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ディズニーランドから牛タン屋まで…企業が「感動」で成功する理由

ザ・リッツ・カールトンホテルやディズニーランドなどで与えられる「感動」。それには企業のさまざまな工夫なしでは成立し得ないものです。いったいどんな工夫がなされてきたのか、そして、「感動」をマネジメントすることにより、いかに成功したか、メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』で詳しく紹介しています。

感動の条件づくり

ザ・リッツ・カールトンホテルの接客サービスやディズニーランドには「感動」を創造する工夫があります。

人には「チャレンジ」、「創造性」、「成長」、「達成感」といった生産的な願望もあり、それらの「プラスの衝動」を妨げずに支援・促進させることが「感動のマネジメント」の要諦になります。

少年ジャンプという週刊少年雑誌があります。

この雑誌キーワードは「友情」、「努力」、「勝利」で、この要素またはそれに繋がるものを最低一つ必ず入れることが編集方針だそうです。

そういえばハリウッドの娯楽映画にも、いつも「ジェットコースター」のハラハラと安堵が織り込まれ「感動の衝動」が生起させられます。

人の感性には「感動」のパターン認識があります。

受け取る消費者へは、ハリウッド流の演出をそれも迫真の感情移入がなされた「アート」としてのアプローチでもって。与える側の働く人へは週刊少年雑誌のキーワードのような、人の持つ「チャレンジ」、「創造性」、「成長」、「達成感」の生産的な欲求の充足を妨げずに支援します。

人にとって、「働くこと自体」は決して苦役ではありません。

かえって一定の要件が整えば、成果を生産する現場体験なので「遊び」以上の充実感を得ることができます。

引きこもりの人たちのなかには、何の見返りもなしにテレビゲームを徹夜してでもやり続ける人がいますが、それは充実感が強制なしの努力で得られるからです。

ザ・リッツ・カールトンホテル、ディズニーランドや一部のチャレンジする企業はこのことを理解してマネジメントを行っています。

貢献を引き出すためのキーワードは「人はパンのみにて生くるに非ず」で、信仰や奉仕や自己犠牲などのパン以外の人間が持つ本性をいかに活かし成果に結びつけるかが「感動のマネジメント」の要件になります。

心理学的には、深層心理学という人の心の中に潜む性向を分析しようという流れがあります。

代表的な学者として3人の名前が挙げられます。

フロイドユングアドラーの3人で、フロイドが無意識の存在を発見し分析することからはじまっています。

心理学はいまだ科学になり得ない、また科学の範疇でくくれるかすら定かでないような学問分野です。上記の3人の学説も数学のように厳密な定義づけはできません。そのうえで述べるなら、フロイドは快楽を求める衝動を、アドラーは社会適合を求める権力、ユングは自己実現に注目し分析しています。

人が行動を起こすのは単一の動機によってでなく、複合した動機が絡み合って発現されます。

話が飛躍しますがライザップのボディメイクは、異性にモテたい、賞賛を得たい、達成感を味わいたいといった複合した満足を得るためにハードなトレーニングを対価を払ってまでもチャレンジさせます。本来苦痛であるハード・トレーニングという苦役にさえ、対価を得るのでなく対価を払ってでもチャレンジしています。

ここにマネジメントを理解できるヒントがあります。

人の持つ欲求への理解がマネジメントの要諦で、さきに述べた「少年ジャンプ」ではないのですが一つでも経営方針にしなければなりません。

余談ですが、サントリー・オールドのボトルの曲線は女性の体形曲線を取り入れているといわれ、赤ちゃんや動物の子供がかわいいのは「おでこ」の曲線が人が可愛いと感じる曲線であるという学説があります。

また、男性一般が女性の乳房に魅力を感じるのも、本能的に人間の中に理性を超えた感情レベルの刷り込みがあるからです。

感動を与えられることも、感動の提供する動機づけも人の持つ分析しがたい心理特性に由来します。

ただし、この感動のマネジメントは合理的な仕事のシステム化は基本条件ですが、この運用については安易な計算づくのテクニックとしてつくり込むことは不可能で全人格で対応しなければ適いません。

感動システムについて

ザ・リッツ・カールトンには、感動を実現させる「クレド」と冠した企業理念をはじめとする「ゴールドスタンダード」(黄金律)があります。

これが、宿泊客に感動を提供する基盤です。さらに顧客へのパーソナルな接客サービスをバックアップするデータ管理システムと「やる気」を引き出す評価システムもあります。

ディズニーランドには、感動を創り上げるためのノウハウをもとにした「ディズニー・インスティチュート」という研修機関があります。ここでは、顧客を満足させるディズニー流経営哲学が学べる数々のプログラムを提供しています。「感動」のノウハウの蓄積がディズニーランドの「強み」の源泉です。

ランチの平均客単価1200円以上、それでも連日大行列ができる飲食店としてテレビで紹介された「ねぎし」という牛たん専門店があります。

この会社の経営方式が独特で、毎年の目標や経営方針は店長が主役になって決定しています。感動づくりのアイデアについても現場スタッフに委ねています。

製造業での感動商品の代表は、アップルの「スティーブ・ジョブズ」が有名ですが、ジョブズの場合ではシステム的なしくみではありません。まったくの個人の個性圧力が、組織に染み込んでの快挙です。全社的な取り組みとしては昔のソニーホンダに見られますが、創業者の個性がより強く影響したものとも判断されます。

その他の業態としては、ニトリアイリスオーヤマ、さらにホームセンターのカインズが見られます。これらの会社では、社員に積極的な商品企画・開発を義務付けています。ここでの商品化へのゴーサインには特徴があります。商品化の承認は、代表者が即決で行い機会を逸しません。

ザ・リッツ・カールトンの感動システムを詳しく見ていきます。

根幹をなすのは企業理念で、“クレド”には「お客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしてお応えするサービスの心です」と感動への宣言がなされています。

“サービスの3ステップ”の一番目に「あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びします。」とあり、名前はもちろん“ふともらされた呟き”や態度から得られる情報をデータベース化し共有化し次回のおもてなしに活かされます。

ヒューマンな手法だけでなく、すべての手法が活用されます。

「従業員への約束」では、「お約束したサービスを提供する上で『紳士・淑女』こそがもっとも大切な資源です。」とし、続いて「個人と会社のためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。」とあり、スタッフが紳士・淑女となることを奨励しかつ教育を惜しみなく行い、さらに年数回の「従業員満足度調査」でもって確認しています。

紳士・淑女となったスタッフを鼓舞する制度も行われています。

ファイブスター制度で、3か月に1度各部署から1名が選ばれその中から5名をファイブスター社員として選抜され5つ星マークがつきます。さらに年間20名の中から5名が最優秀ファイブスター社員に選ばれ、マークの中に加えて宝石マークがつきます。

同社の採用時には、最初にパート、アルバイトにかかわらず、クレド(経営哲学)についての丸2日間の研修が行われます。入社1年目には300時間の研修が行われ、毎日各セクションで15分のクレドについてミーティングが行われます。

ザ・リッツ・カールトンは、システムを通してクレド品質を維持しています。

システムはそこで働く人をして、成果を実現するために一定の方向に誘導していく効果があります。普通の人をして非凡な人に成長できる機会を提供します。ただし、「システム」はプラス面ばかりに働くのではなく、過剰になったり運用を間違えると地獄の特訓にも成り下がる危険をも含みます。

image by: Shutterstock

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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