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人民元の主要通貨入りで「パンドラの箱」を開いた中国

人民元を主要通貨として認めたIMF。中国の悲願がここに叶ったわけですが、これについてメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で黄さんは、人民元暴落の第一歩、中国はパンドラの箱を開けてしまったと解説しています。

【中国】人民元の主要通貨入りで「パンドラの箱」を開いた中国

人民元、来秋から「主要通貨」入り IMFが採用決定

ついに人民元がIMFの主要通貨として認められてしまいました。主要通貨としての条件は2つあり、1つは「輸出額の大きさ」、もうひとつは「通貨取引の自由度」ですが、その両方とも国際的に認められたというわけです。

人民元が国際通貨として米ドルと肩を並べて通用するようになることは、中国が渇望してきたことです。それにより貿易や債券発行も人民元による決済が可能になれば、米ドルに頼る必要がなくなります。これまで人民元は国際通貨ではなかったため、貿易決済や債券発行は主に米ドルで行われてきました。これだと、手持ちの米ドルが枯渇した場合、米ドルでの決済や債務返済が不能になり、デフォルトになる可能性があります。

しかし、人民元での貿易決済や起債が可能となれば、もう米ドルに頼る必要がなくなるわけです。中国が人民元の国際化を望んでいたのは、「米ドル支配体制からの脱却を目指していたからです。

とはいえ、IMFによりこれまで主要通貨として認められていた通貨(SDR=特別引出し権と呼ばれる準備通貨)は、ドル、ポンド、ユーロ、円の4種類でした。いずれも完全変動相場制の通貨ですが、人民元は完全変動相場制ではなく、管理変動相場制です。

中国は自国の裁量で為替をコントロールできる状態にあり、他の通貨に比べてきわめて不公平な状態にあります。これまでも、中国は通貨操作国として、アメリカなどから名指しで批判されてきました。

今年の6月の中国株大暴落では、中国政府は大口株主に対して株の売却を禁止したり、空売りを仕掛ける投資家を逮捕するなど、およそ通常の自由市場では考えられない株価維持政策を行ってきました。

そのような中国が、はたして人民元の国際化に際して、完全変動相場制に移行することが可能なのでしょうか。むしろ裏で自国の都合にいいように、操作する可能性のほうが高いでしょう。中国市場に進出した外国企業が、突然の法律変更で損害を被るといったことは、日常茶飯事で起きています。

人民元を主要通貨として歓迎しているのは欧州各国であり、日米は相変わらず難色を示していました。これにより、日本経済への直接的な影響はないとされていますが、ドル、ユーロに次ぐ第3位の通貨の地位を得ることで、日本円の国際的存在感が低下するのは避けられないようです。

人民元主要通貨入り:IMF、お墨付き 欧州が後押し

このところ中国はイギリスに対して多額の経済協力をもちかけるなど、欧州の取り込みに必死になっています。すっかり力を失った欧州の弱みに付け込んでAIIB設立に加担させ、さらにはIMFの主要通貨に承認させることに成功した中国ですが、その国力は宣伝しているほどではありません。

中国の外貨準備高は3.8兆ドルとされていますが、外国人のみならず、中国人もその数字を信じていません。地下銀行などを通じて、共産党の腐敗官僚が膨大な資金を海外に逃避させていることは、よく知られているとおりです。すでにここ10年間で3兆ドル以上の資金が逃避したと目されています。そして、外貨準備高の3分の2はすでに消失している、あるいは最初から水増しされていたとも言われています。

加えて中国はやたらと他国に金を出すものの、少なくとも2.5兆ドルの純対外債務国であり、隠し債務も含めるとその額は2,000兆~3,000兆円にも達しているとされています。

今回、欧米が人民元の主要通貨入りに対して大きな反対がなかったのは、こうした対外債務を踏み倒されないように、中国の管理通貨制度全般にメスを入れようという狙いもあったと推測されているのです。

だいたい、中国そのものが、リスクの塊のような国です。

ご存知のように、北京の大気汚染は改善されるどころか悪くなる一方です。11月30日には、ついに中国政府が定める大気汚染数値の上限を超えたことで警報が発令されました。PM2.5の値は一時、1立方メートルあたり898マイクログラムと、日本の環境基準の25倍を記録する地点もあったようです。

