対話型 IR イベント「LIMITLESS Dialogue ~マキこむマクニカ~」
司会者:みなさま、本日はお忙しい中「LIMITLESS Dialogue」にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本イベント「LIMITLESS Dialogue ~マキこむマクニカ~」は、9月14日に公開したマクニカホールディングスの統合報告書「LIMITLESS 2026」の発行を機に、当社の考え方や取り組みについての理解を深めていただくことを目的に開催しています。
本日の対話を通じて、統合報告書では伝えきれないマクニカの企業価値や今後の可能性をみなさまに感じていただければ幸いです。
Agenda
司会者:本日はスライドに記載のアジェンダに沿って進めます。最後に質疑応答の時間を設けています。
また、本日は決算発表前の沈黙期間にあたるため、業績見通しに関するご質問への回答は控えます。
登壇者のご紹介
司会者:第1部のスピーカーは、マクニカホールディングス株式会社 代表取締役社長の原一将です。
LIMITLESS 2026 見どころ
原一将氏(以下、原):みなさま、こんばんは。マクニカホールディングス代表取締役社長の原です。本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。まず、私から今年の統合報告書「LIMITLESS 2026」の見どころについて解説します。
今年の統合報告書のテーマは「マキこむマクニカ」です。しかし、投資家のみなさまが知りたいのはテーマそのものではないと考えています。「なぜマクニカは成長できたのか」「これからも成長できるのか」「『Vision2030』をどう実現するのか」については、国内外の投資家のみなさまとの対話の中で、繰り返しいただいている問いです。
我々は、その答えが「マキこむ力」にあると考えています。技術だけでは価値を生み出すことはできません。異なる強みを持つ人や企業が集まり、挑戦を現実化することで、初めて新しい価値が創出されます。
我々にとって「マキこむ」とは、誰かを一方的に引き込むことではありません。「一緒にやってみたい」と感じていただける未来を示し、共感し、ともに動くことを意味します。
それでは、なぜ今年このテーマにたどり着いたのでしょうか? その背景には、投資家のみなさまとの対話を通じて、統合報告書を毎年進化させてきた歴史があります。まずは、その歩みについてご紹介します。
マクニカの統合報告書の変遷
原:マクニカの統合報告書には1つの特徴があります。それは、投資家のみなさまとの対話を通じて毎年進化している点です。
我々は、統合報告書を作成して終わりとは考えていません。統合報告書を起点に対話を行い、そこでいただいた意見やご質問を翌年の統合報告書に反映しています。
2023年に初めて統合報告書を発行しました。テーマは「はじめまして、マクニカです」で、まずはマクニカを知っていただくことから始めました。
その後、投資家面談の中で「なぜ成長できるのか」「競争優位性はどこにあるのか」といった問いをいただくようになりました。そこで、2024年には「よくわかるマクニカのしくみ」をテーマに、競争優位性や事業の構造についてお伝えしました。
さらに、「これからどこへ向かうのか」「『Vision2030』をどう実現するのか」という問いが増えてきました。そこで、2025年は「未来を描き、“今”を創る。」をテーマに、「Vision2030」とその現在地についてお伝えしました。
そして、今年です。対話を通じてあらためて見えてきたのは、マクニカの価値創造は事業や戦略だけでは説明しきれないということでした。
「なぜ新しい市場を見つけることができるのか」「なぜ新しい事業へ挑戦し続けることができるのか」という背景には、社員、お客さま、仕入れ先さまなどのパートナーさま、ならびに株主・投資家のみなさまとの共創があります。そこで今年は「マキこむマクニカ」をテーマに設定しました。
私は、IRは会社を正当化する活動ではないと考えています。投資家のみなさまとの対話を通じて学び、改善し、経営や開示を進化させていきます。対話のために統合報告書を作成し、対話を通じてその報告書を進化させることが、マクニカのIRの特徴です。
LIMITLESS 2026 編集方針
原:今年の報告書では、3つの視点から価値創造についてお伝えしています。
社員は価値創造の主役であり、パートナーさまは市場をともに切り開く同志、株主・投資家のみなさまは成長の確からしさをともに検証するパートナーです。
価値創造は経営だけで生まれるものではなく、このような方々との共創によって初めて新しい価値が生まれます。本日の「LIMITLESS Dialogue」も、その考えを実践する場です。
LIMITLESS 2026での変更点
原:構成について少し言及します。見直しのポイントは大きく3つあります。
1つ目は、誌面構成の刷新です。投資家のみなさまとの対話を踏まえ、知りたい情報により早くたどり着ける構成を目指しました。
2つ目は、動画コンテンツとの連携です。冊子だけではお伝えしにくい現場の様子を動画と組み合わせることで、より理解を深めていただけるよう工夫しています。
3つ目は、AIフレンドリー対応です。簡潔にお伝えすると、AIが読みやすいPDF形式にしたということです。これにより、投資家のみなさまがご自身のAIを通じて統合報告書を取り込み、分析できるようにしています。ぜひご活用ください。
統合報告書の構成を大幅に見直し
原:今年の統合報告書は、特徴的でユニークな構成となっています。その特徴は、2つの新設コンテンツに象徴されています。
1つ目は、インベスターズガイドです。「なぜ成長できたのか」「競争優位性はどこにあるのか」「『Vision2030』は実現できるのか」といった問いに答えるため、ビジネスモデルからガバナンスまでを1つにまとめました。
2つ目は、特別企画です。数字だけでは伝えきれない現場の動きや企業文化をお伝えしています。
インベスターズガイドは構造を理解するためのもので、特別企画は現場を理解するためのものであり、この2つを組み合わせて、マクニカの実像をお伝えできればと考えています。
ここからは、マクニカが成長を遂げた要因についてお話しします。
Why Invest in Macnica?(なぜマクニカに投資するのか?)
原:まず、インベスターズガイドの中でぜひご覧いただきたいのがスライドに記載のページです。同業の半導体商社との比較を交えながら、2015年度から2025年度までの営業利益と1人当たりの営業利益の推移を示しています。
半導体業界では、この10年余りの間に商流移管が発生しました。マクニカはその機会を活かし、事業を拡大してきました。ただし、商流移管があったから成長できたわけではありません。
投資家のみなさまからも「商流移管があったから成長したのか」という問いをいただくことがよくあります。しかし、商流移管だけが理由であれば、事業規模を拡大しても1人当たりの営業利益がここまで伸びることはなかったと思います。
重要なのは、「なぜマクニカが選ばれてきたのか」という点です。当社はお客さまに対し、設計開発段階から当社のエンジニアが伴走し、製品への実装までを支援しています。
一方で、半導体メーカーに対しては、当社の幅広い顧客基盤と技術支援力を活用し、新しい市場の開拓を進めています。マクニカが選ばれ続けた理由は、単に技術を提供するのではなく、その技術を価値へと転換してきたことにあると考えています。
お客さまから選ばれることでメーカーからも選ばれ、半導体メーカーから選ばれることで、さらにお客さまへ価値を届けられるという好循環が生まれています。
この好循環がマクニカの競争優位性であることを、このページで詳しく説明しています。ぜひご一読いただければ幸いです。
Why Invest in Macnica?(なぜマクニカに投資するのか?)
