■テノックスの事業概要
1. 事業内容
同社は基礎工事を軸とする建設事業が主力で、なかでも橋梁に使用される鋼管杭工事と、中低層ビルなど構造物に使用される柱状改良による深層地盤改良工事を得意とし、売上高の大半を占める。同社が対象とする構造物は、戸建住宅やマンション、学校、病院、商業施設、物流施設、工場、データセンターなど中低層の建築構造物と、道路・鉄道の橋梁や盛土、水処理施設、土留め、擁壁、鉄塔などの土木構造物である。工事の目的は、構造物を支えるだけでなく、耐震補強や液状化抑制、環境負荷低減、土砂崩壊抑制などにもある。同社は、こうした様々な地盤や構造物に加え施主の多彩な要望に対応するため、多くの工法や施工ノウハウを駆使し、着実で最善の基礎工事を提供してきた。近年は時代の要請に合わせて、CP-X工法やテノキューブ工法といった新工法の開発をするなど、ラインナップの幅を一層広げている。
国内の関連会社には、基礎工事に特化した建設事業を営むテノックス技研、広島組、大三島物産があり、同社に対して工事技能者集団の派遣や各種機材の賃貸を含む施工協力も行っている。海外事業では、TENOX ASIAがベトナムで建設事業を行っている。売上高の大半がこれらの建設事業で占められる。ほかに土木建築コンサルティング全般等事業があり、複合技術研究所が主力の設計・解析・実験業務を行い、その他の事業として川崎市にある不動産賃貸事業などを展開している。さらに足もとで、ジャパンホームシールドの資本・業務提携を通じて住宅市場にも乗り出した。以下に同社の主要工法の詳細を示す。
(1) 杭工法
a) ガンテツパイル工法
日本製鉄、クボタと共同で研究開発した杭基礎工法で、地盤にセメントミルク※を注入し撹拌混合して造成した固化体(ソイルセメント柱)の中央に、外面突起付き鋼管杭を圧入する合成杭工法である。特長は、ソイルセメント柱の大きな鉛直・周面支持力により少ない杭本数で構造物を支え、鋼管の特性である高い靭性によって大きな水平支持力を得、地盤を有効利用して固化体を造成するため、社会問題化している建設残土の発生も低減できる。このため、建設費を抑制したり工期を短縮したりすることができ、道路や鉄道の橋梁、水処理施設など土木分野で幅広く利用されている。
※ セメントと水を混ぜ合わせてできるミルク状のもの。
b) TN-X工法
油圧式の拡縮掘削ヘッドにより杭先端部に拡大根固め球根を築造することで大きな支持力を得る高支持力鋼管杭工法で、日本製鉄と共同で研究開発した。特長は、根固め球根によって高い先端支持力が得られるため少ない本数で大型構造物を支えることができること、鋼管杭の特性である高い靭性から大地震に強いこと、中掘り施工技術を採用しているため場所打ち杭やプレボーリング杭工法と比較して建設残土を低減できること、大口径鋼管杭を70m(施工長)の深度まで施工できること、掘削深度や掘削速度、セメントミルク注入量、拡縮翼径などをリアルタイムでモニタリングすることにより高度な品質管理が可能なことなどである。大きな杭耐力を必要とする官庁施設、病院、空港施設などの重要建築構造物や、大型物流施設、データセンターなどに採用されている。
c) ATTコラム工法
旭化成建材(株)と共同で研究開発した杭基礎工法で、比較的浅い支持層深度で用いられる。特長は、ソイルセメントコラム(柱状改良体)の中央に羽根付き鋼管杭を埋設するハイブリッド杭工法であるため、ソイルセメントコラムと羽根付き鋼管杭の相乗効果で得られる大きな周面摩擦力と高い靭性により、軟弱地盤上でも大きな水平支持力を期待できることにある。ほかに、後述するテノコラム工法を応用することで建設残土を低減できること、狭隘地での施工が可能なことも特長である。中低層建築物やアウトフレーム型耐震補強の基礎として多用されるほか、歩道橋の橋台基礎など狭い現場や狭い搬入路でも利用できるうえ、明確な支持層に着底しない浮き基礎にも対応していることが高く評価されている。
d) CP-X工法
2025年に日本ヒュームと共同開発した、TN-X工法の施工技術を活用した既製コンクリート杭高支持力中掘り拡大根固め工法である。中掘り施工技術のため、社会問題化している建設残土の発生を大幅に低減する点や施工効率の点でプレボーリング杭工法より優れ、また他社の既製コンクリート杭中掘り工法と比較して圧倒的に高い支持力を誇る。さらに、鋼管杭(TN-X工法)に加えて、既製コンクリート杭を含めた高支持力杭に対し高い経済性(材料費、施工費)を発揮できることも特長である。このため同社は、ターゲットを需要が急増しているデータセンターや物流施設などへと広げている。2026年5月8日より千葉県浦安市の現場において第一号案件がスタートしており、引き続き設計事務所やゼネコンに対して、CP-X工法の基礎杭と液状化対策工法とのセット提案やTN-X工法との比較提案など、積極的な営業活動を展開している。
(2) 地盤改良工法
a) テノコラム工法
建築物の基礎工法として地盤改良が認知される先駆けとなった工法で、1984年に同社独自で特許を取得した。スラリー状※にしたセメント系固化材(固化材液)を地盤に注入し、機械的に撹拌混合することでソイルセメントコラムを築造する。特長は、土質を選ばず均一な強度のコラムを築造できること、コラム径や施工機械のラインナップが幅広いため施工仕様や現場条件に合わせられること、リアルタイムの施工管理システムによって工期短縮やコスト削減を図れること、低振動・低騒音に加え地下水汚濁や二次公害のない環境にやさしい工法であることなどである。戸建住宅やマンション、商業施設、中低層建築物、工場など様々な建築物の基礎に採用されるだけでなく、液状化対策や円弧滑り防止など用途は多岐にわたる。阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震といった大地震の際、テノコラム工法を基礎に採用した構造物が無被害だったことから同工法への信頼性が改めて高まり、これまでの施工実績は4万2,000件超を誇る。
※ セメントと水を混ぜ合わせてできるミルク状のもの。
b) テノキューブ工法
スラリー式浅層混合処理地盤改良工法で、2025年に自社開発した。同社が得意とする深層のテノコラム工法を組み合わせることで、従来以上に様々な地盤改良工事に対応することができるようになった。もちろん単独で利用することもできる。また、粉体方式に比較して粉塵の飛散がなく、セメントの混じった残土(産業廃棄物)を大幅に低減でき、独自の施工管理システムにより進捗を可視化できるため、テノコラム工法同様に高い信頼性を実現している。一般的に同一現場でも支持層深度が異なる場合が多く、2工法を併せ持つことで対応可能な工事が増えるため、設計業者やゼネコンにとって利便性が高まる。近年、静岡県熱海市の建設残土の不正な盛土による土石流災害や環境問題を背景に、両工法への注目度が高まっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)