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無人タクシーが街を走り、羊がパネルの下で草を食む。日本人が知らない「中国一強」の衝撃実態=高野孟

太陽光パネルの下で羊を放牧する「ソーラー羊」、充電5分で400km走る電池、885台のロボットだけが働く無人工場。いま中国では、日本の常識をはるかに超えるスケールで経済と技術の躍進が続いています。メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』の著者で拓殖大学教授の富坂聰さんの最新刊『おそるべき「中国一強」時代』には、そんな驚きの事実が満載です。世界最先端を走る中国の実像と、そこから見える日本の課題を読み解きます。(『高野孟のTHE JOURNAL』高野孟)

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年8月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界最先端を走る中国の経済と技術にビックリ仰天!富坂聰『おそるべき「中国一強」時代』に学ぶ

中国研究者=富坂聰の最近刊『おそるべき「中国一強」時代』(小学館新書、26年6月刊)は、少々大袈裟に言うなら、1ページごとに未だ知らされていなかった中国の経済的・技術的躍動のビックリ仰天の事実が飛び出してくる、衝撃の書である。

富坂は私より20歳ほども若い後輩で、北京大学を中退して帰国後、週刊誌のライターをしていた1990年前後だろうか、よくINSIDERの事務所にも出入りしていたジャーナリスト仲間でもあるので、その仕事ぶりにはずっと注目してきた。最近は、本誌と同じ「まぐまぐ!」からメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』を発信していて、私も読者登録して毎週欠かさず読ませて頂いている。

本書は、そのメルマガ発信の内容も含めつつ、表題のような大胆な切り口で、中国とそれへの米台日の関わり合いについて闊達に論じていて、参考になる。

★ メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」

中国は世界最強の自然エネルギー大国

中国の電力消費量は10兆kWhで、米国の2倍強、日本の10倍だが、その供給量の55%は再生可能エネルギーで、内訳は、太陽光26.5%、風力15.5%、水力13.0%。世界最大最強の自然エネ大国である。残りのほとんどは石油、天然ガス、石炭の化石燃料による火力だが、10年ほど前までの、北京の空がスモッグで真っ黒に覆われるといった事象は完全に解消された。

それを支えているのは、西部の青海省、甘粛省などの砂漠地帯。日本では、太陽光や風力の発電を大規模にやろうとすると、それが逆に環境破壊になるというディレンマから逃れられない。ところが中国では、何の役にも立っていない砂漠地帯がいくらでもあり、そのため、立地問題に何ら悩むことなく大規模な自然エネ設備を次々に建設、たちまちにして自然エネの世界No.1にのしあがることが出来たのである。

こうした中で、太陽熱ではなく「太陽光発電」=スーパーミラー発電の実験や、その太陽光と水力とを相互補完させる発電システムの世界最大規模の実証プラントなど、最先端の技術開発が進められている。

西部の高原や砂漠地帯で発電された電力は東部の大都市圏に売電され、東西の甚だしい経済格差を是正する一助となっている。副産物もあって、例えば青海省の砂漠に見渡す限り地平線まで敷き詰められた太陽光パネルは、日光を遮るのでその下の地面からは草が生えてくる。放っておくと生い茂ってパネルに悪影響を及ぼすが、これを人力で草刈りするのは容易なことではない。そこで、羊を放っておけば、草は勝手に食べてくれる上、羊そのものが羊毛や羊肉として商品化することができる。同省の「ソーラー羊」はいまやブランド名である。

標高3000メートルの地に作られた、水を閉鎖循環させる方式の陸上施設で養殖されるサーモンも、「青海サーモン」として有名で、国内消費の3分の1のシェアを占めるに至っている。

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高圧送電網と5G通信基地網の広がり

この「西電東送」、西で作った電気を東へ送る政策を成り立たせるには、中国の広大な領土を横切る高圧送電網の建設が欠かせない。有名になったのは、チベット自治区から四川省、重慶市、湖北省までをつなぐ総延長1901kmの「800キロボルト超高圧直流送電プロジェクト」。海抜4800メートルの高地を通り、最大傾斜65度の尾根に113基の鉄塔を建てる四川省の最難関の工区を克服して、日本で言えば北海道の宗谷岬から鹿児島県大隅半島の先端までに匹敵する距離を超えて電気を運ぼうとする、その戦略的意思の堅固さにはたじろぐばかりである。

これと並行して、5Gの通信基地局の建設も急速に進められている。5G局は25年末で全国で約475万カ所に達した。(ここで富坂書とちょっと離れるが)日本は同年末で30万強で、中国の国土面積が日本の26倍であることを考えると、日本の方が進んでいるように見える。しかし中国の場合、人の住まない砂漠にくまなく電波を届かせる必要はないので、実際のところは人口カバー率を比べないと分からない。また5Gの中身も問題で、中国の大都市圏では5G-A、すなわち次世代の6Gに繋がる5.5Gの普及が進んでいるのに対し、日本は事実上4.5G(「なんちゃって5G」と揶揄される)、つまり4Gから5Gへの過渡段階にある。

