中部鋼鈑
●DAIBOUCHOU
そうしますと、その事故の影響で1、2年ほど遅れてしまったものの、時間軸が後ずれするだけで、一応これを達成しようという意思はあるということでしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
方向感は変わっていないということです。
●DAIBOUCHOU
わかりました。ありがとうございます。あと、説明にもありましたが、電炉は高炉よりも二酸化炭素の排出が少なくて非常に環境に優しいとのことです。グリーンスチールとして価格プレミアムが認められたり、あるいは脱炭素志向の顧客から選択されたりするような販売状況になっているのでしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
はい。こちらのページにあります通り、先ほどから申し上げているように二酸化炭素の排出量は高炉メーカーさんの概ね4分の1程度のレベル感であり、やはり極めて排出量が少ないのが特徴です。
そのため、直近では例えば建築向けの物件などに力を入れていますが、従来であれば「高炉材でなければダメだ」とおっしゃっていたお客様が、電炉材を検討し始めたという動きがあります。これはやはり、二酸化炭素排出量の少なさに起因していると考えています。
さらに、二酸化炭素の少ない商品として、再生可能エネルギーを充当することによって電力由来の二酸化炭素排出をゼロにする商品(「すみれす」と呼んでいます)を、昨年の6月に発売いたしました。概ね1年間ほど販売を続けていますが、現時点で件数にすると20件程度はすでに成約をいただいています。これからさらに国内の建築物件や、海外などでも販売をしていきたいと考えています。
●DAIBOUCHOU
なるほど。そうすると、もともと二酸化炭素の排出量が少ない中で、電力も環境に優しい再生可能エネルギーにすることによって、ある意味ブランド化ができたという感じでしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
はい、おっしゃる通りです。こちらには記載していませんが、いわゆる太陽光発電を契約し、そこから得られる電気をこの「すみれす」に充当しています。太陽光発電は二酸化炭素を排出しませんので、そうした価値をお客様にも提供していきたいと考えています。
●DAIBOUCHOU
わかりました。ありがとうございます。あと、今後、販売数量の拡大を目指していく上で、中長期的なターゲットとして考えられている新分野はありますでしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
はい。こちらのスライドでお示ししている内容が非常に重要だと考えています。実は、2年前に中期経営計画を作った時点では、国内の厚板需要は人口減少にともなって減っていくのではないかと見ていました。しかしながら、この2年で環境が大幅に変化しています。
新たな分野としていくつか挙げさせていただきますが、まず1つ目として、国内ではいわゆるAI・半導体の需要が爆発的な成長を遂げています。これに対しては、工場の建屋に対する鋼材の提供が挙げられます。また、これらは当然ながら莫大な電力を使用しますので、例えば現在検討が進められている洋上風力発電などへの提供も考えられます。さらに、AI・半導体を維持していく上で不可欠なデータセンターについても、日本国内で大幅に建設していく動きがあるため、ここに対する鋼材の提供が期待できます。そして、これらを支える産業機械や建設機械についても足元の需要が伸びており、これらはむしろ我々の得意分野ですので、こうしたところへの鋼材の提供が必要になってくると考えています。
2つ目として、左側に記載している造船分野です。こちらも政府の方針で、2035年に国内の建造量を倍増させるという話が出ています。弊社の製品の場合、造船用としてはサイズの問題などもあり、すべての分野をカバーできるわけではありません。しかし、例えば船の内装や、船を建造する際につかうクレーンなどの機械系のものにおいて、鋼材を提供することは可能ではないかと見ています。
3つ目として、右側に記載している輸出についてです。実は中期経営計画を作った際には、輸出についてはあまり積極的に捉えておらず、まずは国内需要を満たしていくという考えでした。しかし、今年度に入ってからは輸出についてもかなり力を入れ始めています。海外は国内と異なり、これから人口が増えていくため需要の拡大が見込まれること、また海外においても、日本と同様に「二酸化炭素排出量が少ない鋼材」に対してメリットを見出す国や地域があることから、そうした市場への販売を強化していきたいと考えています。
●DAIBOUCHOU
なるほど。そうすると、AIデータセンターを作る上での建屋を建てるための厚板ですとか、風力発電の製造に必要な厚板、それを支える建設機械の厚板といったところですね。あとは、高度経済成長期に建てられたさまざまな工場などもこれから更新時期を迎えると思うので、そうした更新需要もありそうなイメージでしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
はい、その通りです。工場もそうですし、ここに記載はありませんが、当然ながらいわゆる土木系ですね。昔作られた橋や鉄道などもそうかもしれません。いわゆる高度経済成長期に造られたものについては「そろそろ更新しなければ耐久性に問題がある」という議論が各所で出ておりますので、こういった分野は従来からも手掛けてはいますが、今後も根強い需要があると見ています。
●DAIBOUCHOU
わかりました。ありがとうございます。あと、株主還元なのですが、DOE(自己資本配当率)3.5%を方針とされているため、配当の支出が現在は当期純利益を上回る状況が続いていて、さらに自社株買いも行っているとのことです。財務面の余力は大丈夫でしょうか。
■中部鋼鈑 中尾様
はい。まず、このDOEの導入についてです。実は2024年度に策定した中期経営計画において、従来採用していた「利益のうちの一定割合を配当に回す」という配当性向の考え方から、「自己資本に対して一定割合を配当する」というDOEに切り替えました。
この背景には、電炉メーカーは原価に占めるスクラップの割合が高いため、スクラップ価格の変動によって業績が左右されやすいという構造があります。そのため、業績の振れによって配当が変動してしまうと株主の皆様としても厳しい面があることから、「できるだけ安定した配当を行ってほしい」というご要望を多くいただき、このような形に切り替えたという経緯がございます。
中期経営計画の導入時からこれを適用している一方で、先ほど申し上げた通り、電気炉の事故やその建設にともなって稼働を止めざるを得なかったという要因もあり、この1、2年は業績が少し冴えない中で、配当の比重が高くなってしまったというのがご指摘の点かと思います。
しかし、実は弊社の自己資本比率は9割近くあり、無借金経営でもあるため、財務面では極めて安定的な構造になっています。一方で、蓄積された豊富な資本を十分に利用できていない、すなわち「資本効率が悪い」というご指摘もお寄せいただいています。
中部鋼鈑株式会社×著名投資家DAIBOUCHOU氏対談動画文字起こし(5)に続く