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三井物産、「中期経営計画2029」初年度は好発進 成長投資の果実化と株主還元を推進

野村IR個人投資家向け説明会2026

堀健一氏(以下、堀):三井物産株式会社代表取締役社長の堀です。みなさま、本日は夜の時間帯にもかかわらず、多くのみなさまにオンラインでご参加いただき、ありがとうございます。

本年3月末時点で、個人投資家のみなさまによる当社株式の所有割合は約20パーセントを占めており、前年より個人株主数も増加しています。みなさまのご支援は当社にとって大変重要であり、心より感謝します。

当社株式を長期にわたり保有していただいている方も数多くいらっしゃいます。本日は、足元の業績だけでなく、三井物産がなぜ長期的に成長できるのか、その背景についてもお話しします。

本日の説明会を通じて、当社の強みや持続的な企業価値向上に向けた成長戦略などについて、ご理解を深めていただけたら幸いです。

自己紹介

まず、私自身のキャリアについてご紹介します。1984年に三井物産に入社し、化学品を振り出しに、米国での事業開発やM&A、商品市場、IR、経営企画など、さまざまな業務を経験してきました。

2019年には会社全体のポートフォリオを管理するポートフォリオ管理委員長を務め、2021年から社長を務めています。本日は、このような私自身の経験も踏まえながら、三井物産の強みや戦略についてお伝えします。

三井物産のビジネスモデルと企業文化

三井物産のビジネスモデルと企業文化についてご紹介します。私たちは、トレーディングや既存事業でのパートナーシップをテコに、事業の芽を見つけて「創り」、経営ノウハウを活かして強い競争力を持つ事業へと「育て」、そこで培った知見やネットワークを活かして、周辺の事業へと「展げ」ます。

このように、1つの事業を起点に、産業をまたぐかたちでさまざまな知見を掛け合わせ、新たな事業や価値を生み出していきます。その原動力となっているのが、三井物産が長年大切にしてきた企業文化です。

「挑戦と創造」としては、変化を恐れず、新しいことに挑戦します。「自由闊達」としては、立場や組織にとらわれず、自由に意見を交わし、異なる知見を掛け合わせます。そして「人の三井」ということで、一人ひとりの「個」を大切にし、その挑戦を会社が後押しします。

こうした企業文化を原動力に、時代の変化を捉えながら、新たな事業と価値を生み出し続けることこそが、三井物産の強さであると考えています。

事業概要

三井物産の事業分野についてご説明します。当社の事業は、大きく分けて7つの分野で展開しています。金属資源、エネルギー、モビリティ・デジタル・インフラ、鉄鋼製品、化学品、ウェルネスエコシステム、不動産や金融事業などを手掛けるイノベーション&コーポレートディベロップメントと、非常に幅広いポートフォリオを持っています。

各分野において、トレーディングから事業投資、事業経営まで手掛けています。重要なのは、これらの分野を単独で見るのではなく、事業領域を越えて知見や機能を組み合わせていることです。

グローバルに広がる事業ポートフォリオ

当社の事業は、世界62カ国・地域、120拠点に及びます。鉄鉱石、LNG、自動車、発電、化学品、ヘルスケアなど、世界各地に競争力のある事業を保有しています。例えば鉄鉱石では、非常にコスト競争力の高い事業を展開しており、持分権益生産量は年間約6,400万トンに上ります。

また、LNGでは8カ国11プロジェクトに参画し、地域的に分散された事業ポートフォリオを構築しています。さらに、年間約1,200万トンを自己名義で取り扱うトレーディング機能を備えており、これは日本の年間LNG輸入量と比較しても非常に大きな規模です。

モビリティでも、米州を中心に大きな事業基盤を構築しています。当社の出資先が管理するトラック台数は約39万台で、全米第1位の規模を誇ります。ヘルスケアでは、出資先であるIHHの病院事業が、アジアにおける病床数で第1位の規模となっています。

また、事業投資だけでなく、長年培ってきたトレーディングも当社の強みです。例えば、化学品ではアンモニアの日本向け輸入で約60パーセントのシェアを有しています。さらに、食料でも、とうもろこし、大豆、菜種で日本向け輸入のトップシェアを有するなど、日本の産業や人々の暮らしを支える商品の安定供給に重要な役割を果たしています。

こうした厚みのある事業ポートフォリオとトレーディング機能が、環境変化に対する耐性と新しい成長機会を捉える力の源泉となっています。

企業価値向上の軌跡

このスライドでは、三井物産が事業ポートフォリオをどのように進化させてきたかをご説明します。時代や社会の変化に合わせ、成長分野への投資と事業の入れ替えを繰り返してきました。例えば、2015年3月期には、青い部分の金属資源と赤い部分のエネルギーが利益の約7割を占めていました。

