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笹岡修氏(以下、笹岡):みなさま、こんにちは。本日は当社のIRセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。空港施設株式会社の代表取締役社長執行役員を務めています笹岡です。
まず、簡単に自己紹介します。私は1997年に当社に入社し、2026年6月に代表取締役社長に就任しました。
入社以来、多くの期間を空港内外での不動産事業に携わり、特に空港内では、貨物ターミナル、格納庫、訓練施設など、空港特有の専門性が求められる不動産の開発や運営を担当してきました。また、空港外ではホテルや住宅、物流施設の開発や売買にも携わってきました。
2021年以降は経営企画部門で現行の中長期経営計画の策定や、昨年実施した中長期経営計画の見直しに取り組むなど、事業の現場と経営企画の両方を経験してきました。これらは私の大きな強みであると考えています。
当社は空港の運営や航空機の運航に欠かせない役割を果たし、それを支え続けています。安定した基盤事業を着実に成長させるとともに、将来に向けた成長投資と株主のみなさまへの還元の充実を両立することが重要だと考えています。
本日の説明では、当社の事業内容と特徴、今後の成長に向けた取り組み、そして株主・投資家のみなさまへの還元の考え方について、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
空港施設株式会社とは – 空港施設株式会社
笹岡:それでは、会社の概要からご説明します。後ほど詳しくご紹介しますが、当社は羽田空港を拠点に、国内の主要な12空港および海外の2空港で航空関連の専門性が高い不動産を提供しています。
また、羽田空港では熱供給や給排水、共用通信といったインフラ事業を通じて空港運営を支えています。さらに、空港で培った施設運営や不動産事業のノウハウを活かし、空港外でも不動産賃貸事業や不動産回転型事業を展開して事業フィールドを拡大しています。
空港施設株式会社とは – 当社成長のあゆみ
笹岡:当社の沿革を簡単にご説明します。当社は1970年に設立され、日本の航空産業の発展とともに歩んできた会社です。
1993年頃から、羽田空港で沖合展開事業として、滑走路の増設等を含む空港の大規模な拡張プロジェクトが進められました。当社もこれに合わせて事業を大きく拡大し、そのタイミングで上場を果たしました。
その後、航空需要の増加に伴い、各地の空港において施設を展開してきました。スライド左下の写真は少し古いものですが、私のお気に入りの写真です。ジャンボ機を当社の格納庫に収める様子が写されています。
日本の航空産業を支え、ともに成長してきた歴史があることをご理解いただければ幸いです。
空港施設株式会社とは – 空港内不動産事業
笹岡:当社の4つの事業についてご説明します。
1つ目は、空港内不動産事業です。当社は羽田空港を拠点に、国内主要空港で航空機の運航や空港機能に不可欠な施設を建設し、航空会社などに賃貸を行っています。
当社の特徴の1つとして、このような施設の開発・提供にあたり、航空会社などのお客さまのニーズに応えるだけでなく、国による空港整備計画や空港機能の拡張計画と歩調を合わせながら事業を展開する点が挙げられます。
空港での不動産開発や運営事業には高い専門性やノウハウが求められます。このような領域では、当社の強みが発揮されると考えています。
当社が提供する代表的な施設をご紹介します。まず、羽田空港の国内貨物ターミナルです。スライド右下のグラフは国内航空貨物取扱量を示していますが、羽田空港は国内航空貨物のハブ空港であり、最大の貨物取扱量を誇っています。
当社は、国内航空貨物の荷さばきに利用される約5万平米の貨物ターミナルを提供し、航空物流を支える重要な役割を担っています。
空港施設株式会社とは – 空港内不動産事業
笹岡:全国の主要空港における当社施設の代表例です。スライド左側の写真は、ヘリコプターの整備などに利用される神戸空港の格納庫です。安全運航を支える重要な施設となっています。
スライド右側の写真は、北九州空港にあるパイロットや客室乗務員のトレーニングセンターです。安全運航やサービス品質の向上においても、当社の施設が活用されています。
空港施設株式会社とは – 空港内不動産事業
笹岡:さらに、航空機の汚水処理施設であるSDプラントを国内の8空港で展開しています。SDプラントでは、飛行機のトイレから排出される汚水を下水道に放流可能な基準値まで処理し、排水しています。
スライド右側は航空機洗機施設です。こちらは飛行機の燃費効率や美観の維持を目的として、機体の汚れを落とす施設です。洗機後の排水についても、SDプラントと同様、下水道に放流可能な基準値になるよう処理しています。
1UP投資部屋 Ken氏(以下、Ken):御社は空港内で多くの施設を展開されていますが、航空会社には規模の大きな企業も多いと思います。そのような航空会社が自社で施設を建設・保有する場合のメリットや、御社に施設を任せる理由などについて教えていただけますか?
