個人投資家様向け会社説明資料
江守康昌氏(以下、江守):みなさま、こんばんは。日華化学株式会社代表取締役社長執行役員CEOの江守です。当社は創業の拠点である福井県福井市に本社があります。
表紙スライドの写真は、北陸新幹線で福井駅に降り立つと、ホームからエスカレーターでおりられる際にみなさまを歓迎するパネルとして掲示されています。これは、当社の研究開発拠点「NICCA イノベーションセンター」の4階から撮影した写真です。
目次
江守:本日は、当社の会社概要・事業概要、中期経営計画「INNOVATION30」、2026年12月期第2四半期(中間期)の決算概要、株主還元の順にご説明します。よろしくお願いします。
数字で知る日華化学
江守:当社は今年で創立85周年を迎えます。
売上高については、今期予想で640億円と、初めて600億円を超える見込みです。また、営業利益についても、これまで40億円を超えたことがありませんでしたが、今期予想は54億円となっています。
従業員数は国内外で1,600名を超え、海外拠点は9つの国と地域に14ヶ所あります。また、海外売上高比率はおおよそ50パーセントです。
実は身近な日華化学の技術
江守:日華化学はどのような会社かを一言で表現するのは難しいですが、当社の技術は実は非常にみなさまの身近なところで活躍しています。
スライドの、車に乗っている女性の画像をご覧ください。このワンシーンを例に挙げると、女性が使用しているヘアケア商品、具体的にはシャンプーやトリートメント、スタイリング剤などに当社の技術が活用されています。
また、当社は85年の歴史を持ち、繊維加工用薬剤を軸とした歴史を歩んできました。北陸地方、特に福井県は昔から繊維産業が非常に盛んであり、例えば衣類に使われる撥水剤や消臭剤などさまざまな薬剤を展開しています。これらで培った技術を応用し、クリーニング用の洗剤や柔軟剤、さらには紙やデジタルデバイスの分野にも広く展開しています。
研究開発型メーカーとして
江守:当社の創立以来の企業理念は「製品を売るにあらずして技術を売る」です。当社は研究開発に非常に力を入れている会社です。海外拠点を多数展開していることと、研究開発に注力していることが、当社の大きな特長と言えます。
研究開発には、約5人に1人に当たる22パーセントの社員が従事しており、これは国内製造業のうち、従業員数が同規模企業の平均の2倍以上です。お客さまの多様な悩み、課題を一緒に解決していこうとする姿勢を大切にしている会社です。
それでは、福井にございます、研究開発の中核拠点「NICCA イノベーションセンター」のドローン映像をご覧いただきたいと思います。
日華化学を一言で表現すると
江守:今ご覧いただいたのは、2017年に完成した「NICCA イノベーションセンター」です。
先ほどから「研究開発に力を入れている」と言っていますが、このイノベーションセンターは、多くの方々にお越しいただき、共にイノベーションを巻き起こしていこうという発想のもとで作ったものです。
当社が何を行っているのかについてですが、まだ少しわかりづらい点があるかもしれません。当社は、さまざまなモノとモノの境界面を「アクティベート(活性化する)」技術で、人々の暮らしや社会を輝かせていくことをモットーとしています。
コア技術
江守:コア技術の「界面カガク」についてです。少し理科の実験のような話になりますが、すべての物質、つまりモノには「境界面(界面)」があります。
例えば、水と空気の界面を活性化すると泡になります。また、油と水の界面を活性化すると乳化が起こります。具体的な例としては、ドレッシングは振っても水と油が分離したままですが、卵の黄身に存在するレシチンという界面活性剤成分を加えるとマヨネーズになります。
さらに、繊維から汚れをしっかり洗い流すことや、生地と水の界面を活性化することで撥水効果や吸水速乾といった効果を生み出すこともできます。したがって、当社は界面をコントロールし、日常生活に展開することで、価値を発揮していく技術豊かな会社です。
コア技術
江守:その界面をコントロールする技術をどのように展開してきたかについてです。当社は繊維分野からスタートし、そこから化粧品、樹脂、電子材料、紙・パルプ、自動車やクリーニングなど、さまざまな分野へと展開してきました。
