■中長期の成長戦略
1. 「2040年ビジョン」と「10年ビジネスプラン」
アーレスティは2038年の創業100周年を見据え、「軽量化で地球の未来に貢献する」「Ahrestyで良かった!を実現する」「技術探究を続け、唯一を生み出す」を柱とする「2040ビジョン」を掲げている。また、その実現に向けた長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定しており、2031年3月期での売上高1,800億円、営業利益率4.5%の達成を目標としている。事業ポートフォリオ面では電動車売上比率55%、環境面ではCO2排出量50%削減(2014年3月期比)を目指しており、収益性向上と持続可能な成長の両立を図る。
2. 25-27年度中期経営計画の概要と進捗
(1) 22-24年度中期経営計画の成果と課題
前中期経営計画では、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「電動車搭載部品の受注拡大」「CO2削減活動の推進」を重点施策として取り組んだ。数値目標については自動車市場の変動や北米事業の低迷などにより一部未達となったものの、生産性向上や収益力強化では一定の成果を上げた。
具体的には、開発リードタイムを2022年3月期比で42%短縮したほか、CAE解析の高度化、自動外観検査装置の導入、設備稼働状況の見える化などを進めた。また、「ワンプリントマルチロケーション」の強みを生かし、日本、中国、メキシコから米国への製品補完、中国からインドへの設備移管などグローバル最適生産体制の構築を進めた。環境面ではCO2排出量を2014年3月期比で35%削減し、当初目標を上回る成果を達成した。
(2) 25-27年度中期経営計画の概要と進捗
2025年5月に公表した中期経営計画では、「Reinvent Ahresty ~未来に向けてアーレスティを再発明する~」をコンセプトに掲げている。前中期経営計画で構築した生産性向上の基盤を活用しながら、収益性を重視した経営への転換を進める。2028年3月期の数値目標は、売上高1,700億円、営業利益率3.5%(2025年3月期は2.1%)、ROE7.0%(同-5.6%)、2031年3月期での電動車売上比率55%(同42%)、CO2排出量削減41%(同35%)とした。なお、2031年3月期の目標値については、営業利益を81億円、営業利益率を4.5%としている。
a) 「SMARTなものづくり」による収益力向上
同社は25-27年度中期経営計画の最重要施策として「SMARTなものづくり」を掲げている。従来は生産数量を重視した改善活動を進めてきたが、今後は収益インパクトを重視した改善活動への意識改革を進める。同社によれば、従来のSPH(時間当たり良品個数)を中心とした指標から、VAPHを新たなKPIとして導入している。単に多く生産するのではなく、「どれだけ付加価値を創出できたか」を重視することで、収益性を意識したものづくりを生産現場の隅々まで浸透させようとしている。
また、DX活用も加速している。3Dデータを活用した見積業務の効率化、生産設備のデジタルシミュレーション、自動外観検査装置の導入拡大などを進め、総労働時間の削減と付加価値向上の両立を目指している。
b) 北米再建による収益力向上
同社では、北米事業の再建を中期経営計画における最重要課題の1つとして位置付けている。北米では、米国工場の収益性改善を中心に構造改革を進めており、2027年3月期の北米セグメント黒字化、2028年3月期の米国工場単独黒字化を目標としている。
以前から進めてきた個別製品の採算改善や品質改善活動に加え、米国・メキシコ拠点の一体運営による収益最大化を推進している。具体的には、一部間接部門業務のメキシコへの移管や機能統合、自動化の推進、生産補完体制の強化などを進めており、北米全体での最適生産体制の構築に取り組んでいる。
2026年3月期には北米セグメントの営業損失が428百万円まで縮小しており、構造改革の成果は着実に表れ始めている。今後の利益成長を左右する最大のテーマは北米セグメントの黒字化であり、その進捗が中期経営計画達成の重要なカギを握ると考えられる。
c) インドを中心とした成長戦略
同社はインドをグループにおける最重要成長地域の1つと位置付けている。インドでは自動車市場の拡大に加え、日系メーカーやTier1を中心とした電動車関連部品需要の拡大が続いている。
第2工場は稼働開始から約1年半で高稼働状態に達しており、既に能力増強や新たな投資の検討を進めている。インド工場では電動車向け製品の量産も進んでおり、今後の成長余地は大きい。
また、同社ではインドを単なる生産拠点ではなく、将来的な収益成長の中核拠点として位置付けている。日本や中国で培った生産技術や人財育成ノウハウを活用しながら、生産能力と収益力の両面で拡大を進める方針である。中長期的には、インドが成長ドライバーに育つことが期待される。
d) 電動化対応とカーボンニュートラル
同社は引き続き電動車向け部品へのシフトを進めている。E-Axleケースやバッテリーケースなどの受注拡大を進めており、2031年3月期の電動車売上比率55%を目標としている。また、カーボンニュートラルへの取り組みも加速している。国内事業所への太陽光発電設備導入を完了したほか、エネルギー源の転換や省エネルギー活動を推進している。2031年3月期にはCO2排出量を2014年3月期比で50%削減する計画であり、環境対応と収益性向上の両立を目指している。
e) 人財戦略と株主還元
人財戦略では、グローバルで活躍できるものづくり人財の育成を強化している。インド工場からトレーニーを受け入れ、国内工場での現場監督者育成を進めるなど、グローバル人財育成の取り組みを本格化している。
また、従業員エンゲージメント向上策として、2025年8月に従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度を導入した。人的資本への投資を通じて競争力を高めるとともに、2031年3月期の売上高1,800億円、営業利益81億円、営業利益率4.5%、電動車売上比率55%の達成を目指し、企業価値向上を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)