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本音ではAIIBに日米も参加して欲しい!?中国だって不良債権を抱えたくない

世界の趨勢の一角を担う中国。AIIBの進捗状況が思わしくないようですが、中国の本音はどこにあるのでしょうか。投機家で大学教授の山崎和邦氏は「裏にあるのは不良債権を抱えてしまう恐れ」だと話しています。

中国の「一帯一路」の経済圏構想と狡知に長けた国柄

昔のシルクロードは西安からローマまでの「陸上の線」だった。これからの中国のシルクロード構想は、「一帯一路シルクロード」という発想で「面、すなわち海面まで含めての構想」で獲るハラだ。「西安→イスタンプール→ローマ→ベネチェア→アテネ→ナイロビ→クワランプール→ジャカルタ→ハノイ→西安」、という「面」で採る経済圏、すなわち覇権である。

こうなると「一帯一路のシルクロード」が世界で占める割合は、人口で47%で約半数に達し、GDPでは約32%を占める。

彼らは自国の旧制王朝や古代ローマ帝国や中世スペイン王国が衰退した淵源は経済の衰退にあった、ということを知っている。その意味でギボンの「ローマ帝国衰亡史」よりもずぅっと聡明と言うか狡知と言うか、ともかく悪企みには長けた歴史を持つ国柄である。

90年~03年春までの「失われた13年」(不良債権処理が一応の解決を見るまでの期間)は、小渕・小泉内閣以外は、経済衰退に対して政治指導力の欠如した期間が長く、円高容認と言う基本的洞察力の欠如も重なって経済的衰亡を防げない日本だった。

「なぜ大国は衰亡するのか」(グレン・ハバード著、久保恵美子訳、日経新聞社、2015年刊)によれば、古代ローマから中国王朝、スペイン王国、大英帝国、65年~レーガン出現までの「Death of Eqity」時代の20年間の米国の衰退、これらに共通するものは皆、大国の衰退の淵源は経済の衰退であり、それに対応する政治の弱さであった。これが社会・文化・国民性の弱体化・軍事の弱体化・文明の衰亡を招いたとされていて、軍事的敗北に拠った大国の衰亡は表面に現れた一現象だったと結論し、名高いギボンの「ローマ帝国衰亡論」は根本的に誤りだったと結論している。

Next: 日本も「失われた20年」の代表的事例だ



「失われた20年」の日本もその代表的実例である。

だから安倍さんが12年12月の総選挙の際に「日本を取り戻す。(民主党から取り戻すのではなく)経済を取り戻す」と標榜して打って出たのは誠に正しかったのだ。

狡知に富んだ中国共産党幹部は勿論、これを熟知している筈だ。

今は世界の金融は世銀とアジア開発銀行が支配する。中国は世銀にもアジア開銀にも入っていて出資もしているが、前者はアメリカ、後者は日本が主導権を握っている。中国はこれが気に食わない。そこで北京に本拠をおくAIIBを考えた。

そこで考えたのがアジア・インフラという大義名分を立てた金融覇権の争奪である。言うまでもなくAIIBのホンネはそこに在る。ところが輸出相手として中国を重視する欧州諸国が参加したので面倒になった。ドイツ・フランスは中国が最大輸出国である。

英国は対中貿易は大したことはないが、AIIBの資金をロンドンのシティーで運用したいというハラが透けてみえる。そこでドイツ・フランスに次いで英国が参加した。

AIIBが中国の不良債権を抱えてしまうという恐れがある。そこで不良債権処理を長年体験した日米も参加してもらって支えてもらいたいのだ。これが中国のホンネだろう。

勿論、安倍さんもスガさんもそれは読んでいる。人のいい麻生さんはそれが読めずに財務相として金融庁としてAIIBに参入することを当初は考えていたようだが今は安倍さんたちに窘められてか黙り込んだ。

日米は泰然と構えていれば向こうが頭を下げてくると読んでいるようだ。

このように、日中戦略は、一帯一路・AIIB・安保法案・などの全体の「面」で考えてゆかねばならない。ところが国会ではミクロの事柄しか提出されない。

山崎和邦 週報「投機の流儀」』(2015年6月14日号)より一部抜粋

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