■静岡ガスの中長期の成長戦略
1. グループ2030年ビジョン
2021年12月に公表した「グループ2030年ビジョン」は、地域が抱える様々な課題の解決に寄与し、持続可能なくらしやすい地域づくりに貢献することを企業としての使命と位置付け、その実現に向けた経営方針を示したものである。目指す姿としては、地域の顧客や企業がつながり、それぞれの強みを持ち寄り連携する社会を作り出すことで、新たな価値創造のサイクルを起こし、地域共創を実現することである。
事業別の主な取り組みとしては、ガス・LPG事業では天然ガスシフトの加速やエネファームやコージェネの普及拡大、カーボンニュートラルLNG/LPG導入の推進を掲げる。電力・再エネ事業では太陽光発電、バイオマス発電の開発推進により、2030年に累計再エネ電源開発容量20万kWを目指すとともに、蓄電池・分散型電源を活用した電力の地産地消を進める。くらしサービス・エンジニアリングサービス事業では顧客データを集積・分析し、リアル接点とデジタル接点を活用して課題解決を目指す。さらに水道本管のレジリエンス強化や地域DX推進、森林保全プロジェクトへの参画といった新たなチャレンジや、東南アジアを中心とした海外での天然ガスシフト・再エネ開発も視野に入れている。
2030年の財務目標として、連結経常利益130億円を掲げている。また、2030年の事業ポートフォリオについては、都市ガス50%、LPG5%、電力・再エネ12%、くらしサービス・エンジニアリングサービス16%、海外14%、新規事業3%を目指しており、都市ガス事業の持続的成長と新たな成長事業の確立により、都市ガス事業のウェイトが相対的に低下する計画である。
2. グループ中期経営計画
2025年12月期決算説明会において、「2026年-2028年中期経営計画」を公表した。「グループ2030年ビジョン」では2030年までの道のりを3つのフェーズに分け、最初のフェーズである2022年12月期~2024年12月期は「信頼のブランド強化」、続く2025年12月期~2027年12月期は「事業領域の拡大」、そして2028年12月期~2030年12月期を「新たなつながりでの共創実践」と位置付け、段階的にビジョンの実現を目指している。中期経営計画は毎年ローリング方式で見直されており、本中期経営計画の3ヶ年は、第2フェーズの「事業領域の拡大」をさらに推進し、第3フェーズの「新たなつながりでの共創実践」へとつなげる期間にあたる。財務目標として、2028年12月期に連結経常利益133億円(補正後連結経常利益136億円)、ROE8.0%の達成を掲げ、本中期経営計画で「グループ2030年ビジョン」の目標を前倒しで実現することを目指している。なお、2026年12月期中間期において、補正後経常利益では中期経営計画の目標に近い実績となったが、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇の影響やメイクアップカーゴの受入によるCIF差の改善というやや特異的な要因を割り引いて判断する必要がある。
中期経営計画では、都市ガスやLPGなどの「基盤事業の深耕」と、海外や電力・再エネなどの「成長事業の拡大」の両輪推進により「事業領域の拡大」を図る。また「事業を支える」観点から、人的資本経営及び組織開発にも注力する方針である。事業領域の拡大に向けては、2026年12月期~2028年12月期における投資総額1,070億円のうち88%を成長投資に振り向ける計画であり、そのうち海外事業や電力・再エネなどの「成長事業」に66%、くらしサービスやエンジニアリングサービス、天然ガス普及開拓投資等の「基盤事業」に22%を割り当てる方針である。なお、成長投資以外の12%はLNG基地や導管設備の維持管理等の「レジリエンス投資・その他」を予定している。事業別に見た成長戦略の進捗は以下のとおりだが、各種施策がスピード感を持って実行されており、積極投資により利益成長をどこまで加速できるかが注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)