そこから、これらの強い事業を維持・強化しつつ、モビリティ・デジタル・インフラ、化学品、ウェルネスエコシステム、イノベーション&コーポレートディベロップメントなど、幅広い分野で収益基盤を拡大してきました。

単に事業を広げたわけではありません。ポートフォリオの中身を入れ替えて良質化しながら、収益源を多様化し、同時に全社の収益力も向上させてきました。ご覧のとおり、2006年3月期に約2,000億円だった当期利益は、2026年3月期には4倍強に増加しています。キャッシュ・フローも同様に3倍強となり、時価総額は約6倍に成長しました。

これは、一時的に利益が拡大したということではなく、事業ポートフォリオの進化を通じて収益力そのものを一段高いレベルに引き上げてきた結果だと考えています。

強い事業をさらに強化しながら、次の収益の柱を育てていきます。この両方を続けることで、ポートフォリオの質と全社の収益力をともに高めていくことが、私たちの考える持続的な成長です。

基礎営業キャッシュ・フロー/商品価格推移

収益源が多様化した現在も、金属資源やエネルギーは三井物産の重要な収益基盤です。スライドのグラフをご覧ください。こちらは基礎営業キャッシュ・フローと鉄鉱石・原油価格の推移を重ねたものです。

資源価格はご覧のとおり上下していますが、その中でも当社のキャッシュ創出力は着実に高まってきました。特に直近では、資源価格が低下する中でも、5期連続で1兆円規模の基礎営業キャッシュ・フローを創出しています。つまり、資源価格の変動が業績を大きく左右する収益構造ではないということです。

下方への耐性を高めながら、市況が良い時にはアップサイドもしっかり取るという収益構造を作ってきたことが、現在の三井物産の強みです。

中期経営計画2026実績

ここからは、前の「中期経営計画2026」を簡単に振り返ります。「中期経営計画2026」では、基礎営業キャッシュ・フローを着実に創出するとともに、戦略的な資産リサイクルを進めた結果、3年間のキャッシュ・インは計画を約1兆円上回る4兆5,000億円となりました。

このような力強いキャッシュ創出力を背景に、将来の成長に向けた投資を計画以上に進めるとともに、株主還元も大きく拡大しました。その結果、3年間で約3兆1,000億円の投資を実行し、株主還元は1兆6,000億円まで拡大しました。

成長への投資と株主のみなさまへの還元を両立しながら、財務の健全性もしっかりと維持することができた3年間だったと考えています。

中経2026期間中に出資した主な案件

「中期経営計画2026」期間中に進めた成長投資について、さらに具体的にご説明します。このスライドでは、前中期経営計画の3年間で実行した主な成長投資を示しています。丸で囲っている、Ruwais LNG、Rhodes Ridge、Blue Pointの3案件は、将来の成長を支える大型優良案件です。

Ruwais LNGは、UAEで進める次世代の低炭素LNGプロジェクトです。UAEの国営エネルギー会社ADNOCと50年以上にわたり築いてきた関係を背景に、世界有数のエネルギー企業とともに参画しています。

Rhodes Ridgeは、希少かつ世界最大規模の未開発鉄鉱床の1つです。当社は20年以上にわたり参画の機会を追い続けてきました。60年以上にわたる西豪州での実績に加え、既存パートナーでもあるRio Tintoや、Rhodes Ridge権益オーナー一族との長年の関係を背景に、その機会をしっかりと捉え、参画につなげました。

Blue Pointは、化学品で50年以上培ってきたアンモニアの知見と、エネルギーで50年以上培ってきた天然ガス・LNG、燃料供給の知見を融合した、まさに当社らしい産業横断の取組みです。世界最大のアンモニア生産者であるCF Industries、国内最大の発電事業者であるJERAと共同で、低炭素アンモニアに関する新たなバリューチェーン構築を進めています。

このような案件は突然生まれるものではありません。長年にわたり積み重ねてきた事業実績や知見、パートナーとの信頼関係が、質の高い投資機会につながっています。この「優良なパートナーとして選ばれる力」が、三井物産の成長を支える大きな競争力であると考えています。

中期経営計画2029テーマ

今年4月から新しく「中期経営計画2029」をスタートしました。テーマは「信頼とイノベーションで未来をつくる」です。これまでお話ししたように、長年培ってきた強みを活かし、次の成長を生み出していきます。