笹岡:航空会社が必要な地上施設を自社で保有するか、当社のような会社からリースするかは、その時々の合理性を追求して判断することかと思います。
それぞれにメリットがあり、自社で施設を保有する場合は運用上の自由度が高く、改修などが比較的自由にできるといった点が挙げられるかもしれません。
もちろん当社もそのようなニーズにお応えしていますが、自社で保有することで運営の自由度を感じる場合もあります。また、財務状況などによってリース料を支払うよりも、自社で保有するほうが合理的だと判断するタイミングもあるのかもしれません。
そのため、当社は空港内の不動産のプロとして、維持管理の合理性や、航空会社が本業である航空機への投資、有限の資本の振り分けといった観点から、本業に集中していただくために地上施設を当社にお任せいただくかたちで、メリットを訴求しています。
Ken:確かに航空機を1機購入するとなると、かなりの金額になるだろうと思います。施設に関しても複数の航空会社が共同で利用する場合もあり、御社のような会社が運営されていると使いやすさがあるということですね?
笹岡:今お話しいただいた内容のとおりで、スライドにあるSDプラント等も複数の航空会社が共同で利用されています。
このような設備を各社で準備することは現実的ではありません。当社のような会社が整備し、みなさまでお使いいただくことが、限られた空港のスペースの有効活用や経済合理性の観点からも非常に有効であると考えています。
空港施設株式会社とは – 空港内インフラ事業
笹岡:2つ目は、空港内インフラ事業です。当社では、熱供給事業、給排水事業、共用通信事業の3つを展開しています。これらはいずれも空港運営に不可欠なインフラであり、24時間365日、安全かつ安定的なサービスの提供に努めています。
スライド左側の熱供給事業では、羽田空港の旅客ターミナルや整備工場などに地域冷暖房を供給しています。エネルギーセンターで集中的に冷温熱を製造することにより、高いエネルギー効率を実現するとともに、省エネやCO2排出量の削減に貢献しています。
スライド中央の給排水事業では空港内の上下水道の管理・運営を行っており、当社は羽田空港で50年近い運営実績があります。現在は羽田空港に加え、新千歳空港でも給排水施設の管理・運営を担っており、長年培ったノウハウを活かして、空港に欠かせないライフラインを提供しています。
スライド右側の共用通信事業では、羽田空港内のほぼ全域に通信ネットワークを整備し、電話サービスや専用線のサービスを提供しています。情報通信基盤の提供を通じて空港内のコミュニケーションを支えています。
以上、空港内不動産事業と空港内インフラ事業についてご紹介しました。いずれも一般の方の目に触れる機会は少ないものですが、不動産賃貸とインフラサービスの両面から空港機能を支える当社事業の特色をご理解いただければ幸いです。
空港施設株式会社とは – 空港外不動産事業
笹岡:3つ目は、空港外不動産事業です。当社は、空港内で培った不動産開発や運営のノウハウを活かし、空港外へ事業領域を拡大しています。
具体的には、空港周辺地域で物流施設や空港勤務者向けの住宅、ホテルなどの施設を展開しているほか、都心部ではオフィスビルの賃貸事業にも取り組んでいます。
スライドの写真は、関西地区の物流施設、羽田空港付近の住宅、ホテル、都心部のオフィスなど、当社の代表的な空港外物件です。航空需要の拡大に伴い、空港周辺でも物流施設や住宅、宿泊施設のニーズが高まっています。これらの需要を取り込みながら、賃貸事業を展開しています。
空港施設株式会社とは – 空港外不動産事業
笹岡:近年、安定的な賃貸需要に加え、さらなる利益拡大と資本効率の向上を目的として、不動産回転型事業にも取り組んでいます。
不動産回転型事業は、2022年に策定した現中長期経営計画における新たな取り組みです。同年に100パーセント子会社であるAFCアセットマネジメントを設立しています。
不動産回転型事業は、主に中小型のオフィスビルを取得し、リニューアルやテナント戦略の見直しなどを通じて対象ビルの価値を高めた上で、売却利益を獲得するビジネスモデルです。
この事業では開発を伴わず、稼働中の物件を取得するため、保有期間中の賃貸収益に加えて出口の売却益を獲得することで、収益の拡大と資本効率の向上の両面に寄与します。
スライド右側では、不動産私募ファンドの組成について説明しています。私募ファンド事業は、AFCアセットマネジメントによる投資助言に伴うフィー収益やファンド出資を通じた投資運用収益を獲得することで、収益源の多様化と資本効率の向上に寄与する取り組みです。
Ken:御社は空港内で長年賃貸事業を通じて多くの経験を培われてきたと思います。そのノウハウや強みを空港外でどのように活かし、競合優位性を高めていくのでしょうか?
