不動産業界には「2015年問題」というのがあるそうです。日本はすでに人口が減少し、2015年からは、明治以降初めて「人口減と世帯数の減少」に向かうというもの。東大卒の人気コンサルタント・吉田繁治さんのメルマガによると、今後25年で日本全国で地価は平均40%も下落するのだとか。あなたの県の下落率、ご確認ください。
過去の市街地価格の推移
日本の地価がどうなってきたか、以下に示します。(※編集部注:県の下落率を先に知りたい方は2ページ目以降を御覧ください)
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6大都市 |
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全国 |
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住宅地 |
商業地 |
工業地 |
住宅地 |
商業地 |
工業地 |
1955年 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
1965年 |
1,038 |
696 |
1,514 |
707 |
712 |
911 |
1975年 |
3,836 |
3,163 |
3,963 |
2,969 |
2,348 |
2,765 |
1985年 |
7,817 |
3,163 |
5,718 |
5,481 |
3,361 |
3,796 |
1991年 |
21,002 |
12,741 |
14,980 |
8,074 |
5,954 |
5,737 |
1995年 |
11,813 |
5,172 |
9,699 |
7,336 |
4,787 |
5,323 |
・ 地価の長期的動向(PDF)
1955年(昭和30年)を100とした用途別の地価の推移です。1991年がわが国の地価のピークでした。
6大都市の住宅地は36年間で210倍に、商業地は127倍、工業地は149倍に上がっています。
年率平均では、住宅地は16%上昇しています。商業地が年率平均14%、工業地でも年率平均15%の値上がりがあったのです。
6大都市では、戦後から1991年までの46年間は、住宅を買って持っていれば、建物はゼロでもその資産価格は、買った時の200倍以上にもなった時代でした。30万円で買ったものが6,000万円というイメージでしょう。こんな時代があったのです。
1970年の世帯数は2,989万でした。1991年は4,051万世帯です。世帯数は21年間で1,062万世帯(36%)も増えています。年率では1.5%の増加です。世帯数の1.5%の増加が、地価を毎年16%上げていたのです。
全国では住宅地は36年間で80倍に、商業地は59倍、工業地も57倍に上がっています。上がり方は、6大都市の30~50%でした。
バブル崩壊後の1995年は、はじめて$1=79円と80円以下になった時期でしたが、6大都市の地価は、住宅地が56%に、商業地41%に、工業地は65%に下がっています。
ただし、もともと上がり方が少なかった6大都市以外では、住宅地は91%、商業地80%、工業地93%と下がり方は穏やかでした。1995年までは、全国の世帯数は増えていたからです。世帯数が増えれば、住宅需要は増えます。
次は、資産バブル崩壊後の1995年から2014年までの地価です。5年毎に示します。
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6大都市 |
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全国 |
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|
住宅地 |
商業地 |
工業地 |
住宅地 |
商業地 |
工業地 |
1995年 |
11,813 |
5,172 |
9,699 |
7,336 |
4,787 |
5,323 |
2000年 |
9,401 |
2,453 |
7,357 |
6,564 |
3,108 |
4,700 |
2005年 |
7,289 |
1,653 |
4,486 |
5,074 |
1,884 |
3,346 |
2010年 |
7,291 |
1,842 |
4,230 |
4,429 |
1,559 |
2,800 |
2014年 |
7,241 |
1,784 |
4,097 |
4,020 |
1,364 |
2,445 |
6大都市の住宅地は、バブル崩壊後4年目の1995年の11,813から、2014年は7,241へと61%に下がっています。ただし大きく下がったのは2005年ころの7,289までです。その後の9年は、7,200台を保っています。
全国の世帯数で言えば、1995年は4,077万世帯、2014年は5,043万世帯です。1人住まいと夫婦2名だけの世帯が966万世帯(24%)増えたのですが、住宅地を上げるような需要ではなかった。
・2005年以降、6大都市の住宅地は大きくは下がらなくなっているとは言えます。日銀の利下げ(1998年から短期ゼロ金利)が住宅ローン金利の低下を生み、住宅需要を支えていると言えます。商業地、工業地もほぼ類似の傾向です。
・2005年以降、大きく下がっているのは、全国の商業地です。1,884から1,364にまで、520(28%)も下げています。これが示すのは、都市部の商店数の減少です。商店街と都心部の商店が、大きく減ってきたのです。商店数とオフィスが増えれば、商業地の地価は上がります。
・なお、全国の住宅地は、2005年の5074から4,020(2014年)へと、9年で20%も下がっています。同じ時期の6大都市は、7,289から7,241とほとんど横ばいです。原因は、6大都市では、世帯数の減少がなく、むしろ増加したのに、全国ベースで言うと、地方都市で、世帯数の減少が始まったからです。
