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ラクトJPN Research Memo(4):乳原料・チーズ部門が収益基盤、ライフサイエンス事業部門が成長けん引(2)

■事業概要

3. 経営戦略の評価
(1) 外部環境分析
1) 市場環境
ラクト・ジャパンが主戦場とする輸入乳製品市場は、国民生活に不可欠な基礎的食料を支える市場であり、他の市場と比較し、景気変動の影響を受けにくいという特性を有している。その中で同社は、日本の輸入乳製品市場においてトップクラスのシェアを確保しており、量的基盤は既に十分に構築されている。一方で、成長の余地は周辺領域に存在する。具体的には、健康志向の高まりに加え、世界的な高たんぱく需要の拡大が続いている。一方、乳由来高たんぱく原料は供給量を機動的に増やしにくく、需給逼迫が継続しやすい構造にある。このため、数量の増加だけでなく、単価上昇や高付加価値化を通じた市場成長が期待される。同社は、乳由来の高たんぱく原料などを中心に取り扱うライフサイエンス事業並びにアジアにおけるチーズ製造販売事業を成長ドライバーと位置付け、安定収益基盤を有する市場と将来の成長を担う市場を組み合わせたポートフォリオを形成している。

2) 競合環境
輸入乳製品は、品質管理・制度対応・調達力のいずれにおいても参入障壁が高い市場である。加えて、同社の主な競合となる大手総合商社が幅広い事業領域に経営資源を配分する一方、同社は乳製品原料に専門性を集中しており、その継続性が差別化要因となっている。その結果、同社は競争が激化する環境に置かれているというよりも、競合の戦略的関与が弱まるなかで相対的優位性を高めてきた立場にある。これは、専門性の高い分野に経営資源を集中し続けてきた同社の戦略的一貫性の成果と言えよう。

(2) 内部資源分析
1) 歴史的背景に裏打ちされた調達力と顧客基盤
同社の最大の内部資源は、創業以来連綿と受け継がれてきた歴史的背景にある。乳製品輸入の黎明期から市場に関与してきたことで、主要サプライヤーとの長期的関係性並びに国内食品メーカーとの強固な顧客基盤が形成されている。乳製品は、調達先が欧州・オセアニア・北米と限られ、しかも各地域で寡占化が進んでいる。同社はこれらの有力サプライヤーと長年の取引関係を構築しており、需給調整や品質対応を含めた「パートナー」として認識されている点が、他社との優位性を生んでいる。

2) 価値共創型ビジネスを実現する高度専門人材
乳製品は、異物混入、微生物管理、温度管理など、取り扱い難度が極めて高い商材である。同社には、こうした分野に精通した高度専門人材を確保しており、顧客の製品設計や用途に踏み込んだ提案を行うことが可能となっている。特に製造事業においては、BtoBに特化し、顧客ごとに異なる機能要件に応じたオーダーメイド型開発を行っている点が特徴である。効率性を犠牲にしてでも顧客ごとの価値創出を優先する姿勢は、短期的には非効率に見えるものの、結果として顧客との関係を深め、価格競争から距離を置くことに成功している。

3) 現場に浸透するROICマネジメント
同社では、「販売数量の拡大を重視する経営」から、「収益性及び資本効率を重視する経営」へと転換を進めている。ROICの考え方は経営陣だけでなく営業現場にも浸透しており、商品の収益性や資本効率を踏まえた意思決定が日常的に行われている。こうした変化は、商品ポートフォリオにも表れている。収益性の低い汎用品から高付加価値商材へのシフトを進めた結果、乳原料・チーズ部門では販売数量が伸び悩むなかでも利益水準が着実に向上している。また、在庫管理においても資本効率を意識した運営が浸透しており、弊社では、ROICを営業活動や商品戦略まで落とし込んでいる点を同社の重要な内部資源として評価している。

4) 商社機能×製造機能による模倣困難性
同社の競争優位性は、世界各地から原料を調達する商社機能と、アジアにおけるチーズ製造機能を組み合わせた独自の事業モデルにあり、調達・品質保証・商品開発・製造及び販売を一体的に展開することで、高い付加価値を創出している。また、足元では既存工場の生産能力が需要の拡大に追い付かない状況にあり、シンガポール新工場の稼働によって、生産能力の拡大と新商品の投入及び販売地域の拡大が期待されている。弊社では、製造機能は単なる差別化要因ではなく、今後の成長を支える戦略的な経営資源であり、中長期的な競争優位の源泉になっていると見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

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