笹岡:空港内外を問わず、不動産事業としてお客さまの期待に応え、十分な品質を提供する点では共通する部分が多いと感じています。そのため、我々が長年空港内で不動産事業を展開する中で培ってきたプロパティマネジメントや不動産運営のスキルは、空港外でも十分に活用できると考えています。
当社は不動産回転型事業等の取り組みを始める以前から、空港外での不動産経験を積んできましたので、その基盤の上に価値をさらに高める事業に取り組んでいます。
不動産回転型事業について言えば、不動産賃貸事業とは異なるビジネスモデルであることを十分に理解した上で、それに対応できる体制を整える必要があります。
そこで、我々がこれまで蓄積してきたノウハウと、2022年の中長期経営計画に掲げた目標に基づき、新たに組成した専門的知見を有するグループ会社のノウハウを融合させるかたちで取り組んでいます。これまでの経験と、新たなスキルを持った方々の招聘を組み合わせながら進めています。
空港施設株式会社とは – その他の事業
笹岡:4つ目として、その他の事業についてご紹介します。当社では海外事業と太陽光発電事業を展開しています。
こちらのスライドでは、シンガポールとカナダの空港における施設賃貸事業の取り組みをご紹介しています。具体的には、エンジン整備工場やトレーニングセンター、格納庫など、航空関連の不動産を中心に海外で事業を展開しています。
空港施設株式会社とは – 太陽光発電事業
笹岡:こちらのスライドでは、太陽光発電事業の取り組みをご紹介しています。当社は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、空港内外で太陽光発電事業を推進しています。
スライドでもご紹介しているように、羽田空港や鹿児島空港の施設をはじめとする複数の施設で建物の屋根を活用し、太陽光パネルを設置しています。
現在の年間発電量は約560万kwhで、一般家庭に換算すると約1,400世帯分の電力を創出しています。
空港施設株式会社とは – 当社事業の特性
笹岡:これまで当社の4つの事業をご紹介しましたが、当社の売上の約70パーセントを占めるのが空港内の事業です。
ここであらためて空港内事業の特徴を申し上げます。専門性の高さから参入障壁が高い事業であることに加え、賃貸事業は固定賃料収入が中心です。
空港運営にかかわる事業は航空旅客需要の変動に対応することが重要となりますが、当社の賃貸事業はその増減に影響を受けづらく、長期安定的な収益基盤を有していることが特徴です。
空港施設株式会社とは – 業績推移
笹岡:当社の業績推移です。これまでご説明してきたとおり、長期安定的な収益基盤を背景に、東日本大震災やコロナ禍といった厳しい局面においても堅調に推移してきました。また、2022年度以降は中長期経営計画に基づいた各施策の推進により、収益が着実に成長しています。
Ken:今期は増収を予想されている一方で、営業利益が減益予想となっています。その要因について教えていただけますか?
笹岡:スライドのグラフからもおわかりいただけるように、2025年度に営業利益が大きく伸長しており、その後に反動減となる見込みです。
当社では建物賃貸事業を行うにあたり多くの固定資産を保有していますが、今期はいくつかの規模の大きな修繕工事を控えており、それらの修繕費の増加が影響しています。これが減益の大きな要因となっています。
また、不動産回転型事業においては、物件の取得を進めていく方針であり、それに伴うイニシャルコストが発生します。さらに、2025年度には不動産回転型事業において販売用不動産の売却で利益率が計画値を超える大きなものとなり、営業利益が大きく跳ね上がるほどの貢献がありました。
ただし、今期の計画については、従来の計画に沿った編成を行ったことにより、前期比で営業利益が減となっています。
Ken:物件数の増加に伴ってB/Sが拡大し、パイプラインも整えば、P/Lも安定的に構築しやすくなるのでしょうか?
