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敵の敵は味方。プーチンはなぜ暗号通貨「イーサリアム」支援を表明したのか?

プーチンは、匿名性が担保されていないこと、エネルギーが遮断されてしまったとき最低限の食料さえ買うことができなくなってしまうことなどを理由に、暗号通貨の普及に反対してきました。その彼がイーサリアムの考案者と会談し、支援を表明した理由とは何でしょうか?(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年6月22日第211号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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敵はビットコインにあらず。この男は西側中央銀行に挑戦していた

プーチン大統領とイーサリアム考案者が“会談”

最近、仮想通貨(本稿では以下「暗号通貨」と表記)の世界で、俄然イーサリアム(Ethereum)が注目を集めています。

6月2日、クレムリンの公式サイトに、「サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、プーチン大統領が、世界最大のブロックチェーン・プラットフォーム、イーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)と“会談”した」というステートメントが掲載されたからです。

サンクトペテルブルク国際経済フォーラムは、ロシア政府の主催によって6月1日から開催され、60ヵ国以上の国々の参加をもって6月3日に閉会しました。

ロシア側にとって、このフォーラムの主な狙いは、西側諸国の対ロ経済制裁が、ほとんど効果をもたらしていないことを西側に周知させることによって、軍事的対立をクールダウンさせることにあります。

ドナルド・トランプの登場によって、西側の新世界秩序が屋台骨からぐらつき始めているタイミングを見計らってのこの声明には、西側が仕掛けようとしている第三次世界大戦勃発の脅威を、新通貨戦争にシフトさせることによって回避しようという深謀遠慮が見てとれます。

クレムリンの声明によれば、「プーチン大統領は、サンクトペテルブルク経済フォーラムの傍ら、イーサリアムの創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)と会い、ロシアでブロックチェーン技術を実装するための現地パートナーとの協働関係を構築する彼の計画を支持した」とのことです。

声明にある「ミート」のニュアンスは、「経済フォーラムで、たまたま会場に来ていたヴィタリック・ブテリンと世間話をした際、この若者の計画を、なんらかの形で支援する」といった、「立ち話での接触」という意味を含んでいます。

しかし、このフォーラムにヴィタリック・ブテリンを招待したのは、他でもない主催者のロシア政府ですから、あらかじめ仕込まれたプロパガンダであると見る必要があります。

単なる「世間話」ではない

このわずか数行の声明を敏感に捉えたブルームバーグ(6月6日付け)その他の西側主流メディアは、「プーチンはビットコイン最大のライバルに関心を示している」といった見出しを付けて報じており、ロシアが暗号通貨の開発と実装、その普及・拡大に向けての支援に乗り出すのではないかとの見方を示しています。

クレムリンは、プーチンとヴィタリック・ブテリンとの「ミート」の内容には言及していませんが、ブテリン側が配信している動画によって、それが単なる世間話ではないことが分かります。

また、彼はSNSで、米国、カナダ、イギリス、EU、スイス、ロシア、シンガポール、中国、台湾などの国々と話し合ったことを明かしており、「独裁的で強圧的な命令や抑圧、闘争による殺害を促すような勢力や考え方を完全に拒否する」と述べています。

クレムリンは、プーチンが非公式にブテリンと「ミート」を重ねていることを否定していないことから、ブルームバークは、「ビットコインの潜在的な最大のライバルとなっているイーサリアム(Ethereum)が、石油と天然ガスに完全に依存しているロシア経済を多角化する手助けになるとプーチンが関心を持っている」と見ています。

Next: プーチンは暗号通貨「イーサリアム」をどう利用するつもりなのか?



プーチンは「イーサリアム」をどう利用するつもりなのか?

