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老いる前にできる遺産「争族」対策に確定拠出年金(iDeCo)という選択肢

相続争いを避けるためには、自分の老後の生活を安心なものにしておくことが重要です。今回は老後資金を貯めるための選択肢として、「確定拠出年金」を紹介します。(『日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』)

親の遺産に頼らない人生設計を。税制優遇をフル活用する老後準備

相続争いの原因は、親の財産だけではない

「相続対策」といえば、親の相続に目がいきがちですが、ご自身の相続対策や老後の生活準備などは万全ですか? まだまだ若いし、親の相続も始まっていないから、自分の相続や老後について考えなくてもまだ大丈夫だと思っていませんか?

争族」になってしまう理由はたくさんありますが、「自分の老後資金として、親の遺産をあてたいと考えている」と相続人がおっしゃっていたケースがありました。

若い時から親の財産はあてにせず、「自分の老後のお金は、自分で用意する」と考えていたなら、親の死後、親の遺産をめぐって兄弟の仲が分裂してしまうような悲しいことは起きなかったかもしれません。

中には病気リストラなどどうしても避けられない理由で老後資金を貯められず、親の遺産をあてにせざるを得ない方もいるかもしれません。

今回はそういう方のことを言っているのではなく、老後資金を準備し、ひいては争族を避けるために若いうちからできることはないかと一緒に考えていって欲しいな、ということです。

老後資金を貯める選択肢「確定拠出年金」

老後資金を貯めるための選択肢として、国の制度である「確定拠出年金」があります。

2017年1月から、公務員や専業主婦なども確定拠出年金の個人型に加入できるようになりました。結果的に、ほぼすべての人が確定拠出年金に加入することができるようになったのです。最近では、確定拠出年金の個人型のことを「iDeCo(イデコ)」と呼ぶこともあります。

<確定拠出年金の種類>

確定拠出年金は、企業型個人型があります。簡単に下記にまとめてみました。企業型と個人型では、掛金や入れるタイプも変わってきますが、「老後の資金を作る」という点は変わりません。

【企業型】
年齢:会社規約による。65歳まで延長可能
加入者:確定拠出年金を導入する会社の第2号被保険者(会社員・公務員)
掛金の拠出:会社(規約により個人拠出もできる)

【個人型】
年齢:20歳~60歳
加入者:第1号被保険者(自営業・学生)
    第2号被保険者(会社員・公務員)
    第3号被保険者(専業主婦・パート社員)
掛金の拠出:個人

Next: 入り口、途中、出口で大きな税制優遇がある。一方、デメリットも…



確定拠出年金のメリットは?

確定拠出年金は、入り口、途中、出口で大きな税制優遇があります。

入り口では、所得から確定拠出年金の掛金が全額控除になります。これにより、所得税を支払っていた場合、所得税、住民税等の減額になります。

途中では、確定拠出年金の商品の運用益が全額非課税になります。確定拠出年金では、元本確保型の商品か投資型の商品を選びます。元本確保型の商品には、預金や生命保険があたります。投資型の商品には、投資信託があたります。預金から出た利息や投資信託から出た運用益などが非課税となり、そのまま再投資されます。通常、預金利息や運用益に課される所得税が引かれないのが特徴です。

出口では、一時金で受け取る場合は、退職所得控除が使えます。これは、掛金を掛けた期間が25年で、確定拠出年金が1200万円になったとすると、1200万円から、退職所得控除として(20年×40万円)+(5年×70万円)=1150万円が引かれます。それに1/2を掛けた25万円に対して所得税がかかってくることになります。受取金額が1150万円以下であれば税金はかからず全額無税で受け取ることができます。

年金で受け取る場合は、公的年金控除を使えますからこちらもお得です。

一方、デメリットも

確定拠出年金のデメリットは、一度始めてしまうと、やめられないという点です。掛金の積立の停止はできますが、手数料が引かれてしまうため、普通に預金をしていた方が良かったと言うことにもなりかねません。企業型なら3000円から、個人型なら5000円からできますので、金額を調整しながら、貯蓄だと思ってされるのもいいですね。

また、私個人的にはメリットだと思うのですが、60歳まで引き出しができないという点がデメリットだという方もいます。私がなぜメリットだと思うのか? 確定拠出年金の目的は、「老後の資金」を貯めるためです。だから、60歳まで引き出しができなければ、老後の資金としては強制的に貯めることができるというわけです。

Next: 老後の安心が相続争いを回避する



老いる前にできる相続トラブル回避策

だからといって、借金をしてまで確定拠出年金の掛金を積み立てた方が良いというのではありません。少しでも私たちの老後の生活の不安を軽減できれば、争族を回避することが期待できます

そのために、老後の貯蓄は欠かせません。それならば、国の優遇された制度を使って、自分の手で、効率的に、自分の老後を作っていく確定拠出年金を利用しない手はないのではないでしょうか?

国の制度を上手に使って、まずは自分の老後の生活を安心なものにしておくことが、若いうちからできる争族対策の1つです。

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日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』(2017年4月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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