原:次に、その成長をどのように企業価値につなげるかについて解説します。ここでお伝えしたいのは、株価そのものではなく、競争優位性を利益成長につなげ、利益成長を企業価値につなげることが経営の責任であるという点です。
売上規模だけを追うのではなく、利益を生み出し、それをどこに再投資するかが重要です。
利益率や資本効率を高めつつ、成長投資と株主還元を両立させていきます。これが「Vision2030」に向けた重要な経営課題です。
ここからは、これまで成長してきた理由ではなく、これからも成長できる理由についてご説明します。
マクニカには「ひまわり経営」という考え方があります。市場や技術の変化を捉え、成長領域へいち早く種をまくという考え方です。
市場の成長は当社に数多くの事業機会を与え、その中で成功を収めてきました。ただし、成長市場を選ぶだけでは企業としての成長は実現しません。市場の成長を利益に変える力が重要です。
私は、売上高2兆円の達成よりも、営業利益率7.5パーセントの実現のほうが難しいと考えています。売上高は市場の成長という追い風によって伸ばすことが可能ですが、営業利益率を向上させるには、事業モデルそのものを進化させる必要があります。
そのため、我々は高付加価値ディストリビューションモデルをさらに強化するとともに、サービス・ソリューション型への変革に挑戦しています。
その象徴となるのがCPSソリューション事業です。この事業は、市場の成長だけで成り立つものではありません。お客さまの現場に入り、課題を理解し、解決策を仕組み化し、それを再現性のある事業として育て上げる必要があります。
簡単な挑戦ではありませんが、だからこそ挑戦する価値があります。営業利益率7.5パーセントは単なる数値目標ではなく、マクニカが本当に価値創造企業へと変革できているかどうかを測る指標です。スライドに記載のページで詳細をご説明していますので、ご確認ください。
半導体特集:AI最前線
原:次に、特別企画のご紹介です。今年はAIに関する特集を2つご用意しました。まず、半導体特集の「AI最前線」でお伝えしたいのは、AIの競争軸が「学習」から「実装」へと移りつつあるという点です。この変化は、マクニカにとって大きな事業機会であると捉えています。
今後、エッジAIやフィジカルAIの普及により、AIはデータセンター内にとどまらず、工場、物流、自動運転、社会インフラといった幅広い分野へと広がっていきます。
重要なポイントは、AIの進化は単に半導体需要を生み出すだけでなく、AIの社会実装を支える新たな事業機会をマクニカにもたらしているということです。この実装領域こそ、今後マクニカが挑戦する重要な成長領域と位置づけています。ぜひ、統合報告書58ページに記載の「半導体特集」をご覧ください。
サイバーセキュリティ特集:AI時代のサイバーセキュリティ
原:AIは大きな事業機会を生み出す一方で、新たなリスクも生み出しています。そこで、今回の特別企画では、「AI時代のサイバーセキュリティ」についても取り上げました。この特集のメッセージは、AIがサイバーセキュリティの対象そのものを変えつつあるということです。
これまで企業は、人やシステムを守ることが中心でした。しかし、AIやAIエージェントが業務に活用される時代になると、AIを安全に利用するためのセキュリティ、いわゆる「Security for AI」が重要になります。
一方で、攻撃者もAIを活用するようになっています。そのため、防御する側もAIを活用しながらセキュリティを高度化する、いわゆる「AI for Security」の取り組みが不可欠です。
AIは企業に新たな利便性をもたらす一方で、セキュリティのあり方そのものを大きく変えようとしています。この変化はマクニカにとって大きな事業機会であると捉えています。なぜなら、このような市場の変化が起こる際には、新しい技術やプレーヤーが次々と生まれるからです。
マクニカは長年にわたり、世界中から有望な技術や企業を発掘するソーシング活動を強みとしてきました。
今回の特集では、マクニカのソーシング活動の一端や、どのような視点で次の市場変化を見極めているかについてもご紹介しています。詳細は、統合報告書62ページのサイバーセキュリティ特集をご覧いただけると幸いです。
本日お伝えしたかったのは、マクニカの成長は市場の追い風だけで生まれたものではないということです。市場や技術の変化を捉え、それを価値に変えてお客さまや社会に届けてきた積み重ねが、今日のマクニカを築いてきました。
お客さまや仕入れ先といったパートナーさま、社員、株主・投資家のみなさまに「一緒にやってみたい」と思っていただくことが、マクニカの成長を支えてきた力です。
一方で、将来の成長が約束されているわけではありません。やるべきことは明確で、収益性と資本効率を高め、サービス・ソリューション型へビジネスモデルを変革することが最も重要です。この後の第2部では、みなさまと率直にそのあたりを議論したいと思います。
そして、今年の統合報告書は、これで完成というわけではありません。本日の対話から学び、次回の統合報告書をさらに改善させたいと考えています。それがマクニカのIRのあり方です。以上、「LIMITLESS 2026」の見どころについてお話ししました。
マクニカの未来を共に考える対話の場
司会者:第2部は、原社長、大森筆頭社外取締役、小松さま、大澤さまによるトークセッションになります。
登壇者のご紹介
司会者:まずは登壇者をご紹介します。マクニカホールディングス株式会社筆頭社外取締役の大森紳一郎氏です。
大森氏は日立製作所に入社後、同社の執行役専務を務められ、その後、日立金属や日立ハイテクなどのグループ企業で要職を歴任されました。現在は、マクニカホールディングスの社外取締役としてご活躍されているほか、コクヨや関西ペイントの社外取締役も務められています。
本日は、さまざまな企業での経営をご経験されてきた大森氏ならではの視点や、当社の社外取締役としてのご意見をうかがえればと思います。
登壇者のご紹介
司会者:アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社の小松さまをご紹介します。小松さまは、シュローダーやポーラー・キャピタルといった資産運用会社で日本株の調査や運用業務に従事された後、2021年に日興アセットマネジメント(現アモーヴァ・アセットマネジメント)に入社されました。
現在は、投資先企業とのエンゲージメントや議決権行使、ESGインテグレーションの推進に携わっておられます。
本日は、議決権行使担当の視点から、当社の企業価値向上に向けた取り組みについて、さまざまなご意見やご質問をいただければと思います。
登壇者のご紹介
司会者:株式会社いちよし経済研究所の大澤さまをご紹介します。大澤さまは、山一證券や銀行系証券会社を経て、2009年にいちよし経済研究所に入社されました。
半導体関連業界をはじめ、精密機器や印刷業界などを担当されており、中小型株を中心とした有望企業の発掘や継続的な企業フォローに取り組まれています。
また、当社についても継続的に調査・分析し、レポートを発行していただいています。本日は、アナリストの視点から、当社の事業や成長戦略に対するさまざまなご意見やご質問をいただければと思います。
マクニカの現在地
司会者:第1部では、当社の原から今年の統合報告書について説明がありました。大澤さま、率直に今年の統合報告書はいかがでしたか?
