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サッポロ「極ゼロ」裁判、企業の開発意欲を削ぐ判決に「努力が無になる」と国民憤怒

サッポロビールがビール系飲料「サッポロ 極ゼロ」の第三のビールから発泡酒への切り替えにより自主納付していた酒税約115億円の返還を求めて国税当局と争っていた裁判で、東京高裁は12日、サッポロ側の訴えを退ける判決を下した。日本経済新聞産経新聞などが伝えている。

この問題の発端は、2014年にまで遡る。サッポロビールが発泡酒よりも税率の低い「第三のビール」として発売していた極ゼロを、国税局が「第三のビールには該当しない」と指摘。サッポロは第三のビールから発泡酒に切り替えるとともに、差額分の酒税約115億を自主納付していた。

しかし、その後の社内調査で「極ゼロは第三のビールに該当する」と判断。自主納付分の酒税についての返還を求める訴えを起こしていたのだ。

産経新聞によると、第三のビールは、酒税法で発泡酒にスピリッツを加えたものなどと規定しているが、東京高裁は今回の判決理由として、発泡酒の要件を「全ての原料が入った状態で発酵がみられる」ことと指摘。スピリッツを入れる前の極ゼロの発泡酒には発酵が認められず、第三のビールに該当しないと認定したという。

この報道を受けてネットでは、「企業の努力が泡となる。解釈の違いにより発生した大きな損失」「頑張って血の滲むような企業努力をして商品を出した結果がこれ」などと、企業努力をコケにする判決に対する怒りの声が上がっている。

こうした声の背景には、これまでにビール各社が税収増を狙う政府と繰り広げてきた酒税の税率をめぐる攻防がある。

Next: 新商品を造るたびに改定される酒税に開発努力が水の泡



第三のビールの定義もあいまいなまま

まぐまぐニュース は、「ストロング系チューハイ裏話。国のいじめに酒造メーカーブチ切れ」の中で、「ビール1本、220円として酒税額は約77円、消費税額が22円と概算すると、99円が税金」であること、「(税率の低いアルコール飲料を開発すると)即座に税金をかけられて値上がりして結果衰退」してきたこと、「特にビールは酒の中ではぶっちぎりの出荷量(全体の4割近く)のため、特に第2、第3のビールを造っても酒税改訂で課税されて潰されるという、メーカーの努力を国が即座に潰しに来るというやりとり」があることを伝えている。

またBusiness Journalは、「歪んだビール税率」というワードを含む記事の中で、「定義が不明確で、捉え方次第で第3のビールとも発泡酒とも解釈できる」と、第三のビールの定義があいまいであることを伝えている。サッポロが発泡酒に切り替えた理由も、「第3のビールと認識しているが、よくわからない状況で続けるよりは発泡酒に変えたほうが明確」(尾賀真城前社長)ということのようだ。

Business Journalによると、「極ZERO」は、健康志向の消費者を意識し、「プリン体と糖質をゼロにした世界初の製法」というのが売り文句だったが、この「世界初の製法」というところに国税庁が目をつけた。当初国税庁は酒税の適用区分を確認する目的で同社に製造方法の情報提供を要請しただけだったが、サッポロが上記の理由で自主的に追加税を納めたのだという。

明らかに「第三のビール」の定義のあいまいさゆえにこじれてしまった問題のように映る。サッポロ側は、「消費者に安く美味しいお酒を提供したい(そして自社の利益を上げたい)」という思いから必死に税額の低い分野で新しい種類のお酒を造ったのだろう。しかし税収を増やしたい政府(国税)側は、「もっと酒税を絞り取ろう」とばかりに新しい商品に目を光らせている。

見る角度によっていかようにも解釈できる法律があるのであれば、早急に改善しなければ企業の開発努力が無になる自体が再び発生してしまうだろう。またこうした事態が続けば、開発者たちのモチベーションも削がれ、良いものづくりができなくなる。ひいては、日本の国力低下にも繋がっていくだろう。

国は税収を増やすことばかりに躍起になるのではなく、民間で働く戦士たちの努力を認め、それに見合う利益が長期的に還元される世の中になって欲しい。

「開発意欲を削がないで…」ネットの声

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image by: PR TIMES
source: 日本経済新聞産経新聞まぐまぐニュース Business Journal

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