笹岡:一定の規模があることで、ボラティリティがある程度吸収される点はあると思います。
しかし、不動産回転型事業が受ける不動産市況の影響を考えると、物件数の規模のみでボラティリティの吸収源としての期待値は判断できません。そのため、我々としては、本業とのバランスを考慮しながら、非常に慎重に見極めていきたいと考えています。
事業戦略(成長戦略)・資本政策
笹岡:ここからは、成長を支える事業戦略と資本政策についてご説明します。当社は2022年に、2028年度を最終年度とする7年間の中長期経営計画を策定しました。
中長期経営計画については、重点施策の進捗や事業環境の変化を受け、昨年5月に見直しを行いました。当社では、この中長期経営計画を通じて、収益基盤の強化と資本効率の向上を着実に進めることを重視しています。
最終年度である2028年度の数値目標として、売上高400億円、当期純利益38億円、ROE6.0パーセントを設定しています。この目標を達成するために、3つの事業戦略と4つの資本政策を掲げています。
事業戦略(成長戦略)・資本政策
笹岡:まず、事業戦略についてご説明します。スライドには3つの重点施策と主なテーマの進捗状況を記載しています。
重点施策の1つ目は、羽田空港内事業のさらなる強化です。羽田空港一丁目地区では、地盤のかさ上げ事業に伴う施設の再編が進められています。当社では同地区のテナントに対し、新整備場地区にある当社施設への移転を進めるとともに、航空機関連施設の検討を進めています。
一丁目地区から新整備場地区へのテナントの移転については、今期下期に集中して発生する見込みです。移転先となる物件の入居率は大きく向上し、うち1棟はほぼ満床となる見通しです。
また、国内貨物地区では高い稼働率を維持しています。さらなる施設の増強に向けて、施設の複層化やDXによる機能強化を進めていきます。さらに、共用通信事業においては、新サービスの提供を開始し、羽田空港での通信環境や利便性の向上に取り組んでいます。
これらの取り組みを通じて、当社の事業基盤である羽田空港への投資を積極的に進め、空港内事業のさらなる強化を図っていきます。
2つ目は、ノンアセット事業の拡大です。先ほどご説明した不動産回転型事業を中心に、販売用不動産の取得や売却を積極的に進めています。今期も前期を上回る規模の売買を計画しており、収益源の多様化や資本効率の向上を目指しています。
3つ目は、事業領域拡大と成長投資の実行です。国内貨物地区における太陽光パネルや蓄電池の設置など、空港の脱炭素化に向けた取り組みを推進しています。また、既存事業で培ったノウハウを活用し、新たな事業機会の創出にも取り組んでいます。
事業戦略(成長戦略)・資本政策
笹岡:続いて、資本政策についてご説明します。当社では資本効率の改善と市場評価の向上を目的に、4つの施策を推進しています。
スライド左下、資本施策Ⅲで挙げている上場市場の見直しおよび株主優待の廃止については、昨年実施済みです。残りの3つについては、現在も継続して取り組んでいる事項になります。
スライド左上に記載の資本施策Ⅰでは、キャッシュ・アロケーション方針について説明しています。
この中長期経営計画期間中に、総額330億円の成長投資を予定しています。これを年間に均すと、過去10年間の平均的な年間投資額を上回る規模となり、成長投資を積極的に進めていく考えです。
スライド右上に記載の資本施策Ⅱでは、株主還元の大幅拡充について説明しています。これまで連結配当性向を40パーセント以上と設定していましたが、「連結配当性向60パーセントまたはDOE3.0パーセントのいずれか高いほうを目安」とする方針に改定しました。
収益の安定性という強みをより配当政策に反映させ、安定的かつ継続的な利益の還元を行いながら、業績向上時にはそれに連動した増配を実施する姿勢をご理解いただければ幸いです。
また、資本効率の改善に向け、自己株式の取得にも取り組んでいます。昨年10月には10億円の自社株買いを実施しました。
スライド右下に記載の資本施策Ⅳでは、IRの強化について説明しています。本日、このような機会を頂戴しているIRセミナーをはじめ、株主のみなさまとの対話を通じて、株主資本コストの低減を図っていきます。
このように、当社では事業戦略と資本政策を一体的に推進し、中長期的な企業価値の向上を目指していきます。
Ken:ここで2つほど質問します。まず1つ目が、スライド左下のスタンダード市場への移行についてです。御社ではプライム市場の維持基準を満たしていますが、スタンダード市場に移行されてから、資本政策や経営資源の集中についてのお話もありました。具体的にどのような選択肢が広がってきたのかについて、教えてください。
笹岡:いくつかの要因を踏まえて市場移行を行いましたが、選択肢が広がったことによって実現できた大きな取り組みが、昨年10月に実施した自己株式の取得です。これはスタンダード基準における流通株式比率を念頭に置いたことで可能となりましたので、市場移行によって大きな変化をもたらすことができたと考えています。
Ken:自社株買いが可能になることで、EPS(1株当たり利益)の押し上げ効果も期待できると思います。また、市場区分は異なるとしても、EPSが向上するほうが投資家にとって喜ばしいと考える方も多いだろうと思いますが、そのようなメリットを含めて選択肢が広がったとお考えですか?