大澤充周氏(以下、大澤):いちよし経済研究所企業調査部シニアアナリストの大澤です。
まず、マクニカさんの統合報告書に対する取り組みについてです。そもそも今回、このようなかたちで説明会を開催することは、どこの会社も当然に行っているわけではありません。毎年コンセプトを決めて、進化や改良を重ねているという認識があります。
そのため、各パートに見るべきものがあると思います。その上で、今回あえて1点挙げると、CFOの大河原さんのパートに着目しました。
先ほどもお話があったように、営業利益率7.5パーセントを前面に出し、それぞれのあり方について言及されています。例えば、半導体事業であればマージンを重視し、サイバーセキュリティ事業については同様にマージンを重視するより、あえて今は売上を追求する局面であるということだと思います。
CPSソリューション事業については、我々の立場からすると「どうなのだろう」という見方もありますが、その点に関しても取捨選択や選択と集中について言及されている点は、初めてではないものの、踏み込んだ表現だと受け止めています。
司会者:CFOメッセージの部分に注目されたということですね。大澤さまには、当社唯一のセルサイドカバレッジをしていただいており、長年当社を見ていただいています。まずは、当社に対する印象やご理解をうかがいたいと思います。
大澤:今後の話につながるという意味で、現在マクニカホールディングスについて持っている現状認識を、事業ごとに3分野に分けて簡単にお話しします。
1つ目に、いわゆる半導体商社、エレクトロニクス商社といわれる半導体事業は、従来、日本の製造業が衰退したこともあり、あまり成長分野と見られていない面もありました。しかし、現在は成長しています。
これは、例えばNVIDIA社の「GPU」やBroadcom社の「ASIC(特定用途向け集積回路)」を取り扱うことだけではありません。
いわゆる安定分野と見られる産業機器においても、例えば半導体製造装置向けの用途があることに加え、マクニカの場合はルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス社)の商権が集中していることや、NVIDIA製品の取り扱いが増えているといった個別の要因があります。
一方で、ルネサス社の商権を最終的にどのように具体化するのか、あるいはNVIDIA製品が数だけ増えてもマージンが必ずしも高いとは言えない中で、どのように対応していくのかという問題意識を持っています。
2つ目のサイバーセキュリティ事業については、現時点で順調な進捗であるという認識です。
3つ目はCPSソリューション事業です。例えば、現在メインとなっている自動運転EVバスは、政府の施策も含め、環境的には追い風となっている面があります。一方で、リカーリングや横展開、顧客基盤の拡大にはまだ課題があります。
それ以外の分野では、損益が黒字化していない段階や、進捗が期待通りに進んでいない部分もあります。将来の成長を実現するためにも、ここは深掘りが必要だと捉えています。
司会者:それでは、さっそく本題に移ります。最初は大澤さまからのご質問です。
大澤:現状認識を踏まえ、ルネサス社についておうかがいします。決算説明会などでは、あまり表立って取り上げられることが少ないテーマかもしれません。
国内での商権の集約は、年単位で多い時には数百億円規模に達すると見ています。この商権の集約が売上成長の一因であることは間違いないですが、それで終着点と考えてよいのでしょうか?
ルネサス社の意向としても、マクニカをツールとして活用しながら海外展開を進めることでWin-Winの関係を築けると考えています。しかし現状では、それが大きく具体化している状況には至っていないようです。
特にアジアを中心としたローカル開拓を進める場合、ローカル市場を主要なターゲットと捉えてよいのか、そのあたりの具体的な道筋について教えていただけますか?
原:基本的には、大澤さまがおっしゃった方向性でおおむね間違いないと考えます。ただし、これはルネサス社との取り組みだけに限った話ではなく、当社の半導体事業全体の成長戦略に関わるテーマです。
当社は国内顧客だけでなく、海外の現地顧客にも技術的な価値を提供するグローバルディストリビューターを目指しています。
その実現に向けて、優良な商流を獲得し、仕入れ先メーカーとの関係を強化することは重要な取り組みと位置づけています。国内ではある程度のシェアを獲得していますが、グローバルで見るとシェアはまだ限定的で、成長余地があると考えています。
一方、半導体メーカーも日本市場だけでなく、世界市場の拡大を重視しており、一緒に価値創出できる販売パートナーとの連携を模索しています。
その点で当社は、グローバルに多くの技術者を擁し、デマンドクリエーション力や技術サポート力を備えています。また、15年以上にわたりアジアを中心とした現地の半導体商社のM&Aを進め、各国のローカル顧客基盤を構築してきたという強みも持っています。
今年は、欧州のIndesmatech社やインドのElektronika社の買収も発表し、そのような基盤をさらに強化しています。
このような強みを活かし、優れた半導体メーカーの商品を海外市場でもデマンドクリエーションし、技術サポートや技術提案を行うことは、半導体メーカーと当社双方にとって大きな成長機会になると考えています。ルネサス社との取り組みも、半導体事業全体のグローバル戦略の一環として推進しています。
司会者:当社の海外戦略については、統合報告書の37ページをご覧ください。
大澤:先ほどのお話とも関連しますが、以前、NVIDIA製品と思われるものを大口で取り扱った年がありました。その時には、実質的に「NVIDIA製品を大口で取り扱い、売上が伸びました」と示されていました。
しかし、我々は、そのマージンがあまり高くないと推測しています。NVIDIA製品を取り扱うことで売り上げが増えても、プロダクトミックスによりマージン面ではむしろマイナスになるという捉え方です。半導体事業のマージンは5パーセントと見られているかと思います。
したがって、マクニカとしての方向性を出していく中では、顧客に対して導入提案する、システム化するといったひと手間、ふた手間を加えて付加価値を出さないと、実質的なビジネスとして意味をなさない面もあるのではないかと捉えています。そのあたりのお考えをお聞かせください。
原:ご指摘のとおりです。いつもよくご理解いただき、すばらしいご質問をいただいています。AI市場の拡大に伴うNVIDIA製品をはじめとするAI関連需要の増加は、当社にとって大きな成長機会になることは間違いありません。
一方で、ハードウェアの供給だけにとどまれば、我々が発揮できる付加価値は限定的です。売上構成によっては、ご指摘のように利益率への影響もあり得ます。
そのため、我々は製品販売そのものではなく、お客さまのAI活用にどこまで深く関与できるかを重視し、このソリューションを展開しています。導入前の検証や評価、アプリケーションの開発、実装・運用まで支援し、製品を販売するだけではなく、お客さまがAIを使えるかたちにするところまで価値を提供するという考え方です。
その際の強みは、この分野のスペシャリストとして多くの技術者を擁していることと、幅広い製品を取り扱っていることです。
特定の製品に依存せず、GPU、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアなどを組み合わせて、お客さまに最適な構成をシステムレベルで提案することが重要だと考えています。
