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「理論株価」で見た日経平均はすでに底値圏=2014年初~8/25最新データ分析

大幅調整中の東京株式市場。外部環境をにらみつつも、そろそろ買いのタイミングを計っている方が多いのではないでしょうか。そこで本記事では前回前々回に引き続き、2014年初~8/25の最新データを用いた日経平均の「理論株価」をご紹介。日経新聞社で証券分析サービス開発に従事、各種日経株価指数を担当した日暮昭氏が解説します。

波乱相場にブレない相場観を

上海、ニューヨーク、ロンドン、そして東京と世界の株価がそろって急落しました。日経平均は25日までの3日間で2,200円あまり、11%強の記録的な下げとなりました。

ただ、25日は一時反発する局面もあり、日中の高値と安値の差が1,000円以上になるなど市場は売り気一辺倒でなく買い気とのせめぎ合いの状況になってきたように見えます。方向感覚をつかみにくい状況にあると言えます。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

こうした状況下では客観的な根拠に基づく投資判断が求められますが、そのよりどころとなるのはやはり、投資の原点であるファンダメンタルズに注目することでしょう。

中国経済の減速、米国の利上げ、ギリシャの政情など相場の不安材料はいくつも挙げられますが、実はこうした懸案はいつの時代でも内容は異なるにせよ常にあることで、結果の説明付けに強調されるという面も否定できません。

こうした様々な要因は無論無視することはできませんが、投資判断の主軸をファンダメンタルズに置く、というスタンスをしっかりと確立することでブレない投資判断を行うことができます。

ここではファンダメンタルズは業績という基本を中心に、為替の動向を加味してファンダメンタルズを捉えます。

この構造をベースに統計学の手法によって推計される日経平均の想定株価を“理論株価”とし、これによって当面の注目点である現下の波乱相場の底値を探ってみることとしましょう。

日経平均の理論株価

日経平均の理論株価は、日経平均ベースの予想EPS(予想1株当り利益)と米ドルによって以下の式で求めます。式の推計期間はデータが連続して取れる最古期の2002年5月から2014年12月です。

日経平均の理論値=-3630+74.66×【予想EPS】+101.52×【米ドルレート】

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2014年初から8月25日までの日経平均と理論株価の推移

日経平均は先週半ばから様相を一変

下図は、2014年初から8月25日までの日経平均と理論株価の推移を示したものです。

日経平均と理論株価の推移 ─2014.1.6~2015.8.25─

青色が日経平均、赤色が理論株価を示します。日経平均は今年初からほぼ一貫して理論株価を上回ってきましたが、先週の半ばに急落して状況は一変、24日に理論株価を下回り、25日はさらに大きく下回りました。

下表はこうした動きを先週始めから25日まで数表で一覧したものです。日経平均と理論株価、そして日経平均が理論株価とどの程度かい離したかを率で示しています。

日経平均・理論株価とかい離率 ─2015.8.17~2015.8.25─

かい離率を見ると、先週初めには日経平均は理論株価を5%以上上回っていたのが、週末の600円近い急落によってほぼ理論株価に並び、さらに24日、25日の1,600円余りの大幅な下落によって理論株価を7%近く下回ることになりました。

長期的には日経平均は理論株価に収斂

下図はこうしたかい離率の動きをより長期で見たものです。

2014年初から今年の8月25日までのかい離率と、この間のかい離率の平均、そして平均的な変動の幅を示しています。

図の中央にある赤い線はこの間のかい離率の平均で0.28%とほぼゼロになっています。上の図からも見られるように日経平均は理論株価をはさんで上下に変動していますので、かい離率はプラス、マイナスに振れていますが、平均がほぼゼロになるということはある程度の期間をとると日経平均は理論株価に収斂することを示しています。

かい離率の推移と変動平均(1倍と2倍)の範囲 ─2014.1.6~2015.8.25─

平均値をはさんで上下にある紺色の線はかい離率の変動の平均幅を示します。かい離率の変動の平均は4.8%でしたので、上側の線は5.1%、下側の線は-4.5%になります。かい離率は平均的にこの青い線で挟まれた範囲で変動していることが分かります。

さらに青い線の外側にある茶色の線は、変動幅をもう一段広げて2倍にした場合の位置を示します。かい離率はこの2倍の範囲を超えることはほとんどありません。上側の線は9.9%、下側の線は-9.3%となります。

ちなみに紺色の線の範囲内には全体のかい離率の63%が、茶色の線の範囲内には93%が収まっています。

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大幅な業績下方修正や円高がなければ日経平均は底値圏

さて、以上のことから次のように日経平均の相場観を捉えることができます。

  1. 日経平均が平均変動幅の範囲内に位置する:妥当な範囲にあり静観する
  2. 日経平均が平均変動幅と2倍の変動幅の間に位置する:注意領域にあり警戒が必要
  3. 日経平均が2倍の変動幅の外側に位置する:危険領域にあり臨戦態勢をとる

下図は日経平均と平均変動幅に対応する理論値、および変動幅の2倍に対応する下側の理論値を示したものです。

日経平均の妥当範囲と変動の下限 -2014.1.6~2015.8.25-

日経平均は紺色、妥当範囲の上側の理論値は赤色、妥当範囲の下側は緑色、そして平均変動幅の2倍の下側、つまり日経平均の変動の下限と見なせる理論値は紫色の線で示しています。

図から、日経平均は2014年中はしばしば妥当範囲の下側(緑色の線)を下回りましたが、変動の下限である紫色の線に近づく度に反転して上昇する傾向があることが見て取れます。

2015年に入ると前半は妥当範囲内で推移していましたが、5月以降は妥当範囲の上側に張り付く状態が続き、先週に至って一気に妥当範囲の下側(緑色の線)を貫いて変動の下限に接近しました。

これを上の基準をもとに投資判断に置き換えてみると、2014年中はしばしば買い出動の機会があり、2015年に入り前半は静観を維持、5月以降は注意領域に踏み出すギリギリの位置にあり警戒を怠らず、ということになります。

ここで、8月25日時点の変動の下限は1万7377円でしたので、日経平均の終値1万7806円はほぼ変動の下限に達していたことが分かります。

これまでの動きから日経平均が変動の下限に達すれば反発に転ずると想定できますので、今後、業績の大幅な下方修正、あるいは急激な円高の局面によって理論株価が下落しなければ日経平均は底値圏にあると言えそうです。

筆者プロフィール:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

投資の視点』(2015年8月26日号)より一部抜粋

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