■中期経営計画
1. 中期経営計画「VISION2026」
property technologiesは、2024年11月期にスタートし2026年11月期を最終年度とする中期経営計画「VISION2026」を策定している。そのなかで、サステナブルな未来を創造する基盤を構築するため、成長戦略として仕入の質的向上、販売の質的向上、コアコンピタンス強化を掲げるとともに、ビジネスの質にこだわった成長と、独自データベースの拡張やAI査定の精度向上、新たな顧客サービスを展開する素地の獲得を目指している。数値目標は2026年11月期に売上高600億円、営業利益28億円、親会社に帰属する当期純利益14億円、純資産比率20.0%、ROE14.6%としている。2030年に向けて、最適な住まいを得られる取引環境の創出、価値ある中古物件の循環を促進する仕組みの構築、情報を軸とした協業に基づく新たなビジネスモデルの実現を目指すとともに、「KAITRY」を定着させて精度と透明性の高い価格査定を確立し、より安心で簡便な不動産取引を実現する考えだ。
なお、コロナ禍後に人流が都心に回帰するなか、売れるマンションと売れないマンションの差が急速に明確になった。量を確保するなかで長期在庫が増加したため、同社は中期経営計画の途中で仕入を「厳選仕入」に変更した。具体的には、主要KPIを件数から金額へ変更するとともに、本社のデータベースを活用することで、地域に合った物件をどの支店も同様の精度で厳選し、長期在庫の可能性のある仕入を排除した。こうして始まったスタンダードマンションの厳選仕入は、同社のデータベースが質量ともに利用できるレベルにあり、トライしていたプレミアムマンションの収益貢献が見え始めたことから早期に定着した。
2. 中期経営計画の進捗
残すところ数ヶ月となった中期経営計画の進捗は、スタンダードマンションの厳選仕入と長期在庫の処理が進展したことで、保有在庫ポートフォリオを高収益な構成へと転換し、基盤となるリアルビジネスの収益強化が進んだ。プレミアムマンションでは、高級都心マンションの環境変化を受け、様々なタイプの商品シリーズを投入したことで、高付加価値の“眺望シリーズ”のビジネスフローを確立して一定量の販売につながった。ソリューションについては、事業としての可能性が広がってきたことから、専門チームを組成するに至った。
テクノロジー関連では、AI査定の精度向上に加えて、PropTech-Labを立ち上げて「KAITRY finance」の導入先確保や用途拡大を進めた。また、テクノロジーの背景にあるデータサイエンス面で、PropTech-Labと一橋大学インデックスマップラボの共同研究としてマンションデータベースの整備を進め、緯度経度の特定から部屋の方角、外部データによる周辺環境の数値化などにより、全国17万棟のマンションを1棟1棟特定してデータベース化した。他にない貴重なデータベースを構築しただけでなく、リアルビジネスでの活用を進めたため、従業員一人ひとりのデータに対する理解が促進され、厳選仕入の成功にもつながった。
3本柱を成長ドライバーにさらなる成長へ
3. 2027年11月期以降の成長イメージ
従来の主力であったスタンダードマンションの在庫内容が良化しただけでなく、プレミアムマンションやソリューションなど打ち手が増え、成長ドライバーが3本となった。2027年11月期に向けては、スタンダードマンションは、販売単価が上昇するなか顧客ニーズに合わせ、仕入〜リノベーション〜販売のビジネスフロー全般を高度化、主力ビジネスとして安定した収益を確保し、さらなる業容拡大を目指す。特に厳選仕入は、2027年11月期は2026年11月期以上に効果が顕在化する見込みだが、テクノロジーを生かした早期販売や外部データの利用などを全店で推進できれば、効果は想定以上に大きくなると見られる。プレミアムマンションについては、港区や中央区、千代田区といった23区中心部などで、外国人に依存しない日本人実需に適した5億円程度の物件の仕入れを増やし、時間をかけてじっくり売っていく方針だ。加えて、販売単価は1〜2億円と低くなるが、パワーカップル向けのコンパクトな物件や、沖縄や福岡など地方の厳選物件にも進出する。ソリューションについては、これまで経営トップが中心になって大型の物件を仕込んできたが、今後は組織化してチームで対応し小型物件にまでターゲットを広げることで、持続性のある事業として2027年11月期には本格稼働する考えである。このように現中期経営計画の様々な効果が2027年11月期に顕在化すると見られ、成長の足取りが確かになってきており、次期中期経営計画が楽しみとなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)