同時に、三井物産のさまざまな事業や知見をこれまでにないかたちで組み合わせ、新たな価値を生み出していきます。これを「非線形のCombinatory Value」と呼んでいます。本中期経営計画では、プロフェッショナル人材とAIの探索力を融合させることで、飛躍的な価値を生み出すことを目指しています。

進化した3つの攻め筋

前の「中期経営計画2026」では、スライドに示している3つの攻め筋に沿って事業を進め、その方向性に確かな手応えを得ました。だからこそ、「中期経営計画2029」でもこの方向性は変えていません。これまで培ってきた強固な事業基盤を起点に、3つの攻め筋をさらに進化させ、いわばバージョン2.0として発展させていきます。

例えば、鉄鉱石や銅など競争力のある事業をさらに強化し、産業や地域をまたぐ事業基盤にAIやデジタルを掛け合わせることで、新たな成長につなげていきます。

エネルギーでは、これまで築いてきた天然ガスのバリューチェーンを起点に、電力やデジタルなどの周辺領域へ事業を拡大します。ウェルネスエコシステムでは、ヘルスケア事業を基盤に、そこから得られたデータを新たなサービスやイノベーションに活用します。

つまり、これまで築いてきた強みを起点に、その周辺へ、さらに新しい領域へと事業を展げ、次の成長を作っていきます。これが「中期経営計画2029」の進化した3つの攻め筋です。

定量目標

中期経営計画の定量目標として、2029年3月期に基礎営業キャッシュ・フロー1兆2,000億円、当期利益1兆1,000億円、ROE12パーセントを掲げています。株主還元については、中期経営計画期間3年間累計で、基礎営業キャッシュ・フローの50パーセント超を還元する方針です。外部環境の変化にしっかりと対応しながら、3年間でこれらの目標を実現していきます。

Pathway to 2030 and beyond

私たちが見据えているのは、この中期経営計画期間である2029年3月期までだけではありません。2030年の「あり姿」として、当期利益1兆4,000億円超、ROE13パーセント超を掲げています。その実現に向けた道筋は大きく分けて3つあります。

まず、既存事業の価値をさらに引き出す「ミドルゲーム」を実行します。すでに持っている事業をさらに強化し、収益力を高めていきます。

2つ目は、「中期経営計画2026」で実行した成長投資の果実化です。これまで仕込んできた案件が順次立ち上がり、収益への貢献を本格化させていきます。

3つ目は、「中期経営計画2029」期間中に新たに決定・実行する成長投資です。将来の大型案件だけでなく、早期に収益貢献が期待できる即効性のある案件も着実に積み上げ、2030年に向けた利益成長につなげていきます。

さらにその先には、すでに投資を決定している大型案件、先ほどお話しした3つの案件が主となりますが、それらが立ち上がることで収益貢献がさらに拡大していきます。

2030年の利益成長は、これから実行する案件にのみ依存しているわけではありません。既存事業の改善、すでに実行した投資からの収益貢献、そして新たな投資の3つを重ねることで、大きな成長を実現していく考えです。

成長投資による収益貢献

今お伝えした2つ目の「すでに実行した投資の果実化」と3つ目の「新たな成長投資」を具体的な案件で示したのが、こちらのスライドです。このスライドは、主な投資案件がいつから収益に貢献するかを時間軸で示しており、丸の位置は収益開始時期を表しています。

「中期経営計画2026」で実行した案件は、青丸で示しているとおり、すでに収益貢献が始まっているものに加え、これから立ち上がる案件も数多くあります。

また、ご注目いただきたいのは、一番右側に示している、2030年以降に本格的な収益貢献を見込む案件が数多く控えていることです。その上で、「中期経営計画2029」でも3つの攻め筋に沿って、緑の丸で示す新たな投資機会を積み上げていきます。

つまり、足元の利益だけでなく、2030年、さらにその先の成長を支える案件も着実に積み上がっています。これは当社の強みであり、ぜひ注目していただきたい点です。

データ/AI活用による非線形のCombinatory Valueの実現

三井物産には、世界中のさまざまな産業で蓄積する知見やデータ、そしてそれを担う人材がいます。「中期経営計画2029」では、これらにAIの最新の探索力を加え、これまでになかった組み合わせを生み出していきます。

例えば、ヘルスケアとデータの組み合わせ、ガスと電力の組み合わせ、トレーディングとAIの組み合わせ、産業現場とAIインフラの組み合わせなどです。私たちは、このような新しい組み合わせから生まれる価値を「非線形のCombinatory Value」と呼んでいます。