・都市や地域の居住世帯が、仮に1%以下であっても減った場合、10年で20%くらいの地価下落があるということは、今後の地価として原則化できると思えます。
これは、地域の名目GDPが3%の増加を続けても言えることです。地価は、地域の人口の増減という要因で、大きく左右されます。経済的な要因(地域のGDP=所得)よりはるかに、人口要因の影響が大きいのです。
不動産については販売する側は、いつも「今が底値」と言います。下がると言えば、つけた価格では、売れないことになるからです。
われわれは、地価について、冷静な目をもっていなければならない。個人の、将来の生活プランにおいても、会社経営においても、不動産の将来価格は、肝心な要素になるでしょう。
これからの全国の人口と予想地価:2015年から2040年まで
地価の将来価格は、それだけでは、判断がつきません。しかし、地域の地価は、将来人口に、経済より大きく左右されるという原則から、将来地価の推計はできるのです。
データ量は多くなりますが、全国の、都道府県別人口の推計を示します。国立社会保障・人口問題研究所による2040年までの推計です。
【最北の4県1道】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
宮城県 | 230万人 | 197万人 | -15% |
岩手県 | 126万人 | 93万人 | -26% |
北海道 | 536万人 | 419万人 | -28% |
青森県 | 130万人 | 93万人 | -28% |
秋田県 | 102万人 | 70万人 | -32% |
全国の人口は25年で15.5%減少します。年率平均で0.7%、人口数では1,932万人が減少して、新たに800万戸が空き家になります。現在の空き家820万戸が2倍になるのではない。取り壊しが増えるので、空家数は1,000万戸くらいでしょうか。全国では、全住宅戸数である6,000万戸のうち、6軒に1軒、17%が空き家になります。
2040年の地価は、全国ベースでは、現在のそれぞれの価格より40%は下がるでしょう。向こう25年で15%の人口減で、ほぼ40%の地価下落です。増える過疎地では山林のように買い手がなく、価格がつかなくなります。
上記の4県、1道では、宮城県が全国平均です。宮城県の地価は、全国平均の動きをするでしょう。2040年で40%下落です。
岩手、北海道、青森では人口が、26%から28%減ります。全国平均のほぼ2倍の減少幅です。この2県1道の2040年の地価は、現在の40%でしょう。秋田県の地価は、現在の30%かもしれません。
【北関東から東北の5県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
群馬県 | 197万人 | 163万人 | -17% |
茨城県 | 292万人 | 242万人 | -18% |
福島県 | 191万人 | 148万人 | -23% |
山形県 | 111万人 | 83万人 | -25% |
栃木・群馬は、ほぼ全国平均に近い。2040年で40%の地価下落と見ます。茨城県が50%の下落でしょう。人口の減り方が23%、27%と大きな福島と山形は、2040年の地価は50%以下で40%でしょうか。
【関東1都3県と新潟】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
東京都 | 1,334万人 | 1,230万人 | -8% |
神奈川県 | 914万人 | 834万人 | -8% |
埼玉県 | 720万人 | 630万人 | -13% |
千葉県 | 619万人 | 535万人 | -14% |
新潟県 | 229万人 | 179万人 | -22% |
東京都と神奈川県は両方で2,000万人以上の人口ですが、2040年に向かう人口減は8%と、全国の半分です。2020年ころまでの向こう5年間は、両地域の地価は、あまり変化しないで行くでしょう。
2025年に向かっては両地域とも穏やかな人口減になり、2040年になると現在より8%減ります。年率で0.3%の減少ですから、当方が経験した北九州市の1980年代と同じ減り方です。
東京・神奈川の地価は、2030年ころまではほぼ横ばいで行き、人口減が大きくなる2030年以降、2040年までの10年で少なくとも20%は下げるでしょう。
埼玉県・千葉県は、全国平均の下げ方で、2040年に、現在より40%低下です。
新潟県は、2040年に向かい22%も人口が減ります。2040年の地価は、現在の50%か40%でしょう。
【北陸3県と、長野、山梨】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
石川県 | 115万人 | 97万人 | -16% |
福井県 | 78万人 | 63万人 | -19% |
山梨県 | 83万人 | 66万人 | -21% |
長野県 | 209万人 | 166万人 | -21% |
富山県 | 106万人 | 84万人 | -21% |
金沢市を擁する石川県の人口減は、ほぼ全国平均の16%です。地価は40%下落と見ます。しかし、金沢市の地価下落は、仙台市と同じように20%と低いでしょう。
福井、山梨、長野、富山の人口減は、19%~21%と、全国平均より、4ポイントから6ポイント高い。人口が20%減の場合、年率で0.9%です。地価は、それぞれの都市の現在の価格の50%~55%に下がると見ます。
【東海の5県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
愛知県 | 747万人 | 685万人 | -8% |
滋賀県 | 142万人 | 130万人 | -8% |
三重県 | 182万人 | 150万人 | -17% |
岐阜県 | 203万人 | 166万人 | -18% |
静岡県 | 369万人 | 303万人 | -18% |
