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まるで昭和のゲーセン!タイ田舎のネットカフェ、開業理由が「オタク息子の失業対策」ってどういうこと?

アジアの超ローカル景気やおカネ事情を現地在住ウォッチャーがレポート。今回はタイ中部・ナコンナヨック県のネットカフェを訪問。まるで「昭和の駄菓子屋ゲーセン」のごときタイ式ネットカフェの経営事情を探ってみました!(取材・文 / あいさ)

【 取材時の為替レート: 1タイバーツ = 約3.6円 】

PC7台、エアコンなし。タイラーメン屋からネットカフェに転業

皆さん、サワッディーカー!路地ウラウォッチャー・タイ担当の「あいさ」です。

今回はバンコク中心部から乗り合いバンで片道3時間、タイ中部・ナコンナヨック県まで足を延ばし、最近、開業したばかりの「ネットカフェ」に経営状況を聞いてきました。

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こちらの『Kaeゲームインターネットカフェ』は約半年前にオープン。ナコンナヨック自体がバンコクと比べて田舎なうえ、ランドマークのナコンナヨック病院から車で10分と大通りからも離れた立地で、地元客100%の超ローカルなお店です。

外からは、ここがネットカフェとは分かりませんね。そしてこちらがオーナーのKaeさん(52歳)。

Kaeさんは以前、タイならどこにでもあるクィティアウ(タイラーメン)屋さんを経営していましたが、競争が激しくなかなか売上があがらなかったこともあり、いったんお店を畳むことに。

他の業態を検討する中で、息子さんがオンラインゲームにハマっていたことにヒントを得て、ネットカフェに転業したそうです。

ですがこちらのお店、パソコン台数はわずか7台のみですか……。しかも年中暑いタイなのに、エアコンがありません。バンコクのネットカフェならエアコンはたいていついているのですが。

かわりに5台の大型扇風機がありますが、すべて稼働させたら店内の通路が完全にふさがれてしまいそう。

繁盛していると聞いて来たのですが、ちょっと不安になってきました。ねえねえKaeさん、本当にこの立地、この設備で、ご商売は順調なんですか?

もちろん。この界隈でネットカフェはココだけ!ウチは16時過ぎからが本番よ

そう自信満々に答えるKaeさんと、しばし待つこと約15分。ついに最初のお客さんがやってきました!可愛らしいお子様です。

Next: メイン客層は小中学生。ゲームに駄菓子、そこは昭和のゲーセンだった


路地ウラウォッチャー – あいさ

27歳、沖縄県出身。タイ・バンコク在住6年目。語学学校通いや現地就職などを経てタイ人の夫と結婚し定住を決意。2014年に生まれた息子の育児に奮闘しつつも持ち前の好奇心とタイ語を駆使し、まだ行ったことのない場所に突撃しては驚かされる毎日。

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メイン客層は小中学生。ゲームに駄菓子、そこは昭和のゲーセンだった

本日、最初のお客さんはこちらのお子さまたち。学校帰りにパソコンゲームを遊びに来ました。

Kaeさんのお店の利用料金は、1時間あたり15バーツ(約54円)

バンコクのローカルネットカフェは10~12バーツ/時間で、なおかつ6時間パックで1時間分無料といったシステムが一般的ですので、なかなか強気の価格設定だと思います。

ひょっとして「ゲームは1日1時間」というKaeさんの愛のムチかしら?そういえば、お店の入り口に何やら注意書きがあったんですよね。あらためてよく見てみると、

「15~18歳…月~土:14~22時 日祝:10~22時」
「15歳未満…月~土:14~20時 日祝:10~20時」

と書いてありました。これは営業時間ではなく、タイの法律(日本の風営法みたいなもの)なんだそうですよ。なるほど、学校帰りの子どもがメイン客層だから、Kaeさんは「16時からが本番」と言っていたのですねー。

そうこうしているうちに、ゲーム目当ての子どもたちが次々に来店。1時間も経たないうちに、すべての席が埋まってしまいました。スゴイ!

いま子どもたちに人気のタイトルは、『FIFA(サッカーゲーム)』、『World of Tanks(戦車ゲーム)』『Heroes of Newerth(リアルタイムストラテジーゲーム)』『Point Blank(一人称視点のアクションシューティングゲーム)』などのPC用オンラインゲームだそう。

タイ人は子どもから大人まで、みんなサッカーが大好きですね。

おっとこれは!?パソコン以外に、プレステコーナーもちゃっかり用意されていたりします。

ほとんどの子が友達同士で誘い合って来店するため、1台のパソコンに何人もの子どもが群がる状態になりますが、順番待ちになったら、後ろに椅子を並べて待つのがこのお店のオキテ

お行儀が悪い子には、Kaeさんによる教育的指導が待っています(笑)

この光景、どこかで見たことがあると思いませんか。100円玉を握りしめて行列を作っていた、日本の駄菓子屋ゲーセンみたいなんですよね。

となれば、このとおり。

順番待ちする子どもたちのニーズを見越して、お菓子やジュースをきっちり取り揃えてありました。

入り口横の冷蔵庫にはジュース類。ペプシコーラ10バーツ(約36円)、ピーポー1バーツ(約3.6円)。「ピーポー」は、タイの子どもが大好きなフルーツゼリーです。

お店の奥の棚には、ジュースやシェイク、お菓子がたくさん。どれも1個5バーツ(約18円)、美味しそうです。

ちなみに靴は玄関先で脱ぐのがタイ式ネットカフェのお作法。できれば、きちんと揃えて脱ぎましょうね!