これまで人が経験を通じて見つけてきた「この事業とこの事業の組み合わせで新しい価値が生まれる」という発想を引き続き追求しつつ、データとAIの活用によって、より速く、より広く、並行して探していくという考え方です。

これまで培ってきた「総合力」をAIとデータの力で一段進化させ、新しい価値を生み出していきたいと考えています。

経営成績サマリー

足元の業績についてご説明します。2027年3月期第1四半期は、非常に良いスタートを切ることができました。基礎営業キャッシュ・フローは2,809億円、当期利益は2,941億円となり、当期利益は当社の第1四半期として過去最高となりました。

年間計画に対する進捗率は、基礎営業キャッシュ・フローで27パーセント、当期利益で32パーセントと、計画を上回るペースで推移しています。

2027年3月期 事業計画に対する進捗率

スライドに示しているとおり、第1四半期の内訳を見ても非常に内容が良く、進捗率も高く、「中期経営計画2029」の初年度として良いスタートを切ることができたと考えています。

特に今期は中東情勢などでサプライチェーンの不確実性が高まる中、当社の調達力や物流機能、需給の調整力を発揮し、お客さまのニーズにしっかりと応えてきたことがトレーディングの成果につながっています。

化学品では、こうしたトレーディングに加え、メタノール事業など、これまで取り組んできたミドルゲームの成果もしっかりと数字に表れています。モビリティ・デジタル・インフラも、自動車や船舶関連を中心に好調です。ウェルネスエコシステムは、エビや鶏、サーモンなどのタンパク質事業の成長により順調に進捗しています。

イノベーション&コーポレートディベロップメントは、米国不動産関連事業の資産リサイクル益が大きく貢献しました。また、エネルギーをはじめ、第2四半期以降に本格的な貢献が期待される事業もあります。足元の好調な業績は、これまで強化してきた事業や機能が着実に成果につながっていると認識しています。

中期経営計画2029 キャピタル・アロケーション

キャッシュのインとアウト、アウトに関してはその分配について、考え方をご説明します。当社では、資金の使い道をあらかじめすべて固定するのではなく、投資機会や経営環境を見ながら成長投資や追加の株主還元に柔軟に配分できる資金を「マネジメント・アロケーション」と呼んでいます。

「中期経営計画2029」のマネジメント・アロケーションは、3年間累計のベースケースで2兆4,000億円を期首に想定しています。良い投資機会があれば、規律をもって成長投資に振り向ける一方で、株主のみなさまへの還元もしっかりと行っていきます。

株主還元

株主還元についてご説明します。配当については、2027年3月期に過去最高となる1株当たり25円の増配を行い、年間140円を見込んでいます。これは前期の115円から大きく引き上げた水準です。この配当の引き上げは、これまで高めてきたキャッシュ創出力に加え、今後のさらなる成長への自信の表れでもあります。

今後も140円を下限として累進配当を継続します。短期的な業績変動に左右されることなく、持続的に高めてきた当社のキャッシュ創出力を株主のみなさまへの安定的な還元につなげていく方針です。

また、8月には2,000億円の自己株式取得を決定しました。取得した株式は全額消却する予定です。したがって、先ほどスライドでご説明したマネジメント・アロケーション2兆4,000億円は、この8月の段階で2兆2,000億円になっていることを併せてご報告します。

三井物産は今後も着実にキャッシュ創出力を高め、その成果を次の成長と株主還元の双方につなげていきます。

本日のまとめ

最後に、本日お伝えしたポイントをまとめています。三井物産には、長年培ってきた競争力のある事業と、多様な事業ポートフォリオがあります。そして、最新のAIを活用し、多様な事業や知見を垣根なく掛け合わせることで、新たな価値を生み出していきます。そこから生まれる強いキャッシュ創出力を、次の成長に向けた投資と株主還元の双方へとつなげていきます。

「中期経営計画2026」で進めた投資もこれから順次収益に貢献し、「中期経営計画2029」においても次の成長機会を着実に積み上げていきます。現在の強さを次の成長につなげ、その成果を株主のみなさまへ還元していきます。

以上で、私からの説明を終わります。ありがとうございました。

質疑応答:今後の成長の柱について

司会者:「今後、三井物産はどの分野を成長の柱としていくのでしょうか? 『中期経営計画2029』も踏まえ、今後の成長戦略についてもう少し詳しく教えてください」というご質問です。

堀:「中期経営計画2029」では、先ほどお話しした3つの攻め筋を軸に進めていきますが、このスライドを用いてご説明します。

まず1つ目は、エネルギーの大転換です。当社は天然ガスを軸とするエネルギーの川上から、液化天然ガスや低炭素の化学品などさまざまな領域に事業展開しています。さらに、その先では、エネルギーを利用して電力を生み出し、その電力を利用してデータセンターでAIの計算資源を支える事業へと展開させます。

