■事業概要
ヒーハイストの主要事業は「直動機器」「精密部品加工」「ユニット製品」の3領域に分けられている。2026年3月期の分野別売上高は、直動機器が1,058百万円(売上構成比64.7%)、精密部品加工が345百万円(同21.1%)、ユニット製品が232百万円(同14.2%)であった。
1. 直動機器
直動機器とは、直進する力を可能な限りスムースに(摩擦抵抗を少なく)伝えるための精密部品であり、主に各種の工作機械や半導体製造装置等に使われる。同社製品としては、次世代型リニアボールブッシュUTB(Utility Track Ball)、リニアボールブッシュ、ボールスプラインユニットなどがある。この分野の売上高の約90%がTHK向けのOEM販売で、同社から製品を仕入れたTHKが自社ブランドで世界各地へ販売している。残りの約10%が自社販売だが、このなかには大手ルアーメーカー向けも含まれている。
OEMとはいえ、注文は「定期」プラス「スポット」で入る。生産効率を高めるため見込生産を行い、一定量の在庫を保有しているが、近年は型番も増加し多品種少量の傾向が強まっているため、利益面ではやや厳しさが増している。需要(売上高)はTHKの販売状況に左右されるが、最終的にはFA市場(工作機械やロボット等)の動向や半導体製造装置等の設備投資動向に影響される。一方で、ルアー向けはどちらかと言えば「趣味の世界」であるため、受注動向は景気の変動とは異なる場合もある。
2. 精密部品加工
レース用車種向け、研究開発用、試作用などの特殊・特注部品を製造しているが、現在では約95%がホンダ向けである。したがって売上高は、ホンダの新製品開発や各種レース(特にF1)への関与度に大きく左右される。様々な複雑かつ精密な加工に加えて短納期も要求される場合が多く、多種類の工作機械を保有する必要がある。その結果、どうしても機械の稼働率は低くなってしまうが、このような難しい注文に対応していることが顧客(ホンダ)からの信頼につながっている。ホンダは、一時期F1レースから撤退していたが、2026年からAston Martin HondaでF1に参戦している。
3. ユニット製品
直動の技術と軸受の技術を組み合わせた製品で、精密位置決め装置、アライメントステージ(XYθステージ、XYθZステージ)、球面軸受などがある。液晶や有機ELなど、正確な貼り合わせ(位置決め)を必要とする装置などに使われる。この分野の多くは中国の中堅LCDメーカー向けとなっていたが、近年、電子デバイスの組立工程等にも採用されている。ユニット製品の多くは半導体製造装置等に組み込まれるため、需要はこれら業界の設備投資動向に左右される。
4. 特色、強み、競合
(1) 高い技術力
同社の最大の特色は、精密部品加工における長い歴史と高い技術力だろう。前述のように過去においても数多くの特許を取得しており、このように蓄積された経験と技術力がホンダをはじめとした主要顧客から評価されていると言える。
(2) 大手顧客との信頼関係
THKやホンダとの長い取引が続いているが、このような大手顧客との付き合いや信頼関係も同社の技術力を高めるうえでは強みと言える。
(3) 競合
同社の製品は、顧客からの直接受注が中心のため直接競合する企業は多くはない。あえて競合企業として挙げるとすれば、直動機器におけるミスミグループ本社や日本ベアリング(株)などがある。
しかし同社にとっての本当の意味での競合は、むしろ技術革新そのものだろう。技術革新によって新しい部品が登場することで、同社製品の需要が減少することはあり得る。その意味では、同社自身が常に新製品、新市場(顧客)の開拓に努めることが重要になってくるだろう。
(4) 人材への積極的な投資
同社のもう1つの特色(強み)は、高い技術力、高シェア(競合が少ないこと)を背景として、積極的に人材投資を行っていることだろう。その成果として、(株)日本経済新聞社が2019年4月に売上高100億円以下、従業員50人以上の上場企業563社を対象として行った「過去3年間で平均給与を増やした会社」の調査で第18位に選ばれた。現在の同社の平均年間給与は484万円(2025年3月末現在)となっている。さらにインセンティブ型の報酬制度や優れた提案に対して手当を支給する仕組みなど、社員がやりがいを感じる環境を整え、技術や効率を高めている。
■業績動向
2026年3月期は減収減益。直動機器の産業用機械関連での需要回復遅れなどが影響
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、売上高が1,636百万円(前期比27.1%減)、営業損失が262百万円(前期は121百万円の損失)、経常損失が299百万円(前期は189百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が718百万円(前期は203百万円の損失)となった。当期純損失の金額が大きくなっているのは一部の生産設備の減損損失(413百万円)を特別損失として計上したことによる。
直動機器は、主力の産業用機械関連の需要回復遅れが影響し売上高は前期比22.5%減となった。精密部品加工は、レース用部品のレギュレーション変更に伴う影響を受け、同49.2%減となった。ユニット製品は、半導体関連装置向け案件への対応によりステージ製品の売上が増加したことに加え、既に実施していた球面軸受の販売価格引き上げの効果が寄与したことにより、同16.9%増となった。
売上総利益率は12.1%(前期は14.9%)と低下し、大幅減収であったことから売上総利益は197百万円(同40.8%減)となった。販管費は、経費節減に努めたものの459百万円(同1.0%増)となり、売上総利益を上回ったため、営業損失を計上した。また監査法人の指導もあり、一部の生産設備の減損損失413百万円を特別損失として計上したことから当期純損失が拡大した。
設備投資額は120百万円(前期124百万円)と前期並みとなった。主な投資は機械装置及び運搬具、工具・器具及び備品、リース資産である。減価償却費は前期から定額法に変更したこともあり、195百万円(同183百万円)となった。
営業利益の増減要因としては、販売数量の減少で608百万円の減益、原材料価格の安定化で143百万円の増益、外注費の減少で147百万円の増益、販管費の増加で4百万円の増益、為替やその他要因で173百万円の増益であった。
2. 品目別状況
(1) 直動機器
主要顧客であるTHK向けが弱含みで推移したことから売上高は1,058百万円(前期比22.5%減)となった。THKの向け先である工作機械業界や半導体製造装置等の産業機械向けが低迷したことが主要因と思われる。
(2) 精密部品加工
新たな受託加工の取り込みに努力したもののレース用部品のレギュレーション変更に伴う影響を受けて売上高は345百万円(同49.2%減)となった。
(3) ユニット製品
半導体関連装置向け案件への対応によりステージ製品の売上が増加したことに加え、既に実施していた球面軸受の販売価格引き上げの効果が寄与したことにより売上高は232百万円(同16.9%増)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)