■ラクト・ジャパンの業績動向
1. 2026年11月期中間期の業績概要
2026年11月期中間期の連結業績は、売上高で前年同期比2.7%増の97,866百万円、営業利益で同22.1%減の2,781百万円、経常利益で同35.4%減の2,475百万円、親会社株主に帰属する中間純利益で同37.5%減の1,748百万円となった。売上高は過去最高を更新した一方、利益面では前年同期に計上した受取補償金の反動や販管費の増加などにより減益となったが、経常利益は計画を10.0%上回って着地した。
売上高は、ライフサイエンス事業部門及びアジア事業のチーズ製造販売部門が好調に推移したことに加え、円安による販売単価の上昇も寄与した。一方、主力の乳原料・チーズ部門では、最終製品の値上げや国産脱脂粉乳在庫の増加などを背景に輸入原料の需要が減少し、販売数量は減少したものの、売上高は前年同期並みを維持した。
営業利益は、人件費や物流費の上昇、本社移転関連費用の計上などに伴う販管費の増加に加え、乳原料・チーズ部門の一部商品で営業関連費用を先行計上したことから減益となった。また、経常利益については、前年同期に計上した受取補償金650百万円の反動減も減益要因となった。一方で、シンガポール新工場の竣工遅延に伴う減価償却費や支払利息、新基幹システム関連費用などの計上時期が後ずれしたことから、経常利益は期初計画を上回って着地した。
2. 事業部門別の動向
(1) 乳原料・チーズ部門
乳原料・チーズ部門は、売上高が前年同期比横ばいの62,693百万円となった一方、販売数量は同5.6%減の81,952トンとなった。最終製品の値上げや国産脱脂粉乳在庫の増加を背景に輸入原料の需要が減少したものの、円安による販売単価の上昇が数量減少を補い、売上高は前年同期並みを維持した。
同部門では販売数量の拡大よりも収益性を重視した事業運営へ転換を進めており、高付加価値商材の販売比率が上昇している。低収益のコモディティ商材を縮小し、収益性の高い商材へ営業資源をシフトした結果、販売数量が減少するなかでも数量当たりの収益性は向上している。
(2) 食肉食材部門
食肉食材部門は、売上高が前年同期比2.9%増の11,893百万円、販売数量が同3.3%増の16,713トンとなった。豚肉を中心に食肉原料を取り扱う同部門は、国内食品メーカーや外食産業向けを中心に安定した需要を取り込むとともに、鶏肉加工品や前年度より取り扱いを開始した香辛料・香辛料抽出物の販売数量が増加し、売上高・販売数量ともに前年同期を上回った。
(3) ライフサイエンス事業部門
ライフサイエンス事業部門は、売上高が前年同期比67.1%増の6,316百万円、販売数量が同40.4%増の4,273トンとなり、全事業部門の中で最も高い成長率となった。同部門は中間期の増収に最も大きく貢献した。高たんぱく原料は世界的な需要拡大を受け需給が逼迫しており、それに伴い調達価格も上昇している。上期は計画どおりに進捗しており、数量の拡大に加えて商品単価の上昇も増収に寄与した。
(4) アジア事業・乳原料販売部門
アジア事業の乳原料販売部門は、売上高が前年同期比4.5%減の11,854百万円、販売数量が同8.4%減の18,943トンとなった。フィリピンにおいて競争激化により一部取引先への販売数量が減少したことなどが主な要因。なお、足元ではアジア各地への営業体制を強化している。既に拠点を配しているシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、中国に加え2026年10月にベトナムにおいて販売子会社を設立する予定があり、今後さらなる販売拡大を進める方針である。
(5) アジア事業・チーズ製造販売部門
アジア事業のチーズ製造販売部門は、売上高が前年同期比22.6%増の3,851百万円、販売数量が同11.2%増の3,143トンとなった。販売数量の拡大に加え、生産効率の向上により好調に推移し、全社増収に寄与した。同部門は利益率も高く、数量増加による製造効率の改善により利益率が改善した。また、シンガポール新工場は当初計画より竣工が遅れているものの、需要は引き続き旺盛であり、既存工場での運用を再構築し増産対応を進めている。新工場の本格稼働後は製造能力の拡大を通じてさらなる成長を見込んでいる。
3. 財務状況
(1) BS推移と財務構造の変化
2026年11月期中間期末の資産合計は前期末比10,161百万円増の100,371百万円となった。流動資産は同7,644百万円増の90,796百万円となり、現金及び預金が1,497百万円、棚卸資産が6,680百万円それぞれ増加した。一方、受取手形及び売掛金は240百万円減少した。固定資産は、有形固定資産を中心に2,517百万円増加し、9,575百万円となった。これは主にシンガポール新工場への投資などによるものである。
負債合計は前期末比9,224百万円増の66,985百万円となった。コマーシャル・ペーパーが4,000百万円、長短借入金が合計2,257百万円増加するなど、有利子負債は成長投資に伴い増加した。一方、純資産は利益剰余金の積み上がりなどにより937百万円増の33,385百万円となった。この結果、連結自己資本比率は33.3%と前期末比2.6ポイント低下したが、これは成長投資に伴う資産及び有利子負債の増加が主因であり、財務基盤に大きな変化はないと弊社では見ている。
(2) 運転資金構造と資本効率の評価
棚卸資産は前期末比6,680百万円増加したが、第2四半期は輸入枠の活用などにより例年在庫が積み上がる季節性があることに加え、2026年11月期中間期は月末が休日となった曜日要因も影響したようだ。また、在庫増加は事業規模の拡大に伴う側面が大きく、同社では財務上の問題はないとしている。さらに、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は前期末比でおおむね横ばいを維持しており、運転資本管理は適切に行われているようだ。
同社ではROICマネジメントが経営陣だけでなく営業現場にも浸透しており、在庫を過度に積み増さない意識が定着しつつある。また、2026年3月にはコミットメントラインを増枠するなど、売上高増加に備えて運転資金を機動的に調達する体制を整えた。シンガポール新工場や基幹システムへの投資を積極的に進める一方、運転資本及び資金調達を適切に管理しており、成長投資と財務健全性のバランスが取れた財務運営を実践していると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)