今後、AI活用の領域はデータセンターにとどまらず、製造現場や産業機器などのフィジカル領域へと広がっていくと予想されます。いわゆるフィジカルAIの世界です。この分野で重要になるのがエッジAIの技術です。
エッジAIの技術は、用途ごとに求められる性能やコストが異なるため、お客さまの要求レベルや目標達成に向けた最適な半導体やソフトウェアの選定、さらにはそれらの実装を支援する力が、より重要になると考えています。この点は、当社の強みをより発揮できる領域だと考えています。
短期的には利益面の影響を管理しながら、中長期的にはこのようなソリューション領域を拡大し、成長と収益性の両立を目指したいと考えています。
AIの社会実装が進むほど、当社が提供できる価値も大きくなっていくと思います。この分野の成長に、我々も期待しています。
司会者:AIについては、統合報告書の60ページ、61ページをご覧いただければと思います。
AI時代におけるマクニカの役割とサービス・ソリューションカンパニー
司会者:第1部でもご紹介したように、AIのインパクトは大きく、市場環境そのものが大きく変わりつつあると考えています。次に、AI時代におけるマクニカの機会や課題について、小松さまにご質問をお願いしたいと思います。
小松雅彦氏(以下、小松):アモーヴァ・アセットマネジメント、サステナブルインベストメント部共同部長の小松です。
AI時代を迎え、半導体やサイバーセキュリティのVADビジネスにおいて、付加価値の高いビジネスやサービスを提供する機会が増えると考えています。
そのような中でも、御社がCPSソリューション事業を育てていく必要がある理由を、今一度うかがいたいと思います。
司会者:AIの普及に伴い当社にも他の成長分野がある中で、CPSソリューション事業に取り組む意味についてのご質問かと思います。
原:鋭いご質問をありがとうございます。おっしゃるとおり、AIの普及により、半導体事業とサイバーセキュリティ事業の両分野で、従来の製品販売にとどまらない、より付加価値の高いビジネスを生み出す機会が生まれています。
ただ、これは実はマクニカにとって特別なことではありません。これまでも対応してきた、高付加価値ディストリビューションのデマンドクリエーションモデルの一環だと考えています。
当社は「ひまわり経営」を活用して成長市場に早い段階から参入し、その市場で将来必要となる製品や技術を先に獲得することで、市場の成長とともに事業を育成しています。これが当社の基本的なデマンドクリエーションの考え方です。
成長市場にいることで、市場成長によるビジネス拡大の恩恵を受けるだけでなく、技術の進化によりお客さまへの提供価値や課題が変化するため、その周辺に新たなビジネス機会が次々と生まれるという利点があります。
当社は、そのインテリジェンスをいち早くつかみ、自社の強みを活かすことで、より高い付加価値を生み出せる領域を選定しています。そして、デマンドクリエーションを通じて、さらに事業領域を拡大しています。
先ほどご説明したAIの具体例と同様に、サイバーセキュリティ事業でも同じような状況が生じています。この活動については、今後も引き続き強化していきたいと考えています。
一方で、「ひまわり経営」の根幹には当社の企業理念である「足下に種をまき続ける」という考え方があります。新しい分野に積極的に種をまき、それを着実に事業へと転換していくことは、当社にとって非常に重要なものです。
また、PVV(パーパス・ビジョン・バリュー)に基づき、当社が設定するマテリアリティを実現する上でも、中期的な視点で、地球環境や日本社会、日本・アジアの産業に大きな影響をもたらす課題・問題や価値創出のテーマに対し、新しい分野でCPSソリューションに挑戦することが我々の理念であり、活動そのものです。
そして、サービス・ソリューションカンパニーという当社のビジョンを実現する上で、「コトづくり」によるオリジナルなバリュークリエーションモデルの構築が、不可欠かつ重要であると位置づけています。
立ち上げや収益化には、想定よりも時間がかかっていますが、この挑戦を続けたいと考えています。それが、我々のサステナブルな成長につながると捉えています。
また、今後AIやデジタル社会が進展する中で、当社が取り組んでいる半導体事業やサイバーセキュリティ事業とのつながりも増していくはずです。その結果、「Whyマクニカ?」としての価値提供をさらに高めることができると考えています。
特に製造業のお客さまに対しては、半導体調達、サイバーセキュリティのリスク対応、AX/DXの事業・業務活用といった、いわゆる令和の三大経営課題に対する価値を提供することで、マクニカの競争優位性をさらに高めながら、お客さまの経営により大きなインパクトを与える活動へと広げられると考えています。
これが今後のマクニカのサステナビリティにもつながると捉えています。そのため、集中と選択を繰り返しながら取り組んでいきたいと考えています。
司会者:なぜCPSソリューション事業に挑戦するのか、大森さんのご意見もうかがいたいと思います。
大森紳一郎氏(以下、大森):マクニカホールディングス筆頭社外取締役の大森です。
先ほど原からは市場の観点を中心に、また全体的な観点も含めてCPSソリューション事業の取り組みについて解説がありました。私は、そもそもマクニカのビジョンである「サービス・ソリューションカンパニーを目指す」の視点について、少しコメントを追加したいと思います。
マクニカには、技術商社として成功を重ねてきたという自負があります。一方で、基本的には商社モデルであるため、仕入れ先が開発・生産した製品を、一定の付加価値を付けてお客さまに届けるビジネスモデルです。この場合、付加価値の源泉は仕入れ先にあるため、マクニカの利益率には上限があります。
ただし、この商社モデルは安定的な収益を生み出すことが可能です。これに加え、付加価値の高いサービス・ソリューションという新たなビジネスモデルを組み合わせたポートフォリオを構築したいと考えています。
お客さまや社会の課題に対して、マクニカが独自に開発したサービスやソリューションを提供することで、課題解決に貢献したいと考えています。その取り組みの対象となるのは、既存ビジネスで軸足を置く半導体やサイバーセキュリティ、さらにサービス・ソリューション領域で最も可能性の大きいCPSソリューションの領域です。
また、これに取り組むことで、単なる商社にとどまらず、お客さまやその仕入れ先にとっても、ビジネスパートナーとしてより高い付加価値を提供する活動が可能になると考えています。これにより高付加価値化が進み、ひいては利益率の向上と企業価値の向上に結び付くと考えています。
司会者:AI時代において、マクニカがサービス・ソリューションカンパニーを目指す意義についてお話ししていただきました。
中期経営計画の進捗状況
司会者:一方、資本市場から見ると、その取り組みがどこまで進捗しているかが気になるところかと思います。ここからは、中期経営計画の進捗について、お二人からご質問をいただきたいと思います。
大澤:中期経営計画の進捗を見る上で、いくつかの着眼点があります。サイバーセキュリティ事業は非常に伸びています。半導体事業は当初、安定成長と見ていましたが、現在はしっかり成長しています。
ただ、中期、あるいは長期で見た場合には、やはりCPSソリューション事業がかたちになってこないといけません。もともと今回の中期経営計画は、かなりチャレンジングな数字を掲げているという認識ですので、これが重要だと思っています。
その中で、実は昨年5月、いわゆる2026年3月期のスタート時に、私はCPSソリューション事業や自動運転EVバス事業がマクニカの中期経営計画達成の試金石になると書きましたが、代表例である自動運転EVバス事業が遅れています。一方で、規制の緩い非公道分野に広げるというアイデアはおもしろいと思っています。