コア技術
江守:例えば、絹をきれいに洗ったり、ウールを傷めずに染めたりする技術を、同じ動物性たんぱく質繊維である人の髪の毛に応用し、頭髪用化粧品事業を展開しました。
衣類を洗浄する・柔らかくする技術はクリーニング用洗剤や柔軟剤にも応用しています。
さらに、金属を洗浄、研磨、加工する技術に応用し、自動車やデジタル機器といった分野にも展開しています。
また、紙はセルロース繊維であるため、これらの技術を紙・パルプの分野でも活用しています。このように、繊維加工用薬剤で長年培った技術を起点に、用途がどんどん広がっています。
事業内容
江守:当社は、大きく分けて化学品と化粧品の2つの分野で事業を展開しています。
事業内容(化学品事業)
江守:まず、化学品事業についてご説明します。
1つ目に、繊維関連の化学品についてです。洗う、染める、仕上げる、また、防汚や難燃といった一連の加工薬剤において、当社は世界でもトップクラスの実績で、日本国内では圧倒的No.1のシェアを誇っています。
2つ目は、クリーニング・医療関連の化学品です。クリーニング用薬剤とは、みなさまがドライクリーニングやシャツのクリーニングに出される際に使用される洗剤や加工薬剤を指しますが、こちらも当社が国内No.1のシェアを占めています。
3つ目は、スペシャリティケミカルです。半導体の最初の工程として、シリコンのインゴットという金属の棒を薄く切る作業があります。この切削の際には摩擦により熱が発生しますが、それを冷却し、きれいに切断するための役割を果たすクーラント剤は、No.1の地位を確立しています。
また、新聞紙については100パーセントリサイクルの素材が用いられていますが、例えば、リサイクルの工程において必要となるインクを抜くための脱墨剤も、当社が国内No.1のシェアを占めています。
強み(化学品事業)
江守:当社の強みは、当社独自のアプローチである「顧客現場発イノベーション」を日本だけでなくグローバルで実践していることです。営業員だけでなく研究員もお客さまの現場に足を運び、お客さまの悩みや課題をしっかりととらえ、最適なソリューションで解決していきます。
このため、社員の約5分の1を研究開発の人員として割り当てています。
強み(化学品事業)
江守:当社は、高機能かつサステナブルな製品で世界をリードしていきます。
例えば、フッ素を使わない非フッ素系の撥水剤や、溶剤を使わない水系のウレタン樹脂などがあります。
また、先ほどご紹介した半導体製造工程における最初の工程に使用するクーラント剤においても、使用後の廃液をリサイクルしてお客さまに再供給するなど、サステナブルな資源循環型ビジネスを行っています。これらが当社の強みです。
EHD集中戦略(化学品事業)
江守:当社の化学品事業における一丁目一番地の戦略を「EHD集中戦略」と呼んでいます。「E」はEnvironment(環境)、「H」はHealth(健康・衛生)、そして「D」はDigital(先端材料)を表しています。
現在、地球では環境破壊が進行しています。このような状況を踏まえ、当社は環境の改善に貢献し、人々が健康を維持できるような製品を提供するとともに、超スマート社会に対応した技術的製品を展開していきます。
当社はこの「EHD」のいずれにも紐づかないものは新たな研究開発を行わず、新製品についてはEHD製品に特化する方針です。
なお、非EHD製品とEHD製品を比較すると、EHD製品のほうが利益率が14パーセント程度高いという結果が出ています。(2026年12月期中間期実績)
kenmo氏(以下、kenmo):EHD製品のほうが利益率が約14パーセント高いというお話ですが、なぜそのように利益率に影響を与えるのか、EHD比率の上昇が営業利益にどのように関連しているのか、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
江守:社会のニーズに応じて製品を作り続けることを追求しており、社会に対してしっかりと貢献できる製品、具体的には省エネや節水、作業工程削減などお客さまがメリットを享受できる製品であるため、利益率が高くなっています。
kenmo:今後について、EHD製品以外は基本的には作らないという方針でしょうか?