笹岡:おっしゃるとおりです。市場がプライムであってもスタンダードであっても、中長期的な企業価値の向上を目指すという目的には変わりありません。選択した市場内で可能な施策を実行できるかたちにできたことは、非常に良かったと考えています。
Ken:では、もう1点うかがいます。中長期経営計画の最終年度におけるROE目標値は6.0パーセントに設定されています。中長期経営計画終了後には、例えば最近市場で議論されている8.0パーセントや10.0パーセントといった、さらに高い水準を目指す可能性もあるのでしょうか?
笹岡:現行の中長期経営計画では、ROE目標を6.0パーセントに設定しています。一方で、市場では上場企業に期待する数値として、8.0パーセントや10.0パーセントといった水準が議論されていることも認識しています。
当社としては、まず私たち自身が把握している株主資本コストを満たすROE水準に到達する必要があると考え、この目標を設定しました。
その上で重要なのは、把握している株主資本コスト6.0パーセントの水準を安定的に達成することと考えています。
また、6.0パーセントを最終目標とは考えていません。ROEのさらなる向上を通じて、しっかりとスプレッドを創出し、価値を生み出していくことが必要だと考えています。
具体的な取り組みについては、次回の中長期経営計画などを基に検討を進める事項ですが、6.0パーセントをゴールとは見なさず、その先を展望しながら企業価値の向上に努める必要があると強く認識しています。
株主還元
笹岡:株主還元について、もう少し詳しくご説明します。
当社では、中長期経営計画の見直しに伴う新たな配当方針のもと、今期の年間配当金は過去最高だった前期と同額の1株当たり42円を予定しています。また、2026年9月1日の終値ベースでの予想配当利回りは4.32パーセントです。
個人投資家のみなさまの中には、安定したインカムゲインを重視される方も多いと思いますが、当社は長期安定的な事業基盤を背景に、高い配当水準を維持しています。
今後も持続的な成長と株主還元の充実を両立させ、企業価値の向上に努めていきたいと考えています。
Ken:御社では今後さらに不動産の仕入れも進めていく方針ですが、その中でも配当性向60パーセント、DOE3.0パーセントと比較的高い配当性向を維持されています。成長投資とのバランスをどのようにお考えでしょうか?
