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日経「1日1,000円超」の上昇は過去16回、うち11回は上げ幅を帳消しに=山崎和邦

大人気メルマガ『山崎和邦 週報「投機の流儀」』のHTMLデラックス版が新登場!テキストメルマガではできなかったチャートや図解を用いた解説も掲載。そこで今回の「わが追憶の投機家たち」では、このデラックス版の最新号から、乱高下する東京市場に対する山崎和邦氏の見通しをご紹介します。

妥当水準は日経18,200円?乱高下相場、私はこう見る

黒田2の空けた窓を埋めて半値押しも果たした

かねてから本稿では気にしていた「もしかしたら2014年10月末の黒田バズーカ砲2の空けた窓埋めを果たしに15,701円を覗く可能性」を述べ、最悪のケースはこの大相場の故郷を慕って半値押しの14,809円のケースまで見るべきか、などと述べてきたが、ついに2月12日(金)の14,866円を以てそれを果たした。

昔は「本家還り(ほんけがえり)」と言った。そこから僅か1日で1,000円の大台を2度変えた。

図1 アベノミクス相場

数日の暴落で1,800円下落し、先々週の週末は-760円、翌日15日にはGDPの悪さ加減が発表されたのにも関わらず1,069円の大幅高、1週間の動きは1,868円幅だった。

筆者は東京に居なかったが、気温も4度だったり24度だったりしたようだ。

急激に円高に振れて115円がアッという間に110円台に突入。通貨は常に乱を恐れる。乱を恐れた通貨が安全を求め且つ取引量の大きさを求めて日本円に殺到した、よって急激な円高を示現し、それが株安に直結した、という筋書きだが、その筋書きの自作自演者こそヘッジファンドである。

しかも諸悪の原因が原油安でオイルマネーの市場活動は200兆円あって、そのうちの60兆円が日本市場でのウリ圧力になっているということになっている。

図2 主なオイルマネー系SWF(sovereign wealth fund:政府系ファンド)

欧米経由だから真相は不明である。その筋書きに“悪乗り”するのがヘッジファンドという“21世の妖怪”である。

Next: “21世の妖怪”ヘッジファンドが自作自演する先物主導相場


山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

“21世の妖怪”ヘッジファンドが自作自演する先物主導相場

彼らは米金利を上げたという事実は米景気が良くなったということをFRBが公認したからだと採らず、途上国の資金が引き揚げられるという一方をのみ凝視(するふりを)して、「今後は景気を壊さないように利上げの回数を減らすということ」を「米景気の今後は危ない」という方に拡大鏡を使って市場のコンセンサスを作出しようとしている。

本来は市場という生き物が自らの生理で動くのだが、今は、明らかに欧米のヘッジファンドがレバレッジをフルに効かせて株価を乱高下させ、ボラティリティを上げたいのだ。

彼らにとって最も困ることは値動きが止まって静かな相場になることである。上にでも下にでも大きく動いてくれれば利益を生むのだ。そのために1つの材料を上方方向か下方方向かに都合よく使いたがる。

1848年、マルクス・エンゲルの「共産党宣言」の冒頭は「欧州の天地に1個の怪物徘徊する。それは共産主義革命だ」から始まるが、21世紀の株式為替市場は「市場に一個の妖怪徘徊する。それはヘッジファンドなる名の妖怪だ。そしてその妖怪は乱を好む。彼は乱なくば生きられず」となるであろう。

そして「共産党宣言」の締めくくりは「世界のブルジョアジーを共産主義革命の前に震撼せしめよ。万国のプロレタリアート団結せよ」で終わるが、21世初頭の市場史は「世界のヘッジファンドよ、日本市場で大いに稼げ。日本市場は純情だ。この純情派をヘッジファンドの前に震撼せしめよ。さすれば彼らは大いに慌てて売りまくるから荒稼ぎは容易である」というところであろう。