江守:EHD以外の新製品は作らない方針です。現在の化学品事業売上高に占めるEHD比率は約48パーセントですが、2030年には55パーセント、2035年には65パーセントを目指しており、最終的には100パーセントEHD製品を展開していく計画です。
トピックス(化学品事業)
江守:EHD製品の一環として、本年3月に米国の大手化学メーカーであるケマーズ社から「Zelan(ゼラン)」に関する事業を譲り受けました。
この「Zelan」は、植物由来原料を一部使用した非フッ素系撥水剤です。ウレタン系の撥水剤であり、非常に撥水効果の高い製品です。
当社は、この事業を譲り受けたことによって、アクリル系、シリコン系、そして今回のウレタン系非フッ素系撥水剤という3種類を有することになりました。これら3種類を有しているのは、世界でも当社だけです。これにより、非フッ素系撥水剤市場において世界シェアNo.1となる見込みです。
kenmo:こちらの非フッ素系撥水剤のメリットや特徴、また「Zelan」の収益貢献の見通しについてお聞かせいただけますか?
江守:現在、PFAS(有機フッ素化合物)の問題が世界的に取り沙汰されています。一般的に、撥水剤はフッ素を使用するのが常識でした。当社はこの非フッ素系撥水剤の開発にいち早く取り組んできましたが、実は「Zelan」は、世界で最も早くから展開されている非フッ素系撥水剤です。
具体的な金額や収益については、先方との秘密保持契約の関係上、詳細はお伝えできませんが、「Zelan」事業を譲受したことで、従来年間20億円程度だった非フッ素系撥水剤の売上が、当社既存製品の売上拡大と合わせ、一挙に50億円を超える見通しです。
kenmo:将来的には非フッ素系撥水剤に徐々にシフトしていくといった世の中の流れになるのでしょうか?
江守:そうですね。この繊維の撥水剤については、ほぼ非フッ素系に置き換わっていくのではないかと思っています。
グローバル展開
江守:当社は1968年という非常に早い時期から海外展開を開始し、台湾を皮切りに、韓国、タイ、インドネシア、アメリカ、中国、ベトナム、そして最近ではバングラデシュやインドなどに海外拠点を展開しています。
グローバル展開
江守:グローバル展開を早期に開始した理由についてご説明します。スライド一番下の折れ線グラフは、日本の化学繊維の生産量を示したものです。このグラフからわかるように、日本国内だけを見れば右肩下がりで、非常に成熟した産業となっています。
しかし、世界全体で見ると、繊維産業は依然として成長産業です。1960年代や1970年代は、円相場が360円の時代でした。現在は、その当時に比べると円高になっていますが、日本の人件費については、当時は月数万円だったのが、今では高くなっています。
繊維産業は人件費のかかる産業であるため、人件費の低い国や地域へとシフトしていく傾向があります。
こうした背景の中で、水が上から下に流れるように、繊維産業のシフトに合わせて当社も海外展開を進めてきました。最近では、バングラデシュやインドへの展開を積極的に進めています。
事業内容
江守:続いて、化粧品事業についてご説明します。
事業内容(化粧品事業)
江守:当社は繊維を加工する技術を応用し、1981年より頭髪化粧品分野にも展開しています。
当社の特徴の1つ目は、美容室専売のビジネスにおいて、美容師のみなさまのご意見を新商品開発に取り入れていくことで、美容師の方々から支持を受けている点です。
具体的には、ヘアケア剤、スカルプケア剤、スタイリング剤、カラー剤、パーマ剤などを展開しています。
2つ目は、この技術を相手先ブランドに展開している点です。当社では「ODMビジネス」と呼んでいますが、代表的なブランドとして「BOTANIST(ボタニスト)」が挙げられます。これも当社の技術を活用して商品化されたものです。
強み(化粧品事業)
江守:当社は「レシピの開発力」を強みとしています。3,000以上のレシピを有し、研究開発型企業として、業界で確固たる地位を確立しています。
強み(化粧品事業)
江守:「NICCA イノベーションセンター」では、2階に「毛髪科学研究所」、3階に「界面科学研究所」を配し、化学品と化粧品の研究所が同じ敷地内に存在しています。
このように、化学品と化粧品の研究所が同じ建物にあり、それぞれの分野の研究員がコミュニケーションをとれることは、機能性と独自性が非常に高い商品開発を可能にしている一因となっています。
トピックス(化粧品事業)
