マネーボイス メニュー

360b / Shutterstock.com

円一時109円台、終焉を迎えつつあるアベノミクス相場=久保田博幸

4/5のドル円は一時109円台、日銀が量的質的金融緩和を決定した前日の水準まで低下した。円安・株高に頼ったアベノミクスはすでに終焉を迎えつつあり、問題はその後始末にある。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)

政府・日銀による力尽くの株価浮揚策に限界感

ドル円、一時109円台

4月5日のニューヨーク外為市場でドル円は一時109円台をつけ、2014年10月31日に日銀が量的・質的金融緩和を決定した前日の水準にまで低下した。

米ドル/円 15分足(SBI証券提供)

日経平均株価は16000円を割り込み、すでに2014年10月31日の水準を下回っている

アベノミクス、緒戦の勝利

2012年12月の総選挙を経て誕生した安倍政権であるが、その政権奪取に向けて打ち出した政策がアベノミクスと呼ばれる経済対策であった。

その中身はいわゆるリフレ政策と呼ばれ、日銀が次元の違う金融緩和を行うことでデフレマインドを払拭させるというものであった。その結果として現れたのが円安・株高と、その円安にも影響された一時的な物価の上昇となった。

安倍政権は常に日経平均をチェックしていると言われるように、株価の動向をかなり意識している。その意味では最初の市場への奇襲作戦といえるアベノミクスの登場は成功した。

ただし、それは欧州の信用不安の後退期という絶妙のタイミングと、リフレ政策による株高を連想したヘッジファンドが美味しいところを持っていったことによるところが大きい。

最初のピークアウトと日銀追加緩和

アベノミクスの勢いは2014年あたりで一服した。日経平均は16000円台、ドル円は110円台でいったんピークアウトしたのである。これもあり、あらたな打開策として登場したのが日銀による追加緩和である。これは原油安により物価目標達成がより困難になりつつあったことも背景にあるが、あらためて円安・株高の勢いを取り戻そうとの作戦となった。

日経平均株価 週足(SBI証券提供)

日銀のバズーカ第2弾もあり、さらに米国株式市場の上昇も追い風となって日経平均は2015年4月に2万円台を回復し、ドル円は2015年6月に125円台をつけた。しかし、このあたりでピークアウトする。

2015年8月に日米の株式市場は大きく調整した。これは中国の元切り下げなどもきっかけではあったが、中国経済の減速傾向がはっきりし、世界的な景気減速への警戒が世界の株安連鎖に繋がった。中国などの経済減速は、原油価格の下落の要因ともなり、原油価格の下落がリスク意識を強めさせた。

Next: 近づく終焉。今年に入っての急落とマイナス金利政策の不発



今年に入っての急落とマイナス金利政策の不発

日米の株価の本格的な調整は原油価格の下落も伴って2016年に入ってから起きた。ダウ平均は17000ドル台から15000ドル台に急落した。しかし、原油価格の下げ止まりもあり、ダウ平均はその後17000ドル台まで回復した。

ところが日経平均の戻りは鈍かった。ここで再び登場したのが日銀であり、2016年1月の決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和を決定した。

しかし、市場はこれに対してネガティブな反応をした。マイナス金利への負の反応もあったかもしれないが、市場はすでに金融緩和に踊らされる地合ではなくなっていた

あらためて東京株式市場は売られて円高は進み、ドル円と日経平均は2014年10月の水準まで下落した。日銀にとっても打つ手が限られ、政府がいくら財政政策を行っても地合を変化させることは難しい状況にある。

むしろGPIFなども使っての無理矢理な株価対策に対する反動もあるとみられ、よほどのファンダメンタルズの改善でもない限りは、力尽くでの株価浮揚策には無理があろう。

円安・株高に頼ったアベノミクスはすでに終焉を迎えつつあり、問題はその後始末にある。


好評配信中の『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝夕2回、債券市場を中心とした金融市場の動きを会話形式で解説。また昼には書き下ろしコラムの配信を行っています。『牛さん熊さんの本日の債券』は初月購読無料、当月バックナンバーは登録後すぐに読めますので、ぜひ一度チェックしてみてください!

【関連】クルーグマンと安倍首相の議事録『Meeting with Japanese officials』を読む=吉田繁治

牛さん熊さんの本日の債券』2016年4月6日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

牛さん熊さんの本日の債券

[月額1,100円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
金融サイトの草分け的な存在となっている「債券ディーリングルーム」の人気コンテンツ、「牛さん熊さんの本日の債券」がメルマガとなりました。毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを会話形式にてお伝えします。さらっと読めて、しっかりわかるとの評判をいただいている「牛さん熊さんの本日の債券」をこの機会にぜひ御購読いただければと思います。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。