北京の大気汚染「上限」超え 深刻な状況に

環境汚染が世界で話題になり、先進国入りしたいなら大気汚染を改善しなければならないといった風潮にあった頃、中国政府は大金を投じて環境汚染対策に乗り出すようなことを言っていたはずです。しかし、それから数年たっても何の効果もなさないばかりか、何の対策も取られていません。

IMFはさらなる通貨制度改革を中国に求めるとしていますが、すでに主要通貨入りを果たした中国が履行するとは限りません。

また皮肉にも、中国人は道徳的人道的社会的文明的なマナーが皆無だという点では国際的にも意見が一致しています。例えば、北海道に新婚旅行に来た中国人夫婦は、コンビニで会計前にアイスクリームを食べたことを店員に咎められ、店員に殴る蹴るの暴行を加えたというニュースがあります。

会計前にアイス食べた新婚旅行の中国人夫婦…注意され店員殴る 札幌のコンビニ

喫煙禁止の場所での喫煙、トイレがないのにどこでもしたいときに用を足す、触ってはいけない展示品に手を置いて記念撮影などは当たり前。日本でも、富士山麓にある忍野八海の澄んだ水の中に痰を吐く、吸い殻やゴミを投げ入れるなどの環境破壊行為が問題になっています。

子供を拉致して手足を切断し、物乞いとして働かせるという話は伝説ではありません。まだまだ、中国社会で深い根を張っている問題で、実際に被害に遭っている人はたくさんいます。障害の度合いが高ければ高いほど、多くの喜捨を貰えることから、その悪行非道はとどまる所を知りません。

「1、2歳の手足切断し、物乞いとして利用」…社会主義国・中国で産業化する「物乞い管理」、闇組織の非道

河南省の池で、溺れそうになった幼い子供を助けようとした大学生が、子供を救助した後に亡くなった事件がありました。救助された子供の親は感謝するどころか、賠償責任を問われることを恐れて、その大学生を犯人に仕立てあげました。

溺れた娘を助けようと池に飛び込み溺死した恩人を貶めた母親の“鬼畜”…あまりに身勝手な「賠償責任イヤだった」

警察もカネ次第でどうにでも動きます。交通事故のもみ消し、大学受験の試験官買収、各種証明書偽造など、中国ではカネさえあればできないことはありません。

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つまり、中国には道徳観念が皆無で、人間不信、銭至上主義が蔓延しています。これらはすべて「チャイナリスク」なのです。経済が上向きのときは、それでも海外からの投資が入ってくるでしょうが、ひとたび経済が落ち込めば、これらの高リスクから海外資本は一気に流出していくでしょう。

人民元が完全変動相場制に移行していけば、そのとき人民元は大暴落となります。すでに食料の輸入大国となっている中国では、食料品をはじめとするインフレは避けられません。それは中国共産党がもっとも恐れる事態であるはずです。

中国が13億もの人口をなんとか束ねられたのは、「党・政・軍」の三位一体でカネ、モノ、ヒトを牛耳ってきたからです。しかし、すでに共産主義の理念は失われており、現在の中国共産党には政権政党としての正統性もないのです。

唯一、経済成長こそが共産党が「人民を指導する」立場でいられる正当性であり、そのために市場操作までして、表向きだけでも成長を維持してきたわけですが、人民元を国際化すれば、そうした恣意的な操作はできなくなるでしょう。

インフレで人民が飢え、経済はガタガタ、社会には腐敗が蔓延し、公害被害で生存すら脅かされるということになれば、もはや共産党一党独裁の正当性は根底から覆されることになります。

共産党一党独裁を守るために残された手段としては、文革のような政治闘争を煽るか、軍による恐怖政治しかありませんが、そのような国の通貨が国際通貨として通用するのでしょうか。

今回の人民元の国際化は、もしかすると中国が「パンドラの箱」を開いてしまったということなのかもしれません。

image by: Shutterstock

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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