヶ年の中期経営計画(2027年3月期〜2031年3月期)を策定した。「課題解決&価値創造型企業への変革」を基本方針に掲げ、最終年度となる2031年3月期に営業利益18,000百万円以上の達成を目指す。建築・土木・不動産の事業ポートフォリオ高度化を進めるとともに、リニア経済圏の成長を取り込みながら、不動産開発、人財、DX、研究開発などに5年間で総額1,000億円の成長投資を実施し、持続的な成長と企業価値向上を図る。
4. 株主還元策
同社は、継続的かつ安定的な株主還元を基本方針とし、「DOE(自己資本配当率)5%以上、かつ累進配当」を掲げている。2026年3月期は年間1株当たり100.0円(配当性向50.8%)の配当を実施し、DOEは6.0%、20.0円の増配となった。2027年3月期についても、減収減益を見込むものの、年間1株当たり100.0円(同52.7%)の配当を維持する予定で、DOEは5.6%を見込んでいる。業績変動に左右されにくい安定配当を重視するとともに、株主との対話を通じた企業価値向上に取り組む姿勢を示している。
■Key Points
・2026年3月期は売上高・各利益とも過去最高を更新、中期経営計画目標を大幅超過達成
・2027年3月期は前期の反動と事業譲渡により減収減益も、中長期の拡大基調は不変
・新中期経営計画では、2031年3月期に営業利益180億円以上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)