東海では、愛知県と滋賀県が、東京・神奈川と同じ、8%の人口減にとどまります。2015年に対する地価の下落は、20%と見ます。
三重県、岐阜県、静岡県の人口減は、全国平均の15.5%より少し高い。2040年に向かって地価は、45%の下げをすると見ます。
【関西2府 3県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
京都府 | 261万人 | 224万人 | -14% |
大阪府 | 880万人 | 745万人 | -15% |
兵庫県 | 553万人 | 467万人 | -16% |
奈良県 | 137万人 | 109万人 | -21% |
和歌山県 | 96万人 | 71万人 | -26% |
京都、大阪、兵庫の人口の減り方は、全国平均で14%~16%の間です。2040年時点での地価は、やはり、現在から40%下落でしょう。京都の下がり方は少なく、30%か東京並の20%かもしれません。居住人気が高いからです。
奈良県は50%へ下落し、和歌山県は40%以下に下がると見ます。
【中国地方5県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
広島県 | 282万人 | 239万人 | -15% |
岡山県 | 191万人 | 161万人 | -16% |
鳥取県 | 56万人 | 44万人 | -22% |
山口県 | 139万人 | 107万人 | -23% |
島根県 | 68万人 | 52万人 | -24% |
広島県、岡山県の人口減は、ほぼ、全国平均です。地価の下がり方も全国平均のである40%でしょう。
鳥取、山口、島根は、全国平均より6~9ポイント高い。2040年の地価は、60%下げて、現在の40%付近でしょう。
【四国と福岡県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
福岡県 | 504万人 | 437万人 | -14% |
香川県 | 97万人 | 77万人 | -21% |
愛媛県 | 138万人 | 107万人 | -23% |
徳島県 | 75万人 | 57万人 | -24% |
高知県 | 73万人 | 53万人 | -27% |
福岡県の人口減は、全国平均より少し少ない。地価下落は、県全体の平均で30%でしょう。九州の中核都市の福岡での2040年に向かう地価の下落は30%か、東京並みの20%でしょう。
四国の4県は、いずれも、これから2040年に向かう人口減が20%以上です。香川の地価は、50%は下落し、愛媛、徳島では60%下落して、高知では70%下がるかも知れません。
【沖縄と九州の6県】
2015年 | 2040年 | 増減 | |
全国 | 1億2,659人 | 1億727万人 | -15.5% |
沖縄県 | 141万人 | 136万人 | -4% |
熊本県 | 177万人 | 146万人 | -18% |
大分県 | 116万人 | 95万人 | -18% |
佐賀県 | 83万人 | 68万人 | -18% |
宮崎県 | 110万人 | 90万人 | -18% |
鹿児島県 | 165万人 | 131万人 | -21% |
長崎県 | 137万人 | 104万人 | -25% |
わが国で、人口減がもっとも少ないのは沖縄で4%です。東京が8%でしたから、その半分です。2030年ころまでは、沖縄の地価は上がります。その後、下落に入り、2040年の地価は、2015年の10%減でしょう。不動産投資するなら、1年中暖かい沖縄です。アメリカではフロリダやハワイのような感じです。
熊本、大分、佐賀、宮崎の4県は、いずれも、人口が18%減ります。2040年の地価は、現在の50%でしょう。
鹿児島は55%の下落であり、長崎県は、60%の下落と見ます。
県内の、県庁所在市と、それ以外の地域
県人口が、例えば全国平均の15%減少するときは、県庁所在市では8%減でとどまります。従って、地価の下落は20%程度でしょう。
県内のそれ以外の地域では、2040年に向かう人口減が20%、30%、40%と大きくなります。
こうした地域の地価は、空き家が増加して、60%から75%は下げるでしょう。過疎化と行政の維持困難で、価格がつかない地域も多くなります。
以上で、全国の地価を予想しながら、概観できました。2015年以降の人口減は、住宅需要を減らして、地価を大きく下げる要素になります。
本稿は、2040年に向かう人口と地価の関係を見ました。地価の下げ幅は衝撃だったでしょうか。人口減は世帯数の減少になり、世帯数が減れば、住宅の需要が減ってしまいます。
これは2015年までは、なかったことです。今後、明治以降ではじめて、人口減と世帯数の減少に向かいます。転換点が、今年の2015年です。
2020年までの5年間は、下がり方は穏やかです。東京オリンピックの2020年以降、地価と住宅価格の下落が大きくなります。本稿の推計は、住宅の需給を元にしていますから、ほぼ確実でしょう。
その中で、あまり下がらない県は東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、沖縄県です。
また県内でも、人口または世帯数が増加する地域は、地価も上がります。それと、県庁所在市の中心は、地価の下げ方は少ない。今後の、参考にしてください。
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『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』より一部抜粋
著者/吉田繁治
東大フランス哲学専攻。経営と情報システムのコンサルタント。各社の経営顧問を歴任。戦略的システム開発でシステムデザインを担当。毎週届くメルマガの情報量は圧倒的で、その質・量ともにタイトルの「ビジネス書5冊を超える」の言葉に偽りなし。
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