笹岡:当社がこの中長期経営計画で重要なテーマとして掲げているのは、成長すること、効率を上げること、しっかりと還元を行っていくことです。すなわち、成長、効率、分配です。
配当性向60パーセントは高めの水準だと認識していますが、当社の安定的な収益基盤と健全な財務基盤があるからこそ、安定的に配当を行うことが可能です。
また、その上で成長投資を犠牲にしないという発想に立っています。必要な成長投資は負債の活用も含めて積極的に行い、それが資本効率の向上にもつながると考えています。
株主・投資家との対話
笹岡:株主・投資家のみなさまとの対応についてご説明します。当社では、株主や投資家のみなさまとの建設的な対話を促進するため、ログミーFinance主催の個人投資家向けIRセミナーへの登壇や、施設見学会などを実施しています。
また、株主通信「AFC Report」は年2回発行し、株主のみなさまへの情報提供を行っています。このようなIR資料については、当社のホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
笹岡:最後にあらためて、本日の説明をまとめます。
まず、当社は空港を中心とした不動産賃貸やインフラ供給を主な事業とし、長期安定的な収益基盤を有しています。
さらに、空港内で培ったノウハウや健全な財務基盤を活用し、空港外での不動産回転型ビジネスにも取り組み、利益拡大、収益源の多様化、資本効率の向上を図っています。
中長期経営計画では、事業戦略と資本政策を一体的に推進することで、さらなる企業価値の向上を目指しています。
また、株主還元を重視し、連結配当性向60パーセントまたはDOE3.0パーセントのいずれか高いほうを目安に、安定的かつ継続的な配当を実施することに加え、機動的な自己株式の取得についても検討していきます。
今期の年間配当は、過去最高となる1株当たり42円を維持する予定です。
セミナーや個人株主向け施設見学会を通じて、株主や投資家のみなさまとの対話を促進していきます。
私からの説明は以上です。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。
質疑応答:2026年3月期における営業利益増の内訳について
荒井沙織氏(以下、荒井):「2026年3月期は営業利益が大幅に増加しています。増益要因のうち、一時的な要因と今後も継続する構造的な利益成長を分けると、それぞれどの程度の比率だと見ていますか?」というご質問です。
笹岡:先ほども少し触れましたが、2026年3月期には不動産回転型事業の売却益が計画値を上回ったことが利益に大きく貢献しています。これにより、回転型事業を含めた空港外の不動産事業セグメントの利益は14億円増加しました。
また、特殊な要因として、羽田空港一丁目の既存施設に関する撤去費用の見積もり変更があり、その結果として特別損失を計上しました。この際、減価償却費の一部が特別損失へ振り替えられたことで、営業利益が押し上げられる結果となりました。この減価償却費の減少は、まさに一時的な要因です。
また、不動産回転型事業の売却益については、収益のボラティリティがあることを踏まえつつも、一時的な収益機会とは捉えていません。前期は非常に良い結果となりましたが、今期も収益貢献の拡大を目指してチャレンジを続けていくことで、取り組んでいきたいと考えています。
当社における継続的な構造的利益成長については、収益基盤の中心となる空港内不動産事業や空港内インフラ事業がその多くを占めます。稼働率の維持・向上、新しい施設の建設、あるいはインフラ事業における料金の見直しなどにより、収益基盤をさらに厚くし、構造的で継続的な収益成長を実現していく状況です。
質疑応答:航空需要成長における利益成長の主要因について
荒井:「羽田空港の発着枠拡大やインバウンド需要など、航空需要の成長が期待される中で、御社の利益成長に最も寄与するのは、既存施設の賃料上昇、新規施設開発、空港外事業のうちどれでしょうか?」というご質問です。
笹岡:利益成長と航空需要との連動性を考える場合、給排水運営事業には航空旅客数の多寡が影響します。旅客の増加は給排水運営事業の利益に貢献し、利益の増加につながります。
また、既存施設の賃料上昇や新しい施設の開発を実行できれば、それが継続的に利益に貢献すると考えています。これは当社として最も重要な取り組みとして位置づけています。
空港外の事業については、航空需要やインバウンドといった観点では連動性が低いものの、利益への貢献は大きくなっています。
空港内と空港外のどちらかに重点を置くべきかとのご質問ですが、当社としては各事業の特性を活かし、これらを組み合わせて中長期的に価値を高めていきたいと考えています。
質疑応答:ノンアセット型事業の拡大方針について
荒井:「不動産私募ファンドやノンアセット型の事業を拡大することで、従来の『保有資産から安定収益を得るモデル』から、より資本効率の高いビジネスモデルへ転換していく可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。