当社はそのような長いバリューチェーンの中で、収益の上がる事業をその周辺分野まで含めて一つひとつ丹念に拾い上げ、収益化していきたいと考えています。

次に、当社のもう1つの攻め筋である「Industrial Business Solutions 2.0」です。現在の中期経営計画においてはバージョン2.0と定義しており、世界において希少性のある重要資源、材料、財などの安定供給を実現することを目標としています。

例えば、スライドに記載している金属資源に関しては、鉄鉱石や銅を軸とし、戦略的にリチウムなども加えています。このように、川上からデリバリーまでしっかりとした体制を組んでいく考えです。当然ながら、原料を使った鉄鋼製品も重要な要素となります。

さらに、モビリティとして、自動車、建設機械、船舶などに代表される分野で、しっかりとした地域戦略を持って対応していきます。米州では、北米および南米の両地域を対象に、販売、金融、アフターサービス、フリートマネジメントなど、さまざまな機能を包含した事業を展開しています。

ここには非常に大きな成長余地があると考えており、産業ソリューションの一環として取り組んでいきます。

また、化学品をはじめとする素材産業では、現在の中東の複雑な状況において、顧客からサプライチェーンの代替案や、より安定したサプライチェーンのための解決策が求められています。私たちは広範囲にわたるグローバルなネットワークを活用し、この事業を着実に継続していきます。

私たちはロジスティクスのアセットを数多く保有していますので、そちらを上手にテコにして、お客さまのご要望に応え、安定供給に努めていきます。ここは非常に大きな成長分野です。

特に中東の状況から発生する、世界のマーケットにおけるさまざまなリスクや一部の歪みは、中期的に続くと言わざるを得ません。私たちは、そうした状況の中でさらに磨きをかけ、お客さまの役に立つ存在となることが、2つ目の大きな柱であると考えています。

3つ目の攻め筋は、広義のウェルネスの分野です。先ほどご紹介した病院事業を軸に、そこから得られる精度と質の高いヘルスケアのリアルワールドデータを整理し、活用可能なかたちにします。その上で、創薬産業や保険サービスなどのお客さま向けにサービスを展開していくという大きなビジョンを持っています。

さらに、病院事業における知見を活用することで、病気にならないための未病対策や予防、さらにはそのための栄養学といった領域にも注力していきます。栄養の観点においては、高い栄養価を持つ食料の原料の供給体制を整備し、世界の人々に提供することを目指しています。また、良質なタンパク質事業を世界中で構築するという方向性もあります。

すべてに言及する時間はありませんが、以上の3つの攻め筋に沿って、当社の7つの事業分野の各チームが縦横無尽かつグローバルに展開していくことが、「中期経営計画2029」における成長戦略の大きな柱になると考えています。

質疑応答:事業ポートフォリオ入れ替えの判断基準について

司会者:「事業ポートフォリオの入れ替え時における判断指標は何ですか? また、収益化まで時間がかかる事業については、どのように判断するのでしょうか?」というご質問です。

堀:非常に重要なご質問をありがとうございます。事業ポートフォリオの入れ替えは、当社のような総合商社においては、いわば常態といえます。冒頭にご説明したとおり、私はポートフォリオ管理委員長を社長になる前に担当していましたが、この仕事は当社の基幹業務の1つだと社員全員が理解しています。

事業の入れ替えにおいて重要なのは、グローバルでの地域軸、各産業軸、そして短期・中期・長期の時間軸を考慮しながら進めていくことです。また、どのようなタイミングで入れ替えを行うかについてですが、基本的には、当社が保有する資産に対してきちんと付加価値を加え続けられることが、資産を保有する条件となります。

もし、当社よりも他の企業や組織がその資産を保有したほうがいいのではないかという局面まで保有していた場合、責任のある後継オーナーへ売却することを判断します。これが一番オーソドックスなかたちでのポートフォリオの売却だと思います。

また、収益化まで時間がかかる事業も当然ながらあります。先ほどお話しした鉄鉱石の大型案件であるRhodes Ridgeは、2030年3月期以降、大きな収益を上げていきます。時間はかかりますが、着実に進めるべく、取り組んでいます。

収益化まで何年もかかる事業は、その手前の里程標を確実に達成していくことが重要です。それを見ながらしっかり仕上げていくかたちになると思います。

長期的に収益を上げていくと同時に、短期的に足元で収益をしっかり出す案件の両方をポートフォリオに組み込むことで、会社全体の基礎収益を右肩上がりで成長させていくことが非常に重要だと考えています。

