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G20声明の「本音と建て前」 結局、何が決まったのか?

中国経済や米利上げが焦点となったG20財務相・中央銀行総裁会議は5日、共同声明を採択して閉幕。ところが気になる声明文の内容は、参加国の利害が複雑に絡んで何を言いたいのかよく分からない内容になってしまいました。G20の本音と建前を、40年近いエコノミスト歴を持つ「マン」さんが分析します。

G20会議で決まったこと、決まらなかったこと

実際の議論と声明文に温度差

トルコのアンカラで開かれていたG20が声明をまとめ、閉幕となりました。

その声明文に書かれた内容と、その裏で議論されたものと、少なからず温度差があるようです。議長国が米国シンパのトルコだったことも無視できません。

公表された声明文だけを見ると、立場の異なる「船頭」が多く、もはや組織としての統一見解を出すのが困難になっている限界を示しています。声明文自体が長大で、あらゆる立場の意見を網羅しようとしたようですが、かえって何を言いたいのか分かりにくくなっています。

例えば、前段部分だけでも、世界の経済成長はG20の期待する水準に達していない。金融政策だけでは対応に限界がある。一部の国では金融引き締めの可能性が高まっていることに留意が必要。負の効果を最小限にするために、金融政策の決定に際しては、明確なコミュニケーションを行うべし。

さらに、中国の人民元切り下げを名指ししないものの、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる保護主義的な動きに対抗する、とし、人民元切り下げが通貨安競争を引き起こす事態を警戒しています。

米利上げに、新興国から強い反発

今回のG20では、米国の利上げと中国の経済不安が最大のテーマで、いずれも激しい議論がなされた(IMFラガルド専務理事など)と言われますが、米国の利上げには早期利上げを支持するものと見送りを求める両方の意見があったとするにとどめ、中国経済にはほとんど言及を避けています。これではよくわかりません。

複数の参加者の話を総合すると、米国の利上げに対してはやはり新興国からは強い反発が出たようです。

しかし、欧州からはやはり利上げを予定している英国以外からも、米国の早期利上げを支持する声があり、米国の利上げをG20として封印することはできなかった模様です。

その分、利上げに際しては市場に負の影響を生じさせないよう、くぎを刺しました。

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麻生財務相「中国からは弾けたという言葉が3回も飛び出した」のウラ側

これと中国問題が絡みます。米国の利上げを支持する米欧からすれば、中国経済の不安や中国発の市場混乱は避けたいので、中国は心配ないとする姿勢が必要です。新興国はもともと中国支持にまわっているので、こちらからも中国への懸念は出ません

声明に書かれなかったから中国は大丈夫、ということにはなりません。

その中で気になるのが、麻生財務相の「中国からは弾けたという言葉が3回も飛び出した」との指摘。中国当局自らバブルが弾けたとの認識を示したことになり、しかもこれへの対応策などを示さなかったようです。

これが少なくとも日本のメディアでは報じられました。連休明けの上海はもとより、週明けの世界市場がどんな反応を見せるのか気になります。

結局、G20としては注文を付けたものの、米国の手を縛ることができず、市場が平穏に推移すれば、米国が9月に利上げを開始する可能性を残したことになります。それでも利上げによる負の効果を最小限にと釘を刺しているので、市場が不安定な中ではFRBも決断しにくい面があります。

相場への影響としては、米国が内外の政治圧力を無視して利上げを強行すれば、リスクオフとなってドル円は110円、日経平均は1万6千円に。その前に市場が不安定で利上げが見送られても、ドル円は115円、日経平均は1万7千円、市場が安定していても米国が政治判断で利上げを見送れば、ドル円は120円、日経平均は1万8千円台を回復、とのイメージ。

もっとも、利上げを見送っているうちに市場がさらに不安定になり、米国が12月以降も利上げチャンスを失った、と見られると、これまでの利上げを想定したドル買いが大規模に巻き戻され、大幅な円高のもとで企業収益の悪化が予想され、株価も1万6千円では済まない下げになる可能性があります。

【関連】デフレ大爆発からの中国共産党崩壊=北京発「悪魔のシナリオ」に

マンさんの経済あらかると』(2015年9月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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