笹岡:当社として、資本効率を高めることは極めて重要な課題だと認識しており、その一環としてノンアセット事業に取り組んでいます。
ただし、ノンアセット事業は当社の基盤事業と比較すると、ボラティリティが高いと考えています。そのため、どのように組み合わせるかが重要です。
空港内不動産と空港内のインフラ事業を組み合わせることで、長期安定収益を強みとする当社が不動産回転型事業の規模のみを追求して拡大させた場合、会社全体の収益の変動性を高めてしまう可能性があります。それでは、かえって当社の強みが損なわれてしまいます。
現時点では、規律ある投資として、投資残高を150億円から200億円程度の水準に設定して取り組んでいます。
収益機会をどのように捉えるかという課題や、チームのマンパワーの問題もありますので、今ご説明したような水準や規模感を維持しつつ、会社全体としてのバランスを取っていきたいと考えています。
質疑応答:空港内施設賃貸における強みについて
Ken:「航空会社や空港関連事業者が空港内で施設を確保する手段として、自社建設のほか、国・航空会社からの直接賃貸など複数の選択肢があると思います。その中で、御社に発注や入居が集まる決め手は何でしょうか?」というご質問です。
笹岡:空港内への参入障壁の高さについてはご説明の中でも触れましたが、限られた空港スペースの中で、機能的な空港運営上必要な施設を整備する場合、例えば羽田空港であれば、国有地の活用が前提になります。
当社では国が管理する空港運営との調整や、特定の場所で特定の機能を必要としているお客さまとの連携など、多岐にわたる関係者との調整を踏まえながら、適切なタイミングで必要なものを提供する取り組みを行っています。
これは単なる不動産事業としてのノウハウだけでなく、空港内事業の知識と経験を掛け合わせて取り組むことになります。空港内不動産の専業者である当社に施設開発や維持管理を委ねることで、質の高い施設調達の実現に繋がることや、その時々の財務状況などを踏まえつつ、当社からの賃借を選択することで、航空会社は航空機などの本業投資に集中できるといったメリットがあります。また、複数の航空会社が共用利用する施設などは、当社が施設提供することで、スケールメリットなどを提供でき、きわめて合理的な選択となります。
このような点は我々の強みであり、お客さまからもこのような点を評価いただき、当社の施設を安心してご利用いただいています。
当社では航空会社に価値のある提案を行い、選択されるべく、競争力を磨き、より価値の高い建物を提供するよう努めています。
質疑応答:主要顧客である大株主に対する賃貸条件の担保について
Ken:「日本航空とANAホールディングスはそれぞれ大株主であると同時に、売上比率が高い主要顧客でもあります。賃貸条件の見直しについて、ほかのテナントと同じ条件および同じプロセスで決定される仕組みをどのように担保しているのかお聞かせください」というご質問です。
笹岡:ご指摘のように、日本航空、ANAホールディングスは主要株主であり、主要顧客という構造です。一方で、当社が健全かつ持続的な賃貸事業を運営するためには、必要な賃料、適正な賃料があります。
賃貸条件については、当社の賃貸事業運営に必要かつ、それが持続的なものとなるよう、賃貸条件を提示し、双方で協議を重ねて決定しています。このプロセスは、他の顧客と同様であり、賃貸条件の設定、見直しについては、主要顧客も含めて、テナント各社と協議を重ね、適正な条件を追求しています。
契約上の対応のみならず、環境の変化に応じた必要な賃貸条件について、真摯にお客さまと対話を重ねながら改定を進めてきました。今後も引き続き、当社として健全な賃貸事業を継続していく考えです。
質疑応答:空港内国有地の借地料と業績へのインパクトについて
Ken:「御社は1973年に所有地を国に売却されて以来、国に借地料を支払い、空港内の国有地で事業を継続されています。この借地料は業績にどのようなインパクトを与えているのでしょうか? また、使用許可の期間と更新の考え方、そして借地料が何年ごとにどのような指標に連動して改定されるルールになっているのかについて、お聞かせください」というご質問です。
笹岡:空港ならではの事業環境ですが、羽田空港では国から土地を借り、その上に建物を建設して賃貸事業を行っていることから、借地料が発生します。
この借地料は空港や場所によってさまざまですが、業績へのインパクトの観点では、借地料の増加は事業運営上の原価の増加につながります。
ただし、借地料は売り上げ側でも適切にお客さまにご負担いただく仕組みを構築しており、借地料に相当する売上もあるとご理解いただければと思います。
事業構造上、売上と原価の両方に借地料が発生するため、土地を所有するケースに比べて、売上高営業利益率は低めに出る傾向があります。一方で、初期投資に土地代を含まないことから、投資の利回り(総資産回転率)は高めとなる傾向があります。この特徴が、空港内での借地で営む賃貸事業に見られる点です。
Ken:仮に土地を所有していた場合、B/Sもその分大きくなります。極めて高い利回りを出さない限り、ROEも上げづらくなってしまうのでしょうか?
