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長期金利反転の可能性が!米国をきっかけにドイツ、日本も金利上昇してくる?

9月なの? 12月なの? 来年なの? と投資家をやきもきさせているFOMCの利上げ問題。人気メルマガ『牛さん熊さんの本日の債券』を配信する牛熊さんは、米国の利上げによりドイツ、日本でも金利が上昇する可能性を説いています。

「長期金利反転の可能性

6月10日にドイツの10年債利回りは1.06%まで上昇し、1%の壁をあっさり突破した。この日の米国の10年債利回りは一時2.49%に上昇し、節目のひとつ2.5%に接近した。

ドイツの長期金利の上昇の発端は買われ過ぎた反動とされた。いわゆるQEトレードの巻き返しである。ドイツの長期金利は2014年1月初めの1.9%台から右肩下がりとなり、今年の4月16日に0.1%を割り込み、17日に0.049%まで低下した。そこがボトムとなり、そこからドイツの長期金利は反発した。5月7日に0.8%近くまで上昇。そこでいったんドイツ国債には押し目買いが入り、5月29日には0.5%割れとなった。ところが再びドイツの長期金利は上昇しつつあり、6月10日に1%を突破した。

ドイツの長期金利の上昇の背景には、5月のユーロ圏消費者物価指数速報値が前年比0.3%の上昇と、昨年11月以来のプラスとなったこともある。ECBの量的緩和というよりも、そのアナウンスメント効果によるユーロ安も影響があったかもしれないが、物価が底打ちしてきた可能性がある。6月3日のECB政策理事会後の会見でドラギ総裁は、市場はボラティリティの高い時期に順応する必要があると述べた。ECBによる今年のインフレ率予想が0.3%と従来予想のゼロからわずかながらも引き上げられたこともドイツ国債の売り要因となった。これらもドイツの長期金利の上昇に拍車を掛けた格好となった。

ドラギ総裁は3日の会見で「景気回復はすそ野を広げ、内需は金融政策措置によってさらに支えられるはずだ。回復はわれわれの予想通りに進展している」と述べている。そうであればドイツの長期金利の上昇は容認せざるをえなくなり、それがボラティリティ発言に繋がったとも言える。

このドイツの長期金利上昇は次第に収まるとの見方が多いようである。2003年の日本でのVARショックも買われすぎの反動によるもので一時的な金利上昇となった。2013年4月の日銀の異次元緩和決定後の長期金利の乱高下も一時的であった。日本では1990年以降、長期金利の上昇はあっても一時的なものに過ぎなかった。では今回のドイツの長期金利上昇も一時的なものに過ぎないのか。

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よほどの事がない限り年内の米利上げは避けられない?

ここで注意すべきは米国の長期金利である。ドイツの長期金利の上昇に触発される格好で米長期金利も上昇してきたが、その要因には年内とされるFRBの利上げ観測がある。

よほどの経済データの悪化や突発的な出来事でもない限り、FRBは年内の正常化、つまり利上げを実施するとみられる。そのタイミングは9月のFOMC以降とされている。FRBの正常化(利上げ)に向けた地均しに関し、イエレン議長は前任のバーナンキ議長の手法をかなり意識しているように思える。2013年5月22日のバーナンキ議長(当時)の会見でテーパリングの意向が明らかとなり、その2年後の2015年の同じ5月22日にはイエレン議長が講演で年内の利上げの可能性をあらためて示した。

そして、通常であればFRB議長は出席するはずのワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムに、2013年はバーナンキ議長が欠席したが、今年はイエレン議長も欠席となる。

2013年には9月のFOMCでテーパリング開始決定を市場は織り込みにいった。米10年債利回りは3%台をつけにきたが、このときはテーパリング開始は見送られた。見送りの理由としては、5月のテーパリングの示唆からの市場の動きが、テーパー・タントラムと表現されたように、かんしゃくが起きて予想を超える動揺を示していたためとの見方もあった。

2013年のテーパリング決定に関して、当初は9月決定予定であったのを12月に先延ばししたのか、それともそもそも12月が本命であったのか。このときにバーナンキ議長を補佐していたのはイエレン副議長であり、当時の状況を良く知る立場というかその決定を下した主要メンバーであり、果たして真相はどうであったのか。

この予行練習によって、12月の実際のテーパリング決定の際に市場はさほど「かんしゃく」は起こさず、その後も着々とテーパリングは進められ、市場は予想以上に落ち着いていた。このあたりの手綱さばきは見事と言えた。いずれにせよ、FRBの利上げはかなり慎重に行ってくることも予想され、9月のFOMCでフェイントをして、実際には12月に決定という2013年のパターンもありうるかもしれない。

タイミングはさておき、テーパリング(量的緩和解除)で米長期金利が3%台に乗せたことを考慮すれば、正常化(ゼロ金利解除)では、そのさらに上を行く可能性が高いとみられる。つまり米長期金利が3%に向けて上昇するとなれば、ドイツの長期金利も今度は直近の金利低下トレンド以前の水準であるところの2.0%に向けて上昇してくることが予想される。もちろんユーロ圏の経済や物価の回復とともに、さらにギリシャのユーロ圏離脱などがないことが前提となる。

もしこのようなストーリー通りに動くとなれば、日本の長期金利も上昇してくることが予想される。ベーシススワップによりドル調達に多少のプレミアムが乗ったとしても短期債はさておき、長めの国債の利回り上昇により、海外投資家などの売りも予想される。日本の長期金利はあくまでチャート上ではあるが、0.6%がひとつの節目となるが、そこを抜けると0.8%あたりまでの上昇も予想される。

牛さん熊さんの本日の債券』(2015年6月12日号)より一部抜粋

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