株価を左右する条件には、そのときどきによって傾向があります。最近の傾向にはどんなものがあるのか、ESGと成長株の下方修正という2つの要素を紹介します。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。
株価評価を左右する最近注目の2つの傾向を紹介
ESGの視点からみる、社会貢献型企業の評価
企業は営利を目的に設立され、数々の苦労を経て上場に及んでいますが最近ではESG(環境、社会、企業統治)の視点で高く評価されるようになってきました。ESGを前提にした企業活動により利益を上げて、その中から株主に利益を配分する好循環を通じ社会に貢献することが高評価につながるという訳です。
欧州などを中心にしたESG投資では結果としてPER、PBRの投資尺度が高まることになりますが、日本市場においてもそうしたESG投資により評価を高めている企業があります。
直近のアドソル日進<3837>がESGにより評価を高め、障害者雇用支援サービスのエスプール<2471>が業績の向上を背景に時価総額を向上させたのもESG投資が背景になっていると言えそうです。
これらは概ねPERは30倍を超える水準になっており、市場平均を大きく上回っています。さすがに全体相場の調整の中でこれらの銘柄も現実には売り込まれているのですが、ESG投資の視点で今後も引き続き注目を集める可能性があります。
調整相場の中で皆さんもこうした視点で銘柄選定をされると良いかと思います。
ただ、この一方で社会貢献型企業を標榜しながらなかなか評価が高まらない企業もあります。
例えば地方創生をテーマに社会貢献型ビジネスを展開するサイネックス<2376>は長期的な株価下落トレンドを描いておりESGの視点で評価の余地があります。株価の低迷は経営者の意識の低さが背景でもあります。ESGの視点でPERは30倍となるなら株価は2000円、時価総額は120億円があっても良いのでしょうが、時価は750円以下で時価総額も50億円以下に留まっています。保有している現預金並みにしか評価されていない現実があります。
こうした銘柄はこのほかにも見い出せるかも知れません。
ESG投資は欧米の機関投資家を中心に企業の投資価値を測る新しい評価項目として関心を集めるようになったようです。従来型の投資が売上や利益など過去の実績を表す財務指標を重視したのに対して、ESG投資は環境、社会、企業統治を重視することが結局は企業の持続的成長や中長期的収益の向上につながり財務指標からは見えにくいリスクを排除できるとの発想に基づいています。
世界中のESG投資につながるファンドの運用額は一説によると昨年段階で62兆ドル(7000兆円)に達すると推察されます。
全体相場の調整の中ですが、皆さん自身が改めてESG視点での投資を心がけてはいかがかと思います。
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成長株の下方修正は大幅下落になりやすい
2015年9月に上場したTOKYO BASE<3415>は若手経営者に率いられた成長指向の強いファッション系企業ですが、先般今2月期業績を下方修正して株価を昨年の高値から3分の1以下の水準にまで押し下げています。
成長株の業績下方修正はそれまでの成長期待が高かった分、期待外れとなり下方修正後の株価下落の大きくなりがちです。
あの話題のZOZOTOWNでの売上なども見込み違いがあっての下方修正ですので、自業自得と言えばそれまでですが、谷社長は先日の説明会でリカバリ─のための施策を説明していました。
同社は消費関連銘柄の新興勢力と言えますが、2014年の経常利益5億円から毎期利益を拡大。前期は経常利益16億円弱まで伸ばし、今期も20億円を期初見込んでいたのですが、それを13.5億円(前期比14.2%減)に下方修正。EPSも29円台から19円台へとダウン。利益成長を優先させてきたのでIPO後、3年経過しても無配のまま。3回の株式分割で発行済み株式数が膨らんでいますので、時価総額は260億円とまだプレミアムがついた状態にあります。
リカバリー作戦が功を奏すかどうかが今後の鍵を握りますが、ハイエンド・カジュアル業態の「PUBLIC TOKYO」を今秋より開始したようですので株価下落の中で期待が膨らみつつあるというのが現状かと思います。
※情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません
『億の近道』(2018年10月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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