質疑応答:競合他社と比べてユニークな点や強みについて

司会者:「競合他社と比べて一番違うユニークな点や強みは何でしょうか?」というご質問です。

堀:総合商社は各社それぞれ立派な会社であり、当社は特に横を意識することなく、「当社がやるべきことは何なのか」という点に集中し、絶対的な価値の創造とポジションの確立を目指していくことを基本としています。

ご質問になるべくお答えしたいと思いますので、あえて当社の業界内での特徴についてお話しすると、第一に、三井物産はグローバルにおける地域的な広がりが非常に大きいと考えています。北半球、南半球、日本を含む各大陸で非常にバランスのとれた収益基盤を持っています。

「ある地域でうまくいったから、この地域でもうまくいくのではないか」あるいは「どのように工夫すれば他地域でもうまくいくか」ということを絶えず考えています。先ほど申し上げた時間軸と地域軸を効果的に活用して事業を拡大することが、当社の大きな強みであると考えています。

同時に、日本に不足している資源や食料、もともと国内にないものを世界中から調達しています。当社は世界的なネットワークを活用し、相当な規模と工夫で日本にさまざまなものを持ち込んでおり、ソフト的な側面でも多くの計画を進めています。

例えば、アジアで培ったヘルスケアの知見を日本に導入することも、将来的には可能性があると考えています。

もう1つの当社の特徴として、部門間の垣根がほとんどないことが挙げられると考えます。当社では、15の事業本部長が直接私にレポートを行う仕組みを設けています。海外拠点からも直接私へレポートが行われます。

これをうまく束ねる管掌役員が非常に重要です。その方々が状況を把握しながら、レポートラインを形成しています。「ある事業本部とある事業本部を組み合わせてこの仕事に取り組んだら、非常に効果があるだろう」ということには、誰もが気がつきます。

そのような場合には迅速に打ち合わせを行い、本部長も状況をよく把握しているため、「このような役割分担で進めましょう」という調整が普通に行われます。このような仕組みが当社の機動性を生み出していると考えており、ここはユニークな点かと思います。

また、海外拠点には相当な権限を移譲しています。海外拠点では、世界の事業戦略に基づき事業本部と協力しながら新たな仕事を開拓しています。海外拠点が日本では気づかないようなことを現地目線で捉え、当事者として良い仕事を見つけ出し、事業本部と連携して仕事を創り上げています。

主体性はありながらも、最終的にはチームで取り組んでいるため、グローバルに業務を拡大しやすいという特徴があります。長い間、そのように行ってきた会社としての個性であると考えています。せっかくのご質問ですので、ご紹介しました。

質疑応答:データとAI活用の取組みについて

司会者:「データやAIの活用に関して、具体的にはどのような分野や組み合わせが成功の可能性が高いでしょうか? AIの開発や活用は社員の方が行うのでしょうか?」というご質問です。

堀:データとAIの活用には2通りあります。1つは、当社が取り組む産業分野におけるAI活用です。ここでは、ユニークな取組みが行われています。

例えば鉱山事業においては、AIを活用することで、鉱山の操業現場で自動操業を実現したり、さまざまなデータを分析して安全性や効率性、メンテナンス等の費用を抑えながら競争力を向上させたりすることが可能です。このような取組みが高いレベルで実現可能であるとわかっており、今後は実行フェーズへ進む段階にあります。これが1つの事例です。

よりわかりやすい例としては、ヘルスケアの分野です。先ほどお話しした当社の現場で取得可能なリアルワールドデータにAIの探索力や分析力を加えることで、薬の開発におけるさまざまな道筋を切り開く貴重な洞察やサービス提供が可能になると考えています。

もう1つは、日本では人口動態の変化に伴い、労働最適化が求められる産業が増加しています。社会全体として、従来どおりに人を採用していくことが難しい産業も増えています。

例えば、当社は日本全国における給食産業の主要事業者の1社です。この分野は、人間の手の動きを模倣するロボティクスとAIを連携させたフィジカルAIが最も活躍できる場であると考えています。この取組みを、海外の新しい技術や道具を活用しながら着実に進めています。

こうした活動を各分野で進め、会社として知見を蓄積していくというイメージを持っていただければと思います。

また、当社内で起きているさまざまな事業の担い手たちによる観察やビジネスで得た洞察について、情報管理や守秘義務の体制をしっかりと整備した上で、会社全体で活用可能な情報として縦横無尽に組み合わせていきたいと考えています。