プーチンは、今回のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、このようなスピーチを行っています。

「デジタル経済は、現行の産業から分離されたものではない。それは、基本的には新しいビジネスモデルを創造するための基盤になりうる」

20年間の長いトンネルを抜けてロシアが最悪の景気後退を終えた今、プーチンがもっとも力を入れているのが、長期的な経済成長を後押しする手段をプロモートすることです。

ロシア連邦中央銀行は、去年の10月、ロシア最大の商業銀行であるズベルバンク・ロシア(正式名称:「ロシア連邦貯蓄銀行」)を含む貸し手とオンライン決済を処理し、顧客データを検証するパイロット計画として、すでにイーサリアム・ベースのブロックチェーン「マスター・チェーン(Masterchain)」のプロトタイプが実証試験の段階に入っていることを公表しています。

事実、ロシア連邦中央銀行の副総裁であるオルガ・スコロボガトフ(Olga Skorobogatova)も、「ロシアの国益に資する国家暗号通貨の発展のために、イーサリアムのプラットフォーム技術を使う」ことを除外していません。

ブロックチェーン技術の活用に意欲

先週、ロシア国営開発銀行(VEB)は、いくつかの管理機能のためにイーサリアムの使用を開始することに合意しました。

ロシアの鉄鋼大手セヴェルスターリ(Severstal)は、国際信用状(支払い確約書)を安全・確実に転送するために、イーサリアムを使ったテストを行いました。

イーサリアム・ブロックチェーンをバックアップしているイーサリアム財団のアドバイザー、ブラッド・マルチノフ(Vlad Martynov)は、このように言っています。

「かつて、ドット・コム・バブルと言われた時代には、インターネットの普及とともにさまざまなネット企業が雨後のタケノコのように林立した。ブロックチェーンは、あのときと同じような影響を及ぼすだろう。

ブロックチェーンを使った取引においては、さまざな仲介業者や代行業者が不要になるため、これまでのビジネス・モデルを激変させてしまう

もしロシアが最初に完全にブロックチェーンを実装すれば、インターネットのスタート時に西側諸国が圧倒的優位を占めたように、ロシアもそうなる可能性が大である」

Next: 暴騰するイーサリアム相場に警鐘を鳴らすアナリストの主張



暴騰するイーサリアム相場

クレムリンの発表以来、イーサリアムの相場は一気に暴騰。6月12日には、とうとう時価総額が43億4000万ドルの最高値を記録し、ビットコインのそれに並ぶ勢いを示しています。

現在は、36億ドルと、やや落ち着きを取り戻したとはいうものの、ベンチャー・キャピタリストらは、「2018年末を待たずして、ビットコインの時価総額を超えて来る」と見ています。

まさに、「雀の子 そこのけそこのけイーサリアムが通る」です。

しかし、過熱する暗号通貨相場に強く警鐘をならしているアナリストも、一人や二人ではありません。

暗号通貨は、正確には「通貨」とは言えない

地政学の専門家で著名なフィナンシャル・アナリスト、ウォーレン・ポロック(Warren Pollock)は、「ビットコインを含む暗号通貨を買う前に、かなり勉強する必要がある」と、人々のブロックチェーンに対する知識不足に注意を喚起しようとしています。

「ビットコインを含む一般的な暗号通貨は、相場が短期間で大きく動くので報酬も高いがリスクも高い」

彼の言うとおり、まずは原点に返って暗号通貨の本質を見極めることが大切です。

つまり、「ビットコインにしろイーサリアムにしろ、暗号通貨とは、そもそもが私たちが考えている『通貨』ではない」ということです。<中略>

Next: イーサリアムを利用するプーチンにとっての「本当の敵」とは?



プーチンにとっての「本当の敵」

若干19歳でイーサリアムを考案したヴィタリック・ブテリンが、SNSに投じた決意の言葉を再び取り上げましょう。

「独裁的で強圧的な命令や抑圧、闘争による殺害を促すような勢力や考え方を完全に拒否する」

この天才は、西側の中央銀行システムが世界を破滅に導こうとしていることを、しっかり理解しているのです。

プーチンは、暗号通貨は匿名性が担保されていないこと、そして、巨大な天変地異や戦争によってエネルギーが遮断されてしまったとき、人々は最低限の食料さえ買うことができなくなってしまうことを理由に暗号通貨の普及に反対してきました。

しかし、これには「中央銀行の」という言葉が抜け落ちています。

今回のヴィタリック・ブテリンへの支援表明も、それを意識したものです。

つまり、プーチンが反対しているのは、西側の中央銀行システムが発行する暗号通貨であって、ビットコインやイーサリアムのような――
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「カレイドスコープ」のメルマガ』(2017年6月22日第211号より一部抜粋、再構成

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