店舗網の拡大を続ける企業の決算を見るとき、営業利益だけでその実力を判断するのは難しい。出店型のビジネスでは、店舗設備の減価償却費やリース関連の費用負担が重く、会計上の営業利益は実際のキャッシュを稼ぐ力よりも小さく見えやすいためだ。こうしたケースで有効なのが、償却前の利益を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)である。本稿では、出店を継続しながらEBITDAでみた収益力を高めている上場企業3社を取り上げ、その中身を読み解く。
■なぜEBITDAで見るのか
新規出店を続ける企業では、店舗の内装や設備への投資が減価償却費として長期にわたり費用計上される。成長のための投資に積極的であるほど、損益計算書上の営業利益は圧縮されて見える構造にある。EBITDAは減価償却費等を足し戻した利益指標であり、事業そのものが生み出すキャッシュ創出力を、会計上の償却負担に左右されずに把握できる。国内でも出店型・設備型のビジネスを展開する企業を中心に、EBITDAを経営指標として開示・重視する動きが広がっている。
今回は「出店を継続していること」「EBITDAまたは同利益率が改善傾向にあること」という視点で、業態の異なる3社をピックアップした。
【1社目】RIZAPグループ――EBITDAは3年で9.4倍、利益率は減収下でも3ポイント改善
1社目は、コンビニジム「chocoZAP」を展開するRIZAPグループだ。同社の2027年3月期第1四半期のEBITDAは65.9億円。3年前の同四半期は7億円であり、この間に9.4倍へ拡大した計算になる。chocoZAPの店舗網が収益基盤として立ち上がってきたことを反映した数字といえる。
注目すべきは利益率の変化だ。売上高に対するEBITDAの比率は、前年同期の14.9%から17.9%へと3ポイント改善した。同四半期は減収であったにもかかわらず比率が上がっており、売上規模の拡大に頼らず、店舗網そのものの収益性が高まっていることを示している。
投資の手を緩めた結果ではない点も確認しておきたい。同社は当第1四半期に出店に伴う先行投資1.3億円を費用計上したうえで、営業利益を前年同期の4.1億円から7.9億円へと約2倍に伸ばした。先行投資を足し戻した実質ベースでは9.2億円、約2.2倍となる。成長投資を絞って利益を捻出したのではなく、投資を継続したまま利益成長を実現している。減価償却負担を除いたEBITDAの利益率改善と、先行投資込みでの営業増益。二つの角度から見えてくるのは、chocoZAPの店舗網が投資回収の段階に入りつつあるという構図である。
【2社目】トリドールホールディングス――調整後EBITDAは過去最高を更新
2社目は、「丸亀製麺」を国内外で展開するトリドールホールディングスだ。同社は経営指標として調整後EBITDAを開示しており、2026年3月期は524.6億円(前期は496.1億円)と前期比5.7%増で過去最高を更新した。売上収益2,787.1億円に対する比率は18.8%となり、前期の18.5%から改善している。
国内外での出店を継続しながら、海外事業では不採算店舗の整理を含むポートフォリオの見直しを進めており、償却前の稼ぐ力を維持・拡大しつつ事業の質を高めるフェーズにある。2027年3月期は営業利益170億円(前期比60.7%増)を計画しており、これまでの投資が利益として顕在化する局面が視野に入る。
【3社目】ラウンドワン――償却前でみると際立つ「稼ぐ力」、米国出店を加速
3社目は、ボウリングやクレーンゲームなどの複合エンターテインメント施設を国内外で展開するラウンドワンだ。大型施設を自ら構えて運営する同社は減価償却費の負担がとりわけ重い業態で、2026年3月期の減価償却費は432.7億円と、営業利益287.7億円を大きく上回る。それだけに、償却前の稼ぐ力を示す調整後EBITDAでみると景色が変わる。同期の調整後EBITDAは734億円(前期は708億円)と過去最高を更新し、売上収益1,895.4億円に対する比率は38.7%に達する。
成長投資の主戦場は米国だ。2026年3月期末の店舗数は連結161店舗(うち米国59店舗)で、2027年3月期は172店舗への拡大を計画し、調整後EBITDAも787億円を見込む。積極出店による償却負担が先行するなかでも償却前の利益成長を続けており、営業利益だけでは実力を測りきれない出店型企業の典型例といえる。
■まとめ――「投資回収の入口」に立つ企業に注目
3社に共通するのは、出店・成長投資を続けながら、償却前の利益であるEBITDAでみた収益力を高めている点だ。会計上の営業利益は投資の重さで実力を過小に映すことがあるが、EBITDAという物差しに持ち替えると、各社の稼ぐ力の変化がより鮮明になる。
なかでもRIZAPグループは、EBITDAが3年で9.4倍、利益率は減収下でも3ポイント改善と、変化の幅が3社の中で最も大きい。大型投資の先行フェーズをすでに通過し、投資を続けたまま増益率を示せる段階に入っている点で、EBITDAの改善が今後の営業利益の伸びに転化していく余地は大きいとみられる。出店型企業の実力を測る際は、償却前の稼ぐ力に注目していきたい。
3年間でEBITDA9.4倍のRIZAPなど、営業利益だけでは見えない「稼ぐ力」を持つ出店企業3選
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