■事業概要
1. 事業ポートフォリオ概況
クロスキャットの事業は、「SI分野」「DX分野」の2つの事業領域で構成される。2026年3月期の売上構成比は、SI分野が85.8%、DX分野が14.2%となっている。
長年の実績があるSI分野に対して、DX分野は近年のトップライン伸長に寄与している。異なるビジネス特性を持つ2事業がそれぞれに事業拡大するなかで、同社の持続的な企業価値の向上を目指すビジネスモデルとなっている。2022年3月期を起点にすると、2026年3月期の売上高はSI分野が14,852百万円となりCAGR8.0%、DX分野が2,461百万円となりCAGR19.7%となっている。DX分野が着実に同社の収益源として、企業価値向上に寄与していることがわかる。
2. SI分野
(1) 事業概要
SI分野は、同社グループの中核をなす事業領域である。クレジットや銀行などの金融機関、官公庁・自治体・公共企業に加え、製造・通信・流通といった民間企業まで、社会インフラから民間サービスに至る幅広い業種を対象にシステム開発を行っている。システムの設計・開発から、運用・保守、テクニカルサポート、インフラサポート、システムコンサルティングまでを一気通貫で提供する点が特長であり、グループ各社と連携したシステムソリューション体制を構築している。
事業モデルとしては、自社のシステム開発要員を中核としつつ、富士通や(株)NTTデータグループなどの大手SIerを主要パートナーとし、金融機関や中央官庁向けの大規模案件で中核工程を担うケースが多い。要件定義・設計といった上流工程から開発・テスト、リリース後の運用・保守までワンストップで対応できる技術者層を擁し、多数の有資格エンジニアとそのエンジニアの知見を蓄積したナレッジシステムの運用、ISO9001に準拠したPMO主導の充実した品質管理体制により、ミッションクリティカルな案件においても安定稼働と障害ゼロ運用を志向する高品質なSIサービスを提供している。
このSI分野は、クレジットカード決済や銀行勘定系、保険・証券、さらには国税庁や各省庁・地方自治体向けの基幹システムなど、社会の安定稼働を支える大規模・高信頼性システムを多数手掛けてきた実績を持つ。創業以来約50年にわたり、銀行・クレジット・保険・官公庁などを中心に年間1,200件超のプロジェクトを担っており、独立系SIerとして社会インフラ領域に強みを持つポジションを確立した。
(2) 顧客の業種別構成
SI分野における顧客の業種別構成においては、金融、クレジット、官公庁・公共企業の比重が大きい。それぞれの特長や強みは以下のとおりである。
a) 金融・クレジット
同社の創業以来の軸である金融分野は、現在も売上高の18.2%を占め、安定的な収益源となっている。主に銀行や保険が顧客になるが、銀行においては、長年大規模開発の二次請けを中心に実績を積み重ねてきた実績と信頼関係がある。保険については、生保・損保ともに長年にわたり業務システムの関連、営業支援システム、顧客管理支援、保険代理支援システムなどの開発を中心に幅広く担当している。特定のベンダーに依存しないマルチベンダー対応力の高さと、フロントからバックオフィスまで幅広い業務ノウハウの蓄積が強みである。また、クレジットは国際ブランド業務に関する開発力に優位性がある。この分野は業務ノウハウの特殊性が非常に強く、業務知識を持つ人材がマーケットで限定的であるため、高い参入障壁となっている。現在では売上高の10.1%を占めている(構成比はいずれも2026年3月期)。
b) 官公庁・公共企業
官公庁・公共企業については、中央官庁を中心に事業を展開しており、2026年3月期は売上高の30.4%を占める主要な収益基盤となっている。顧客と直接取引する一次請け案件が多いことが特長となっており、主な実績としては国税庁の確定申告書等作成コーナーの開発・保守を直接受託している。これは同社規模の企業としては稀なケースであり、同社の技術力や信頼性を示す事例である。ほかにも法務省や厚生労働省などの案件や林野庁関連のクラウド関係の入札なども受注している。
公共分野における同社の強みは、品質の高さにある。2017年にはソフトウェア開発プロセスの国際的指標の最高位である「CMMIレベル5」を、国税庁プロジェクトを担当する公共ビジネス事業部公共第1部が達成した。これは、2014年の「CMMIレベル3」達成を経て、長年の業務ノウハウと組織的な高い品質管理体制が官公庁からの信頼獲得に貢献した結果である。なお現在は、不採算プロジェクトの未然防止と作業品質の確保のため、長年運用実績のあるISO9001を基にした品質マネジメントを実施している。
また、国税庁の案件などで長年培ってきた実績が、入札におけるアドバンテージとなっている。過去の知見や実績を活用できるため、他社と比較して余分なコストがかからず、効果的な入札を実施している。中央官庁以外にも、公営競技(競馬・競輪)やスポーツ振興くじ(サッカー)などで得られた特殊な業務ノウハウを活用し、他業界において専門的な知見を生かした業務運営を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)