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原型は日本?米国が手掛ける「途上国支援」のおそるべきカラクリ

世界平和を訴え、世界のリーダーとして常にリーダーシップを発揮するアメリカ。しかし無料メルマガ『グローバル時代、こんな見方も…』では、見逃すことのできないアメリカの「途上国支援」が生む悲劇について警鐘を鳴らしています。

2つの「コンセンサス」

核軍縮を訴え、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領。その彼が、持てる力をもって世界平和を望むなら、米国の軍事力が相対的に増すばかりの「核軍縮・廃絶」より、米ドル一極体制に「ゆとり」を与えることで、世界に多くの変化をもたらすことができる。

ドル準備通貨体制は、これまで米国がほぼ無制限に借金を積み増すことのできる環境を提供してきた。どの国にも必要な外貨準備=ドルの貯えは、その多くが利付きの米国債で保有される。また多くのグローバル企業もドル準備を行うため、世界全体の米債需要は膨大である。米国政府にとっては、国内の予算上限法さえ改定すれば事実上、青天井の予算執行が可能となる。

当然、この上限知らずの予算には世界最大の国防費も含まれる。「国防」と呼ぶものの、実態は世界攻略軍費と呼んだ方がより正確だろうか。これは米国はもとより、そこに続く国家、企業に多大な恩恵をもたらしている。

米国率いるこの一大勢力は、強大な軍力と強いドルを利用し世界各地で利権を獲得している。多くの場合、それらは権威と結びつき、現地市場における秩序を形成している。いわゆる「ワシントンコンセンサス」の下の秩序である。

これとは異なる秩序形成を狙うのが「ベイジンコンセンサス」、つまり北京式である。これは現代中国につながる過去の「統治手法」がもとになっていると言える。

基本的に、彼らは経済的リターンに固執せず、内政への干渉も行わない。代わりに、同国を大国と認め、それを疑問視しないという関係構築、秩序形成を狙っている。

次ページ>>途上国支援という名の「支配力」が生む悲劇

支援という名の支配力

ワシントンコンセンサスの下で展開される途上国開発は、前段の部分で様々な政治的条件を課し、完成後も、「アフターケア」とは言うものの事実上の利権を残すことで、やがてそれは現地市場における秩序を形成していく。

通常、彼らは新自由主義(または市場原理主義)を展開し、これに合致しない現地の伝統を「人権問題」などとして取り上げ、国際社会を味方に自らのプレゼンスに正当性を与えていく。

さらに獲得した利権を通じ、現地における自国民、企業に「権利」が醸成されることから、これを大義に、状況次第では「国益」と称す政治介入を積極的に行う。その延長上には軍事介入すらままならない。

この秩序、利権はやがて固定化し、現地の権威と共に保守層を形成する。この保守層は「入植」するグローバル企業に寄り添い、市場における自らの影響力拡大を目指す。その影響力はいずれ強い政治力へと発展する。

グローバル企業の影響力は非常に大きく、現地の特色を活かした彼らなりの発展を阻害するだけでなく、伝統的なライフスタイル、地域社会を破壊し、その国のアイデンティティさえも奪うことがある。

自国らしさを取り戻し、社会の不均衡と格差是正に取り組む改革派(「真の愛国派」とでも呼ぶべきか)と、先進グローバル企業と共に利権を貪る現地の保守派との間には対立が生成され、その対立が紛争へと発展することも少なくない。結果、その紛争が現地、周辺地域の発展を遅らせ、今もなくならない貧困の種を世界にまき続けている。

●参考記事(ウォールストリートジャーナル):日本がミャンマーで犯す過ち

次ページ>>原型は日本の「明治維新」か

日本は「トップバッター」か

民主政治」では、業界代弁に多くの政治力が注がれている現実がある。「得票がすべて」であるがゆえ、目先の経済的利益や、産業界のロビー活動に振り回されやすい。原発武器商を利する国造りなど、日本の保守層のロビーは強力である。

日本の明治維新は、後にワシントンコンセンサスの原型となった可能性がある。日本は、欧米流の「支援」によって一定の成功を収めたトップバッターであったのかもしれない。

しかし、ここに至るまで紆余曲折はあった。以前、日本はどの国よりも、アメリカによる利権保持、内政干渉を嫌った国家である。それがもととなり、その後の世界に起こった悲劇は皆が知るところである。ワシントンコンセンサスの下では、常に敵対する勢力が醸成されるなど、大きなリスクを伴う秩序づくりに映る。

ドルの一極支配が緩和されれば、「無限の予算」が見直され、相対的に他のプレイヤーのプレゼンスが高まる。これは決して新たな対立を意味するものではなく、世界にあるべき必要な「選択肢」であり、逆にこれによって平和的な厳選、淘汰が始まるものと期待される。

冒頭の核廃絶による軍備再編は、米ロなど圧倒的な軍力を持つ国へは有利に働く。これは、小国には太刀打ちできない優位性を米ロに供与するものとなる。

もちろん核保有が望ましいわけではないが、それ以前に、我々は全く別の角度から「安全保障、経済支援」とは何かを考えるべきである。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

 

グローバル時代、こんな見方も…
グローバル時代、必要なのは広く正しい世界観。そんな視点に立って私なりに見た今の日本の問題点を、日本らしさの復活を願い、滞在先の豪州より発していきたいと思います。
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