そこで、いかに横展開し、お客さまを広げるのかをうかがいたいです。最終的には運行管理システムによるリカーリングモデルを当初掲げていたと思いますので、その実現可能性についてご説明いただければと思います。
原:当社のスマートシティ/モビリティ事業の自動運転EVバスについては、ドライバー不足や地域交通の維持といった社会課題を背景に、中長期的に成長可能な市場だと認識しています。
実際、政府は2030年までに自動運転のサービス車両を1万台にするという目標を掲げており、当社としてもこれにしっかりと対応していきたいと考えています。
一方で、ご指摘のとおり、公道市場においては制度面や安全面の整備が必要であり、本格的な普及には想定以上の時間を要しています。そのため、自治体向けの取り組みを進めつつ、物流施設や工場、空港、リゾート施設といった非公道領域への展開をさらに強化しているのが現状です。
このような領域では、人手不足や業務効率化といった課題が明確で、多くの引き合いをいただいています。社会実装や事業化も進めやすい市場だと考えています。
ただし、我々の狙いは車両販売そのものではありません。車両導入を入り口として、自社開発の遠隔運行管理システム「everfleet(エバーフリート)」を通じた運行監視、保守、ソフトウェアアップデートなどを継続的に提供していくことが、重要なポイントになります。
実際に自治体でも導入されています。「everfleet」については、新たなBtoBの領域でも今後さらに導入を進めていけると考えています。ここで実績を上げることで、リカーリングモデルを構築していきたいと考えています。
また、そこで獲得したデータをさまざまなかたちで次のサービスに活用しながら、仮説検証を通じてその領域をさらに広げていく方針です。この事業の解像度は大きく向上しており、スケール可能な市場も見えてきています。
市場の成長状況やさまざまな課題によって、なかなか進展せずご心配をおかけしている部分もありますが、売上は確実に拡大しています。引き続き成長を見据え、この領域の基盤をしっかりと整えていきたいと考えています。
司会者:車両販売はあくまでも入口という位置づけなのかと思います。
大澤:自動運転EVバスについてですが、実は私、長野県上田市にある計測器メーカーのお祭りに行ったことがあり、そこでマクニカさんが運営されている自動運転EVバスの試乗会が実施されていました。
あの場所は私鉄からも離れており、地域の方々の高齢化も進んでいます。そのような場所で運転手が不足する課題を抱えつつも、収益を上げながら社会性のある事業として成功してほしいと願っています。
一方で、それ以外にもCPSソリューション事業に含まれる領域があります。例えば製造業や植物工場など、さまざまな分野に取り組まれていますが、一般的に植物工場は収益化が難しいと言われています。特に電力の問題が指摘される中で、外部の観点から見た場合、その収益化がしっかり腹落ちしているかどうかはまだわかりません。また、冒頭でお話しされた取捨選択や選択と集中についても関わることかと思います。
そのような背景の中で、これら他の領域における成長蓋然性や取捨選択の基準についておうかがいしたいと思います。
司会者:スマートシティ/モビリティ以外の領域についての進捗ということですね。原さん、いかがでしょうか?
原:スマートシティ/モビリティ以外で進捗している領域として、スマートマニュファクチャリングが挙げられます。これは、いわゆる製造業のデジタル化の分野を指します。
製造業が抱える課題は大きいと思います。そして、AIの進化に伴い、スマートマニュファクチャリング、つまり工場・製造業DXといった分野は、フィジカルAIを含めて大きく加速していくのではないかと考えています。
そのような中で、多くの工場では設備データや業務データが分断されており、現場全体の見える化が十分に進んでいない状況です。見える化が不十分なため、改善が進まないという共通の課題があります。
このような背景の下、当社では自社開発のプラットフォームソフトウェア「DSF Cyclone」を展開しています。このソフトウェアにより、設備データと業務データを統合し、生産計画を見える化することで、改善活動を支援するコンサルティングを含めた活動を行っています。
「DSF Cyclone」に関連する案件一つひとつについて解像度が高くなってきており、その分、利益率もかなり大きくなっています。ただし、全体としてはまだスケールが追いついておらず、営業利益は現時点でマイナスの状況です。
しかし、確実にスケールできる見通しが立ち、着実に実績を積み上げている状況です。したがって、今後も重要なKPIを注視しながら、さらなる解像度の向上を目指していきたいと考えています。
ただ、それ以外の領域、ヘルスケアやフード・アグリテック、サーキュラーエコノミーにおいては、いわゆるビジネスのステージが異なります。そのステージに応じて、適切にステージゲート管理を行うことが重要です。それぞれのKPIを明確に定め、達成に向けた進捗を確認していきます。
その際、その当時のステージゲートによる仮説検証が適切に実施されているかどうかを確認することがポイントです。もし、その仮説検証が十分に行われていない場合、例えば「やはりまだ市場が早いよね」ということであれば、スリープモードに移行します。リソースの投入を一時停止して市場の立ち上がりを待つ、またはその研究に集中するなど、収益管理における集中にしっかり取り組んでいきたいと思います。
したがって、ステージゲート管理と、それに基づいて設定されたKPIや仮説検証の達成度を確認しつつ、必要に応じてブレーキあるいはアクセルを駆使しながら市場を育成していきます。
これらの市場はどれも将来的に成長が見込まれるものですが、そのタイミングや市場の性質、新しい分野であるがゆえの難しさが伴います。そのため、慎重に市場の見極めを行いながら、CPSソリューション事業全体の立ち上げを目指して進めていく考えです。
司会者:CPSソリューション事業の進捗および取り組みについて、ここまでお話ししました。当社の統合報告書46ページでは、各テーマの進捗をご覧いただけますので、ぜひご確認ください。
続いて、小松さまにご質問をいただきたいと思います。
小松:御社は「Vision2030」で営業利益率7.5パーセントを掲げています。その中間目標として2027年度に5.7パーセントという道筋を示していますが、現状では少し乖離があるように感じます。
今後の進捗を確認する上で、投資家にはどのような先行指標に注目してほしいか、ご教示ください。
原:それぞれのKPIについてご説明します。まず半導体事業については、売上総利益率を見ていただければと思います。
ここ数年、具体的には過去2年から3年にわたり、我々が注視する半導体市場の成長は、あまりオーガニックなかたちで成長してきませんでした。そのため、我々はM&A等も活用しつつ、積極的に商流を獲得することで新たな市場を獲得してきました。
しかしながら、獲得したモデルは、我々自身がデマンドクリエーションした需要に基づくものではないため、利益率は高くない状況です。ここ数年は売上拡大に注力し、利益率は若干低下しました。
ただ、これからはお客さまや市場に対して、当社がデマンドクリエーションを行い、新たな需要を創出することで利益率が改善していくと考えています。この改善動向に注目していただきたいと思います。
また、AIやデジタル技術を活用し、現在、社内で多数のAIエージェントを構築して業務改革によるオペレーションエクセレンスにも取り組んでいます。これにより売上高営業利益率(OPマージン)のさらなる改善を目指しています。この分野をKPIとして注目していただければと思います。