笹岡:そのとおりです。そのような意味で、当社は投資効率の良い賃貸事業を展開できる環境にあると認識しています。
借地条件のルールについては空港ごとに状況が異なりますが、経済環境の変化などにより、借地期間の設定や借地料の見直しがあります。当社として借地料がどのように増加していくのか、また契約期間をどう捉えるのかについては、空港ごとや物件ごとに精査しながら対応しています。
決して固定的なものではなく、空港ごとに土地を借りる条件に基づき、適切な賃貸事業を展開しています。
笹岡氏からのご挨拶
笹岡:当社は、空港の中ではなかなか目に触れることの少ない会社かもしれませんが、安全で安心な空港運営には欠かせない存在だと自負しています。50年以上にわたり、空港を支え続けてきた会社でもあります。
特に羽田空港などには、当社の施設がいくつも点在しています。次に空港にお越しの際には、ぜひお探しいただければと思います。
今回の機会が当社を知っていただくきっかけになれば、大変うれしく思います。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:2026年3月期は既存物件の賃貸条件の見直しが増益要因となりましたが、今後も空港関連施設の賃料について、インフレや需給環境を背景とした賃料上昇を継続的に実現できる余地はどの程度あると考えていますか?
回答:賃貸条件の見直しは、インフレなどの事業環境の変化を踏まえて、施設運営の健全性を維持するために必要です。
顧客に丁寧に説明を行い、理解を得る必要がありますが、適正賃料の水準は継続的に確認を行っています。特に修繕コストの値上がりなどを踏まえて、この中計期間において賃料の見直しを進めてきましたが、足元でもいくつかの施設では見直しの必要性を感じており、いくらかの上昇余地はあると考えています。
<質問2>
質問:今後、保有資産に依存しないノンアセット型の事業を拡大されるとのことですが、将来的にはノンアセット事業を収益の柱の一つに育てる考えでしょうか? また、保有資産型と比較した際のROE・ROICなど資本効率の違いについて、どのように評価されていますか?
回答:当社は空港内での施設賃貸、インフラ運営を事業基盤としており、これが会社の軸であることは変わりません。一方で、当社の課題の一つとして、資本効率を高めていくことの必要性を認識しています。
そこで、不動産のバリューアップを通じて売却利益の獲得を目指す、ノンアセット事業(回転型事業)を事業ポートフォリオに組み込むこととしています。
事業ポートフォリオにおいては、安定性(リスク耐性)や資本効率、成長性などの両立を図るため、空港内外の事業がそれぞれの特性を発揮するバランスが重要と考えており、ノンアセット事業としての販売用不動産の投資残高は150億円から200億円と設定しています。現在は150億円程度の積み上がりで、さらに投資残高を増やす余地はあり、利益成長を狙っていきたい考えです。
ROEやROICについて、ノンアセット事業(回転型事業)は資本効率向上に貢献する事業特性があり、重要な取り組みですが、賃貸事業とは異なるボラティリティがあることにも十分配意して、事業ポートフォリオを構築していきたいと考えています。
<質問3>
質問:御社は羽田空港関連施設で非常に強いポジションを持っていますが、今後の成長を考えた場合、羽田空港周辺での事業拡大と、他空港・空港周辺地域への展開では、どちらにより大きな成長余地があるとお考えでしょうか?
回答:事業フィールドとして、当社の強みが発揮できる領域であれば、羽田空港に限らず、他空港や空港周辺でも事業展開を狙っていきたい考えです。
ただし、成長余地の観点では規模の大きな投資に繋がりやすいのは、拠点空港である羽田空港と考えています。今後も視野を狭めることなく、他空港などの施設需要、更新、拡張需要などもあわせて探索していきます。
<質問4>
質問:ここ数年、外資系ファンドから、JAL・ANAからの天下り禁止や増配などの株主提案を受け、御社は提案自体には反対したもののその後それらを実施し事実上受け入れたかたちになっています。大手航空と外資との板挟みの中で、笹岡社長が強いリーダーシップを取れるのか不安があるのですが、いかがでしょうか?
回答:近年、当社が取り組みを進めたテーマがありますが、それらは特定の株主の意向に従ったということではなく、企業価値向上の観点から当社として主体的に検討し、必要と判断したものです。
当社には、航空輸送や空港運営を支え、安全で安定した空港機能の維持・発展に貢献するという使命があります。その使命を果たしながら、市場からの期待に応え、企業価値を高めていくことが経営陣の責務だと考えています。
こうした考えのもと、ガバナンスの強化は極めて重要な経営課題と認識しています。主要株主である航空2社とは円滑なコミュニケーションを図りつつ、独立社外取締役を含む取締役会で十分な議論を行い、透明性の高い経営と意思決定の独立性を確保していきます。
特定の株主の立場ではなく、多様なステークホルダーの視点、株主共同の利益の観点から、当社の中長期的な企業価値向上につながると考える判断を行っていきます。