江守:化粧品事業は1981年にスタートして以来、非常に高い成長を示しています。一方で、当社は1980年代に現在の本社化粧品工場の一部を建設し、それを随時改修・拡張させながら稼働してきたため、非効率的な状況になっています。
現工場の非効率の一例としては、民家と隣接しているため夜間稼働ができず、稼働時間が約9時間に限定されている点が挙げられます。
来年5月に新工場「福井スマートファクトリー」が竣工する予定です。新工場では24時間の稼働が可能になります。これにより、自動化ラインの導入と合わせ、人時生産性は1.5倍、製造キャパシティは現本社化粧品工場比で約3倍に向上する見込みです。
また、現在は化粧品生産の約50パーセントを外注に頼っています。新工場によりこれを一定程度内製化することでコスト競争力を高め、さらなる稼ぐ力の向上を目指しています。
kenmo:「福井スマートファクトリー」についていくつかうかがいたいと思います。まず、「新工場稼働に伴い、中期経営計画の中では来期の業績が一時的に下押しするという見通しになっていますが、そちらについて詳しくお聞かせいただけますでしょうか?」というご質問です。
江守:一時的に減価償却費が大幅に増加するため、その分利益は圧迫されることになります。しかしながら、先ほどお話ししたように、外注からの内製化や、海外展開を含めた売上成長を見込んでおり、稼ぐ力は確実に向上すると考えています。したがって、営業利益に減価償却費を加えたEBITDAについては、大幅な飛躍が期待できる見通しです。
kenmo:新工場の稼働率は徐々に上がってくると考えています。例えば2030年の稼働率や生産能力について、どのように見ているのか教えてください。
江守:現在の計画によれば、2035年には新たな投資が必要になると想定しており、隣接する敷地もすでに確保しています。2035年までは現在建設を進めている新工場「福井スマートファクトリー」で十分対応できると見込んでいます。
トピックス(化粧品事業)
江守:新商品についてご紹介します。まず、今年6月に発売した「TOIROCTION(トイロクション)ブリーチレスライン」は、現在非常に好調です。
ブリーチカラーをする際、通常は必ず一度ブリーチ剤を使用し髪の色を抜いてから色を入れるのですが、「TOIROCTION(トイロクション)ブリーチレスライン」では、ブリーチ剤を使用せず、施術時間を短縮しながらも、高明度・高彩度のカラー表現を実現することができます。こちらは日本および韓国で非常に好調に推移しています。
次に、9月4日に発売予定の新ブランドについてですが、「FeTéE(フェテ)」というヘアオイルを日韓共同で開発し、日韓同時期発売することとなりました。
この商品は、3種類の香りと、使用した際の軽くて柔らかな質感が特徴で、特に女性に人気のある香りを厳選しています。
kenmo:実は、この配信の前に荒井さんが使用していました。
荒井沙織氏(以下、荒井):そうなのです。2種類、kenmoさんと試してみたのですが、なんといっても香りがすばらしいですね。香水かと思うほどのこだわりを感じる香りでした。開発は難しかったのではないですか?
江守:ありがとうございます。これは調香師が選りすぐった3種類の香りをご用意しています。こちらのパッケージも韓国の企画会社と共同開発しました。
荒井:パッケージもみなさまにお見せいただけますか?
江守:こちらがそのパッケージです。
荒井:9月4日発売ですので、ぜひみなさま、商品を実際にご覧いただければと思います。
江守:「デミ コスメティクス」取り扱い美容室でご購入いただけます。
荒井:おしゃれなデザインですね。
江守:この商品は、トップノート、ミドルノート、ラストノートと、時間の経過に合わせて香りが3段階に変わる仕様になっています。また、最近の女性の小さいバッグにもすっと入るサイズで、髪が乱れた時にさっと使えるよう工夫しています。
ぜひ投資家のみなさまにもお使いいただければと思います。
荒井:最近、化粧品もどんどん小型化していますからね。
江守:おっしゃるとおりです。
荒井:さらにヘアオイルは、「使い切れるかな」「香りは違うのを試したくなるよな」などが、少し購入時のハードルになる場合もありましたが、今回の商品では3種類を一度に手に取ることができますね。
江守:そうなんです。1日ごとに異なる香りを楽しんでいただければと思っています。
荒井:みなさま、ぜひ試していただきたいです。私は3種類のうち、3番の香りが好みでした。
江守:ありがとうございます。
荒井:また、1番か2番の香りは男性にも好まれるのではないかと思いました。香りについては、配信ではお伝えできないのが残念です。
ちなみにどちらで購入できるのでしょうか?