もう1つは、サービス・ソリューションカンパニーへの変革を進める上で重要な、サイバーセキュリティ事業とCPSソリューション事業です。これらの事業における売上の成長率については、単なる成長率ではなく、高い売上総利益率を維持しながらの売上拡大と成長率になりますので、このあたりに注目いただければと思います。
つまり、事業としてしっかりスケールしているか、その上でサービス・ソリューション型ビジネスという意味で高い利益率を確保しながら進めているのかを見ていただくのがよろしいかと思います。
資本政策・成長投資の推進
司会者:ここからは、成長投資とそれに関する取締役の役割に話題を移していきたいと思います。
小松:成長投資についてお聞きします。投資家としては、投資額もさることながら、投資後にどのような成果が生まれているかに注目しています。
M&Aやサービス・ソリューション事業への投資について、どのようなKPIでマイルストーンを評価しているのか、また、投資の進捗と「Vision2030」達成への影響についてお聞かせください。
原:投資については、金額を使うこと自体が目的ではなく、投資後にどれだけ価値を生み出せるかを重視しています。
そのような意味で、既存の高付加価値ディストリビューション事業領域とサービス・ソリューション領域では、注目しているポイントが若干異なります。
高付加価値ディストリビューション事業領域においては、同じ事業モデルを各地域で拡大していくことを目的としています。そのため、買収後の会社がその地域で生み出す売上や利益だけでなく、そのリージョンにおける市場シェアが高まっているかどうかが、我々が注目する大きなポイントとなります。
要するに、買収した会社がマクニカグループの仕入先や顧客基盤を活用し、新たな顧客や仕入先を獲得して、その市場シェアを高められているかを重視しています。
当社は2008年に香港の技術商社であるCytech社をM&Aしましたが、このような事業拡大については統合報告書の中で述べています。
また、今年実施したIndesmatech社やElektronika社といったM&Aもその延長線上にあり、我々はいかに市場シェアを高め、グループ全体の成長につなげていくかを重要視しています。
一方で、サービス・ソリューション領域については、新たなサービス・ソリューションを実現するために、当社で不足しているケイパビリティを獲得する視点を重視しています。ケイパビリティは、財務指標では測りづらい部分もありますが、獲得した能力によって自社サービスや自社ソリューションが増えているか、あるいは開発スピードが向上しているかどうかを評価しています。
先日M&AしたITコンサルティング会社であるOrangeleaf Consulting社については、アジャイル開発や人材育成といったケイパビリティを持っており、それを取り込むことで、当社の製造業DXやサービス開発の加速を図っています。
また、このようなお客さまに対して案件を増やしていけているのかといった点も重要な投資進捗として確認していきたいと考えています。
このあたりについては、CFOである大河原のセッションのページでも具体的に説明されていますので、今後の取り組みとして注力していきます。
2030年に向けた投資およびM&Aの部分については、現行の中期経営計画では着実に進捗しています。やはり、このM&Aなくして「Vision2030」の達成はできません。
今回提示した目標に関しては、数値目標の達成に過度にこだわるべきではありませんが、しっかりとショートリストやロングリストを作成しながら、一つひとつの活動を進めています。その結果として、成長の柱を育てていくことを目指し、並行して取り組んでいきたいと考えています。
司会者:確かに、統合報告書の制作に際しCFOインタビューを行った時から、外部に公開できるようなM&Aに関する進捗があるかと思います。この点についても、ぜひみなさまにご確認いただければと思います。
小松:統合報告書内の大森さんのメッセージで、撤退規律の重要性について言及されていました。取締役会は今後、どのような考え方やプロセスで事業の継続・軌道修正・撤退を判断していくのでしょうか?
司会者:統合報告書の51ページに記載の取締役メッセージの内容についてですね。撤退規律についてですが、大森さん、いかがでしょうか?
大森:これまで撤退規律というのは、マクニカが展開してきた「ひまわり経営」の裏返し、いわば対として備えておくべき規律であると考えています。
マクニカは、技術商社として市場に先回りして商材を準備することで、成功を重ねてきました。
社歴は54年となりますが、撤退という観点から歴史を振り返ると、創業社長の時代に売上の40パーセントを占めていたメモリー事業と、自社開発製品である通信カード事業の撤退が主な例と言えます。
マクニカという会社は、成長に対して非常に貪欲です。現在議論に挙がっている新規ビジネスについても積極的に取り組んでいますが、その立ち上げにおいてはフェーズゲート管理を実施し、規律を持って進めています。
だからこそ、社外取締役としては撤退基準が必要だと考えています。
具体的には、経営や執行側で経営会議や委員会を通じて事業の進捗状況を確認し、モニタリングを行いながら、事業を継続するのか、追加投資をしてむしろ積極的に展開するのか、計画を修正するのか、さらには撤退を検討するのかといった議論を進めていくプロセスを導入しています。
取締役会としては、その判断の背景や根拠に注目していきたいと考えています。
一律の基準や規律を適用することは、特に新規ビジネスにおいては適切ではないのではないかと考えています。
新規ビジネスは複雑な要因が絡み合い、変化も激しい状況です。そのため、意思決定が適切に行われているか、抜け漏れがないか、またベストオーナーの視点で十分に検討されているのかといった点について、取締役会側から客観的な視点で確認していきたいと考えています。
どうしても議論の中心となる新規ビジネスの立ち上げは難しいものですが、社外取締役のスキルセットとして、新規ビジネスの経営経験を重視し、そのようなキャリアを持つメンバーを揃えています。
取締役会の中でも、安定して適切な判断と意見が述べられており、そのような観点から撤退については議論を進めています。
司会者:2026年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードや成長投資ガイダンスにおいても、成長の道筋や経営資源配分における取締役会の役割が重要な論点として示されています。
この点について、小松さまにもご意見をうかがいたいと思います。小松さまは、機関投資家の立場から今回の改訂をどのように捉えていますか? また、企業の成長投資を評価する際に、どのような点を重視されているのでしょうか?
小松:成長投資の促進が強調されている点を高く評価しています。改訂コーポレートガバナンス・コードは、企業が成長の道筋を示した上で、成長投資や事業ポートフォリオの見直しなど、経営資源をどのように配分するのかを具体的に説明し、それが経営戦略や経営計画に照らして適切かどうかを不断に検証することを求めています。
これは、所有と経営が分離している上場企業において、株主から資本を預かる経営者として当然求められるべき規律であり、いわば経営のベストプラクティスだと考えています。
このような考え方が日本企業に広く浸透すれば、個々の企業だけでなく、日本市場全体の価値の底上げにもつながると期待しています。
司会者:今のお話を受けて、大森さん、いかがでしょうか?