「今まで気づかなかった、こういうチーム同士の組み合わせで、こういう探索をしたらどうか」あるいは「時間軸を遡った昔のビジネスモデルを改良して、ここに適用したらどうか」というアイデアが、人間が生み出すアイデアと並行して創出されると思います。

現在、パイロットを進めており、会社全体でその体制に向けて動いている最中です。私自身もデータを提供する立場だと思っています。これは会社全体で取り組む、いわば民主的な作業ですが、期待しているところです。

また、当社では日本国内だけでなく海外や一部の子会社を含めて、全社員の人事データを活用し、さまざまな能力の詳細まで含めたデータベースを構築しています。こちらには、それぞれのキャリアに関する希望や、「こうしたい」というアスピレーション、キャリアに関する多様な考えが記載されています。

このデータにエージェントAIを組み合わせることで、「この新しいプロジェクトには、このような人材を起用すると成功するのではないか」という判断が可能な時代になっています。

また、これを人間の「この人たちを組み合わせたらいいのではないか」といったアイデアと比較することで、より深みのあるチーム組成が実現すると考えています。現在はパイロット段階ですが、大変期待を寄せています。

このようなことも考えながらAIを活用し、人間の社員がより高い視点で業務に取り組み、実際の意思決定や判断業務を行い、お客さまと向き合いながらさまざまなことを決定していく方向に、人間の仕事が移行していくというイメージを持ちつつ、AIの発展を会社の経営に取り入れていきたいと考えています。

質疑応答:株価や企業価値向上に向けた取組みについて

司会者:「現在の株価について、どのように評価していますか? また、株価・企業価値をさらに高めるために何を行っていきますか?」というご質問です。

堀:株式市場が評価するものですので、株価について絶対値でこれだという目標を申し上げることは控えますが、現状の株価には社長としてまったく満足していません。

当社の足元の収益力から、積み上げるかたちでの持続的な成長を目指しており、会社としての成長性を考えると、より高い評価をいただくために、実績や展望をより明確に示していく必要があると考えています。非常に期待が持てる事業ポートフォリオとビジネスモデルの組み合わせを持っていると自負しています。

さらに説明力を高め、足元の実績を着実に出し、みなさまのご支援をいただけるよう、社員一同努力していきたいと考えています。

株価や企業価値をさらに向上させるためには、しっかりと予算を達成することです。また、マーケットや環境が許すのであればそれを超えられるよう努めることです。それから、短期・中期・長期の時間軸で収益貢献するプロジェクトをしっかりと示し、着実な成長路線を描いていることにご納得いただけるよう、一つひとつお示しすることが大切です。

また、お預かりした資本に対するリターンを可能な限り引き上げていきたいと思います。現行の「中期経営計画2029」を経て、2030年に向けてROEをさらに向上させていくと公表していますが、それを着実に実行していきたいと考えています。

当社は借入余力も十分にありますので、当社の投資基準にかなう良質な投資案件であれば、果断に実行していきます。その際には借入余力を活用し、成果を上げていきます。

その結果、資本効率を高めながら株主還元も行っていきます。ROEを向上させ、みなさまからの評価をさらに高めることが非常に重要だと考えています。引き続き、みなさまのご支援をよろしくお願いします。

質疑応答:第1四半期の好調な利益が継続する背景と逆風となる要因について

司会者:「第1四半期の利益として過去最高でしたが、このペースが続く要因と逆風となる要因をどう見ていますか?」というご質問です。

堀:第1四半期における好調な利益の背景の1つとしては、各部門でサプライチェーンが不安定な状況となったことで、お客さまから代替供給体制の構築、あるいはバリューチェーンやサプライチェーンにおけるより高度な価値提供を求められるようになり、それに対応したことが収益につながった部分が大きいと考えています。

この傾向がどれくらい続くのかについては、みなさまご存じのように現在、中東の状況は9月下旬の段階でまだ解決の糸口が見えていません。これには時間がかかると考えています。また、さまざまなかたちで世界中のサプライチェーンに大きなストレスがかかっており、この状況はしばらく継続すると見ています。

その結果、当社の総合商社としての役割はこれまで以上に増えており、それをしっかり果たすことで、当初想定を上回る収益貢献が期待できると考えています。

また、もう1つの利益が好調な要因として、前中期経営計画で実施した施策が、この第1四半期から次第に成果を上げ始めていることも挙げられます。先ほど収益貢献時期を示したスライドをご覧いただきましたが、そのイメージどおり、着実に成果を出しています。