江守:日本および韓国の美容室でご購入いただけますので、ぜひ「デミ コスメティクス」の商品を扱っている美容室に行っていただければと思います。
荒井:扱っていないところでも「このような商品が欲しいのですが」と言ったら取り扱いが増えるかもしれませんね。
江守:そうですね。代理店ではだいたい取り扱っていただいています。
荒井:お問い合わせくださいということですね。本当に良い香りでした。
kenmo:荒井さんが大変前のめりですね。日本と韓国では、どのくらいの店舗数への展開を目指しているのでしょうか?
江守:日本では5,000店舗以上を予定しています。ただ、これはあくまで当初の目標です。日本には約27万軒の美容室があり、その中で5,000店舗には使っていただけそうだと見込んでいます。韓国では、約1,000店舗への展開を進める予定です。
kenmo:日韓共同開発ということですが、開発の背景について教えていただけますか?
江守:これは初めての試みです。現在、「Kビューティ」が非常に盛んになっており、韓国の化粧品は世界的にブランド化しています。
当社は韓国で化粧品事業も展開していますが、当初は日本から韓国にさまざまな情報や商品を一方通行で送り、受け入れていただいていました。
しかし最近では、韓国の方々の「これが気に入った」「これを使っている」といった情報や商品を日本が輸入する現象も見られるようになり、「Kビューティ」の人気が高まっています。
そうした中、当社の化粧品韓国拠点であるデミコリア社と共同で商品開発を行い、完成したのが「FeTéE(フェテ)」というブランドになります。
kenmo:一種のマーケティング戦略といった側面もあるのでしょうか?
江守:おっしゃるとおりです。
中期経営計画「INNOVATION30」 2026/2/13公表
江守:中期経営計画についてお話しします。当社は、2024年7月に「中長期グループ成長シナリオ」として、2035年に目指すべき姿を公表しています。今年2月に公表した中期経営計画は、その前半フェーズの位置づけであり、2030年までに売上高700億円、営業利益56億円、EBITDA90億円を目標としています。
特に注力していくのがEBITDAです。この稼ぐ力を確実に高めていくことが重要です。新工場稼働後は減価償却費が増えることで営業利益が一時的に落ち込みますが、その中でもEBITDAをしっかり向上させることが、当社にとって最も重要なポイントとなります。
戦略骨子
江守:パーパス、ビジョンのもと、3つの基本戦略を掲げました。まず1つ目は事業拡大と成長投資で、これが一丁目一番地です。2つ目は財務体質と資本戦略の強化、3つ目はサステナビリティ経営を推進していきたいと考えています。
事業拡大と成長投資
江守:事業拡大についてです。まず、化粧品事業の売上高を現在の約150億円から2030年に200億円に増やしていきます。そして、化学品事業の成長ドライバーはEHD製品であり、これを拡大することで化学品事業の収益力も向上させます。
化粧品はもともと収益性の高い事業であり、化学品事業のEHD製品と化粧品事業の拡大によって、全体の収益率をさらに向上させていく戦略です。
事業拡大と成長投資(化学品事業)
江守:化学品事業の戦略についてです。重複しますが、EHD製品を伸ばしていきます。また、グローバル戦略として、繊維化学品事業では南西アジアのインドやバングラデシュでの事業拡大を図ります。これらを通じて、さらなる収益性の改善を図りたいと考えています。
事業拡大と成長投資(化粧品事業)
江守:化粧品事業の戦略についてです。国内サロン事業シェア拡大とマルチブランドの強化、海外事業の拡大に取り組みたいと考えています。
kenmo:化粧品事業が中期経営計画の達成に向けた大きなポイントになると思います。2030年の目標をもう少し細分化して、事業別などに分解してお聞かせいただけますか?
