■ダイナムジャパンホールディングスの会社概要
2. ダイナムジャパンホールディングスグループの特長と強み
同社グループの主な特長及び強みとして、1) 国内トップの店舗数、2) ローコストオペレーション、3) 顧客視点の経営、4) 高い資金調達力の4点が挙げられる。これらの強みは個別に存在するだけでなく、相互に補完・強化し合う関係にある。各要素が連動することで相乗効果を発揮し、独自の競争優位性を形成している。
(1) グループ店舗数は423店舗と国内最大手
警察庁「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」によると、全国のパチンコ・パチスロ店は2025年12月末時点で6,464店舗(前年比242店舗減)となり、ピークだった1995年の18,244店舗から4割弱の水準にまで減少した。娯楽の多様化や人口の減少に加えて、2020年のコロナ禍を契機に経営環境が一段と厳しくなったことが背景にある。同社グループの店舗数も2019年3月末の450店舗をピークに2026年3月末時点で423店舗とやや減少したが、国内トップの店舗数を維持している。集計時期のずれによって厳密な比較ではないものの国内シェアは年々上昇しており、2026年3月末の業界シェアは店舗数、遊技機設置台数ともに前年同月末比0.1ポイント上昇し、6.5%となった。なお、10年前の2016年3月末における店舗数の業界シェアは3.9%であった。
同社グループは、出店戦略として店舗形態を標準化し、賃料を抑制できる地方の人口集積地(人口3~5万人の商圏)へ集中的に出店することで多店舗展開を進めてきた。このスケールメリットにより、遊技機や景品などの購入コストを抑制している。店舗数が多いということは遊技機の購入台数も多いため、遊技機メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)の強さにつながっている。また、PB(プライベートブランド)機の開発及び導入も積極的に進めている※。
※ 2026年3月末のパチンコ設置台数に占めるPB機設置割合は11.8%。
さらに、全国16ヶ所に各々30店舗前後をカバーする物流センターを設置し、店舗間で機種を相互に融通し合うことで遊技機購入費の抑制及び物流コストの低減につなげている。こうした機動的な機種の入れ替えにより、顧客ニーズに応じた品揃えへの変更など柔軟な店舗運営を実現しており、集客増とコスト削減を両立できる体制を構築している。
(2) ローコストオペレーション
チェーンストア理論に基づくローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含むすべての施策の実現性及び有効性を支える重要な要素であると、弊社では考えている。
パチンコ事業の主要経費は遊技機購入費(減価償却費を含む)及び人件費であるが、同社ではこれらの直接的な費用の削減にとどまらず、少人数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システムの導入、新規出店の標準化など、多方面にチェーンストア理論を適用している。これにより、同社グループ全体としてのローコスト化を実現している。
前述のとおり、同社は国内トップの423店舗を展開している。これは積極的な多店舗展開策の結果であり、それを可能とした基盤もチェーンストア理論である。
(3) 顧客視点に立った経営の実践
店舗数の増大がスケールメリットによるコスト削減につながる好循環に加え、顧客視点に立った経営についても同理論をベースに構築されていると見られる。同社は5つの経営方針の1つに「顧客第一主義」を掲げ、実践している。理念の徹底による差別化は同社グループの特長の1つとして挙げられる。
同社の様々な経営施策のなかでも「低貸玉営業」と、「射幸性に頼らない営業」の2点は、同社の経営方針や成長戦略を理解するうえで重要な要素となっている。
a) 低貸玉営業
低貸玉営業とは、パチンコにおいて、通常の貸玉料である4円よりも安価な1円もしくは2円で玉を貸し出す営業形態を指す。この方式では、来店客は同じ料金でより多くの玉を借りて長く遊ぶことが可能となる。地域社会のインフラとして、パチンコを誰もが気軽に楽しめる日常の娯楽とすることを目指す同社にとって、低貸玉店舗の拡大は合理的な施策である。
2026年3月末の低貸玉店舗数は252店舗と、全体の59.6%を占める。2021年3月期以降、コロナ禍で主要顧客ターゲットであるシニア層の客足低迷により低稼働が続いていた不採算店舗の閉店を進めたため、ピーク時※よりも店舗数や比率はともに低下している。しかし、中長期的には高齢者人口の増加によりシニア層の客数が回復すると見られるほか、全般的に射幸性よりも娯楽性を求める傾向が強まっていることもあり、低貸玉店舗の比率を高める方針に変わりはない。この戦略を継続するには相応の企業体力が必要であるが、同社はその基盤が多店舗展開及びローコストオペレーションの実践によって構築されている。
※ 2019年3月末時点の低貸玉店舗数は274店舗、低貸玉店舗比率は60.9%。
b) 射幸性に頼らない営業
「射幸性に頼らない営業」とは文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心戦略としないことを指している。遊技機には大当たりの確率が高いものから低いものまで様々な種類があり、確率が低い機種ほど大当たりした際の出玉数が多くなる。パチンコ店では、一般的にコアなファン層の嗜好に合わせて高射幸性機種の構成比を高めて集客を行うことが多い。しかし同社は、高射幸性機種の割合が業界平均に比べて低く、最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20ポイント以上高い。このように、射幸性に頼らない店舗運営を特徴としている。
同社グループの顧客の年齢層別構成比を見ると、来客数のうち4割強がシニア層、4割弱が40~50代のミドル層、2割弱が10~30代の若年層となっている。これらを踏まえ、同社は今後さらに幅広い客層に支持される店舗環境の構築に取り組む方針を掲げている。
(4) 上場企業の強みを生かした資金調達力
同社は2012年に、パチンコホール業界で初めて香港証券取引所への株式上場を果たした。約1,600社とされるパチンコホール企業のなかで、株式を上場しているのは同社を含めて2026年3月末時点で3社にとどまっている。今後予想される業界再編において、M&Aでの主導権を握るための重要な条件の1つが資金調達力である。同社は2015年11月の夢コーポレーション(株)のグループ化に際して、上場企業としての優位性を生かし、全株式を株式交換により取得した。M&Aに限らず、店舗投資や新規事業展開などによる資金需要に対して上場企業としてのメリットは大きく、資金調達力の面では今後も有利に働くと見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)