次ページではKaeさんに、気になる開業初期費用や、現在のお店の売上・利益を聞いてみます!

Next: 「座っていればいいだけ」の気楽な商売?月売上は1.5万バーツ


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「座っていればいいだけ」の気楽な商売?月売上は1.5万バーツ

意外なほどの(失礼!)繁盛店っぷりを確認できたところで、あらためてオーナーのKaeさんに、気になる開業初期費用や、現在のお店の売上・利益を聞いてみました。

――Kaeさん、このネットカフェをオープンするのに何バーツかかりました?

初期費用は14万6,000バーツ(約53万円)。おおまかな内訳は、営業許可の取得に1,000バーツ、パソコンセット7組で10万5,000バーツ、それに机と椅子が4万バーツね」

――客層はご近所のお子さんオンリーですか?

「ほとんどそう。だから平日は16~19時、土日祝は10~21時、子どもたちが学校に行かない時間帯だけ店を開けている。それで平日は10人ちょっと、土日祝はその倍くらいの来店があるわ」

――月の売上と利益はどれくらいでしょう?

月の売上が1万5,000バーツ(約5万4,000円)、利益は12,000バーツ(約4万3,000円)くらい。費用は電気代とTRUE(通信会社)に支払うネット接続料がそれぞれ800バーツ。ほかにもPC1台につき年100バーツの税金がかかったり、いろいろあるから、まあこんなもの」

――家賃・場所代はいくらでしょうか?

「ここはもともと息子の自宅。だから家賃はタダ。その息子はいまバンコクで友達とルームシェアしながら働いている。ウチの息子は昔からパソコンオタクのオンラインゲームオタクでね、それをヒントに商売替えしたのよ」

――クィティアウ屋さんと比べて、ネットカフェ商売の良いところ、悪いところはありますか?

「長所はたくさんある。ただ座っていればいいし、自分の空いた時間に営業できる。特に難しい作業もない。短所は……うーん、これと言って思いつかないねー」

Next: ネットカフェはバンコクで働くオタク息子の「セーフティネット」


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ネットカフェはバンコクで働くオタク息子の「セーフティネット」

――ゲームを順番待ちする子どもが大勢いましたが、お店の規模を拡大する予定は?

「パソコンを増やしたり、店の面積を増やす予定はなし。いまぐらいがちょうどいいと思っているわ」

――それは需要の問題でしょうか?それともこれ以上の儲けはいらない?

「どちらもあるけど、そうねぇ。そもそも、このネットカフェは、もし息子に仕事がなくなったら、いつでも譲ってあげられるようにとオープンしたものなのよ

――えっ!そうだったんですか?

「そう。息子は昔からゲームが大好きだし、店を継ぐならクィティアウ屋よりネットカフェのほうが嬉しいでしょ(笑)だから、無理して規模を拡大する必要はないのよ。旦那の稼ぎもあるしね」

なんと、開業理由に息子を思う母の愛があったとは。おかあさーん!あいさ、なんだか感動です。

聞けば、12,000バーツの利益はKaeさんにとってお小遣い程度の額とのこと。お金のためだけのご商売じゃなかったんですね。

そういえば、私の知り合いのタイ人でも「もし失業したら、その時は田舎に帰るさ」なんてことをサラリと言う方は多いです。彼らと話していて、一般的な日本人の「都落ち」的な悲壮感をあまり感じないので、フシギだなと思っていました。

ひょっとしたら、タイの至るところにある小規模の屋台やサービスが、ある種のセーフティネットとして機能しているのかもしれません。

さて、タイでは様々な施設にPCがあり、一般家庭にもそれなりにPCが普及しています。それでも子ども達はあえてオンラインゲーム専門のネットカフェに集まるんですね。

しかも、どこのネットカフェも大勢の子ども客で、そこそこ繁盛しているように見えます。

今回取材してみて、ネットカフェはタイの子どもたちにとって、日本の(ひょっとしたら一昔前の?)ゲームセンターと同じようなものなのだろう、と思いました。

オーナーのKaeさん曰く「自宅にパソコンがある子はもちろんいる。けれど、こうして友達と遊ぶためにお店に来てくれるんだから、この商売は長いこと繁盛しそうだわ」とのこと。

私も子どものころ、先生の「道草してはいけませんよ」の注意を無視して、放課後ゲームセンターに通っていた時期がありました。それと同じで、タイの子どもたちも友達とのコミュニケーションツールとしてネットカフェを利用しているのでしょうね。

Kaeさん(52)ネットカフェ経営
に景気アンケート!

あなたの景気は100点満点で何点?
「40点!バンコクほどではないけど、ナコンナヨックも物価が高くなって住み辛いわ。もっと田舎なら楽なんだろうけどね」

これから景気は良くなると思う?悪くなると思う?
「景気はいまのままだろうねー。物価と収入の上昇ペースが合っていないから、景気が良くなったとなかなか感じられない、困ったものよ」

いまいちばん欲しいモノは何?
「家も車もあるから、強いて言うならおしゃれなカバンかしらね。本当はシワを取りに行きたいんだけど、まだ迷っているわ(笑)」

路地ウラウォッチャー – あいさ

27歳、沖縄県出身。タイ・バンコク在住6年目。語学学校通いや現地就職などを経てタイ人の夫と結婚し定住を決意。2014年に生まれた息子の育児に奮闘しつつも持ち前の好奇心とタイ語を駆使し、まだ行ったことのない場所に突撃しては驚かされる毎日。

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