江守:化粧品事業に関してはスライドに記載のとおり、主に国内サロン事業をさらに注力していきたいと考えています。先ほどお話ししたような新商品の展開をしっかり進めていくことが、まさに最優先の戦略です。
また、先月、マレーシアで「デミ コスメティクス」をローンチしました。非常に好評をいただいています。マレーシアは現在、飛躍的に成長している国で、久しぶりに訪れると私も驚くほどの変化を感じました。新宿と渋谷と六本木が一体化したような街並みです。
そのようなマーケットには、意外にも日系の化粧品が浸透していないため、しっかりと根を下ろしていきたいと考えています。
2026年第2四半期 決算概要 (2026/7/31発表)
江守:この1月から6月、第2四半期(中間期)の決算概要です。売上高は前年同期比14.1パーセント増加し、半期で初めて300億円を超えました。営業利益も前年同期比37.1パーセント増の26億5,000万円、中間純利益は前年同期の約2倍にあたる19億4,000万円となりました。
特に化学品事業が非常に大きく伸びました。
化粧品事業については、限定的な要因もあり減収減益となりました。
2026年第2四半期 決算概要 (2026/7/31発表)
江守:2026年12月期通期の業績予想について、7月31日に上方修正しました。売上高は初めて600億円を超え、営業利益は50億円を超える見通しで、いずれも過去最高となる見通しです。
kenmo:今回の上方修正について、いくつかうかがいたいと思います。まず、端的に何が良かったのか、お聞かせいただけますか?
江守:化学品事業の海外市場が非常に好調でした。特に中国、インド、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムで大きく伸びたことが、売上と利益の拡大につながりました。
kenmo:やはり気になるのは原材料価格の上昇です。一定程度予想に織り込んでいるとはいえ、原材料価格の高騰を価格転嫁できるのか、また、原材料価格が上がってから販売価格に転嫁するまでにどのくらいのタイムラグがあるのか、お聞かせいただけますか?
江守:まず、原材料価格が上がらないよう努力し、社内のコストダウンにも努力しています。
しかし、2月末に始まったイラン戦争およびホルムズ海峡の封鎖の影響は非常に大きく、当社もお客さまに一部値上げさせていただくようお願いしました。
原材料価格も平均値ですので、急激に大幅な上昇が起こるわけではありません。しかし、当社がお客さまに値上げのお願いを始めたのが5月の連休明けであったため、やはり2ヶ月から3ヶ月程度のタイムラグがどうしても生じると考えています。
kenmo:計画では、化粧品事業が下期に急回復する見込みとなっていますが、これは何が牽引すると考えていますか?
江守:この上期は、主力代理店の在庫調整による影響がありました。一部の商品について若干影響が長引いているものもありますが、ほぼ上期中にその影響は終了していると考えています。
2つ目は、もともと当社の化粧品事業は下期型であるため、上期と比較すると下期は着実に上昇するという点です。
3つ目は、先ほどからお話ししている新商品効果が下期にしっかりと現れると見込んでいる点です。
kenmo:今期の営業利益目標は54億円、中期経営計画では2030年の目標が56億円とされており、もうすぐその水準に達します。これはどのように考えるべきでしょうか?
江守:上期業績は海外を中心に非常に好調でしたが、下期の原材料動向など、さまざまな先行き不透明な要素がありますので、下期が終了し、通期決算を締めた段階で2030年までの中期経営計画について見直しを検討したいと考えています。
配当
江守:株主還元についてです。スライドグラフは過去8年間の配当の状況を示しています。配当方針として、安定的な配当を重視していましたが、2024年に方針を変更し、現在はDOE(自己資本配当率)3パーセントを1つの目安としています。
新工場が稼働し、減価償却費が一時的に増加した場合でも、DOE3パーセントを堅持しつつ、累進配当を行いたいと考えています。
株主優待
江守:株主優待に関しては、後ほどご覧いただければと思います。
投資家の皆様に注目いただきたい3つの理由(まとめ)
江守:最後に、注目いただきたい3つのポイントをまとめます。
1つ目は、EHDを含めた高付加価値分野へのシフトを進め、収益性のさらなる向上を目指します。
2つ目は、化粧品の新工場で成長基盤を構築し、稼ぐ力であるEBITDAを充実させていきます。EBITDAを2025年の59億円から2030年には90億円に成長させることを目標としています。
3つ目は、累進配当とDOE3パーセント以上を基本とし、株主還元を強化していきたいと考えています。
更に詳しく知りたい方へ
江守:さらに詳しい当社のIR情報に関しては、ホームページをご確認ください。ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:今後の海外展開と差別化要因について
荒井:「海外売上高比率が高い中で、次に伸ばす地域と、勝ち筋となる差別化要因を教えてください」というご質問です。
江守:当社の強みは、しっかりとお客さまの課題に向き合い、なにかお客さまに問題が発生した時に当社の技術により一緒に解決できることです。これを日本、化粧品業界、さらには海外でも同様に実践していることが当社の特長です。
現在、中国が非常に伸びています。それに加えて、中国と並び称されるほどのマーケットに成長しているのが南西アジアのインドやバングラデシュといった地域です。これらの地域へ繊維用の薬剤を展開していきたいと考えています。
kenmo:ちなみに、現時点での海外売上高比率は48パーセントですが、将来的には50パーセントや60パーセントといったイメージをお持ちでしょうか?
