■冨士ダイスの今後の見通し
1. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高で前期比49.0%増の26,000百万円、営業利益で同14.9%減の700百万円、経常利益で同11.7%減の780百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.3%減の520百万円と増収減益の見通しである。
2027年3月期の売上高の会社計画は、原材料費高騰のための価格転嫁による価格改定により、中間期で前年同期比42.6%増の12,000百万円、通期では前期比49.0増の26,000百万円となっている。
また、2027年3月期の営業利益の会社計画については、材料費高騰の影響及び価格改定による販売数量の減少を見込み、中間期で前年同期比21.0%増の390百万円に対して、通期では前期比14.9%減の700百万円となっている。通期で見た場合、原材料価格高騰による大幅なコストアップを、価格転嫁のほか生産効率向上や経費削減などでカバーしきれず減益となる見通しである。一方、中間期が増益となる背景には、原料価格が大幅に上昇する前の低価格な在庫を払い出す影響が大きいと見られ、こうした在庫影響が足元の利益を下支えしていると推察される。
2027年3月期の単体ベースの主要産業別売上見通しについては、輸送用機械向けは、自動車メーカーの新モデル投入やハイブリッド車向けを中心に前期並みを見込む。鉄鋼向けは、国内は前期並みかやや減少となる一方、海外向け熱間圧延ロールは前期の反動増的な受注増を見込む。非鉄金属・金属製品向けは、エアコン関連工具・金型及び製缶金型とも前期並みまたはやや減少を見込む。生産・業務用機械向けは、半導体製造装置向けが引き続き低調となる一方、光学関連や高圧機器関連が堅調に推移する見込みである。電機・電子部品向けは、半導体封止材向けの回復を下期以降と想定するが、電池は車載向け及びデータセンター向けの需要増を見込む。金型・工具向け素材向けは、原料調達に遅れが生じている銅タングステンの受注見送りが続くなど、タングステンの需給状況や価格改定などの動向により影響を受ける可能性が高く、見通しが困難な状況にある。
同社は、2027年3月期の業績見通しは、タングステン価格の変動や価格転嫁の影響など、不確定要素が大きいため変動する可能性があり、変動が生じた際は適時開示基準に則り、適時適切に開示するとしている。
2. 原料調達の状況
足元の最大の事業リスクとして、中国がタングステンを含む重要鉱物を軍民両用(デュアルユース)の重要戦略資源と位置付けて輸出管理・規制を強化しており、中国からの輸入が事実上ストップしていることが挙げられる。こうした状況の下、特に主原料であるパラタングステン酸アンモニウム(APT)は、供給タイト化を背景に2026年3月期平均の854ドル/10kgから足元では3,000ドル/10kg台を中心とする高値圏で推移しており、物量・価格の両面から今後の生産や収益への強い圧迫要因(懸念)となっている。
同社では、国内サプライヤーや中国以外の海外サプライヤーからの調達も実施しているが、国内サプライヤーからの調達も従来比で7〜8割の水準に抑えられるなど供給量が絞られる傾向にある。このため、同社は材料利用の効率化や代替材料の研究、調達先の複線化といった対策を推進している。さらに2025年10月からは超硬耐摩耗工具・金型のリサイクル事業を開始しており、スクラップを原料として再利用するスキームの確立によって原料調達リスクの低減を図っている。同社は2026年度に重量ベースで自社製品の使用原料の10%程度をリサイクル原料で賄うことを目指している。
また、同社はこのような厳しい環境の変化への対応として、2026年6月に、ダイジェット工業(株)との業務提携契約の締結を発表した。本提携は、重要鉱物であるタングステン及びコバルトの使用量を削減した合金の拡販を目的とするものである。具体的には、両社がそれぞれ開発した低タングステン・低コバルト合金について、双方の販売ネットワークを活用し販路拡大を図る。第1弾として、ダイジェット工業が提供する「サーメタル」を、同社が素材として、あるいは加工を施したうえで工具・金型として顧客へ販売する。また、同社が製造する「サステロイ」についても、両社の販売網を活用した販売拡大に向けた検討を進める予定である。本提携は、重要鉱物の調達リスクへの対応に加え、資源調達リスクの高まりを背景とした代替材料需要を取り込み、新たな顧客開拓や販売機会の創出を通じた中長期的な収益機会の拡大にもつながる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)