いずれにせよ、中国は躍起になって電力と通信のインフラ整備を進めているのだが、それは何のためかと問えば、直ちに「ああ、それは完全自動運転のためですよ」という答えが返ってくる。

実際、中国では、EV(Electric Vehicle)はじめ新エネルギー車(NEV=New Energy Vehicle)の普及が急速に進んでいる。NEVの累計販売台数は25年に4000万台を突破し、これにより中国はNEVの生産と販売で10年連続、世界首位を維持したことになる。つまり、世界最大の自動車市場を抱える中国は、迷うことなく、「EV大国」への道を突き進んでいるのである。

工場もロボット化で無人に出来る

そのことは、北京はもちろん、西安や哈爾濱などでも、街中を車で移動すればたちまち実感することができる。何しろ後部からマフラーを突き出しているガソリン車は10台に1台も走っておらず、見つけるのが難しいほどである。

日本では逆に、トヨタもホンダもEVから撤退すると発表していて、それは(1) 充電ステーションが増えない、(2) バッテリーの容量を大きく出来ない、(3) 生産コストが高く消費者の手に届きやすい販売価格にならない、などの理由によるのだろう。

日本では充電所は2万6000カ所ほどだが、中国では現在は約2000万カ所あり、さらに25年10月の政府方針で「27年末までに2800万カ所」へと急増させる。EV化を進めたいのなら、政治がそのように決断しなければダメで、市場に任せておいたのでは進まないのは当たり前である。バッテリーの容量を大きくできず航続距離が伸びないというのは世界共通の悩みで、一時は中国でも、高速道路に太陽光パネルを敷き詰めて、走りながら充電できる技術を試したりしていた。しかし、それはすでに過去の話で、バッテリーの技術が急速に進歩して「充電時間5分で400km走行可能」とか「1回充電で1500km航続」とかを中国のトップ電池メーカーCATLが実現している。CATLはEV向けバッテリーで24年に韓国のLGを抜いて世界シェアでトップに立ち、香港株式市場に上場を果たした。

EVの生産コストが高いという問題も、解決できないわけではない。中国のEVメーカー「Zeekr(ジーカー)」の工場は、照明も暖房もない中、885台のロボットが24時間、働き続ける完全自動化の無人工場である。そのロボットを管理するのはやはり人間で、100人ほどの従業員がそれに当たる。同社はこのような工場を全国にすでに100カ所も展開している。

だから、要は、政府の戦略と経営者のやる気の問題なのである。こうして世界は、中国を先導役としEUが付いていくEV化陣営と、米国に日本が従うガソリン車陣営とに分かれていくのである。

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EV化プラスAI化で加速する自動運転

さて、EVはその性質上、AI化と結合して無人の自動運転を実現しやすい。中国でその先頭を走るのはポニー・エーアイとウィーライドで、すでに北京、上海、広州、深センではそれらの「無人タクシー」に普通に乗ることができる。全国の多くの都市が、自動運転用の信号情報を開放して、ポニーなどの進出を待っている状態で、ポニーは25年末現在、全国で1000台の完全無人タクシーを走らせている。

国内だけではない。ポニーは韓国、シンガポール、UAE、カタール、ルクセンブルクで無人タクシー事業を始めているし、ウィーライドもシンガポール、UAE、サウジアラビア、スイス、フランス、ベルギー、アメリカの8カ国で自動運転ライセンスを取得し、11カ国30都市で技術開発や試験を行っているという。

無人化のほかにも、面白い注目技術はいろいろある。BYDが23年1月に発表したハイブリッドSUV「U8」は、何と、30分間限定ながら「水上走行モード」を選択できる、水陸両用車である。近頃の日本では集中豪雨による都市洪水で、水に浸かって動けなくなる車が続出しているが、まさにそういう時のために水に浮くことのできる緊急避難機能を備えているのである。

空飛ぶ自家用車も現れていて、EVメーカー「小鵬(シャオペン)」が開発した電動垂直離着陸機「陸地航母」がそれ。25年春の段階で4000件の予約注文が殺到したという人気で、26年中に量産開始、納品が始まるという。一般的なドローンでは、中国のDJIが世界で圧倒的なシェアを持つトップ・メーカーとして知られているが、同社を筆頭に中国のこの分野の技術は高く、他にも空飛ぶ車のモデルは次々と登場している。

富坂書はこのあとも、中国のAIをはじめとした最先端技術力が人型ロボットから産業用ロボット、超深海探査や月の裏側の探査など、人類未到の領域にどんどん挑戦している様子を描いているので、是非同書をお読み頂きたい。ここまで読んだだけでも私がつくづく思うのは、いま中国に住んで毎日このようなニュースに接し、じゃあ無人タクシーに乗ってみようかとか、人型ロボットに会いに行こうかとか、言いながら暮らすのは楽しいだろうな、ということである。日本では近頃ますます碌なニュースはなくて、「年寄りが騙された」とか「子供が殺された」とか暗い話ばかり。国が老いるとはこういうことなのかと考え込むばかりである。


※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年8月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

image by: Sarunyu L / shutterstock.com

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