図3 ヘッジファンドの投資戦略別運用額

彼らの活動する市場は常に大事件を欲している。この手に慌てて乗ることはない。

Next: 過去1日1,000円以上の上昇は高確率で上げ幅を帳消しにしてきた



過去16回あった1日1,000円以上の上昇のうち、11回は上げ幅を帳消しにしたという事実

超短期のヘッジファンドの下方方向への攻めは一旦成功した。NYは今週からは決算発表も終わって自社株買いもできる。ヘッジファンドはひとまず鉾を納める。

だが、ここで思い出すのは、過去16回あった1日1,000円以上の上昇のうち、11回は上げ幅をすべて帳消しにしたという事実である。

市場の記憶に新しいものでは、2015年9月9日に1,343円上昇し、その正味8日後に上げ幅を帳消しにして9月29日の“運命の安値”を示現した。あの日は、あと100円下がれば大天井からマイナス20%で、これは下方趨勢に入ったとNYでは認定されるレベルだったのだ。それはNYダウ誕生以来120年間で23回しかない。

日本市場の格言に曰く「波高きは天底の兆し」と。

再び「妥当な日経平均は18,200円」の意味

生駒市Yさん宛に900円安した2月9日の夜こう書いた。

私にも下値の根拠があったわけではありませんが、本日の下げはドル円が113~114円での企業決算悪を織り込みつつあると思います。

1ドル80円台が長く続いてもシタタカにやってきた日本企業です。

株価の基本は釈迦に説法ですが、企業価値ですから、1ドル80円台時代から120円台時代までの(株価の)上げ幅の半分下がれば、相場の方でも気が済むだろうと思っただけです。

大和証券の試算では「1ドル115円の企業決算でPER14倍なら妥当な日経平均は18,200円だ」と1月下旬に発表された。大手証券と中堅証券は社員が投信営業をするから明るい見通しを立てたがる。万年強気で人気のある大和証券の木野内さんはその代表だ。

だが、ファンダメンタルな資料と企業決算の予測は客観的視覚を旨とする多数の社員アナリストの集合だから数値は信用して良い。

大和証券の相場観はアテにしないが、「ドル115円でPER14倍なら妥当な日経平均は18,200円だ」はファンダメンタルズではせめてもの「灯台」である。

Next: 大相場には不動産価格上昇が付きものだが、様相が異なる今回――



大相場には不動産価格の上昇が付きものだったが今回は様相が少々違った

標題のことを既報で述べたことがあった。が、今回の2.4倍になった大相場は少々状態が依然と違う。今までの日本の地価上昇を鳥瞰すると4つの局面があった。

図4 1953年~90年の日経平均の推移

(1)最初は1950年代後半から64年の東京オリンピックまでで、日本の高度成長期に第一次産業から第二次産業へ一気に産業構造がシフトしたからである。第二次産業への移行が工場用地を必要とし工業地の高騰を生んだ。同時に大都市への人口集中が生きて大都市圏の住宅地も上昇した。

(2)次に2回目は住宅地が中心であった。田中元総理の日本列島改造論が発端となり地方で土地が高騰、60年代に流入した大都市圏の人口の住宅取得が始まり住宅需要が盛んになった。

(3)3回目はバブル期である。第3次産業が発展し生産性が向上し日本経済の新ステージを見て商業地の価格が最も高騰した。東京の郊外で1986年から4年間で住宅価格が250%上昇した。

(4)第4回目は様相を異にした。経済ビジネスモデルの転換による地目別の高騰ではなく、ファンドが投資物件として買う土地である。07年をピークとした動きだ。ファンドは海外からも大量に入った。不動産市場に流入する資金の質が一変したのである。

(5)今回のアベノミクス株式相場では平均株価は始動期から2年半で240%になったが、不動産価格の上昇も伴ったとは言え、そのような高騰はなかった。

【関連】村上世彰氏の強制調査に想う~付論:加藤暠氏・堀江貴文氏・江副浩正氏=山崎和邦

山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)」』(2016年2月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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