大森:コメントありがとうございます。成長の道筋を明確に示した戦略を立て、そこに向けて確実に経営資源を配分することが重要だと思います。
先ほども議論がありましたが、投資することが目的ではありません。投資した結果が中長期的な戦略における成長や資本効率の向上という目標にきちんとつながっているかを、継続的に検証することが重要であると理解しています。
コーポレートガバナンスコードの改訂は、執行側や監督としての取締役会側が一体となり、成長戦略の実効性を向上させるべきだというメッセージだと捉えています。
司会者:コーポレートガバナンスの観点からは、取締役会の役割や監督機能の重要性が指摘されているかと思います。当然、マクニカの取締役会がどのように機能しているかも、当社にとって重要なテーマとなります。そこで、取締役会の実効性について、小松さまからご質問をいただきたいと思います。
取締役会の変化
小松:原社長がCEOと取締役会議長を兼任され、大森さんが筆頭社外取締役に就任してから約1年が経過しました。取締役会の実効性という観点で、この1年間にどのような変化があったとお考えでしょうか? また、筆頭社外取締役としての役割についてもお聞かせください。
大森:筆頭社外取締役がいるということは、社外取締役の中に意見の取りまとめ役が存在する位置づけになると考えます。
議長とともに、取締役会の実効性をいかに向上させるかについて定期的に議論し、また、ご指摘のとおり、CEOと取締役会議長が兼務となっている点に対して牽制機能を果たす役割を担っています。
もともとマクニカの取締役会では、社外取締役から積極的に意見が出されていましたが、従来以上に活発な議論が行われるようになっています。
社外取締役は、それぞれが株主総会で信任を得ていますが、チームとして機能することも重要であると認識しています。特に複雑で重要な案件に関しては、事前に社外取締役間で意見をすり合わせたり、情報交換したりすることで、取締役会全体での議論の質向上と効率化を実現できているのではないかと思います。
実効性の向上については、筆頭社外取締役の体制に加え、社外取締役だけで構成するエグゼクティブセッションや、社内取締役も含めた取締役会ミーティングも通常の取締役会とは別で実施しており、重点テーマについて集中的に討議する時間を設けています。したがって、議論を深めて取締役会へつなげる体制を構築することで、実効性が向上していると考えています。
一方、取締役会や特に社外取締役が執行側からの提案をすべて追認しているのではないかという懸念が時折挙がりますが、マクニカの取締役会はそのような状況にはなっていません。
具体的な例として、過去に重要な役員の選任提案が出された際、その検討プロセスが適切ではないのではないかと判断し、再検討を求めた事例があります。
ただし、取締役会は牽制を目的とするものではなく、マクニカの特徴であり強みであるスピード感や現場力をいかに強化し、背中を押していくかという点が重要です。それに加え、適切なガバナンスや株主視点を組み込んで情報を開示していくことも大切だと考えています。
筆頭社外取締役の役割は、これらのバランスをしっかり取ることにあると考えています。
司会者:当社の取締役会での取り組みについて、少しお話しできたのではないかと思います。
小松:大森さんは、投資家との対話を重視されているとうかがっています。そのような対話から得られた気づきが、取締役会での議論や開示の改善につながった事例があれば教えてください。
大森:投資家との対話を会社としてどのように活かしていくかについては、冒頭で原からご説明した内容がその一端を示していると思います。
企業価値をいかに高めるかという目標については、立場の違いがあってもみなさま共通しています。会社側とは異なる立場や視点を持つ投資家のみなさまが、マクニカの企業価値をさらに高めるためにどのような点を重視され、どのようなアドバイスをお持ちなのか等を直接うかがうことは、非常に意義があると考えています。
その対話を通じて、資本市場の方たちがマクニカをどのように評価しているのかを把握することが、経営の質を向上させる上で大きく貢献しているのではないかと考えています。
司会者:取締役会の実効性や投資家との対話を通じて得られた気づきや学びについてお話しいただきました。積極的に質問を重ねるのも、大森さんのスタイルの一端かと思います。
第2部のセッションは、お時間の都合上ここまでとします。みなさま、ありがとうございました。
質疑応答:権限委譲と挑戦を通じた社員および事業の成長について
司会者:「統合報告書で紹介されていた『権限委譲』の文化が印象的でしたが、社外からはわかりづらいです。社員のみなさまが日々挑戦できているか、投資家が確認できる指標はありますか?」というご質問です。
原:確かに、「権限委譲」や「挑戦する文化」というのは、社外から見て少しわかりづらい部分があると思います。
我々の考えでは、社員は権限委譲による「手ごたえサイクル」を回しながら、挑戦と失敗を繰り返し、その経験を通じて成長していけると考えています。
そして、その成長の積み重ねが、最終的には事業の成長や業績というかたちで表れるのだと捉えています。
そのため、業績そのものを1つの結果指標と捉えていただいてもよいとは思いますが、一方で社内では、さらに細かく多角的に見ています。
例えば、仕事のやりがいやおもしろさ、挑戦できている実感といったWell-being(ウェルビーイング)に関する項目や、会社や所属部門を他者に勧めたいと思えるかどうかというロイヤリティに関する項目を継続的にモニタリングしています。
また、単純な全社平均だけではなく、世代別、役職別、組織別にデータやアンケートを分析し、変化があった場合はその要因を分析して改善策につなげています。
このような指標が良い方向に推移している時は、比較的健全に権限委譲が機能していると捉えることができます。
ただし、私は数字だけで把握するのは不十分だと考えています。したがって、社員との対話を重視し、私自身も1on1ミーティングやチームミーティングなどを積極的に実施し、担当者からの声を聞くために多くの時間を割いています。
具体的にどのような挑戦をしているのか、社員一人ひとりがどこまで本気で取り組んでいるのか、また先ほどのアンケートデータと社員の生の声の双方を見ながら、社員が自ら考え挑戦していることを実感できているのかを確認しつつ、改善を続けています。
質疑応答:ブランディング戦略について
司会者:「最近、マクニカさまのテレビCMを目にする機会が増えています。このように一般の人たちに会社を知ってもらうことは、事業、特にCPSソリューション事業の成長にどのようにつながるのでしょうか? また、今後のブランディング戦略についても教えてください」というご質問です。
原:本当にサービス・ソリューションカンパニーへの変革を進めていく中で、我々を取り巻くお客さまとの関係性も変わってきていると思います。
これまでは主にBtoBのビジネスが中心でしたが、今後はCPSソリューション事業の拡大に伴い、BtoBに加えてBtoBtoCの世界が広がっていると感じています。
例えば、自動運転EVバスでは多くの地域のみなさま、老若男女問わずご乗車いただいていますし、ヘルスケアの分野でも一般の方々にさまざまなソリューションを体験いただく機会が増えています。
そのような世界では、「どのようなサービスなのか」という点だけでなく、「どのような会社がこれを提供しているのか」「このサービスは安心して利用できる会社が提供するものなのか」といった信頼も重要になってきます。
我々が掲げている「先端技術をみんなのものに。タネまくマクニカ。」というブランドメッセージも、この考え方を表しています。先端技術を社会に実装し、より多くの方々に価値を届ける企業として認知されることが、結果としてCPSソリューション事業の成長にもつながると考えています。