江守:海外市場も拡大したいと考えていますが、国内では化粧品事業を中心に確実に成長させていきたいと思っています。
また、電子材料分野についても、半導体は現在カッティングだけの分野に注力していますが、それ以外の洗浄や研磨の分野へと横展開を進めたいと考えています。
決して海外市場だけを伸ばそうとしているわけではなく、国内でも新規事業をしっかりと展開していくことを重視しています。
kenmo:例えば先端材料などについては、国内にもまだまだ大きなニーズがあるというお考えでしょうか?
江守:そのような新用途や新規事業に関しては、まず日本でしっかりと取り組むことが当社の方針です。日本には中核研究開発拠点があり、開発に必要な知見を提供していただける「ティーチャーカンパニー」と呼ばれるお客さま企業も多数存在します。そのため、まずは国内で新規事業をしっかり行っていくことが、非常に重要であると考えています。
質疑応答:資本配分の優先順位について
荒井:「海外展開や新製品への成長投資を進める一方、株主還元も強化されています。今後、成長投資、M&A、増配、自己株式取得について、どのような優先順位で資本配分を行う方針でしょうか?」というご質問です。
江守:現時点では、自己株式取得といった資本政策は選択肢に入れていません。しっかりとEBITDAを稼ぎつつ、5年間で約300億円の営業キャッシュフローを、まずは成長投資に充てていきます。そして、DOE3パーセントを中心とした累進配当を実施していきます。
さらに、借入金の返済を進めていきます。その原資となるEBITDAのキャッシュインをしっかりと確保することが、第一の戦略です。
質疑応答:半導体・デジタル領域の成長要因について
kenmo:半導体・デジタル領域の成長は、外部の市況の回復によるものなのか、それとも御社の新製品開発や新製品の投入が影響しているのか、そのあたりを内部要因と外部要因に分けてお聞かせいただいてよろしいでしょうか?
江守:両方です。まず半導体の分野は、AIやデータセンターの拡充などにより成長しています。その影響で、当社の半導体加工用薬剤の売り上げも伸びていることが1つの要因としてあります。
また、カッティング分野から洗浄や研磨といった他分野への用途展開も着実に進めています。当社は、用途展開と基本的な市場成長という2つの掛け算によって、この分野がさらに成長していくと見込んでいます。
質疑応答:用途開発と顧客現場の捉え方について
kenmo:「界面をアクティベートする技術を軸に、新規領域を開拓する際の判断基準として、用途開発と顧客現場のどちらに重点を置きますか?」というご質問です。
江守:用途開発と顧客現場は、当社ではまったく同じものだと考えています。お客さまからいただいた課題を重要な用途開発のテーマとして、しっかりと開発を行い、お客さまに認めていただく、または満足していただきます。このサイクルを回していくことが用途開発につながります。したがって、顧客現場発の用途開発が当社の特徴です。
これを日本だけでなく海外でも展開していきます。中国では、すでに100人近くの研究開発員がいますので、同じように展開していきます。また、中国だけでなく、台湾やインドネシアにも研究開発員が数十名います。そのようなかたちで、当社は「顧客現場発イノベーション」というスタイルでの研究開発を行っていきます。
kenmo:地産地消での開発になるのでしょうか?
