■冨士ダイスの業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.1%増の17,446百万円、営業利益で同68.5%増の822百万円、経常利益で同46.5%増の883百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.6%増の573百万円と3期ぶりの増収増益となり、各利益とも会社計画を上回って着地した。
売上高に関しては、製品区分ごとに強弱があるが、超硬以外の製品を除けば総じて堅調に推移した。超硬製工具類(売上高4,340百万円、前期比3.7%増)は、人工ダイヤモンド製造や新たな素材の開発、地球の内部環境研究向けの高圧機器関連や鉄鋼向けなどの冷間圧延関連の工具等の販売が好調に推移して増収となった。超硬製金型類(売上高4,669百万円、同9.4%増)は、製缶金型や電池関連金型が前期から好調を持続するとともに、電気自動車(EV)やハイブリッド車向けのモーターコア用金型も好調であったため、前期に続き増収となった。その他の超硬製品(売上高4,897百万円、同15.0%増)は、前期好調であった半導体製造装置向け需要が落ち着く一方、新設した中国・東莞拠点を足掛かりとした新規顧客開拓などが奏功して、海外向けの超硬素材販売が増加したことなどにより、前期に続き増収となった。また、増収幅も大きく、全体への寄与も大きい。一方、超硬以外の製品(売上高3,540百万円、同8.9%減)は、半導体封止材向けの混錬工具の販売が低調となるなど減収となった。これらの結果、全社では増収を確保したものの、会社計画の17,670百万円に対しては1.3%の未達となった。
営業利益の前期比増減要因を見ると、原材料費高騰455百万円、賃上げを含む人的資本の拡充費用172百万円、設備関係費88百万円などの減益要因を、超硬素材をはじめとする増収効果851百万円、内製化による外注加工費削減36百万円、電力燃料費などの減少183百万円などの増益要因でカバーして334百万円の増益となった。会社計画比では、売上高未達の影響224百万円、原材料費高騰90百万円が下振れ要因となる一方、外注加工費削減106百万円、旅費交通費などの減少139百万円、計画人員未達による人件費削減233百万円などが上振れ要因となり、会社計画の600百万円を37.1%上回って着地した。経常利益では、営業外収益として為替差益が増加したものの、前期に計上された熊本新冶金棟建設に伴う補助金収入がなくなったことや、自己株式の取得に関する支払手数料の発生などにより、増益率は営業利益を下回っている。
2. 顧客産業分類別状況
2026年3月期の顧客産業分類別に売上高(単体ベース)の動向を見ると、輸送用機械向けでは、モーターコア用金型が好調に推移したが、一部顧客の海外向けが現地調達に切り替えられたことや、前期比反動減により28.2億円(目標達成率97%)となった。鉄鋼向けでは、海外向け熱間圧延ロールの前期比反動減があったほか、国内も低調に推移し23.6億円(同86%)にとどまった。非鉄金属・金属製品向けでは、製缶金型が特定顧客における増設ライン向け補充や開発品の量産展開もあり好調に推移したほか、2027年問題を背景とするエアコン増産に伴い溝付きプラグが好調に推移して21.0億円(同97%)となった。生産・業務用機械向けでは、高圧機器関連が特定顧客の金型寿命短命化により増加したが、半導体製造装置関連が顧客の在庫調整により大幅減となったうえ、光学関連の数量減も加わり19.3億円(同91%)となった。電機・電子部品向けでは、半導体封止材向けはパワー半導体などボリュームゾーンが低調で減少したほか、電池関連では車載用電池向けは減少したが、データセンターなどの蓄電池向けの増加が上回り17.0億円(同110%)となった。金型・工具向け素材は、EV関連向けは売上増には至らなかったが、海外(主に中国)向けの超硬素材販売が好調に推移し33.8億円(同121%)となった。
3. 財務状況、経営指標、キャッシュ・フローの状況
2026年3月期末の財務状況について、資産合計は前期末比80百万円増加して25,684百万円となった。流動資産の161百万円の増加が固定資産の80百万円の減少を上回ったことによる。主な増減内訳を見ると、流動資産では、有価証券が1,000百万円減少したのに対して、原材料及び貯蔵品が546百万円、売掛金が344百万円、仕掛品が158百万円それぞれ増加した。固定資産では、機械装置及び運搬具(純額)が94百万円、投資有価証券が72百万円、建設仮勘定が64百万円それぞれ増加したのに対して、建物及び構築物(純額)が302百万円減少した。負債合計は同383百万円増加の5,239百万円となった。流動負債の490百万円の増加が固定負債の106百万円の減少を上回ったことによる。主な増減内訳を見ると、流動負債では支払手形及び買掛金が927百万円減少したのに対して、電子記録債務が1,388百万円増加した。固定負債では、主に退職給付に係る負債が103百万円減少した。純資産合計は同302百万円減少の20,445百万円となり、主に配当金の支払いや自己株式の取得が影響した。
2026年3月期の安全性指標のうち、自己資本比率が前期末の81.0%から若干低下して79.6%となったが、依然として財務健全性は高い。また、流動比率で見ても387.9%と良好な水準にあるほか、現預金が有利子負債を上回る実質無借金経営を継続している。収益性指標では、ROAは3.4%、ROEは2.8%という水準には改善余地が残るが、売上高営業利益率は4.7%と製造業で見れば相応の水準にある。
2026年3月期のキャッシュ・フローについて見ると、営業活動によるキャッシュ・フローが1,159百万円の収入となった。これは主に棚卸資産の増加682百万円、未払金の減少463百万円が減少要因となる一方、税金等調整前当期純利益885百万円、減価償却費1,074百万円、仕入債務の増加464百万円が増加要因となったことによる。投資活動によるキャッシュ・フローは723百万円の支出となった。これは主に、定期預金の純増187百万円、有形固定資産の取得による支出829百万円が減少要因となったことによる。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出310百万円及び配当金の支払794百万円の影響が大きく1,126百万円の支出となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)