これは代表的なものを並べているので、実際にはこの他にもいろいろな案件があるのですが、それらをしっかりと実現していくことが、このペースを継続するための重要な前提と考えています。また、それを目指してアクションプランを立てていますので、ご期待いただければと思います。

逆風となる要因については、当社の想定を超える地政学的な問題や、サプライチェーンにおけるさまざまな歪み、混乱などに対応しきれないリスクが考えられます。しかし、当社としては万全の体制を整え、これらのリスクに対応していく方針です。

たとえ強い逆風が生じたとしても、これを乗り越え、お客さまへのソリューションの提供を徹底しながら事業を展開していく所存です。

金利についても注視しています。現在、世界的に長期金利が上昇しているのは周知の事実で、短期的には支払金利の上昇がコスト要因となり得ます。

ただし、当社では、金利上昇が一定の健全なインフレと同時に発生している場合には、インフレによる価格上昇分を捕捉することが事業モデル上比較的容易なため、金利上昇による向かい風を乗り越えられると考えています。

また、これが健全なインフレや好景気と相まった好循環であれば、むしろ業績の上方修正の可能性が高まり、いわゆるアップサイドの要因になると見ています。ただし、いずれにせよ金利が高水準にある場合や、短期から長期にかけてのイールドカーブがいびつである場合には注意が必要です。

これはどの企業にも共通ですが、当社としても財務的な対応を講じ、そうした状況におけるマイナス面を可能な限りカバーしていく必要があると認識しています。今後も金利動向やマクロ経済状況を注意深く見守りながら、会社を運営していきます。

質疑応答:Berkshire Hathaway社との対話について

司会者:「Berkshire Hathaway社が来日したそうですが、どのようなお話をしましたか?」というご質問です。

堀:Berkshire Hathaway社が先日来日されました。これまでも何度もアメリカや日本でお会いしており、私が言うのも恐縮ですが、非常に意義のある、深みのある対話ができたと感じています。

特定の投資家の方との具体的な話の内容については開示できませんが、Berkshire Hathaway社との対話について申し上げられるのは、当社の長期的な戦略やアクションプランなどについて、大株主であるBerkshire Hathaway社との対話の中でしっかり議論しているということです。

それと並行して、お互いに共通するトピックスが多くあり、当社がかかわる多様な産業における今後の動向や、どこにビジネスチャンスがあるのかといった点についても、丁寧に意見交換しながら深掘りを行うといった部分もあったと考えています。

Berkshire Hathaway社には、当社の仕事内容、ビジネスモデル、将来の展望について、非常によくご理解いただいています。当社を長期的な目線で保有していただいていることは非常にありがたく、そのような機関投資家からも、ありがたいことに多くのご支援をいただいています。Berkshire Hathaway社を含め、みなさまのご期待に応えたいと考えています。

また、Berkshire Hathaway社のCEOとは、こうした機会のみならず、いつでも電話で直接お話しすることができ、非常にありがたいと感じています。

質疑応答:今後の株主還元について

司会者:「株主還元について、増配や自己株式取得は今後も期待してよいのでしょうか?」というご質問です。

堀:当社が「中期経営計画2029」で開示している資本の配分が経営の根幹になると思います。しっかり会社として目標の収益を上げて、チャンスがあれば過達も狙っていく方針です。

先ほどポートフォリオの入れ替えについてご質問いただきましたが、場合によっては資産を非常に有利に売却する場面があります。このようにして得た現金は、将来の成長を促進するため、あるいは足元の利益をさらに増加させるための優良投資案件に振り向けていきます。同時に、株主還元にも配分し、株主のみなさまのご期待に応えながら資本効率を向上させることに、徹底してこだわっていきます。両者のバランスを取っていくことが、結果的に株主のみなさまの目線に合うと考えています。

したがって、今後の追加的な自己株式取得の可能性、そして現在140円を下限としてお伝えしている累進配当について、中期経営計画の中で意識していきます。

この方針を念頭に、投資案件のパイプラインを念入りに確認し、マクロ環境や株価、当社のキャッシュ・フローの計画を見ながら、しっかりとバランスよく配分していきたいと考えています。長い回答となってしまいましたが、増配や追加の自己株式取得について、中期経営計画の中でしっかりと対応していきます。

現在示しているキャピタル・アロケーションでは、期初のマネジメント・アロケーションから約2,000億円の自己株式取得を決定しており、今後残りの2兆2,000億円を中期経営計画期間中に優良投資案件や追加の株主還元に活用したいというイメージです。株主のみなさまのご期待に応えるかたちで、成果を出していければ幸いです。引き続き、三井物産へのご支援をどうぞよろしくお願いします。

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