江守:おっしゃるとおりです。当社の海外展開は、ほぼ100パーセント、その地で売上が上がっています。そこで作って持ち帰ることは、ほとんどありません。
ただし、ホルムズ海峡の影響があったため、日本では入手が難しい一部の原材料については、中国や台湾から調達しています。それ以外の材料は、基本的にはすべて現地で完結しています。
質疑応答:御社の非中核事業について
kenmo:「多くの会社が非中核事業、要は儲からない事業を切り離すようなことを進めていますが、御社における非中核事業の取り扱いに関する方針をお聞かせください。もし今回の中期経営計画の中で想定しているものがあれば、お示しください」というご質問です。
江守:現時点では、この事業が非中核であるとか、注力しないといった事業はありません。
すべての事業が当社にとって重要であり、新規事業の種でもあります。一時的に化学品事業の収益性が低下していた時期には、「化粧品事業に集中したほうがよいのではないか」など、さまざまなご意見をいただきました。
しかし当社は、幅広い用途で事業を展開することで、例えば、今回は半導体が好調であっても、別の分野がそうではない場合もあるといった、個別分野の景気に左右されにくい体質を構築していると自負しています。
また、製造工程についても、化学品においては完全に同じとは言えないものの、似通った原材料を使用していることもあり、決して非効率ではないと考えています。
質疑応答:株価が割安な理由について
kenmo:「業績が非常に良いわりに、バリュエーションが低いのではないでしょうか?」というご質問です。
江守:一番の理由は、日華化学という社名だけでは業務内容や強みをなかなか想像しにくい点にあると思います。
したがって、このようなIR活動を通じて、当社が非常に生活に密着した会社であることを、みなさまにお伝えしていきたいと思います。
kenmo:今日も「FeTéE(フェテ)」をお持ちいただき、実際に使ってみると非常に良い商品で、荒井さんも本当に絶賛していました。
荒井:シャンプーの「BOTANIST(ボタニスト)」というだけでも、知っている方は多いのではないかと思います。
江守:「デミ コスメティクス」については、美容室専売品の事業展開を行っているため、一般の方々にはまだなじみが薄い部分もあるかと思います。
そのような意味では、一般のみなさまや投資家のみなさまに、より親しんでいただけるようなPRが足りていないと反省しているところです。
荒井:株主優待もございますので、ぜひみなさまの応援をよろしくお願いします。
江守氏からのご挨拶
江守:本日は長時間にわたり日華化学についてお聞きいただき、誠にありがとうございました。
当社は技術に注力し、みなさまの暮らしに身近な存在の会社です。また、キラリと光る活躍をする会社であることをご理解いただき、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:2026年からの中期経営計画におけるキャッシュアロケーションに関連して、今中計期間中におけるM&A戦略の考え方についてご教示ください。M&Aではどのような業種の会社をどの地域(国内or海外)で検討していく可能性がありそうでしょうか? また投資規模とファイナンス方法についてもお考えをお聞かせいただけましたら幸いです。
回答:M&Aは選択肢のひとつとして認識しており、事業シナジーや成長性を見極め検討したいと思います。化学品事業においてはEHD関連分野が中心であり、3月の「Zelan(ゼラン)」事業譲受は、E(Environment/環境)分野かつ当社既存の非フッ素系撥水剤事業との相性が良いと判断し、譲受を決断しました。化粧品事業においては、特にプロフェッショナル用途の頭髪用化粧品関連を検討したいと思います。ファイナンスの方法については、今後生まれるキャッシュと、現在の銀行借入で賄える範囲内でと想定しています。
<質問2>
質問:ESG・コンプライアンスの中でも、労働者の人権尊重、人権デューデリジェンス、人権救済体制の実効性は、企業価値や投資家の信頼にどのような影響を与えるとお考えでしょうか? 子会社を含むグループ全体で、これを具体的な取り組みや情報開示にどう反映していく方針でしょうか?
回答:人権尊重は企業活動の基本的な責任であり、企業価値やステークホルダーからの信頼にも影響する重要なテーマであると認識しています。具体的には、不当な差別や人権侵害、強制労働、ハラスメント等の防止を行動指針に定め、研修やコンプライアンスハンドブックの配布等を通じて、役員・社員への浸透を図っています。また、社内外に内部通報窓口や相談窓口を設け、問題が発生した場合には速やかに事実確認・調査を行い、是正や再発防止につなげる体制を整えています。
今後は、国内外の子会社を含むグループ全体について、人権リスクの把握・評価を進めるなど、人権デューデリジェンスの取り組みを段階的に高度化するとともに、その進捗や課題についても適切な情報開示に努めていきます。
こうした考え方の根底には、創業以来大切にしてきた「大家族主義」という理念があります。一人ひとりを大きな家族の一員として尊重するという企業文化を大切にしながら、人権尊重の実効性を高め、中長期的な企業価値の向上につなげていきたいと考えています。