また、もう1つ重要なのが人材です。「Vision2030」の実現に向けて、多様な専門性を持った優秀な人材の獲得は欠かせません。そのためにも、「マクニカはどのような会社なのか」「どのような挑戦をしている会社なのか」を社会に広く知っていただくことは、経営上重要なテーマだと考えています。
したがって、我々のブランディングの目的は単に認知度を高めることではありません。社会課題の解決に取り組む企業として信頼いただき、サービスをご利用いただくみなさま、パートナー企業のみなさま、そして未来の仲間となる人材や現在のマクニカを支える社員に対して接点を広げ、メッセージを伝えていくことが目的です。
今後はCMだけでなく、そのような取り組みもしっかりと継続的に行いながら、マクニカらしいブランドを築いていきたいと考えています。
質疑応答:マクニカの競争優位性とその維持・強化施策について
司会者:「社外取締役の立場から、マクニカの競争優位性をどのように評価されていますか? また、その競争優位性が将来も持続するかを、取締役会ではどのような観点から検証していますか?」というご質問です。
大森:マクニカの競争優位性については、冒頭の原からの説明や対話セッションを通じて、さまざまな議論ができたのではないかと考えています。
取締役会では、特にその優位性がグローバルで勝ち抜けるだけのレベルに達しているのか、また、ご質問にもあるように、将来に向けて維持・強化するための施策が確実に打てているのか、さらに、将来に向けて競争要因が変化することについて、適切な分析や対応策が取られているのかなど、そのような視点で見ています。
マクニカの競争優位性の基本は、企業文化と人材であると認識しています。他の多くの日本企業も企業文化と人材の強化に取り組んでいますが、マクニカは創業以来、特に企業文化に力を入れてきました。その維持や徹底については、実務にも組み込んで着実に定着している取り組みだと考えています。
今日の投資家のみなさまからのご指摘を含め、他のステークホルダーのみなさまからもさまざまなご提案をいただいています。
これらのうち、有益だと判断するものについては、マクニカはスピーディかつしなやかに対応する姿勢をもっています。このような姿勢は、不確実性が高く変化の激しいマーケットで競争を勝ち抜くための大きな競争優位性の1つであると認識しています。
質疑応答:社員の働きがいや離職率の変化について
司会者:「会社が大きくなる中で、社員の働きがいや離職率に変化はありますか? また、その変化についてどのように受け止めていますか?」というご質問です。
原:会社が大きくなる中で、離職率そのものが大きく悪化しているという認識は、現時点ではありません。
ただ、会社が成長し、事業領域が広がる中で、入社する人材の価値観やキャリア観は、以前と比べて多様化していると感じています。
以前のマクニカ、特に私が入社した時は、ベンチャー精神が強く、「新しいことに挑戦したい」「成長したい」という思いを持つ人がほとんどでした。そのような人たちが主に入社していました。
現在は会社の規模も大きくなり、安定した成長企業として認識される機会が増えたため、入社動機が以前に比べて多様化しているのは事実だと思います。
私はそのこと自体を自然な変化と受け止めています。ただ、どのような動機で入社したとしても、マクニカで働く以上は挑戦し、成長してほしいと思っています。
そのために重要なのは、「もっと挑戦しなさい」と言うことではなく、社員が成長できる環境を会社として用意できるかどうかだと考えています。
新しいテーマに取り組む機会があること、自分の意思で手を挙げて新しいビジネスに挑むこと、成長を実感できること、このような環境を整えることが、経営の役割だと考えています。
まさに「Vision2030」で掲げているサービス・ソリューションカンパニーへの変革や挑戦は、単なる事業変革にとどまらず、人的資本経営という大きなテーマも包含しています。
社員一人ひとりが成長しながら価値創造に挑戦できる組織を作り上げられるかどうかが、「Vision2030」の実現に向けた重要な経営課題であり、KPIの1つだと認識しています。
そのため、離職率だけでなく、社員が働きがいを感じ、成長を実感しながら挑戦できているかを重視しています。この点こそが、マクニカの競争力の源泉だと捉えています。
質疑応答:マクニカの変化とマクニカらしさについて
司会者:「大澤さまは、マクニカへの長年の取材を通じて、マクニカが大きく変わった点と、変わらず残っているマクニカらしさのようなものがあるとお考えですか?」というご質問です。
大澤:まず、半導体商社やエレクトロニクス商社としての観点で見ると、特にディストリビューターとしての黒子的な役割が以前から強いと感じています。その点で、表面的には、現在のプロモーション戦略などを通じて社会の前面に出ていこうという姿勢が見られるように思います。
一方、サービスソリューションプロバイダーとしての観点では、マージンの天井を打ち破ることが必須であるとの考え方があります。ただし、従来の技術商社やデマンドクリエーションの強みがサービスソリューションプロバイダーとしての役割に取って代わるわけではなく、それらをさらに積み重ねていくベースの部分は変わらないということです。
内心では懸念している面もありましたが、今回の統合報告書を見ると、事業部ごとにデマンドクリエーションという概念が引き続き強く残っていることがわかりました。
特に、昔ながらのデマンドクリエーションのコンセプトや商社としての強さがしっかりと維持されている点については、正直なところ、安心した部分でもあり、変わらない部分でもあると認識しています。
質疑応答:マクニカの執行体制とガバナンス体制の評価について
司会者:「小松さまは、議決権行使の立場から多くの企業をご覧になっていると思いますが、マクニカの執行体制やガバナンスについて、他社と比べてどのように評価されていますか?」というご質問です。
小松:マクニカさんのガバナンス体制は非常に先進的だと評価しています。特に評価しているのは、執行への権限委譲と取締役会の監督機能強化をセットで進めている点です。
マクニカさんは、現場への権限委譲を重視してきましたが、現在は、重要な業務執行の決定を執行側に委ねる一方で、取締役会は戦略、人材、リスクなどの重要な経営課題の議論と執行のモニタリングに重点を移しているように感じます。
また、独立社外取締役が過半数を占め、筆頭社外取締役や社外取締役のみが参加するエグゼクティブ・セッションも導入されており、モニタリング・ボードとしての機能に近づいていると感じています。
今後さらに進化するのであれば、CEOと取締役会議長の分離が1つの選択肢として挙がるかもしれません。ただ、より重要なのは、成長投資が増加する中で、取締役会が資本配分や投資規律、特に撤退規律について、執行側にどの程度実効的な監督機能を発揮できるかだと考えています。大森さんご自身も、撤退規律を課題として挙げられています。
ガバナンスの枠組みはかなり整備されてきていると思います。これからは、取締役会が企業価値向上にどこまで実質的に貢献できるかという段階に入っていると評価しています。
原氏からのご挨拶
原:みなさま、本日はお忙しい中、「LIMITLESS Dialogue」をご視聴いただき、誠にありがとうございました。
マクニカは「Vision2030」を目指すにあたり、ステークホルダーのみなさまとの対話が重要であると考え、このような対話型IRイベントを昨年に引き続き開催しました。
統合報告書は、株主・投資家のみなさまとの対話を通じて、さらに改善されていくものと考えています。
今年の統合報告書をお読みいただくことで、当社へのご理解をより深めていただき、ぜひ忌憚のないご意見をお寄せいただければと思います。本日はご清聴ありがとうございました。